Go Tiger Go!
ここ台北は、ものすごく暑い。イベント会場は多くの観客の熱気も手伝ってか、よけいに蒸し暑く、じっとしているだけでも汗がにじみ出て流れてくるほどだ。そんな会場の一室に設けられた選手控室で、彼らはじつに爽やかに、気持ちのいい笑顔で取材陣を迎え入れてくれた。
連日お伝えしている、『World of Tanks』アジア最強チームを決定する大会“The Wargaming.net League APAC Season II Finals”。昨日の準決勝で熱戦をくり広げた日本チーム“Caren Tiger”は、善戦すれど惜しくも敗北を喫したのだった……。一夜明けた本日9日に、彼らに話を伺う機会を得た。正直、こういった状況(昨日の結果)でのインタビューは、こちらとしてもけっこう構えて臨んでしまうところ。しかし、笑顔で我々を迎えるCaren Tigerの選手たちは、すがすがしい面持ちだった。
もちろん悔しさは残っているだろう。しかしその表情からは、もう次へ向けた決意のようなものを感じ、どこか吹っ切れている印象を受けた。
――昨日の戦いから一夜が明けました。現在の率直な気持ちは?
ほぼ完全に、次のシーズンへ向けて頭を切り替えています。新規にメンバーを増やそうと、昨日すでに募集の告知をしました。早く新メンバーを加えて、トーナメントの経験を積ませたいです。いちばん最近に加わったメンバーもシーズン前から合流して練習を行っていましたし。
5月のGrand Final以降に、またアップデートがあると思いますので、5月から本格的に再始動、といった感じになりますね。
――今シーズンを振り返ってみていかがでしたか?
とにかく試合数が多いシーズンでした。前々シーズンは14試合、前シーズンでも18試合でしたが、今シーズンはレギュレーションが変わって21試合を戦いました。シーズン途中でアップデートによって仕様が大きく変更となったことにも苦労しましたね。重戦車主体の作戦に変えざるを得なくなったりと。
試合数が多いと、練習に割く時間がおのずと短くなってしまいます。その短い時間を使って練った作戦がアップデートで使えなくなると、それに対応するためにまた時間を要する、といったことがありました。
――アップデートへの対応に手こずったと。昨日試合を終えたばかりですが、次の練習開始はいつ頃から?
“すぐに”ですね。日本に帰ったらすぐに。今回戦ったTeam Efficiencyと練習する機会も多く、彼らといっしょに練習に励むことになると思います。彼らとはスコア的にもライバルですが、“切磋琢磨”、“持ちつ持たれつ”といった関係です。そんなわけで、今回負けた相手がTEだったというのは、ある意味よかったとも思っています。もちろん悔しいですが、EL GamingやHorsemenだったら、きっといまとは違う気持ちなんじゃないかな、と。
――よき敵(とも)ですね。アップデートによる仕様変更でよかった点・悪かった点、あるいは得手不得手があった点はどこですか?
僕らは撃ち合いではどのチームにも負けていないと自負していますので、Mausを使いやすかったのはよかった点だと思います。試合のペースが遅くなったことで、時間の使いかたに慣れずに、時間が足りなくなる試合が多かったところが、悪かった点ですね。
――昨日の戦いを振り返ってみて、もっとも印象に残っている場面はどこですか?
いちばんはやはり、ムロヴァンカですね。自走砲を盾にするという作戦は、みんなを驚かせたと思います。また、ステップでの防衛では、1対4で負けている状況から粘って粘って勝ちを取れたので、勢いがつきました。これを1本取ったのは大きかったと思います。できれば、そのまま流れでいきたかったんですけど。
――立ち上がりに苦労していた印象がありました。
冷静さを欠いていました。普段とはデバイスやヘッドセットの音の環境が違っていたりして、戸惑った部分がありましたね。みんな緊張もあってか固かったです。
序盤で味方を撃っちゃった場面もあったりで(笑)。
じつは、今回出場したメンバー7人のうち、4人はオフライン未経験者なんですよ。オフラインの大会には環境の違いやトラブルは付き物なので、場数を踏まないとダメですね。経験の差が出てしまいました。新メンバーを主力に加えたこともあり、今シーズンは育成という意味合いが強かったので、来シーズンは勝負をかけたいです。
――オフラインでの経験をもっと積みたいと。
海外にこだわらず、国内でも小規模なイベントでもいいのですが、とにかく試合を経験したいです。ただ、そういった大会やイベントは数少ないので増やしてほしいですね。少ないなかでもさまざまなイベントに呼んでいただいているので、それはとてもうれしく思っています。そして、国内のチームが増えてほしいですね。そのためにも、そういったイベントが多数開催されるといいのですが。
――来シーズンの活躍を期待しています。目指すはGrand Finalですね!
チームを立ち上げたときからGrand Finalを目標にしていますので、来シーズンも同じ目標に向かってがんばっていきます!
敗北に涙しつつも、彼らはすでに次のシーズンに向けて動き始めている。試合後すぐに新メンバーの募集に乗り出したことからも、“リアルに”動き始めているのだ。今回のAPAC Finalsで、またシーズン全体を通して、Caren Tigerは大きな糧を得たことだろう。彼らの言うところの“経験”だ。
そして前を見て、力強い言葉で決意を語ってくれた。はるか彼方の地で(あるいは日本かもしれないが)、Grand Finalの舞台に立つ彼らの姿を見たい。そこで、変わらず爽やかな笑顔を見たいと思う。
……と、感傷に浸っていてばかりではポエットおじさんになってしまうので、最後にオマケを。持参した応援グッズ(編集部:ミス・ユースケ製作)に、メンバー全員からメッセージをもらった。漢字やスペルが合っているか確認し合うメンバーの姿は、とてもかわいらしかったですよ(笑)