チヨスタライブの仕掛け人に訊く

 『アノニマス・コード』を手掛けるチヨマルスタジオのライブイベント“CHIYO-ST.LIVE 2017-GENESIS-”(以下、“チヨスタライブ”)が、2017年5月28日(日)に中野サンプラザで行われる。奇しくも、チヨマルスタジオの新作アドベンチャーゲーム『アノニマス・コード』の舞台である中野で、だ。そこにはどんな意図があるのか……? ライブの仕掛け人であり、原作を務める志倉千代丸氏と、ステージプロデューサーの齋藤光二氏に話をうかがった。

“アニサマ×科学アドベンチャー=チヨスタライブ”! 仕掛け人の志倉千代丸氏&齋藤光二氏がその真意を語る_03

■志倉千代丸氏(文中は志倉/写真左)
MAGES.会長であり、チヨマルスタジオ社長。ゲーム製作に留まらず、作詞・作曲などマルチに活躍。最新作『アノニマス・コード』では、企画・原作を担当する。

■齋藤光二氏(文中は齋藤/写真右)
世界最大のアニソンイベント“アニメロサマーライブ”(以下、アニサマ)のゼネラルプロデューサー。チヨスタライブでは、ステージプロデュースと演出を担当。

“アニサマ”プロデューサーがチヨスタライブを演出!

“アニサマ×科学アドベンチャー=チヨスタライブ”! 仕掛け人の志倉千代丸氏&齋藤光二氏がその真意を語る_04

――まずは、齋藤さんがチヨスタライブに参加されることになった経緯をうかがえれば。

齋藤 いままで5pb.では科学アドベンチャーシリーズのライブを行っていましたが、今回チヨスタライブという、志倉千代丸さんのお名前を冠したライブを実施するにあたり、「“魅せかた”を変えてほしい」ということで、社長の太田(豊紀氏)からお願いされました。個人的な予想ですが、2015年の“アニサマ”でいとうかなこさんが『Hacking to the Gate』を披露した際、アニサマ側でかなり凝った映像を用意しまして、その演出などが評価されたのではないのかなと。自分は演出家ではないですが、歌詞や曲、そして作品を理解したうえで最適な魅せかたをすることをつねに目指しています。今回このお話をいただいたときも、うれしかったですしワクワクしました。科学アドベンチャーシリーズのファンの方たちに満足してもらえるものにしたいですね。

志倉 ちょっと補足させていただくと、まず“チヨスタって何だ?”というブランディングがまだできていないというところから、この企画は始まっています。チヨマルスタジオというのは、『アノニマス・コード』や『オカルティック・ナイン』などといった新作も含め、これまでの科学アドベンチャーシリーズをも内包したブランドです。今回、科学アドベンチャーライブと言わずに、チヨスタライブと伝えることで、音楽としての認知度だけではなく、ゲーム、コンテンツのブランドとして広く認知したいという思いがあります。齋藤には“アニサマ”というブランドを長年守ってきている実績がありますので、白羽の矢が立ったわけです。“アニサマ”チームが作っているという安心感もあるでしょうし。逆に弊社では、齋藤にしかできない仕事だと思います。

齋藤 ありがとうございます。

――お話を聞く限り、齋藤さんを相当頼もしい存在と感じられているわけですね。

志倉 頼もしいですね。ただ、熱量がすごすぎて、鬱陶しいんです(笑)。

齋藤 すみません(笑)。

志倉 それくらい熱い男であることは間違いがなくて、それゆえに中途半端なことを絶対にしたくない人なんです。そのあたりは僕と似たところがあるのかなと感じています。インタビューの冒頭にいきなり言ってしまいますが、クッソ赤字のライブなんですよ、コレ

――えええええええ(笑)。

志倉 企画の段階から赤字で、チケットが完売しても赤字になることが決定しています。では、なぜそれでもやるのかというと、チヨスタというブランドを認知してほしいんです。1回目のチヨスタライブに来てもらった人たちに、いい思い出を持って帰っていただくことで、認知につながりますし、それでようやく2回目、3回目とつながっていくと思うので、最初が赤字だろうがなんだろうが関係ないのかなと。ちなみにグッズが全部売れても赤字です。それくらい恥じないものをお見せしたい。大人たちが本気で熱くなってやって、結果赤字でもいいじゃんと。そういう意味で、熱すぎる齋藤は、まさに適任なんですよ。ビジネスライクに言えば「ここは生バンドにするのをやめましょう」とか「ここの特殊効果を削りましょう」と言って規模を縮小すれば、黒字にはなるんです。でも、ブランドを作り上げるというのはそういうことではなくて。チヨスタというブランドの中に、科学アドベンチャーシリーズが含まれていることを知らない人がまだまだたくさんいるので、ファミ通さんに2ページぶち抜きで「チヨマルスタジオとは、科学アドベンチャーである!」とだけ書いた記事を載せてもらいたいくらいなんです。チヨマルスタジオを発表したときの、「何それ? 科学アドベンチャーは?」というザワザワ感がまだ残っていることは承知していますので、今後はチヨスタというブランドのことを伝えていきたいですね。ちなみに、乙女向けの作品である、B-PROJECT(※1)もチヨスタ作品ですからね。

