大物クリエイターふたりが“○○”について熱く語る!? 広井王子氏×小島秀夫監督特別対談

週刊ファミ通2017年6月22日号(2017年6月8日発売)にて掲載した、広井王子氏×小島秀夫監督の特別対談を掲載。

●大物クリエイターどうしの対談が実現!

 『天外魔境』シリーズや『サクラ大戦』シリーズなど数多くのヒット作を手掛け、現在はスマートフォン向けゲームアプリや映画、テレビドラマの原案など、マルチに活躍する広井王子氏と、2015年12月にコジマプロダクションを設立し、プレイステーション4用ソフト『DEATH STRANDING(デス・ストランディング)』を開発中の小島秀夫監督。そんなふたりによる特別対談が実現! 最近のゲーム業界や映画の話、今後の活動についてなど、さまざまなテーマで熱く語り合っているなかで、とくに盛り上がったのが“○○”問題!?(聞き手:ファミ通グループ代表 浜村弘一)

■広井王子氏(文中は広井)

スマートフォン向けゲームアプリ『千年少女團 Millennium Sisters(仮題)』(ゲオ・インタラクティブ)、『ソラとウミのアイダ』(フォワードワークス)のほか、テレビドラマ『コードネームミラージュ』の原案・脚本などさまざまな分野で活躍。

■小島秀夫氏(文中は小島)

2015年12月にコジマプロダクションを設立。現在は、プレイステーション4用ソフト『DEATH STRANDING(デス・ストランディング)』(ソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)から発売)を鋭意開発中。

●2003年以来14年ぶりの対談

浜村 おふたりは以前も2003年に『ドリマガ』で対談をされているんですよね。

小島 デザートのもんじゃも含めて、食べながらの対談でしたね。全部広井さんに焼いてもらいましたよ。

広井 その後も会いに行ったりはしていましたけどね。

小島 僕は広井さんのことを“兄貴”と呼んでいましたよ。

浜村 『ドリマガ』の対談では「親父になってほしい」とか言っていたけど、親父のつぎは兄貴ですか(笑)。

広井 懐かしいね、その話。

小島 そうそう(笑)。父親が早くに亡くなってしまったので、いまでもそうですけど、これまでの人生ずっと誰かに相談せずにひとりで悩み、いろいろ解決してきたんです。でもやっぱり、誰かに相談したいじゃないですか。

広井 それで俺が相談相手にいいんじゃないかとね(笑)。

小島 実際に相談してみたら、「そういうときはタイとかに旅行に行って、休憩したらいい」と言われたんですよ。でもそんなこともできないなあ、と(笑)。

広井 休まないとダメだよ。走り続けるわけにはいかないんだから。

小島 でも僕、1回止まるとダメなんですよ。止まるのが怖いんです。

広井 ああ、それはわかる。

小島 だから多分、走り続けて5年ぐらいで死ぬんじゃないですかね。

一同 (笑)。

広井 5年はいけるんだ(笑)。

小島 なかなか死なないという(笑)。

広井 でも確かに止まるのが怖いっていうのはわかるなあ。

浜村 広井さんは、しばらく台湾に行かれていましたね。5年くらい。

小島 小説とかを書かれていたんですよね。

広井 そうそう。台湾に行って、音信不通の状態にしてね。プライベートで人と会うのが嫌だったから、猫しかいない家に帰って、ひとりでご飯を作ってひとりで食べるっていう生活をして。5年くらい経ったころに、そろそろ日本に戻ろうか、と。

小島 日本に戻ろうと思ったきっかけは何だったんですか?

広井 台湾にいるあいだも、何人かの方が台湾に来てくれていて、2015年ごろにいろいろなところから「戻ってきなよ」という話をもらったんだよね。ちょうど台湾に飽きてきていたころというのもあったけど(笑)。そのときに深夜テレビやスマホゲームの話もいただいて、小島さんみたいに大きいフィールドで大予算をかけて作るようなゲームは僕には向いていないので、ちょうどいいな、と。

小島 そんなことはないでしょう。『サクラ大戦』とかすごいじゃないですか。

広井 いやいや、いまはそんな時代ではないから。さっき小島さんの作品の映像(編集部注:『DEATH STRANDING(デス・ストランディング)』のPV)を見せてもらいましたけど、小島さんは海外で大きく売れているので特別です。投資が集まりやすい。日本のエンタメは総じて国内でシュリンクしていますから。難しいです。限られた予算内でどう作るかですね。海外のゲームやドラマと比較されても予算規模が違いすぎます。

浜村 世界でヒットするレベルの日本映画は、確かに少なくなってきていますね。

広井 さっきの映像を見ても思いましたけど、もう日本国籍である必要がないんですよ。僕が台湾でやろうとしたことも同じで、全アジアをターゲットにしようとしたんですよね。難しいことではあるんですけど。アメリカとヨーロッパには共通言語を求めず、アジアの共通言語だけで作品を作っていこうと思ったんですよ。日本にいると情報が入ってきませんけど、『孫悟空』だったり妖怪の話だったりも、中国だとヒットしていたりするんですよ。

