Wargamingのノウハウを活かしてリデザイン

 2017年4月8日~9日にかけて、Wargamingはファンミーティング“Wargaming Gathering”を、台湾・台北にて開催。本イベントにて、Creative Assemblyが開発中の新作オンラインストラテジー『Total War: ARENA』が一般公開された。

 会場には、10人対10人でマルチプレイが可能な試遊台が設置。また、同イベントにて本作のAPAC Associate ProducerであるJose Edgardo Garcia氏と、Head of Marketing APACのTatsiana Martsinouskaya氏に話を伺う機会を得た。両氏へのインタビューおよび会場での試遊からわかった本作のシステムを紹介する。

大迫力の叙事詩的戦闘を手軽に楽しむ『Total War: ARENA』――本格RTSがオンライン対戦ゲームとして生まれ変わる_01
(左)APAC Associate ProducerのJose Edgardo Garcia氏
(右)Head of Marketing APACのTatsiana Martsinouskaya氏

 なお、試遊スペースは全面撮影禁止となっていたため、提供されたゲーム画像のみを使用している点と、アルファ版での試遊であるため、リリース時に仕様が変更になる可能性がある点はご了承いただきたい。参考までに、過去に配信された公式動画を掲載する。

 冒頭から要約して(やや乱暴に)言ってしまうと、『Total War: ARENA』は、非常に『World of Tanks』ライクな『Total War』である。

 『Total War』と言えば、往年のPCゲームファンには言わずと知れた人気のリアルタイムストラテジー。歴史上の軍隊が数多く登場し、日本を題材にした『Shogun:Total War』を始め、さまざまな時代をモチーフとしたシリーズ作を生み出している。その最新作となるのが、オンラインでの対人戦に特化した『Total War: ARENA』だ。シリーズを手がけたCreative Assemblyが開発を行っており、サービス時期は未定ではあるものの、クローズドβテストをほどなくして開始するという。プレイ料金は基本無料となる。

 昨年、SEGAおよびThe Creative Assemblyは、Wargamingとパートナーシップを結び、プロダクションレーベル“Wargaming Alliance”の第1弾として本作をリリースする運びとなった。Wargamingが資金やノウハウを提供し、Wargaming Allianceレーベルとして世に送り出す、というわけだ。とすれば、『Total War: ARENA』が『World of Tanks』に近いシステムや楽しみを備えているのも納得。

 では、本作のシステムを“バトル”、“指揮官”、“部隊”の3つに分けて紹介。

■バトル
【10人対10人(3000対3000)の迫力あるマスコンバット】

 プレイヤーはひとりの指揮官を持ち、100人の兵士から成る部隊を3つ(300人の兵)を持つ。バトルは10人対10人で行われ、戦場には敵味方合わせて6000もの兵士がひしめき合う。3つの部隊それぞれを個別に動かすことができ、敵部隊と出会うと自動的に攻撃を行う。そして敵を全滅させるか、拠点を制圧すれば、自軍の勝利となる。

大迫力の叙事詩的戦闘を手軽に楽しむ『Total War: ARENA』――本格RTSがオンライン対戦ゲームとして生まれ変わる_02

 画面には自軍と敵軍の優勢度や部隊の残兵数、部隊のステータス、ミニマップが表示される。まずは指示を行う部隊を選択し、目的地をクリックをすれば移動開始。3つの部隊をまとめて選択して動かすことも可能で、複数選択してドラッグさせると、それらの隊を整列させながら向きを揃えることができる。ビシッと並べると気持ちがいい。

 カメラの移動には画面端にカーソルを持っていく。もしくは、ミニマップ上で目的の場所をクリックして行うと、遠く離れた場所でも素早く目的地を指示できる。

 敵への攻撃は自動で行われ、部隊の射程距離内に入れば攻撃が始まる。ここは『World of Tanks』とは異なり、敵を照準で狙って砲撃を行うようなアクション性はない(ただし、バリスタや投石機などのユニットもあり、それらは若干操作法が異なる可能性があるとのこと)。その代わりに、被害を抑えつつ敵を討つために、部隊の隊列や配置が重要になるというRTSの醍醐味がある。

