海外でPSVR/HTC Vive向けに発売が予定されているVR専用FPS『Doom VFR』のプレイリポートと、エグゼクティブ・プロデューサーへのインタビューをお届けする。

●2016年版『Doom』をベースにVRゲームへ翻案したスピンオフ

 アメリカのテキサス州ダラスで現地8月24日から27日にかけて行われたゲームイベント“QuakeCon”。今年はベセスダ・ソフトワークスのVRラインアップ“Bethesda VR”の試遊ブースが用意され、主催であるid Softwareの『Doom. VFR』も、『Skyrim VR』や『Fallout 4 VR』などとともにプレイアブル出展された。

 この『Doom VFR』は、FPS『Doom』(2016年版)を土台にしつつ、VR用に作られた一種のスピンオフ。本編では死亡していたピータース博士の意識が実はコンピューターに転送されており、ロボットなどを乗っ取りながら戦う……というもの。海外では12月1日にPSVRとHTC Vive向けにリリース予定だ。

 ゲームとしては本編同様、地獄のデーモンたちを銃撃戦で倒しまくるVRFPSとなっていて、エイム(照準合わせ)&発砲はモーションコントローラーで行う一方、移動にはワープ形式を採用。左コントローラーでワープ位置を指定し、一気にテレポートできる。

 また2016年版『Doom』では弱った敵に肉弾戦を仕掛け、非常にエグいフィニッシュムーブを決めることができたが、『Doom VFR』でも類似のギミックを採用しており、弱った敵が点滅すると、その場所にテレポートを仕掛けて粉砕することができる。
 VRの実在感で間近に見るデーモンはなかなかゾッとするのだが、テレポートの位置指定中はスローになり、実行すると一気にピュッと飛ぶというテンポの気持ちよさもあって、血しぶきの嵐に慣れてくるとアドレナリンが出まくり、気分はDoomguy(※主人公の愛称)といった感じ。


 日本発売についてはいまだ調整中の本作だが、id Softwareで本作のエグゼクティブ・プロデューサーを務めるマーティ・ストラットン氏に話を聞けたので、その模様をお届けしよう。

――「VFR」ってなんなんでしょう? もしかして“BFG”と同じ意味でしょうか?(※『Doom』や『Quake』に登場する武器名称に使われる“BFG”という言葉は「ビッグ・ファッ○ン・ガン」の略であるとされる。これをそのまま当てはめるとVFRは「バーチャル・ファッ○ン・リアリティ」の略となる)
マーティ・ストラットン氏(以下、マーティ) わはは、その意味は推測して! まぁ同じような言葉遊びで、BFGが元ネタなのは実際その通りだね。みんなが「VR」って言うなら、僕らidは違う呼び方をしたくなるってことさ。

――開発はどんな感じに始まったんでしょうか? 僕は2013年のQuakeConで、当時のVRヘッドマウントディスプレイの初期プロトタイプのために作られた『Doom 3 BFG Edition』ベースのデモを遊びました。あれからいろいろあったわけですが。
マーティ まさにそこが始まりだったね。2013年のE3とQuakeConのためにあのVRデモが作られた。あのあたりからスタジオとしてのVR研究が始まって、技術的課題などを発見し、それを解決してきた。
 その上で、2016年版の『Doom』を土台にVRをやろうという具体的なプロジェクトは、ここ1年半ぐらいのことになる。より具体的な技術的・ゲームデザイン的な課題を解決しつつ、新しいチャレンジを入れていくという作業で、新たなメディア形式の可能性を切り拓いていくのが楽しかったな。

 その間にコンセプトや考え方も次第に変わった。2016年版『Doom』とは何か? それはクレイジーな素晴らしい世界があって、パワフルでクールな武器による銃撃戦があり、そして凶悪なデーモンたちがいることだと再確認したんだ。そして(2013年当時のデモは移植に近い内容だったのに対し)これらの材料を使ってどうVRに最適化された体験を構築していくかという方向に話が進んでいった。
 実際本作は、戦闘要素だけ見ても2016年版『Doom』と方向性が異なっていて、よりVRに合わせた設計になっているよね。あらゆる部分でそれまでの研究の蓄積を応用しているよ。

――本作がBethesda VRの他のタイトルと異なるのは、まさに今おっしゃったように、これは2016年『Doom』の単純な“VR移植版”ではないということです。どうやってオリジナルから入れる要素や入れない要素、あるいは新しく入れる要素を選んだのか教えてください。
マーティ まずは『Doom』と聞いた時にみんなが想像するのが、ハードな戦闘であるということ。ゲーム自体も7~8割が戦闘だし、そこは避けることができない。一方で、2割は戦闘以外の要素というのもまた事実。だからその2割として、何かそこで戦闘以外の面白くなりそうなものを入れてみようということになったんだ。

