第7回&第8回ゲスト・古川未鈴さんのコメントも!
2017年4月8日から、TBSラジオで放送がスタートした『プレイステーション presents ライムスター宇多丸とマイゲーム・マイライフ』(AM954kHz、FM90.5MHz/毎週土曜日24時00分~24時30分)。この番組は、ライムスターの宇多丸さんをMCに据え、ゲーム好き著名人をゲストにゲームにまつわるさまざまなエピソードを語らっていくトーク・バラエティーだ。「こんなに気になる番組があるなら取材に行かねば!」ということで、でんぱ組.incの古川未鈴さんをゲストに迎えた第7回&第8回の収録にお邪魔。収録を終えた宇多丸さんに、インタビューを行った! 収録時にお目にかかった古川未鈴さんにも自身の回の聞きどころを聞いているので、ライムスターファン、でんぱ組.incファンともに注目です!!
ゲームの話をしてもらえると、何でもおもしろくなるんです!
――さっそくですが、『プレイステーション presents ライムスター宇多丸とマイゲーム・マイライフ』のMCを担当されることになった経緯を教えていただけますか?
宇多丸 理由を聞いたことはないんですが、よく考えると奇怪極まりない編成なんですよね。僕の番組である『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル』の放送が終わったと思ったら、この番組が始まるんですから。僕がこの番組の前番組に当たる『プレイステーション presents マイゲーム・マイライフ』に高橋愛さんといっしょに出させていただいたことが、ひとつのきっかけではあると思います。また、これは推測なんですけれど、僕のゲームの守備範囲がいわゆる洋ゲーとハッキリしているのが要因のひとつじゃないかな? と。そして僕自身は“ファミコン世代”であるものの、その時期はゲームで遊んでいなくて。わりと大人になってからゲームを遊び始めている。だからこそ、大人になってゲームから離れてしまった人に対して「もう一度ゲームを遊んでみようよ!」と提案する際の、いいハブになると思われたのかな? と思っています。あらゆるゲームジャンルに詳しいわけではないので、立場がフラットというか……。マニアックに語るゲストの皆さんと視聴者のあいだに立って、客観的にお話を聞けるからではないかな? と予想しています。
――なるほど。知らないこともあるがゆえに、視聴者が置いてきぼりにはならないという。
宇多丸 そうなんです。たとえば『ファイナルファンタジー』シリーズや『ドラゴンクエスト』シリーズなんていう“ゲームファンなら誰もが遊んでいて当然”みたいなタイトルも僕はまだ遊んでいなかったりする。で、そういったタイトルの話が出たときに「ああ、アレね!」みたいな話の流れになっちゃうと、ゲームに距離感のある人は「僕には私には関係のない話だ」って感じちゃうと思うんです。でも僕の場合だと「ごめんなさい、遊んでいません。で、どこがおもしろいんですか?」という流れにできる。ただ、それらのタイトルで遊んでないからといって、ゲームにまるっきり興味がないのも、それはそれでマズイですし。MCとして選んでいただいた理由は、そのあたりのバランスなのかもしれません。
――放送後の皆さんの反応はいかがでしたか?
宇多丸 ネットでの評判なども含め、反応はとてもいいように感じます。三浦大知くん(第1回&第2回ゲスト)や夏菜さん(第3回&第4回ゲスト)などは、ゲーマーということをご本人は公言されているのですが、なかなかゲームの話だけを手加減なしにできる機会が少ないみたいで。この番組では、そういった方たちが、ふだん見せない熱気を出してくれるんですよ。たとえば夏菜さんだったら、思いのほかゲーム廃人時代が凄まじかったりして(笑)。ただ、その時代のことを話している夏菜さんはすごく楽しそうだし、チャーミングなんです。三浦大知くんもしかりで、「そんなに毎日ゲームをやっているの?」みたいな側面がトークの中から見えてくるんですよ。
――過去の放送分を聴くと、それは猛烈に伝わります。
宇多丸 そうやって皆さんと話をしていて感じたのは、「ゲームの話っておもしろくなるんだな」ということです。ゲームというのは体験を伴うものだから、自分の人生で実際に体験したことを話す熱量になるんですよ。しかも、人生の中ですごく楽しかった思い出のことであり、それを言う場がなかった方たちですからね。そんな話を一気に番組で披露してもらえるので、とてもおもしろくなるんです。
――ゲストの方々の人生観も見えてきますしね。
宇多丸 そうなんです。それと、これはプラスの意味でお話するのですが、やっぱりゲーム好きには、つい耽溺してしまう“ダメ感”みたいなものがあると思うんです。そして、そのダメ感がとてもかわいかったりする。もちろん、ゲームを遊んでいる方にとってみれば「寝ないで遊んじゃったよ、ダメだねぇ」なんていう、よくある“あるある話”であって、そこに親近感を抱いてしまうわけです。だから、ゲームで遊んでいた話を聞くと、とたんに相手を近しく感じられるし、好きになってしまうんですよ。
――トークの内容も、基本的にNGナシとお伺いしました。そのあたりも気兼ねなく話せる要因なのかもしれませんね?