※1:B-PROJECT …… アーティストの西川貴教が総合プロデュースを務め、志倉千代丸氏が企画・原作を手掛ける乙女向けコンテンツ。2016年7月から9月までテレビアニメが放送され、いまも人気急上昇中。

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――わりと見逃しがちですが、そうですよね。

志倉 科学アドベンチャーシリーズもあるしB-PROJECTみたいな乙女向けのコンテンツもある。それがチヨスタなんです。そのライブを任せられるのは、やはり“アニサマ”という多種多様なアニソンをまとめたライブを手掛けている齋藤だけだろうなと。

――なるほど。そうするとアニサマの手法を取り入れた演出になるわけですね。

齋藤 そうです。さまざまな楽曲、多彩なアニメ作品がシームレスで進んでいく“アニサマ”の手法が、今回のライブにはピッタリだと思っています。セットリストを作るときには音楽的な流れや、作品のつながりも大事にしています。また、ライブを作るときにいちばん重要視しているのが、初見の人でも楽しめるものにすることです。『シルク・ドゥ・ソレイユ』やディズニーのショーなどが顕著で、前情報がない人でも、その場に行くと楽しめるという構成は本当にすごいと思います。そういう構成がライブには絶対に必要だと思っているのですが、アニソン(アニメソング)やゲーソン(ゲームソング)を扱う場合は、それだけではダメなんです。やはりマニアックなこだわりを持っている人が納得できる作りにするべきだろうと。初見さんとマニアの両方に刺さるものにすることを、つねに考えています。そういう意味では、千代丸さんの作品はマニアックの塊です。そこも大切にしたいので、開発プロデューサーやデザインチームの皆さんとも相談しながら作っています。

――開発チームも巻き込んでいると。

齋藤 作品と演出の整合性がズレると違和感が出てしまいますから、開発チームの方々と相談しながら、演出の方法まで詰めています。

――そうすると、チヨマルスタジオ作品に詳しくなる必要がありそうですね。

齋藤 『シュタインズ・ゲート』はかなり詳しくなりました。千代丸さんの曲って、ラストシーンまで作品を見ると、タイトルや歌詞の内容に合点がいくような作りになっていますよね。以前“アニサマ”で『Hacking to the Gate』が歌われたときには、歌詞に当てはまる映像を音節ごとに区切って、ここは“スターダストシェイクハンド”(※2)、このタイミングで紅莉栖の笑顔、などと細かく指示をして映像もこだわって作り込みました。そういった経験があったので、今回もいろいろな方の知恵を借りながら作り上げていきます。

※2:スターダストシェイクハンド……『シュタインズ・ゲート』で、椎名まゆりが空へ向かって手を伸ばす癖を、岡部倫太郎がこう呼んでいる。

齋藤Pから見た志倉千代丸氏とは?

――齋藤さんは、科学アドベンチャーの生みの親である、志倉さんをどんな方だと思われていますか?

齋藤 会社のトップではありますが、先ほどの発言のように、お金のことなどを度外視しているという大胆さもあり、クリエイターとしても会社のリーダーとしても、すごいと思います。見た目は紳士なイケメンですが、中身は男気に溢れていて、リーダーとして憧れちゃいますね。作曲家としても志倉節がグッと来ますし、歌詞も最高です。アニソンやゲーソンの究極って、その歌が作品のすべてを表現していることだと思います。千代丸さんはコンテンツの原作者ですから、そういった必然性のある曲を生み出せるのが素敵ですよ。

志倉 究極を言うと、“こういう曲を作りたいから、こんなゲームを作ろう”という考えが、じつはどこかにあるんです。すごく民族的な楽器を使った楽曲を作りたいとしたら、じゃあ作品はこういう内容だよな、みたいに。

――そうやって生まれた作品はあるのですか?

