映画『バイオハザード』シリーズ最後のインタビューをお届け
2016年12月23日、日本で世界最速公開される人気映画『バイオハザード:ザ・ファイナル』。今回、ワールドプレミアのために来日したポール・W・S・アンダーソン監督と、主演のアリスを演じるミラ・ジョヴォヴィッチ、クレア役のアリ・ラーターの3名にインタビューを敢行。シリーズ最終章を迎えたいまの気持ちなどを聞いてきました。試写会でひと足先に映画を見させてもらった感想とあわせて紹介していきます。
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ポール・W・S・アンダーソン監督インタビュー
−−14年間続いたシリーズを作り終えた、いまの率直な気持ちをお聞かせください。
ポール・W・S・アンダーソン(以下、ポール) シリーズの中でベストの作品を作れたと思っているので、有終の美を飾れたことをうれしく思っています。その反面、再び携わることがないと思うと、ほろ苦い気持ちにもなりますね。
−−いつ頃からこの結末のことを考えていたのでしょうか。
ポール 物語の基本的な部分に関して言えば、14年前から考えていました。第1作目のとき、アリスは過去の記憶がない状態で目覚めるわけですが、これにはきちんとした理由があったんです。今作ではラクーンシティのハイブという、アリスの出発点に立ち戻り、その理由を明かすことができました。
−−自分も『バイオハザード:ザ・ファイナル』を見させてもらい、その後にあらためて第1作を見直しましたが、全然違う印象を持って見られたことがおもしろかったです。
ポール そうやって第1作を見直してもらえたことは、とてもうれしいことですね。今作は原点回帰を目指しているので、この作品を見た観客の皆さんが、第1作から見直したいと思ってもらたらいいなとも思っています。
−−これまでの作品では、クレアのようなゲームキャラクターたちもたくさん登場していましたが、今作で姿が見られなかった人たちは、どうしているのでしょうか。
ポール 今回は完結編ということで、登場人物たちをたくさん殺していかなければなりません。ただ、ゲームはまだ続いていくので、これから活躍するかもしれない主要キャラクターを映画で死なせるわけにはいきませんよね(笑)。それともうひとつ、私は1970年代の映画によくあった、ストーリーに含みを持たせた終わり方が好きなんですね。あの人はどうなったんだろうとか、これからどうしていくのかなって、いろいろと想像するのって楽しいですよね。この『バイオハザード』シリーズも、そうやって曖昧な部分を残していたほうが、観客のなかで物語が生きてくるのではないかと思っています。
−−これで映画は完結となりましたが、ゲームは来年の1月に『バイオハザード7』が登場します。こちらはもうプレイはされましたか?
ポール E3(Electronic Entertainment Expo)で、VR版の体験はさせてもらいました。ゲーム全体はまだ遊んでいないのですが、サバイバルホラー的な要素がすごく濃厚で、ゲームの1作目のルーツに立ち返っていますよね。映画の『バイオハザード』も、最初はサバイバルホラーだったものが、どんどんアクション要素が強くなってきていましたが、完結編ではゲームと同じように原点回帰していますよ。
−−監督のハリウッドデビュー作である『モータルコンバット』もゲームの映画化作品でした。その後『バイオハザード』を手掛けられ、次回は『モンスターハンター』を撮られると思います。ゲームの映画化に携わることが多い印象がありますが、どんなゲームが好きなんですか?