宇多丸 それはもう、スポンサーであるプレイステーションさんの太っ腹の一語に尽きますね。おそらく問題意識として「コンシューマー機でゲームを遊ぶ層そのものの再掘り起こしが必要だ」と考えていられるのではないかと。だからこの番組を通じて、皆さんに改めて「ゲームって楽しいんだ!」っていうことを思い出してもらいたいですね。
――なるほど。
宇多丸 それと、僕の母親は80歳を越えているんですが、その母から「あなたのやっていること(音楽、映画、マンガなどの趣味)はぜんぶわかるけれど、ゲームだけは理解できない。時間のムダではないの?」と言われたことがありまして。でも、そう言えてしまうのは母親のゲーム観が古いからなんですよ。そんな母に僕は「そのゲーム観は古い。いまやゲームでは、まったく違う人生を生き直すくらいの体験ができるものなんだ」って説明したりして。そんな風にゲームを知らない人に対して「ゲームって楽しいんだ、すばらしいんだ」って伝える点でも意義のある番組だと思っています。
――確かに。たとえ知らないゲームだとしても、ゲストの皆さんの熱量がスゴいですから、話を聞いているとその作品で遊んでみたくなりますね。
宇多丸 そうなんです。そもそも、すべてのゲーム、すべてのジャンルに通じている人なんているわけがないと思うんですよ。そういう意味では、誰もが、どのゲームの話を聞いても、何かしら知らない、あるいは興味深く感じることはあると思うんです。だから僕は話を聞いていて常に新鮮さを感じますね。ただ「これ以上やりたいゲームを増やさないでくれ!」とは思います(笑)
――ただでさえ時間がないのに。
宇多丸 ホント、いい迷惑ですよ(笑)。
――ちなみに宇多丸さんはこれまでの放送で、ゲストの皆さんから『ファイナルファンタジーX』を薦められているようでしたが……。
宇多丸 レギュラー放送が始まってまだ間もないんですが、ゲストとして呼んでいただいた『プレイステーション presents マイゲーム・マイライフ』の回を含めると、高橋愛さん、夏菜さん、古川未鈴さんの3人に『ファイナルファンタジーX』を薦められているんですよね。正直言うと……これは完全に偏見なんですけれど、世界観的に「きっとこういうのは僕に合わないな」と思い込み続けて何十年でした。ですが、その思い込みがいまグラグラと揺らいでいて(笑)。これは皆さんのプレゼン力の賜物だと思います。
――今回の古川未鈴さん回の収録も含め、番組を聴いていると、まるで『ファイナルファンタジーX』が好きな方を選んでゲストをブッキングしているようにも思えます。
宇多丸 誰をゲストに呼ぶのかは、完全にスタッフさんにお任せなのですが、彼らも狙っていたわけではない、と言っていました。でも、名作ってきっとそういうことなんですよね。複数の人から話を聞いているのに「あ、またこのゲームの話題が出てくるんだ」っていう。
――ああ、そうかもしれませんね。ちなみに、ゲストの皆さんはどこかで会ったり、一度はお話をしたりした方が多いのですか?
宇多丸 いや、古川未鈴さんとはこれまでに挨拶をした程度で、これほどガッツリ話したのは今回の収録が初めてです。夏菜さんに至っては、収録現場が完全に初対面でしたし、僕と何の接点もないような方。なのに、ゲームの話をしていると何となく距離が縮まっていくんです。これはおもしろいと思いましたし、番組としての手応えを感じられましたね。
いろいろなゲームで遊びながら、自分好みのジャンルを見つけました
――宇多丸さんが大人になってゲームを始めたのは『リッジレーサー』がきっかけだったということなのですが、そこからどんなゲームを遊んでいったのかを教えていただけますか?
