当然のように取り出されるサイリウム、推奨される応援上映
劇場アニメ『KING OF PRISM -PRIDE the HERO-』4DX版が2017年8月26日より全国上映される。話題の本作の試写会にファミ通.comも参加することができたので、感想をお届けする。
■『キンプリ』、『キンプラ』とは
『キンプラ』とは、プリズムスタァと呼ばれる少年たちの姿を描く劇場アニメ作品『KING OF PRISM by PrettyRhythm(以下、キンプリ)』の完全新作である。プリズムスタァの頂点を決める祭典“プリズムキングカップ”を主軸に話が展開していく。
前作『キンプリ』は、サイリウムを振って声援を送る“応援上映”のあまりの熱量が全国的に話題になり、足しげく劇場に通うファンがパンデミック的に増えていった。実際に鑑賞したことはなくとも、応援上映について耳にしたことがある方は多いだろう。
また、“腹筋で大剣の一撃を受け止める”、“尻から蜂蜜が飛び出す”などの常識にとらわれない演出も特徴で、「怖いもの見たさで鑑賞したらハマってしまった」という男性ファンも多い。筆者も“男でありながらアレクの女”という、両親に説明するのが難しい肩書を背負っている。
いつからか「『キンプリ』を観たら全身の疲れが取れた」、「悩みが吹き飛び、世界が輝いて見える」という薬効効果も提唱され、そうした余韻を指して“『キンプリ』をキメる”という表現が誕生するなど、ストレス社会の現代を象徴したような作品だ。
2017年に入っても『キンプリ』人気が衰えることはなく、公開中の新作映画『キンプラ』も、すでに観客動員数24万人を突破。ファンの声に応えて4DX版が上映される運びとなった。前作『キンプリ』4DX版の完成度が高かったため、『キンプラ』4DX版に期待を寄せているファンも多いだろう。
■当然のように取り出されるサイリウム、推奨される応援上映
そんな期待値の高さはメディア関係者も同様のようで、今回招待いただいた“メディア向け試写会”でも、’’来場者の3分の1ほどがサイリウムを持参していた’’(なにも言われていないのに)。
その様子を見たエイベックス・ピクチャーズの広報の方も、「よろしければ、サイリウムを振って、自由に声を出してお楽しみください」とアナウンス。試写会がファンミーティングの様相を醸し始めたのはこのあたりである。
はじめて鑑賞する方に配慮して、本当に声を出して応援する招待者はいなかったが、心の中ではロゴに向かって「御社~! ありがとう~!」と叫んでいたことは言うまでもない。
さて、前置きはここまでにして、果たして『キンプラ』4DX版は、膨らんだ期待に応える作品だったのかについて、所感を述べさせていただく。
※以下、若干のネタバレを含みます。情報なしで鑑賞したい方は注意!
腹筋から漂う“火薬の匂い”に「What?」、前作比マシマシの水量に「Unbelievable!」、エンターテインメントとして完成されたプリズムショーを見逃すな!
■プリズムスタァ候補生の出番の増加が、4DXを高みへ導いた
結論から述べれば、大満足のクオリティーであった。『キンプリ』4DX版で上がったハードルを軽々と飛び超えたといっても過言ではないだろう。
『キンプリ』、『キンプラ』で使われる特徴的な演出に、“いくつかのエピソードが並行して同時に進行し、めまぐるしく場面が切り替わる”というものがある。
この演出に4DXの特殊効果が組み合わさり、ジェットコースターに乗っているかのような激しいエンタメ性がうまれていたのが『キンプリ』4DX版だった(例えば、座席が激しく振動する“シーンA”と、シャボン玉が噴出する“シーンB”がすばやく交互に繰り返される)。
そして、すでに『キンプラ』を鑑賞済みの方ならおわかりだろうが、前述の“同時進行演出”で一度に展開されるエピソードの数は、本作でさらに増えている。
つまり、『キンプリ』4DX版で脳の処理が追い付かなかった“特殊効果の挟撃”が、『キンプラ』4DX版では「風が吹く! 水がかかる! 座席が揺れる! シャボン玉きれい! 風ブワッ! 水バシャア! 座席ガタン! 泡フワ~! 風! 水! 座席! 泡!」という“四方八方からの連携攻撃”に進化し、前作をこえる多幸感が劇場を包むのである。
また、異なる特殊効果の組み合わせが、驚きの演出を実現している場面も増えたように思う。これには制作チームのセンスと4DXの可能性を感じずにはいられなかった。
たとえば、登場人物のひとりである“仁科カヅキ”の滝行シーンだ。
『キンプリ』4DX版でも「想像以上に濡れまくる」と話題になった“水の特殊効果”と、ブレイクダンスの代名詞である“風の特殊効果”がぶつかることが予想されるが……。本編の裏で行われる“水”と“風”の戦い、キング・オブ・4DX効果を決める勝負の行方にもぜひ注目してほしい。
■臨場感マシマシのプリズムショーに、やっぱり気になる“腹筋から爆弾”
もちろん、メインとなるプリズムショーも、4DXと組み合わさることで臨場感が増している。ショーの回数が増えたぶん、キャラクターごとに演出の違いを出すのはたいへんだったと思うのだが、見事に差別化がなされているように感じた。
最後に、リリース情報で公開され、気になって仕方がないファンも多いであろう“腹筋から爆弾が落とされるシーンで火薬の匂いがする(原文ママ)”についてだが……、これはもう、実際に体験してもらいたいとしか言えない。
補足するならば、花火で使われるような本物の火薬の匂いを予想していくと、すこし面食らうかもしれない。想像すべきは、ただの火薬ではなく“プリズムスタァの腹筋から分泌された火薬”の香りだ。むしろ、こっちのほうが簡単にイメージできますね。
『キンプリ』に貴賤を持ち込むのは間違っているのかもしれないが、あえて言わせてもらう。
『キンプラ』4DX版は『キンプリ』4DX版を超えた、と。
通常版を未見の方も、もう20回は観たという方も、安心して楽しめる内容になっている。8月26日からの順次公開を十分に期待していただきたい。