志倉 『オカルティック・ナイン』は小説からスタートしてアニメも放送されましたが、最初から音楽のイメージがあった作品ですね。イメージの中にある音楽をやりたいと思いながら、小説を書いていました。だから、曲ってすごく重要なんです。ヒットした作品は、ゲームの内容だけではなくて曲もいいんです。作品がヒットしているのに曲がダメということってほとんどなくて。自分が作者なので手前味噌ではありますが、科学アドベンチャーシリーズは本当に曲にもこだわりがあります。作曲や作詞も、誰よりもその作品のことを、裏テーマまで含めてわかっていますから。

――そういった作品を体現する楽曲というのは、どのように生み出されているのですか?

志倉 僕が作詞をする際は、できるだけキーワードは集めずに、伏線を集めて詞を書いています。キーワードと伏線の違いは、伏線は本編を見ないとそれを回収できないという点です。キーワードだと、見ただけでストーリーがわかってしまうんです。ゲームを1周クリアーして、オープニングをもう一度観たときに、「あっ、この歌詞はあのことを言っていたのか」とわかるようなものにしようとしています。アニソンやゲーソンは、曲を聴くだけでシーンやキャラクターが浮かんだりと、曲の中に思い出が詰まっているのが魅力だと思います。だから、チヨスタライブには、そういったアニソンファン、ゲーソンファンの方々に、ぜひ見に来てほしいですね。

チヨスタライブは科学アドベンチャーライブ

“アニサマ×科学アドベンチャー=チヨスタライブ”! 仕掛け人の志倉千代丸氏&齋藤光二氏がその真意を語る_01

――チヨスタライブでは、作品をどのように音楽的に表現されていくのでしょうか?

齋藤 音楽ライブとしては、サウンドの手触りや圧、コーラスの厚みなどを感じていただけるかと。さいたまスーパーアリーナで公演している“アニサマ”とはまた違った感覚を味わえると思います。彩音さんやいとうかなこさんといったボーカリストの歌声を、中野サンプラザという会場で、全身で味わってほしいですね。あとはやはり、ゲームやアニメの映像をふんだんに使ったライブになりますので、作品と楽曲の連動も楽しめると思います。作品ごとに世界観も異なりますが、それをひとつにして楽しめるような作りにしています。具体的にどういうことをするのかは、ネタバレになるので言えませんが、ぜひ楽しみにしていただければ。今回のライブに来て「ゲームもやってみたいな」と思ってもらえれば、と考えながら作っています。

志倉 ちなみに“チヨスタライブ”と銘打っていますが、90%以上は科学アドベンチャーライブです。シリーズのファンにとっては、どの曲が来ても「キタ―――!」となりますよ。そういう意味では、カテゴリーとしてはすごくニッチなライブです。カテゴリーが区切られずに行われるライブって、半分くらいは知っていても半分は知らない曲みたいなことがありますよね。でも、チヨスタライブは科学アドベンチャーシリーズのファンならば全部知っている曲だと思います。もう、熱いですよ。

――音楽面はもちろん、演出面でも熱いものになる自信があると。

齋藤 もちろん。作品にハマった人にしかわからない感動ポイントというのを、チヨスタライブには入れ込んでいます。……先ほど、千代丸さんからは熱量がウザいと言われましたが、できあがったものは鬱陶しくないので安心してください(笑)。ライブを作りながらつねに感じるのは、クリエイターの熱量が半端ないな、ということで……。

志倉 あの、もう録音止めてもらってもいいですよ? 齋藤はずっとこんな熱量でしゃべり続けますから(笑)。

齋藤 短くまとめますね!(笑)。要するにマニアックな細かいところにも気を遣いながら、初見さんでもおもしろいと思える世界観を作り上げるのが、アニメやゲームの音楽のライブの理想だと思っています。

気になる新情報の発表はあるのか……!?

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――チヨスタライブで、最新情報の発表などは行われるのでしょうか?

齋藤 ライブのお土産としてコアなファンの方々のために、何かしらのデータを準備します。中身は来ていただいてのお楽しみですね。

志倉 あるとすれば、ゲームなら『アノニマス・コード』でしょうし、アニメなら『シュタインズ・ゲート ゼロ』でしょうね。……あくまで、「あるとすれば」ですよ!