宇多丸 入り口はハッキリしていて、まず友だちの家で『リッジレーサー』を遊ばせてもらったんです。そのとき、これまでのグラフィックの感覚とまったく違うということに衝撃を受けました。いまでこそ普通になりましたけど、画面の中に世界がひとつあると本気で思えたんです。ゲーム的に都合のいいところだけ見せるんじゃなくて、全部が作り込んであるぞ、と。ちょうど年齢的に可処分所得が増えた時代でもあったので、すぐにプレイステーションと『リッジレーサー』を買いに行きました。遊んだ印象としては、レースゲームなので時間に追い立てられることになるかと思いきや、当初思っていた以上に自由度が高いということを感じましたね。たとえば『リッジレーサー』って一度ゲームを読み込んだ後なら、好きな音楽CDを入れて、その曲をかけながら走ることができたんです。レースに超合うバトル調のヒップホップやラップの曲をかけたりできて。あとは、レースに要する時間ピッタリで終わるような曲を探し出すという楽しみを見つけたりしましたね。LL・クール・Jの『ママ セッド ノック ユー アウト』っていう曲がそれで、ゴールとともに曲が終わると、ものすごくキモチいいんです。
――ずいぶんとマニアックな楽しみかたですね(笑)。
宇多丸 あとは、好きな音楽をかけながらあえて逆走して、景色を見ながらのんびり走ってみたり。僕は運転免許を持っていないので、このゲームで「ドライブってこういう楽しさなのか!」ってことがわかりました。とにかく、楽しみかたの選択肢の多さが想像以上だったんですよ。そこからいろいろなソフトを遊んでいくなかで、自分の好きなソフトがいまで言うオープンワールド的な方向だということがわかってきて。たとえば『天誅』がそれに気づかせてくれたゲームのひとつです。
――忍者を主人公にした、いわゆるステルスアクション的な要素を持った作品ですね。
宇多丸 『天誅』には、いまほど広大ではないですけれど、一定の広さの3D空間があって。しかも攻略方法がかなり自由だったんです。力押しで敵を倒してもいいし、ステルスで対象の敵だけ倒してもいいっていう。その自由度の高さのおかげで『天誅』はものすごくハマりましたね。僕の理想とする世界だな、と思いました。あとは『トバル No.1』も、ハマったゲームのひとつです。
――プレイステーション初期の3D対戦格闘ゲームですね?
宇多丸 そう。基本的には格闘ゲームなんですが、ダンジョンを攻略していくクエストモードというのがあって。これにものすごくハマってしまいました。僕は基本的にゲームがヘタなので、クリアーできないゲームも多いんですが、『トバル No.1』は必死の思いでクリアーしました。このタイトルに関しても「空間が目の前にあるんだ」という感覚が本当に楽しかったです。ほかには『ワイプアウトXL』でも遊びましたね。収録されている楽曲がすごくよかったことも印象的です。
――そのころはゲームジャンルを問わず、いろいろな作品で遊んでいたのですか?
宇多丸 そうですね。いろいろ遊んでいたんですが、あるとき『グランド・セフト・オートIII』に出会ってしまったんです。ゲーム性や世界観、音楽はもちろん、僕の好きな70年代の犯罪映画テイストなどまで盛り込まれていて。出会ったときには「そんなバカな! こんなに僕の好きなものだけで作られたエンターテインメントがあるのか!」って思いました。もうホントに軽く気が遠くなるくらいの衝撃でした。実際に店舗でデモプレイの画面を見たときは、絶句しましたしね。すぐに買って帰り、そこからはもう……もう……(笑)。
――当時の感動とハマり具合が伝わってくるようです(笑)。
宇多丸 実際に遊んでみると、感動で泣きたくなるほどの出来映えで。「海の向こうで見ず知らずの、言葉だってちゃんと通じないような人たちが、こんなに僕の理想像のようなゲームを作ってくれたのか! 僕は孤独じゃなかった!!」って思いました。「ロックスター社ってハンパない」って。とにかく趣味が合いすぎたんです。
――それ以来、海外産のゲームに軸足を置いて?