(前段に引き続きマーティ) というのも、VRにはVRだからこそできたり、VRなら特に面白くなる表現や体験があるからね。さまざまな角度で世界を眺めることができるし。初期プロトタイプでは、フィギュアサイズになって『Doom』世界を訪れるというものがあって、これは個人的に結構好きだった。それからロボットを乗っ取って戦ったりパズルを解くというアイデアが出てきた。
 ここで問題なのが、『Doom』の主人公であるDoom Marine/Doom Slayerはシリーズの象徴的な存在だけども、あまり何かをハッキングしたり、ロボットを乗っ取ってパズルを解くというタイプの人物ではない。どちらかと言えば、とにかく力いっぱいぶっ壊してぶん投げるような人だよね。
 だから設定上はDoom Slayerから一旦離れることにして、今の「死亡後に意識がコンピューター上に転送されたピータース博士が、さまざまなものに乗り移って戦う」というコンセプトになっていったんだ。とはいえ繰り返しになるけども、『Doom』ならではのハードな描写で描かれる世界、アクション、ハイペースな戦闘などはそのままさ。

――『Doom』らしいハイペースな戦闘を実現するにあたって、大きな問題となるのがVRにおける酔いの問題です。これはどのように対処していますか? もちろんジャンプをなくしたり、ワープ方式に移動になっているのもそうだと思いますが。
マーティ 僕はプログラマーではないので技術的なことはあまり話せないけれども、さきほど話したように『Doom 3 BFG Edition』の頃からの蓄積を利用して、描画をできるだけスムーズで高速にするといったことは当然やっている。
 ゲームデザインとかコンセプトの部分で言うと、例えば2016年版『Doom』では、Gory Kill(※弱らせたデーモンに肉弾戦でトドメをさすという要素)がとても大きかった。だからぜひやろうということにはなったんだけど、ここに大きな問題があって、マウス&キーボード操作やコントローラーなら、あの演出のためのちょっとしたカメラ演出を入れることができる。でもVRではダメだ。プレイヤーの頭が動いていないのにゲームの側で一人称視点カメラをコントロールしてしまうとテキメンに酔うし、没入感がそがれる。

 だからまずはゲーム側でカメラをロックしない形でやってみた。実は試してみたらこれは意外と悪くなかったんだけど、それでもプレイヤーの手の位置などとGory Killのアニメーションのつじつまが合わない。そしてそもそも、キャラが違うわけだから、ロボットの身体でDoom Slayerと同じ演出である必要はない。
 そこでGory Killの良さはなんだったのかと考えてみると、少し離れた所から撃って弱らせた所で一気に前に出ていって粉砕するという、凶悪な敵に向かっていく雰囲気が効いているんだと感じた。だからテレポート移動と組み合わせて、敵が弱って点滅したらワープして、出現とともに粉砕するという今の形式にした。点滅中の敵がいる時は移動先としてロックオンできるようにしたので、操作上も煩雑にならない。

 それと、ワープ先のカーソルを出している間はスローモーションが入るので、落ち着いて選択できるし、スローで光弾が飛び交うのは見た目もカッコいい。僕はこれを利用した戦術をよく使う。バババっと撃って、点滅したらテレポーターをロックオンしながら他の敵を撃って体力を減らし、ワープしてGory Killで最初の敵を爆殺する。そしてまたテレポーターを出しながら撃って、またGory Killを決めて、程よい所で一旦離脱といった感じにね。

 というわけでまとめると、『Doom VFR』は2016年版『Doom』のエッセンスを分解してVRに落とし込んでいるんだけども、VRで快適に遊べるように、VRとしての楽しみがあるようにというVR中心的な翻案になっている。

――Modサポートはありますか?
マーティ 今のところはその予定はないね。VRにおけるさまざまな問題を解決するのに精一杯だから。

――イースターエッグ(隠し要素)などはありますか? オリジナルの初期『Doom』がVRで遊べたりしたら面白そうですが。
マーティ 僕らは常にシークレット要素やイースターエッグが好きだからね。それは『Doom』やid Softwareの遺伝子でもある。何があるかは言えないけど、いろいろ隠してあるということはお伝えしておこう。ちょっとした収集要素なんかもあるよ。