ポール その3作品が私の好きなゲームです。『モータルコンバット』は、昔ゲームセンターでかなりやり込んでいたほどのファンで、『バイオハザード』もロスに済んでいた頃、アパートに閉じこもってずっと遊んでいました。そして遊び終えた頃、これは映画にしなければならないと決心したわけです。『モンスターハンター』にしても、あの世界観が大好きなんですが、本当に素晴らしい作品ですね。ビデオゲームの映画化については、成功しないケースのほうが多いですが、私の作品が成功できているのは、いちファンとして情熱を注ぎ込んでいるからだと思います。
−−これで映画『バイオハザード』が見納めだと思うと寂しい限りですが、最後に日本のファンの方たちに向けてメッセージをお願いします。
ポール この4年間は、とにかくシリーズの有終の美を飾ろうという意識の元にやってきました。そのおかげで、シリーズの中でも最高に恐い作品ができあがったと思っています。もちろん、アクション要素も満載なので、ぜひ楽しみにしてください。
ミラ・ジョヴォヴィッチ(アリス役)インタビュー
−−今作では、ご主人のポール、娘のエヴァといっしょに仕事をされ、素晴らしい最終章を作られましたね。
ミラ・ジョヴォヴィッチ(以下、ミラ) 家族といっしょに『バイオハザード』の最終章を手掛けられたことは、本当に特別なことです。一生に一度のチャンスだったかもしれません。私にとって、娘と夫が現場でいっしょに仕事をしている姿を見られたのは、素敵な思い出になりました。
−−今回、エヴァの出演を提案されたのはあなたですか。それとも監督でしょうか。
ミラ 最初にエヴァが女優に興味を示したのは5歳のときです。「ママ、わたし女優になりたいの」って言ってきたので、まずは読み書きを覚えさせ、その後に演技レッスンをさせていました。そういった中で、ポールから今作のレッドクイーン役にエヴァはどうだろうという話があったのです。それでエヴァに台本を渡してテストしてみたところ、きちんとセリフを全部覚えて、自然な演技をしてくれたことに驚きました。
−−そのエヴァはいま、演技以外にテコンドーを習われているそうですが、将来的にアクションスターの道を目指しているのでしょうか。
ミラ テコンドーはエヴァが好きでやっていることですが、もしアクションスターになるのであればとてもうれしいですね。私もマーシャルアーツが好きでやっていますが、こういったものは体力をつけるだけでなく、メンタル面も同時に鍛えてくれますし、こうして培った経験は人生のすべてで役立つと思っています。彼女がテコンドーをやっていることは、地に足の付いた人間になるための助けになるでしょうし、そうやって成長して母親の元から巣立ってくれたら、私としてはとても安心ですよね。
−−今作で14年続いたシリーズに終止符が打たれたわけですが、最初に今作の脚本を目にしたときはどう思われましたか。
ミラ 最初に脚本を読んだときは、この最終章がこれまででもっとも恐い、最高の『バイオハザード』になると思いました。いちばんワクワクしたのは、アリスの出生の秘密が明かされる部分です。これまでのシリーズでは、彼女は自分の本能に従い、“自分が誰であるのか”を探し続けていたのですが、その答えがやっとわかったんです。これはファンの方たちにとっても、ワクワクするポイントだと思いますよ。
−−監督は第1作当時から、この結末の構想があったそうですが、あなたはいつ頃話を聞いたのですか。
ミラ 家にいるときも、彼と『バイオハザード』についての話はたくさんしてきましたが、どんな結末を迎えるのかは、今回の脚本を読むまで知りませんでした。ですので、私が感じたワクワク感は、観客の皆さんが作品を見て感じるものと同じです。
−−『バイオハザード』のストーリーやアクションに関して、あなたから監督にいろいろと意見やアイデアを出されたりはするのでしょうか。
ミラ じつは『バイオハザード』第1作と第2作のときは、アクションシーンやキャラクター造詣については、ポールと意見が合わず、いろいろなやり取りがありました。私がポールのことをよく知り、ポールが私のことを理解してくれるようになったのは『バイオハザードIII』の頃です。それからは、脚本の初稿を書いているときのポールには、私はタッチしていません。最高のものができあがった段階で、読ませてもらっています。今回も、ワイヤーで片足を吊られてアクションをするシークエンスを読んだときは「すごい!」って思って、頭の中に映像が浮かびました。これはシルク・ド・ソレイユのアクション版だって言ってましたね(笑)。
−−今作では、極力デジタル処理に頼らない撮影をされているようです。その分、苦労も多いかと思いますが、こうして苦労して演じられた成果は大きいですか?
ミラ グリーンバックの場合は、目の前にないものに対して演技をしなければなりませんが、それがロケーションでの撮影になると、その場に身を置いただけでそれがリアクションに変わっていきます。もちろん、気温が熱かったり寒かったり、朝の3時に湖に飛び込んだりと、厳しい面はたくさんあります。でもその分、演技にリアリズムを持たせられますよね。
−−映画の『バイオハザード』はこれで終わりを迎えますが、ゲームはこれからも続いてくと思います。昨今のゲームはクオリティもあがり、ハリウッドスターが登場する作品も増えていますが、アリスがゲームに登場するといったオファーがあったら、受けてみたいですか。
ミラ ゲームの『バイオハザード』に、クールな能力を備えたキャラクターとしてアリスが登場したら最高ですね。これまで登場していないのが残念なくらいです。
−−ちなみに来年1月にはゲームの最新作『バイオハザード7』が登場します。発売されたら、監督といっしょに遊ばれたりしますか?