小島 当たっていますね。

広井 ベトナムとかカンボジアとかが発展してくると、必ずそこが新たな市場となってくるんですね。そうすると、僕たちが東南アジアにおける『ドラえもん』や『鉄腕アトム』を作らないといけない。技術は現地の人たちでいいんだけど、音頭を取るのは日本人のほうがいいんじゃないかと思うんですよね。そんなことを考えながら5年間やってきたけど、なかなかうまくいかない。

小島 中国で売れる映画って、日本人が見たら知らないタイトルがすごく多くて。『ワイルド・スピード』は売れていても『スター・ウォーズ』はヒットしなかったり、ちょっと変わっているんですよね。

浜村 へえ。日本とは違うんですね。

小島 飛行機の中で日本公開よりも先に観られるような、配給が遅れる(期待されていない)映画が大ヒットしていたりしますからね(笑)。チャウ・シンチーの『人魚姫』なんかが、ものすごい売れているんですよ。

広井 日本でメジャーではない作品を「くだらない」と言うのは簡単なんですけど、映画を観なくなった日本の国民にそんなことを言われても、誰も相手にしないんですよね。世界では何億人って人数が映画を観ているわけだから、当然向こうは向こうの人たちが求めているものを作るんですよ。

浜村 なるほどねえ。確かに海外はシネコンとかもすごいですもんね。

小島 インドなんて国内だけで制作費が回収できるから、CG技術の進歩もすごいんですよ。昔だとインドの会社はハリウッドの下請けをやっていましたけど、いまはハリウッドよりも技術は上ですからね。儲かっているから技術力も上がるんですよ。逆に日本は儲からないから技術も下がって、結果的にCG技術も世界より下になってしまう。

浜村 ああ、そういえば以前のインタビューでも監督はそのようなことをおっしゃっていましたね。このままでは日本はダメになってしまうと。監督のスタジオはいろいろな国の方が参加されて、もうどこの国のスタジオかわからない体制になっていますよね。広井さんも今後は国際化が進むというお話をされて、実際にアジアをターゲットにしていましたけど、日本の中だけでなく広げていく必要があるというのは、その通りだと思います。

広井 そうならないといけないんですよね。だから、小島さんのスタジオみたいなところに投資が集まらないといけないんですよ。

小島 メディアの人も応援してくれませんからね、ファミ通さんも(笑)。

浜村 は? いやいや、応援してるじゃないですか(笑)。何回ここに取材に来たと思っているの?

一同 (笑)。

●台湾のつぎは中東!?

小島 僕は日本を出ていく、なんてことは考えていないんですけど、やっぱり日本だけ温度感が違うんですよね。僕は作りたいものを作って、見てほしいものを作っているだけなんですけど、何度言ってもそういう風に受け取ってはもらえないんですよ。それで“世界の小島”とかバカにされてますから(笑)。

浜村 バカにはしていないでしょう(笑)。

小島 ユーザーの数が海外のほうが多いから、彼らが喜ぶようなものを作っているというのと、自分がいちばん好きなものを作っていると結果的にそういうものができるだけであって、あえて“世界の小島”であろうとしているわけではないんですよ。日本でゲームを作る必要はないかもしれないけど、やっぱり日本が好きなので、軸足は日本に置いておきたいんですよね。

浜村 小島監督も広井さんも、日本だけではなくて、世界全体を見ているんですよね。

広井 そうですね。台湾ではそういう考えかたで5年間やってきて、でも今度は逆にシュリンクしたんですよ。世界に出さなくてもいいな、という考えで国内でやっていこうと。だからスマホに行ったんですよ。

浜村 なかなか世界には受けないですよね。

広井 アジアの課金システムと欧米はちょっと違いますね。そこを極めてみたいと思ったので。その中で、おもしろいものをどうやって作ったらいいのか、という部分を考えてみたかった。世界に出られないという点では、テレビドラマの仕事も同じですね。

小島 いまドラマも作られているんですよね(編集部注:『コードネームミラージュ』)。

広井 そうなんですね。でも深夜ドラマも予算が限られていますから、世界に出ていくのは難しいでしょうね。たぶん、さっき見せてもらったPVのオープニング映像だけで2クール、25話ぶんの予算が全部飛びますね。さっき見た瞬間に、「うわぁ……、参ったな……」って思いましたよ。

一同 (笑)。

浜村 小島監督の最新作、いかがでしたか? グラフィックがすごいでしょう。

広井 いやぁ、もうすごいですね。映画業界も、サボっていたわけではないんですよ。諦めたんですね。「こんなものは作れない」と。でもそれがゲーム業界だとできるんですよ。

浜村 そうなんですよね。

広井 それは予算と、ユーザーの数だと思います。小島さんは世界を、全世界のユーザーをターゲットにしているので、お客様が世界中にいる。だからお金を出す側も制作費を回収できると思って出資するんですよ。でも日本映画ではそれができない。じゃあどうするかというと、制作費回収のために、人気アイドルを使う(笑)。

