現在『ファイナルファンタジーXIV』のコラボイベントのモチーフとなっているイヴァリース。その元ネタのひとつでもある“王都ラバナスタ”が登場する『ファイナルファンタジーXII ザ ゾディアック エイジ』(以下、『FFXII TZA』)も発売中だ。その『FFXII TZA』の全BGMが生演奏で再収録された本作のオリジナル・サウンドトラックもリリースされており、好評を博している。何かと話題のイヴァリースを舞台とした、『FFXII TZA』の開発当時の苦労話や新録された楽曲について、崎元氏と10年ぶりに集結した『FFXII TZA』サウンドチームへのインタビューをお届けする。音でも個性を放つ奥深い世界観が展開しているイヴァリース。本インタビューで展開している開発陣のこだわりに溢れたやりとりからイヴァリースにさらに興味を持ったなら、『FFXII TZA』もプレイしてみては?

サイン入りサントラプレゼントも! 『FFXII ザ ゾディアック エイジ オリジナル・サウンドトラック』崎元仁氏&サウンドチームインタビュー_03
▲生演奏で新録された『FFXII TZA』の楽曲とボーナストラックを高音質なBlu-rayディスクに収録。特別に編集された映像とともに楽曲を楽しめる豪華仕様。また、初回限定版にはエキストラトラック6曲が追加収録されている。通常版5000円[税抜]、初回限定版は6000円[税抜]で発売中。
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▲左から、ミュージックエディター河盛慶次氏(文中は河盛)、サウンドエフェクトディレクション矢島友宏氏(文中は矢島)、コンポーザー崎元 仁氏(文中は崎元)、プロデューサー加藤弘彰氏(文中は加藤)、ディレクター片野尚志氏(文中は片野)。

全曲を、生演奏で新録するという決断

――サウンドチームは、今回のオーケストラ収録のために、10年ぶりに集まったことになりますね。

加藤 そうですね。新録を決めたときは曲数が多くて大変かなと思ったのですが、いまは発売に向けて、最終段階に入ったので安心しました。

――今回のリマスター化にあたっては、新たに全BGMがオーケストラで再収録するなんて豪華ですよね。どのような経緯で再録をすることになったのですか?

崎元 僕から、せっかくHDリマスター化するなら、「音のほうもなにかをしよう」という話をしたのがきっかけですね。オリジナル版『FFXII』の音楽は、プレイステーション2の内臓音源で鳴らしていたのですが、後に発売したサウンドトラック版は、シンセサイザーで鳴らしているんですよ。その音源を使ってもよかったのですが、「せっかくなんだから、オーケストラで録音をし直そう」と。当時から、シンセサイザーでは、微細な弦の段階音などに、どうしても越えられない壁を感じていたので。そういった当時できなかったことをやるために、今回の収録が始まったという感じですね。

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――それは加藤さんが提案されたのでしょうか?

加藤 本作の開発が始まるときに、僕の中ではプレイステーション2音源と、サウンドトラック音源の両方を用意して、コンフィグで選べるようにできたらいいな、と思っていたんです。どちらのサウンドも、非常に良いものでしたからね。……ですが、崎元さんとお話をしていく中で、さらに音楽をグレードアップさせるチャンスなのではなか、と思い至り、崎元さんにお願いしました。

崎元 僕はどんなゲームでも、いつも「生で収録したいよね」みたいなこと、冗談で言うのですけどね……まさか、本当にやらせて頂けるとは!

一同(笑)

崎元 ただ、よく考えると『FFXII』の音楽は100曲以上あるんですよね。「やったー!」と思ったあとに、「あれ、この仕事、たいへんなのではないか……?」と、気づいて。

――たしか、サウンドトラックは全100曲でしたよね。100曲以上というのは……?

崎元 サウンドトラックはちょうどいいので、100曲に収めるようにしていたんです。たとえば2曲あるものを1曲に繋げて、100にしていたんですね。ですが今回は新曲も作りましたから、少なくとも100曲以上は新録です。

――しかも、新曲も入っていますよね。

加藤 ええ。新曲は全8曲収録しています。フィールド曲が5曲、ボスバトル曲が2曲入っていて。あとは、今回のスタッフクレジット用に、長い曲が1曲ありますね。さらには、イベント曲も新たに作り直しています。カットシーンに合わせて、見直してみて、別の表現のほうがいいだろうと感じたところは、崎元さんが新曲を合わせてくださいました。

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――新曲はどのような基準で増やしたのですか。

崎元 オリジナル版の『FFXII』では、フィールド曲やバトル曲の一部は、ほかの場面の曲を使いまわしていたので、そこは今回、しっかり専用曲にしてあげたいと考え、新曲を描き下ろしたんです。そして、イベント曲なのですが……いまだから話すと、オリジナル版の開発当時は、開発の終盤にドタバタと制作したような曲もあって。あらためて余裕のあるときに聴き返すと、「俺はもう少しできたんじゃないか」と思ったような曲については、今回、思い切って作り直しています。