2017年2月18日、東京の秋葉原にてSNKの人気対戦格闘ゲーム『ザ・キング・オブ・ファイターズ XIV』(以下、『KOF XIV』)の公式世界大会が開催された。この世界大会に合わせて来日した、ソニー・インタラクティブエンタテインメント上海(以下、SIE上海)のPresidentである添田武人氏と、中国版『KOF XIV』のパブリッシャー“GAMEPOCH”のCEO Stephanie・Chen氏のメディア向け合同インタビューが行われた。中国におけるプレイステーションマーケットの現況や『KOF XIV』の盛り上がり、eスポーツの可能性などについて語られたインタビューの模様をお届けする。

中国におけるプレイステーション市場と『KOF XIV』の盛り上がりは? SIE上海・添田氏、GAMEPOCH・Chen氏合同インタビュー_03
中国におけるプレイステーション市場と『KOF XIV』の盛り上がりは? SIE上海・添田氏、GAMEPOCH・Chen氏合同インタビュー_02
SIE上海の添田氏。
GAMEPOCHのChen氏。

――まずは、中国におけるプレイステーション市場の現況についてお聞かせいただけますか?

添田氏(以下、添田) 中国には政府の規制があり、これまで家庭用ゲームを販売することができませんでしたが、私たちは2014年に中国へ進出し、2015年3月末からプレイステーションの事業を始めました。『KOF XIV』はGAMEPOCHさんがパブリッシャーとなり、プレイステーション4をプラットフォームとして正式にリリースすることができました。中国における『KOF』シリーズは非常に人気でして、たとえば今回の世界大会のインターネット中継は、日本やアメリカが数千人なのに対して、中国は24万人もの視聴者がいました。この数字からわかるように、中国には日本とはケタが違う“パイ”があり、ゲームマーケット全体で見ても、世界最大規模のマーケットになっています。

――家庭用ゲームが締める割合はどのくらいなのでしょうか?

添田 プラットフォームではPCゲームやスマホゲームが圧倒的で、家庭用ゲームは1%あるかどうかです。ですが、私たちがローカルでゲームを遊ぶイベントを開催した時などは、家庭用ゲームに満足感を感じていただきました。ですから、決して家庭用ゲームが嫌いというわけではなく、いままでは触れる機会がなかっただけなので、これから中国においてマーケットを作っていかなければならないと感じています。そんな中、中国で知名度が高い『KOF XIV』をリリースすることができました。インターネット中継を見ていたのは24万人かもしれませんが、その先にはもっと大勢の人たちがいるはずですので、そのゲーマーたちにアピールする活動をしていこうと考えています。現在、中国ではプレイステーション4、PS VITA、PS VRを発売しており、ゲームタイトルは50を超えています。中国ではすべてのコンテンツに検閲が入るため自由には発売できませんが、ローカルで出せるゲームはたくさんあるのでひとつひとつ導入していく予定です。

――それでは、GAMEPOCHさんの活動内容についてお聞かせいただけますか?

Chen氏(以下、Chen) GAMEPOCHは中国で家庭用ゲームのパブリッシャーとして活動しています。私たちがパブリッシュするゲームには、“全年齢向け”、“みんなで協力”、“競争できるゲーム”という共通点があります。『KOF XIV』は、まさにその理念にふさわしいタイトルだと考えています。世界大会には多くの中国選手が出場し、中国の生放送視聴者は24万人に達し、たいへんうれしく思います。

――中国では『KOF』の旧作が根強い人気と聞いていますが、最新作への移行は進んでいるのでしょうか?

Chen 『KOF』シリーズは20年以上の歴史を持っていることは心得ています。その最新作である『KOF XIV』を中国に輸入するときには、中国の文化に合わせて調整を行いました。また、パッケージ版とデジタル版を発売するだけではなく、eスポーツキャンペーンを並行して実施するというプロモーション活動を行いました。eスポーツイベントは20以上の都市のソニー公式ショップなどで開催し、視聴者は合計で1000万人を超え、最新作への移行は進んでいると考えています。

――視聴者数が合計で1000万人とのことですが、実際にオフラインイベントに参加したのは何人くらいなのでしょうか?