小島 あとはマンガ原作とアニメ実写化、TVドラマの映画化ですね。

広井 そうですよね。でもそうなると、世界に出すことのできる作品を作るのは難しい。

小島 お金がないから現代劇で、そのへんの高校を舞台にするのがいいんですよね。時代劇もお金かかるので。

広井 そう、その通り。よくおわかりで。

一同 (笑)。

小島 超能力ものとかが流行るのは、お金がかからないからですよ。こうやって、ポーズを取っているだけでいいですから(笑)。

広井 あとはCGをつければいいからね。

浜村 なるほどね(笑)。

広井 『コードネームミラージュ』では、“クルマが地下鉄の中に入っていって、追いかけてきた敵とバトル”というのを最初に書いたんですけど、そんなシーンはいきなり却下ですよ。「広井さん、深夜放送で何を言ってるの。そんなバトルはどこかの倉庫でいいでしょ!」とか言われて。倉庫の中のバトルなんか誰もハラハラしないでしょ。あとはプロデューサーの覚悟しだいですけどね。

小島 昔、日本のプロデューサーとかが「小島さんのアクションが観たい」って言って映画製作の依頼をしてきたんですよ。でも予算を聞いたら、「5000万くらいで、カーチェイスと銃撃戦とかを」って。それってバンを3台も爆破したら終わっちゃいますよ(笑)。「小島さんのアクションが観たいんですよ」って言われても、どこで戦うのかと。高速道路の閉鎖とかもできないじゃないですか。CGもVFXも使えないし、作れませんとお断りしているうちに、お話も来なくなりましたね。

広井 だから街中でチェイスしているシーンをアップでいくつか撮っておいて、それをバババッと見せた後に海かどこかに壊れたクルマを置いておいて、ここまで逃げて来ました、みたいな。「そのあいだのシーンが観たいんだよバカヤロウ!」みたいなね(笑)。

一同 (笑)。

浜村 ありましたね。カーチェイスのシーン。

広井 そういう風にするしかないんですよ。

小島 固定カメラ1台でコンテ通りに順番に撮らないといけない。ハリウッドだったら怒られるやりかたですよ。気合で24時間撮影を続けないといけない。

広井 『ラ・ラ・ランド』は、高速道路を全部クルマで埋めて踊っていますからね。CGも使ってるだろうが、すごい。

小島 リハなんかも全部やっていますからね。

浜村 あのシーンはすごいですよね!

広井 日本ではああいうことはできないですよね。『ラ・ラ・ランド』のあのシーンだけで、山田洋次監督の映画1本ぶんですよ。

一同 (笑)。

広井 台湾では映像管理の仕事ばかりやっていたので、最近は何を見てもお金のことを考えてしまうんですよ。「あそこはCGだよな」、「このシーンは何人撮っているんだ?」とか、バカみたいに(笑)。悲しいことですけど、日本でやっていくならそこは避けて通れない悩みで。でも低予算でおもしろいものが作れないかと言えば、そんなこともない、かもしれないとも思っているんですよね。日本でいろいろやってみて、それでダメだったら、今度はアラブに行こうかなと思っていて。

浜村 中東のほうですか。

広井 中東はいいですよ。中東に行くためにヒゲも生やし始めたんですよ。ヒゲがないと子どもみたいに思われるので。

浜村 うそぉ(笑)。

小島 ヒゲ、僕も生やしているんですけどね。

浜村 ボクも(笑)。

広井 みんなヒゲ(笑)。

小島 中東は女性の肌を出してはいけないとか、制限が多いんですよね。毎回いろいろ言われます。肌を見せたらいけないとか言われますからね。

浜村 へえ。そうなんですか。

小島 ゲームも盛んではあるんですけど、イベント会場なんかも男女別になっているんですよ。

浜村 あ、会場も違うんだ。

小島 外国人はいいんですけどね。すごくたいへんです。

広井 中東で当てるなら、ロボットでかな。巨大ロボットが恋をするんです。肌を見せないから人間かと思っていて、いざ脱いでみたら「ロボットだったのか!」みたいな。巨大な時点でわかってたろ、って(笑)。

一同 (笑)

広井 マジメにやったら受けると思いますよ。恋をしたロボットが出てくるっていうのは。

浜村 そういった企画が通るのかなあ?

広井 永井豪さんの原作なら通るんじゃないですか? 向こうは永井さん大好きですから。だから永井さんを巻き込んで、「作ろうよ!」って。

浜村 「作ろうよ!」って(笑)。

広井 バリバリのCGで作るんですよ。砂漠にテントを張って、そこをCGスタジオにして、そこにみんなラクダで通うの。いいなあ、そういう光景を実現したいんですよ(笑)。契約書に「ラクダ1頭、それと半月刀1本」とか書いてね(笑)。

一同 (笑)。