ミラ 『バイオハザード7』のVRデモ版は体験させてもらったんですが、やられてばかりでした。私はこれまで(アリスとして)ゾンビを倒してばかりいたので、やられるのは慣れていないんですよ(笑)。それに、いまは娘がふたりいるので、恐いゲームをするのは難しい環境でもあります。ですので、最近遊んでいるのは、リラックスできるゲームばかりです。ただ、ポールは間違いなくプレイするでしょうね。
−−アリスとして話を聞かせてもらうのはこれが最後になりますが、日本のファンに向けてメッセージをお願いします。
ミラ 今作は映画『バイオハザード』シリーズの中でも、最高級の作品になったと思っています。これまでの作品も愛情とエネルギー、情熱を注いで作ってきましたが、最終章はとくに力が入っており、出演している私も初めて見たときは思わず飛び上がったくらい、恐い作品になっています。ファンの方たちもきっと楽しんでくれると思うので、楽しんでください。ミテネ。(最後の“ミテネ”は、ミラ自身が日本語でコメントを発してくれたものです)
アリ・ラーター(クレア・レッドフィールド役)インタビュー
−−クレアは、映画オリジナルキャラクターのアリスとは異なり、ゲームで先に登場しているキャラクターです。そんなクレアの役作りはどのようにされたのでしょうか。ゲームなどは参考に遊んだりしましたか?
アリ ゲームは得意じゃないので、遊んだことはないです(笑)。ただ、すごく人気のある作品に登場するキャラクターであるということは知っていたので、赤い髪の毛や、赤い革ジャンといった、ゲームと重なる部分はきちんと取り入れています。そのうえで、そこから派生するキャラクターを作り上げるにあたり、武器の使い方はかなり練習をしました。また、今作では南アフリカのケープタウンで撮影が行われましたが、こんなに風が強いところは初めてで、たくさん走らされたり、沼地で泳がされたりと、とにかく撮影が大変でした。でも、クレアを演じることはすごく楽しかったので、苦しいと思うことはなかったですね。
−−『バイオハザードIII』と『バイオハザード:ザ・ファイナル』に登場するクレアは、生存者たちを率いるリーダー的存在でした。実際のあなたは、どのようなタイプなのでしょうか。
アリ・ラーター(以下、アリ) けっこう強いですよ(笑)。最初に『バイオハザード』の出演をなぜ引き受けたのかというと、クレアが非常に強く、献身的な女性だったからです。私自身、両親から真の強さというものは、勝ち負けではなくて、そのプロセスなんだと教わってきました。ですので、そういった強さを持っているクレアに自身を重ねることができ、惹かれていったんです。
−−ゲームの中では、クレアは兄思いのキャラクターとして知られています。『バイオハザードIV アフターライフ』では、クリスとの再会を果たすこともできましたが、今回『バイオハザード:ザ・ファイナル』ではそのクリスの姿が見当たりません。どこに行ってしまったのか知っていますか?
アリ 私が知る限りは、『バイオハザードIV アフターライフ』のラストでアンブレラ社が襲ってきたときに離ればなれになってしまい、そこから兄がどこに行ってしまったのかわかりません。おそらく、監督の頭の中のどこかにいると思います。今作のクレアは、兄弟愛の代わりに、生き残った仲間たちとの絆といった部分がフィーチャーして描かれています。ですので、その部分をしっかり見てほしいですね。
−−仲間との絆も、献身的なクレアならではといった要素ですね。それでは、今作の撮影でもっとも苦労されたポイントを教えてください。
アリ 今作はセットでの撮影ではなく、南アフリカの自然の中で、さらに夜の場面ばかりだったことが大変でした。セットの場合は、危険に見える場所でも守られている感じがあるので安心して挑めますが、それが大自然の中となると何も守ってくれるものがなく、撮影中は自分の神経が研ぎ澄まされていくのがわかりました。そういった過酷でリアルな状況を、皆さんにもぜひ感じてほしいと思います。
−−それでは、本作でいちばん見てほしいポイントはどこでしょうか。
アリ クレアを演じられたことは、本当に最高でした。この作品のおかげで世界中を回ることができましたし、監督とミラといっしょに働くことができたのも、すごく貴重な経験です。この作品でいちばん見てほしいのは、先ほどの話とも重複しますが、荒れ果てた自然の中での撮影によるリアルさです。映画に出てくるトンネルや沼の場面は作り物ではなく、すべて現実にあるものなんです。ですので、私たちは大変な役を演じているのではなく、本当に大変なんだということを、スクリーンを通して体感してください。
−−今作はあなたが母親となってから、初めての『バイオハザード』になりました。母親になったことで、これまでの取り組みかたと何か変化はありましたか?