 たとえば、正面と側面から同時に敵を攻撃した場合、大きな効果が得られるといったボーナスもあるという。また、背面や側面から奇襲をかけると、敵兵の士気(部隊のパラメータのひとつ)が低下する。士気が低下した兵は逃げ出すことがあり、それをさらに追撃して壊滅に追いやるといったことも可能だ。

 また、戦闘中には内政や外交、部隊や建物の育成・拡張などもなく戦略要素は大胆に省かれている。シリーズのファンからすれば物足りなく感じてしまいそうだが、そのぶん仲間とコミュニケーションをとって連携するといった“オンラインでの対人戦”に比重が置かれており、そもそも従来のシリーズとはコンセプトやゲームデザインが異なるという。

■指揮官(コマンダー)
【戦闘でさまざまな効果を生む固有のスキルを所持】

 試遊時には、ローマ、ギリシャ、バーバリアンの3つの勢力があり、それぞれに複数の指揮官が存在していた。正式サービス時にも、まずはこの3勢力でのスタートになるとのこと。プレイヤーはまず戦闘で使用する勢力と指揮官を選ぶことになるが、これらは戦闘ごとに自由に選び直すことが可能。とはいえ、ゲーム序盤はひとりの指揮官に絞って成長させたほうがいいだろう。

 なお、試遊版ではローマのカエサルやスキピオ、ギリシャのレオニダスなど歴史上の英雄も指揮官として選択可能だった。

 指揮官はそれぞれ固有のスキルを持っており、戦闘中に使用することで移動速度上昇や、突撃時のダメージボーナス、防御力上昇など、さまざまな効果を発揮する。指揮官レベルを上げると使用できるスキルが増え、また経験値を使ってスキルの効果を上昇させられる。

 指揮官は戦場では3つの部隊のひとつに属しており(ズームしてよく見ると指揮官の姿を確認できる)、指揮官が倒れた場合には、それ以降その戦闘でスキルが使用できなくなってしまう。なお、指揮官が戦闘不能となっても、次のゲームに挑む際のペナルティーなどはない。

 そして、指揮官は各々が個別の部隊ツリーを有しており、指揮官の育成とツリーの成長が紐付いているので、その点においてもまずはひとりの指揮官を育てていくことが重要になるはず。戦闘で得た経験値を使って指揮官のレベルアップが可能で、指揮官のレベルが上がると、部隊ツリーのTierが解放されていく。レベル5ならTier5の部隊まで成長させることが可能だ。

 また、対戦開始時にはレベルが近い(部隊のTier帯が近い)プレイヤーどうしでマッチングが行われる。その際、ひとつの勢力でチームが編成されるわけではなく、ローマ、ギリシャ、バーバリアンの混合チームになることもある。

■軍隊(ユニット)
【剣兵や弓兵から、剣闘士、ファランクス部隊、投石機まで多様に成長】

 プレイヤーがゲーム開始時に選べる部隊は、基本的に剣兵と弓兵の2種類しかない。ゲームを進めて指揮官のレベルを上げることで、部隊の成長ツリー(Tier)が解放されていく。Tierを解放し、一定の条件を満たすことでツリーを成長させ、新たな部隊を獲得できる仕組みだ。この成長ツリーは『World of Tanks』と非常に似たシステムなので、馴染み深いユーザーも多いだろう。

※記事冒頭、2番目の動画(Developer Diaries #1 )の2分30秒~35秒あたりでチラッと確認できる。

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▲参考までに、『World of Tanks』のテックツリーを掲載。こちらとほぼ似たシステムとなっている。

