レッドブル主催のゲーム大会“Red Bull 5G 2016”のリポートをお届けする。

●極めたヤツはカッコいい。

 2016年12月18日、東京都品川区のClub eXで、レッドブル主催のゲーム大会“Red Bull 5G 2016”が行われた。Red Bull 5Gは、5ジャンル5種目のゲームで戦う東西2チームの対抗戦。“5”がキーワードの本大会にとって奇しくも5回目の大会となった今回は、2年連続で破れていた東軍がまさかの5戦全勝の完全優勝を収め、幕を閉じた。運営サイドでは今大会を“第1シーズンの終了”と位置づけ、充電期間に入るようだ。

▲先に結果をお伝えしておくと、優勝したのは東軍チーム。昨年のリベンジを果たし、通算成績3勝2敗で有終の美を飾った。
▲エンディングでは、今大会をもって「第1シーズンを終了」することが明かされ、「GG! We will be back!(グッドゲーム、我々は戻ってくる)」とのメッセージが表示された。この真意については近日取材を行う予定。
>

●“世界最高の”大会かどうかよりも、とりあえず“最高な”大会

 ではRed Bull 5Gとはなんだったのか? 大会レポートの前にまずそこを振り返るところから始めたい。まずRed Bull 5Gは、EVOのような各タイトルの世界最強を決める大会ではないし、The International Dota 2 Championshipsのような超高額賞金を誇る大会でもない(そもそも賞金がない)。しかしこういった“世界最高の大会”でこそないかもしれないが、世界でも有数の“最高な”大会であるのは間違いないと思う。

 これは、“日本のゲーマーに翼をさずける”というコンセプトにも現れているように、出場するゲーマーや、採用タイトル/ジャンルのゲーマーコミュニティにスポットライトを当てるのが主眼であるのが大きい。その部分を最大限に伝えていくために、既存のゲーム大会の文法とまったく異なる演出や運営スタイルが試みられてきた。

▲オープニングアクトとして帰ってきて、今年も「ソニックブーム」や「昇竜拳」といった声ネタをコスリまくっていたDJ Hanger。スクラッチの世界大会“1999 VESTAX WORLD FINAL SINGLE WEAPON JOUST”で優勝した本物のバトルDJである(なお『MAG』にハマっていた時期は一時期世界3位にランクインしたゲーム狂でもある)。

 そもそも、普通はなかなか交わらない他ジャンルのゲーマーが、それぞれ予選を勝ち抜いて決勝に進んだところで一緒のチームとなり、仲間として共通の目的を目指して戦うという、“東西のチーム戦”という形式自体、なかなかよそではお目にかかれない。
 正直な話、同ジャンルの集まる大会であっても、自分がプレイしているタイトル以外はスルーという人は多いと思う。それは別におかしなことではない。でもRed Bull 5Gでは、観客が知らないゲームに熱狂して声援を送り、同チームの他ジャンルの選手同士がともに喜び、悔しがるという独自の文化が築かれてきたのだ。

▲奇跡的な展開で異様に盛り上がった『ロケットリーグ』。自分たちの愛するゲームでスゲェ試合を見せられたことを喜びあう姿も、また5Gならではのもの。ロケットリーガーはスゲェ!

 もちろん、競技ゲーマーたるもの対戦となればお互いのプライドがぶつかり合って、そこには往々にして、圧巻の勝利や大逆転、奇跡の一発、一進一退の攻防など、ドラマが生まれる。5Gではそれだけでなく、5ジャンルのゲームで1セットとなることで、ジャンルを横断したストーリーが出てくる。

 そのために5Gでは、次に試合するゲーム/ジャンルを負けたチームが決定するという形式になっていて、どんな順番で試合が行われるかは、両軍のチームキャプテンがその都度発表するまで、観客も運営側もわからない。
 これは事前にあらゆるパターンに対応できるようにしておかないといけない、かなりリスキーな運営方法なのだが、そのおかげで個々の試合よりもうひとつ上のレイヤーの“試合順のゲーム性/心理戦”、および“挽回するために次に誰に託すか”、“相手チームの「このジャンルなら勝てる」という暗黙の意思表示をどう覆すか”といった“流れ”のドラマをも楽しめるようになっている。

▲運営側に試合順の選択権がないので、選手の発表に応じてできるだけ最速で各ゲーム用にステージを設営するという、地味にすごいことをやっていたりする(何かのイベントをやったことがある人ならわかると思うが、普通は事故が起きるのでやらない)。