宇多丸 というわけでもなく。時期は少し遡りますが、一方で毛色のまったく違う『どこでもいっしょ』なんかにもハマったりしていたんですけどね。ツアーの際にトロをポケットステーションに入れて連れていったんですが、ちょうどトロが去る日とツアーを終えた日が同日になって。0時を越える前にプレイステーションに接続して遊ばないと最後にトロと会えないので、タクシーに乗って急いで家に帰ったんです。が、わずかに0時を越えてしまって。ポケットステーションを見てみたら、もうトロがいない。さよならも言わずにいなくなるんですよ! そのときは本当に泣きましたね。
――まさかとは思いますが……ゲームで泣いたのはそれが初めてですか?
宇多丸 いや、それまでにも泣くことはちょいちょいあったと思います。泣きで印象的なのは『街 ~運命の交差点~』ですね。おもしろいという評判を聞いていたので、移植されたタイミングで遊んだんですが……隠しシナリオの“花火”がヤバかった。劇中で最後に花火が上がるんですが、その花火を誰がどういう想いで打ち上げたのかがわかったとき、もう死ぬかと思うくらい泣きました。
――あああ、確かにあのエピソードは泣けますね!
宇多丸 そんなふうに、ジャンルを選ばず遊んでいましたね。パッと思い浮かぶところでは、『シェンムー』や『シーマン』、『みんなのGOLF』。
――『みんなのGOLF』は、ライムスターの皆さんでハマったと聞きました。
宇多丸 ハマりましたねー。ゴルフコースという広大な空間があって、そこでやる“ゴルフの心地よさ感”みたいなものが疑似体験できて。その時期は『みんなのGOLF』を通じて、メンバー間のコミュニケーションが取れていましたから。あとは『がんばれ森川君2号』とかもやりましたね。
――わ、懐かしい!
宇多丸 『がんばれ森川君2号』に関しては、よく話しているエピソードがあって。当時の僕は、ラップをやりつつも音楽ライターをしていたりして、ヒップホップ業界では舌鋒鋭いキャラクターとしてブイブイ言わせていたんですね。ちょっと恐い感じというか。で、『がんばれ森川君2号』を遊んでいるときに、ヒップホップ専門誌の編集部の方と電話で仕事の話をしていたんです。僕はまだ実家住まいだったんですけれど、その電話中に迂闊にも「あ! お母さん、森川君イジんないで!」って言っちゃって。
――担当者としては「あのコワモテで舌鋒鋭い宇多丸さんが!?」って感じでしょうね(笑)。
宇多丸 そうなんです(笑)。以降“お母さん森川君イジんないで事件”として語り継がれることに。「プレイステーションをイジんないで」じゃなくて「森川君イジんないで」っていうところが、ホントどうしようもないんですけど。まあ、そうやっていろいろ遊んでいくなかで、自分の好きなゲームはオープンワールドのいわゆる洋ゲー的な方向性だな、ということがわかっていったんです。
―2017年5月某日 TBSラジオにて―
後編では、宇多丸さんが最近ハマっている作品や、今後が気になるゲームのトピックについてお届けします。
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そしてインタビュー記事はもちろん、TBSラジオで2017年5月20日(土)24時00分からオンエアされる『プレイステーション presents ライムスター宇多丸とマイゲーム・マイライフ』第7回も必聴です。以下にて、第7回のゲストである古川未鈴さんのメッセージをご紹介しましょう!
■古川未鈴さんよりメッセージ
第7回は、内容はもちろんなんですが、ユニークな聞きどころとして、私のお喋りのテンポに注意してもらえるとおもしろいと思います。番組の序盤でお話した幼少期のゲームトークのときは、まだテンポがゆっくりめだと思うんですが……そこから話が盛り上がるにつれ、だんだんBPMが上がっていくと思うんです(笑)。どんどん早口になって、ヒートアップしていく様を「番組を楽しんでるなあ」と思って聴いていただければと思います!

・プレイステーション presents ライムスター宇多丸とマイゲーム・マイライフ 公式ページ
https://www.tbsradio.jp/mygame/
・TBSラジオCLOUD(過去の放送回が聴けます)
https://radiocloud.jp/archive/mygame/