 それぞれの部隊にはいくつかの装備があり、経験値やお金(シルバー)を使って装備をグレードアップさせて、攻撃力や防御力、移動速度などを増加させていく。これらの装備を強化して一定の条件を達すると、その部隊から派生・分岐した次のツリーの部隊を獲得できるのだ。なかには特別な“ゴールド”を消費して獲得できる部隊もあるとのことで、これらはいわゆる“プレミアム部隊”(課金要素)になると思われる。

 試遊版ではTier10までが確認でき、基本的にはどの勢力のツリーも剣や斧などの近接系、弓や投げ槍などの遠隔系、騎馬兵、投石機やバリスタのような攻城兵器で構成されている。そして、ローマなら剣闘士やバリスタ、ギリシャなら長槍やスリング、バーバリアンなら斧兵といったように、中~高Tierに進むほど各勢力の特徴が色濃く表れた部隊が存在する印象だ。

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■今後登場する時代や国について
「ユーザーの要望次第で順次、追加を検討していく」

 本作リリース時の時代背景に関しては、基本的にローマ帝国時代付近を予定しているとのこと。実際にローマ時代を数字で表すと1000年ほどになるが、わかりやすく言えばローマ帝国が反映していた時代がメインとなるようだ。現在は4つほどのマップが用意されており、それらはルビコンやテルモピュライのように、登場する指揮官が活躍した実際の土地をモチーフにしている。

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 過去の『Total War』シリーズには、ナポレオンの時代や日本の侍も登場していた。当然、これらを含めたさまざまな時代の実装に期待が寄せられるところだが、まずは現状のゲーム内容を固めることを第一に考えて開発に努めるという。そして、リリース後にゲームが安定したうえで、プレイヤーからの要望が大きかった場合に初めて検討を行う。APAC Associate ProducerのJose氏は、自身が『Total War: Shogun』をプレイして非常に楽しんだ経験があるので、個人的に日本をモチーフにした部隊やマップも出したいと述べた。「侍を実装するなら種子島(鉄砲)も導入したいし、そうなるとTier30くらいまで伸びてしまいそう(笑)」と、冗談交じりにJose氏は語ったが、当面の現実的なラインとして、チャリオットや象兵といった特殊なユニットの登場にもぜひ期待したい。

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 今回の試遊では限られた時間内ということもあり、実際に10人対10人という規模でのプレイはできず、システムをおおまかに理解するに留まった。それでも、従来シリーズのシステムからの簡略化を行って、手軽に楽しむことができるようなゲーム性を構築している点、そして本作が目指すところのオンライン対戦の醍醐味は感じることができた。

 Tatsiana氏は、「現在、私たちが一番重要視しているのは壮大な戦いを再現すること。迫力あるエピックな大戦闘を、まずは皆様にお届けしたい」と述べた。また、Jose氏によれば、「これまでの『Total War』シリーズにはコアなRTSファンが多く、難度が高いと敬遠していた人も多い。『Total War: ARENA』は誰でもが気軽に参加できるようゲームの敷居を低くし、かつfree to playで提供する」と語る。

 大迫力の叙事詩的戦闘を、手軽に楽しく――今回アルファ版をプレイし、またクリエイターに話を伺うと、『Total War: ARENA』は、骨太RTSのおいしい部分を残しつつ、『World of Tanks』的な手軽さを取り入れ、オンライン対戦ゲームとしてうまくリデザインしている印象を受けた。シリーズファンだけでなく、新たなユーザー層の獲得にも期待できそうなタイトルだろう。アクションやシューティングのような複雑な操作は苦手だが、オンライン対戦ゲームに興味があるといった方にもオススメだ。

 本作はWargamingの他タイトルと同様に、世界規模での展開が予定されており、日本はアジアサーバーに含まれる。まずは、そう遠くない時期に実施されるというβテスト(全リージョンで同時に行うとのこと)を待ちつつ、ゲームのさらなるクオリティアップに期待したい。