 そして、“ゲーマーの見せ方”も違う。レッドブル流のそれは、同社が支援するストリートカルチャーのパフォーマーやエクストリームスポーツの選手と同じ、“尖ったものを極めた人”というような扱いだ。東西の選手はスニーカーに至るまで揃いのコスチュームを身に着け、クラブイベントや格闘技イベントのような演出で、DJが曲を流す中でバトルを繰り広げる。「こういうのがあるべき形」というわけではなくて、別に普段と同じ格好でもいいと思うけれども、こういうトータルな見せ方は異質がゆえに妙にカッコよく、また派手な演出に映えるのも事実だ。

▲試合間にはサイドアクトとして、フリースタイルフットボール(Skill Air)、ブレイクダンス(Ami & Ayu)、フリースタイルバスケットボール(降神)のパフォーマンスも行われた。終盤では3組によるセッションも。最初はノリがわからなくて戸惑うかもしれないけど、“極めた人は面白い”という話だと思うので、「なんかよくわかんないけどスゲェ」と拍手するぐらいでいいんじゃないかと思います。

 普段と異なるジャンルのゲームに挑戦してまでこの舞台にふたたび立とうとする過去の出場選手が例年いるのも、観客席にリピーターが珍しくないのも、そして今年ついにフォーマットが海外地域に輸出されて英国で“Red Bull 5G UK Finals”が行われたのも、この5Gという空間が他のどこにもない、中毒性のあるオリジナリティを確立してきた証拠と言えるんじゃないだろうか。嘘だと思うなら、“シーズン2”があった時にぜひ現場に見に行ってみて欲しい。個人的な好みは当然あると思うけど、そこには唯一無二なドラマがあるはずだ(※)。

[2016年12月20日午前9時訂正]※入場料金等について誤りがあったため、関連する部分を削除しました。今大会は入場無料の事前予約制で行われました。お詫びするとともに訂正致します。


 そして今年も、5年間の集大成にふさわしい怒涛の展開を見ることができた。というわけで具体的な大会リポートに移ろう。前回敗北した東チームのキャプテン、やまどぅー選手が選んだファーストジャンルは、レーシングの『PROJECT CARS PERFECT EDITION』。いきなり両軍のキャプテンの激突から始まることに。

●第1ジャンル: RACING『PROJECT CARS PERFECT EDITION』

 『PROJECT CARS PERFECT EDITION』は、Slightly Mad Studiosによる実車・リアル系のレースゲーム。試合はレーシングシートを使った2on2形式で、コースはスパ・フランコルシャン(ベルギー)。勝敗は両チームの選手の合計タイムで決まる。なお過去の大会でレーシングジャンルに採用されていた『グランツーリスモ』シリーズからのタイトル変更となるが、レースゲームとしての基本は共通しているため、西軍の“みとすぱ”選手以外の3選手はすでに5Gでのファイナリスト経験があるというのも面白い部分だ。

 決勝前にはスターティンググリッドを決めるレースが行われ、ほんだ、やまどぅー(ともに東)、みとすぱ、ねぎ(ともに西)という東軍有利な配置からのスタート。本戦はスタート直後にまくられることもなく、やまどぅー選手が着実にほんだ選手を先行させていき、少し離れて西軍の選手が着いていくという展開で、順位の入れ替わりなくそのままフィニッシュ。合計タイムは東軍が16分00,581秒、西軍が16分41,437秒という形になり、まずはキャプテン対決を制した東軍が1ジャンル先取。敗れた西軍が選んだ第2ジャンルは、FREEの『ロケットリーグ』。

●第2ジャンル: FREE『ロケットリーグ』

 Psyonixの『ロケットリーグ』は、ロケット付きのクルマでフットサル風の球技を戦う、ある意味レーシングでもありスポーツでもあるというカオスなゲーム。やや癖のある挙動で目前のボールに触れない時もあれば、慣れてくるとロケットダッシュからの空中プレイなども飛び出すという、独特のテンポ感が魅力だ。
 試合は西軍“むきむきぼんぼん”と東軍“Icarus”の2チームによる、3on3形式の2ラウンド先取で行われた。

 第1ラウンドで先制したのは、壁からのリバウンドを着実に決めた東軍。しかし西軍も中盤で高く上がった玉にエアプレイを確実に合わせて1-1のタイに。その後もギリギリの場面でのセーブが続くなど、決着つかず。しかしオーバータイム入りかと思ったところ、地面にボールがつけば延長というラストワンプレイで東軍のYuhi選手がゴール前からシュートを決め、見事に勝利!