Chen オフラインのeスポーツキャンペーンの動員人数は開催場所次第というところがあります。ショッピングモールなどでは100人程度、中国のゲームショウ“チャイナジョイ”であれば1000人規模になります。我々のキャンペーンでは必ずライブ配信を行いますが、そのときには来場者と視聴者がいっしょに楽しめる形式をとっています。

添田 “チャイナジョイ”ではブースから人があふれてしまうほどユーザーが集まりました。中国の皆さんはゲームに対してものすごくアツく、オフラインイベントにも積極的に集まってくれます。残念ながら、ゲームをプレイしている人数やイベント参加者数は公式データがとり難いのが現状ですが、まだプレイステーション4を持っていない人であっても興味を持ってくれる方が多い、といった印象を受けています。

――『KOF XIV』の中国を含めた世界同時発売の実現に関して、苦労した点やメリットなどをお聞かせください。

添田 中国でゲームタイトルをリリースするには、政府の事前審査を通すのに通常数ヶ月かかります。しかし、今回はSNKさんにご協力いただいて、早い段階で材料を揃えて検閲にかけることができました。政府に対してタイトルそのものの重要性やマーケットにおけるユーザーの期待度を説明することで、スピーディーに全体のプロセスをまわすことができたと考えています。中国で普及させるうえで、ローカライズと世界と同時発売というのはとても重要度の高い項目です。『KOF XIV』はそのふたつが実現にいたり、エポックメイキングなタイトルになったと考えています。中国国内で『KOF』シリーズは10数年間の“断層”がありましたので、今後マーケットはドンドン広がっていくはずです。家庭用ゲームを知らなかった人たちや『KOF』というタイトルを知らなかった人たちを含めてターゲットにしていける可能性を感じています。

Chen 『KOF XIV』の導入際して、SNKさんと協力して中国限定のDLCを用意したり、中国の旧正月にあたる期間やクリスマス期間に合わせてセールス活動を行うなど、中国の文化やプレイヤーの習慣に合わせて販売計画を立てました。

添田 ゲームを発売する前段階、発売したタイミング、発売後と、オーディエンスが増えていく実感がありました。グローバルではクリスマスキャンペーンが際立っていましたが、我々は中国の旧正月に合わせて力を入れ、その結果ものすごいダウンロード版の売上がありました。そういったマーケティングのチューニングをまだまだやっていかなければなりませんが、現段階でも手応えを感じています。

――中国でのeイースポーツの盛り上がりはいかがですか?

Chen 中国ではPCゲームやスマホゲームが主ですが、eスポーツは盛り上がっていると思います。家庭用ゲームには“画面演出のインパクト”など、ほかにはない魅力があると思いますので、そういった面を押し出しながらこれからもソニーさんと協力してeスポーツキャンペーンを続けていこうと思っています。

添田 eスポーツでは『LOL』や『Dota』といったPCゲームの規模が大きいですね。格闘ゲームはまだ始まったばかりという印象です。ただ、草の根レベルの小規模な大会もeスポーツとして見た場合、そういった大会はいろいろなところで開催されていますので、将来的なポテンシャルを考えると、eスポーツは一部の限られた人たちがプレイするものではなく、“普通の人たちが家庭に集まって楽しめるものです”ということを伝えていきたいですね。その点では家庭用ゲーム機が果たす役割が大きいので、『KOF』のようなタイトルを中心にトライアルしていこうと思っています。

――最後にユーザーにひと言メッセージをお願いします。

Chen GAMEPOCHがパブリッシュするのは皆で協力、競争して楽しめるゲームです。ぜひ、我々がパブリッシュするゲームに期待してください。

添田 今回の世界大会は出場メンバーの多くが中国選手でした。東アジアはゲームマーケットの成長が見込める地域であり、全体の市場を盛り上げる可能性を考えると中国のポテンシャルは非常に強いと思っています。今後も素晴らしいタイトルの大会でアジア選手が活躍できるように、我々も現地でがんばります。中国で開催大会にも世界の選手を迎えるべく、GAMEPOCHさんと協力していきますので応援よろしくお願いします。

中国におけるプレイステーション市場と『KOF XIV』の盛り上がりは? SIE上海・添田氏、GAMEPOCH・Chen氏合同インタビュー_01