――なるほど(笑)。会場が中野サンプラザということで、『アノニマス・コード』との仕掛けが何か用意されているのかな、と。

志倉 たまたま中野サンプラザに決まっただけで、『アノニマス・コード』の舞台だから絶対中野でやりたいよね、みたいな戦略で会場を決めたわけではないです。

齋藤 中野だから『アノニマス・コード』で何かしようとなってしまうと、それは“『アノニマス・コード』ライブ”になってしまいますから。ただ、何かしらの仕掛けをしたいなと多少は考えています。ライブに来られた方たちが、「あれはもしかして『アノニマス・コード』につながるんじゃ……?」と考察してもらえるような、ライブを観た方たちに委ねられるようなものにしたいと思います。

――そのほかにも、チヨスタ作品以外に『この素晴らしい世界に祝福を! 』と『プラスティック・メモリーズ』も参加が決定していますが、その経緯を教えてください。

志倉 チヨスタライブを年1回のライブにしていきたいと考えたときに、お楽しみの要素としてぜんぜん違う作品の“フレンズ”を呼ぼうと思ったんです。そうすると「たーのしー!」ってなるじゃないですか(笑)。チヨスタファンに向けたイベントではあるのですが、それ以外のものもいっしょに楽しんじゃいましょうという、ゲストコンテンツは毎回やりたいと思っています。「今回のゲストは誰なんだろう?」と予想すること自体が、ライブのひとつの楽しみになっていけばと。『プラスティック・メモリーズ』はMAGES.原作の作品なので、そう遠くはないんですけどね。『この素晴らしい世界に祝福を!』は、弊社が出資しているパートナーズという理由なんですが、パートナーズの作品はたくさんあるので、こういったコラボも期待してもらいたいです。

齋藤 実際、科学アドベンチャーシリーズの楽曲もすばらしいですが、『この素晴らしい世界に祝福を!』や『プラスティック・メモリーズ』の楽曲もすばらしいわけです。そうした、いい物どうしを混ぜても、ハレーションを起こすわけではなくて、料理のしかたによって違和感なく楽しめると思います。それに、アーティストどうしのコラボも用意しようと、現在考えています

――おお!

齋藤 出演者として出てきて、自分の枠だけを歌って帰るなんて、つまらないじゃないですか。“アニサマ”では、そうしたアーティストのコラボを楽しんでいただけているので、チヨスタライブでもコラボがあるかもしれないです。ぜひご期待ください。

――それは楽しみですね。最後に、心待ちにしているファンや、ライブに行こうか迷っている方に向けて意気込みをお聞かせください。

齋藤 ライブ当日になったら、作品や曲のパワーがしっかりしているので、僕は少しだけお手伝いをするだけです。来てくださった人には、100%楽しんでもらえるよう制作しています。音楽的な感動や新情報なども含めて、お土産を持ち帰れるようにしようと試行錯誤していますので、ぜひ遊びに来てください。

志倉 今回、ライブ名をチヨスタライブと銘打ってはいますが、これは間違いなく科学アドベンチャーライブです! よろしく!

齋藤 潔い(笑)。

志倉 でも、本当にこれまでの科学アドベンチャーライブに、『オカルティック・ナイン』と、『この素晴らしい世界に祝福を!』と、『プラスティック・メモリーズ』が入っているようなものなんです。ほぼ90%、これは科学アドベンチャーライブです! ぜひ、そこのご理解を深めてほしいなと。皆さんには、科学アドベンチャーライブだと思って来ていただければ、それで問題ありません。お越しいただいた方には、僕と握手どころかヘッドロックします。

5月28日 中野サンプラザでチヨスタライブ開催

 科学アドベンチャーシリーズを始めとする、チヨマルスタジオ作品を彩ったアーティストが一堂に会するライブ“CHIYO-ST.LIVE 2017-GENESIS-”。志倉千代丸氏が手掛けた作品の数々を中心に、さまざまな楽曲が披露されるライブイベントになるとのことだ。また、チヨマルスタジオ作品の最新情報も発表されるとか!? 中野サンプラザで、どんなサプライズが待つのか?

●CHIYO-ST.LIVE 2017-GENESIS-
出演アーティスト:亜咲花、アフィリア・サーガ、彩音、イケてるハーツ、いとうかなこ、今井麻美、佐々木恵梨、鈴木このみ、Zwei、nao、ファンタズム(FES cv.榊原ゆい)、桃井はるこ
ゲスト:GENESIS meets『この素晴らしい世界に祝福を!』Machico、GENESIS meets『プラスティック・メモリーズ』佐々木恵梨、今井麻美

日時:5月28日(日) 
開場:16時/開演:17時
場所:中野サンプラザ 
チケット:全席指定 7500円 
一般販売:4月29日(土)10時~
主催:MAGES.
後援:TOKYO MX
制作協力:ポニーキャニオン