アリ 子どもをふたり持ってから、初めての撮影だったので、私自身のなかでもいろいろな変化がありました。とくに、人を守るという面においては、大きく変わったと思います。普通、女性ふたりが主演を務める作品の場合、作品の中でも、私生活の面でもケンカになりやすいんです。でも、『バイオハザード』においては、ミラもふたりの子どもを持つ母親で、私もミラも非情に献身的なうえに、お互いの絆がとても強かったことから、この作品がここまで成功したんだと思っています。
−−日本は『バイオハザード』発祥の地で、クレア・レッドフィールドのファンもたくさんいます。最後に、公開を楽しみにしている日本のファンに向けて、メッセージをお願いします。
アリ 私は今回で5回目の来日になりますが、日本は来る度に品がよくて美しい国だと感じています。また、クレアがこんなにも皆さんに愛されていることもすごくうれしいです。この『バイオハザード』は私にとって本当に大切なもので、素晴らしい作品に仕上がっていますので、皆さんも楽しんでください。
これで見納め! アリスの長きにわたる最期の戦いに刮目せよ!
ゾンビ映画が大好きな筆者にとって、1996年に登場したゲーム『バイオハザード』は、ゾンビ映画を体験できるゲームとして、相当どハマリした作品です。その大好きな作品が、映画化されるときいたときには、大いに期待しつつ、正直に言うと不安な気持ちもありました。ゲームの映画化作品というと、それまでは成功した例がほとんどなかったためなんですが、ポール・W・S・アンダーソン監督の手がける『バイオハザード』は、いい意味で期待を裏切ってくれました。映画『バイオハザード』は大ヒットを記録し、以降もシリーズ化されていったのはいまさら説明の必要はないかと思います。
そんな『バイオハザード』も、この12月23日より世界最速で公開が始まる『バイオハザード:ザ・ファイナル』にて、ついに完結となります。『バイオハザードIII』の頃から、終わるといったような噂が流れ続けてきていましたが、今回はタイトルに“ファイナル”とある通り、本当に終わりを迎えます。
と、前置きがだいぶ長くなりましたが、公開に先立ち、ひと足先に試写を拝見させてもらったので、その模様をここでお届け……しようと思ったのですが、今回は完結編ということで何を書いてもいろいろとネタバレになってしまうため、あまり詳しく映画の内容について触れることはできません。ただ、見事に出発点に帰着するような作品に仕上げてくれたポール監督の手腕はさすがのひと言に尽きます。とくに、アリスの出生に関する秘密については映画第1作の頃から考えていたとのことで、インタビューでも触れているように、筆者は完結編を見終わった後、帰宅してから第1作をあらためて見直してしましました。映画『バイオハザード』シリーズはすべてパッケージを所有しているほど好きな作品なので、これまで何度も見ているのですが、アリスの秘密や、アンブレラ社の思惑などを知ったためか、違った視点で物語を見ることができるという、新鮮な鑑賞体験ができました。これは、まさにポール監督の狙い通りの効果とのこと。『バイオハザード:ザ・ファイナル』を鑑賞した人は、ぜひ第1作からあらためて見直してみてください。きっと違う物語がそこに見えてくるはずです。
“始まりがあるものにはすべて終わりがある”の言葉通り、アリスの目覚めとともに始まった映画『バイオハザード』はこれにて完結を迎えることになります。ポール監督は、来年は次回作『モンスターハンター』の制作に着手するとのことで、また新たな話題を振りまいてくれると思いますが、個人的にはミラとアリの子どもたちが大きくなった頃に、また新たな『バイオハザード』を作ってくれたら、なんてことも期待したいところです。
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『バイオハザード:ザ・ファイナル』
原題:Resident Evil: The Final Chapter
全米公開:2017年1月27日
監督:ポール・W・S・アンダーソン
出演:ミラ・ジョヴォヴィッチ、アリ・ラーター、ショーン・ロバーツ、ルビー・ローズ、ローラ、イ・ジュンギ、ウィリアム・レヴィ、イアン・グレン
12月23日(金・祝)日本で世界最速公開!