 しかし、続く第2ラウンドは一転して西軍ペースに。東軍ゴール前にボールを送った所できっちり東軍のキーパー役を潰すといった盤石な動きで0-2とリードし、1ゴールを返されたものの、残り30秒を切った所で上がってきた東軍にカウンターを決めてスコアは1-3。ラウンド数をタイに戻した。

 東軍にとっては王手をかける、西軍にとってはタイに戻すチャンスという意味あいとなった重要な第3ラウンド。これが、まさにロケットリーガーの意地としか思えない名勝負になった。会場にかけつけたロケットリーグ勢の盛り上がりを中心に、その熱量が本作を知らない人まで伝わっていく。これこそが5Gだ!

 まず先制したのは東軍だが、西軍も中盤から相手のディフェンスの頭上を絶妙に越すミドルシュートを決め、スコア1-1のまま好セーブでお互いがしのいでいく展開。残り1分を切って一気にスコアが動く。まず東軍がゴールを決め、さらに後がなくなった西軍が出てきた所でカウンターも決めて3-1に。だが西軍は残り30秒を切ってなお試合を諦めない怒涛の連続ゴールで、執念のオーバータイムへ持ち込む。
 そして一進一退の攻防に決着をつけたのは、ふたたびYuhi選手。目前に迫っていた勝利を逃し、意気消沈してしまうのかと思いきや、オーバータイム開幕早々に西軍ゴール前に飛んだボールを第1ラウンドと同じようにねじ込んで、仁王立ちからのガッツポーズ。“流れ”というものを意識せざるを得ない運命的な決勝ゴールで、東軍が勝利ジャンル2-0の王手に手をかけた。

●第3ジャンル: PUZZLE『ぷよぷよテトリス』

 後がない西軍が選んだ第3ジャンルはPUZZLE、ぷよぷよプレイヤーとテトリスプレイヤーがタッグを組んで戦う『ぷよぷよテトリス』。Red Bull 5Gをきっかけのひとつとしているタイトルでもあり、『ぷよぷよ』シリーズとしてはなんと4大会中3大会で東西の決着を決めたゲームでもある。では“ぷよテト”はふたたび今大会の決着を、そして5年間の東西の戦いの決着をつけるのか?

 試合はテトリスプレイヤーがやりあう間にぷよぷよプレイヤーが連鎖を組み、おじゃまぷよを撃ち合っていくという高速な展開。第1ラウンドでは、西のぷよプレイヤー、くまちょむ選手が先に連鎖をしかけたものの、東のぷよプレイヤーTOM選手に返されて沈められるという展開が2試合続き、3試合目は逆にTOM選手が連鎖を先に仕掛けたのがハマり、3-0のパーフェクトで東軍が第1ラウンド先取。

 続く第2ラウンドは、お互い“全消し”状態からのスタートで、先に消して全消しボーナスを使ったのはTOM選手。これで仕掛けを潰された西軍は万事休すで東軍の1-0。2試合目はくまちょむ選手が5連鎖を決めて1-1、3試合目はふたたび5連鎖を差したところを待ち構えていたTOM選手が差し返して2-1。ラストはTOM選手が5連鎖を先に仕掛け、くまちょむ選手が差し返してTOM選手を沈めるも、反撃はここまで。その間に西のテトリスプレイヤーHBM選手もダウンしており、ぷよ(くまちょむ)対テト(あめみやたいよう)という構図では回転率の高いテトリスの攻撃を受けきれず、東軍の勝ち。安定して戦い続けたあめみやたいよう選手が自力で勝ちをもぎ取っていったという印象だ。そしてこの時点で3ジャンル連続で勝利した東軍の優勝が確定した。

●第4ジャンル: SPORTS『ウイニングイレブン 2017』

 おなじみのサッカーゲームシリーズ最新作『ウイニングイレブン 2017』の対決は、東軍ゴンタ選手がバルセロナ、西軍からあげ選手がMDホワイト(レアル・マドリーをイメージしたと思われるチーム)を選び、いわゆるクラシコ対決に。

 先制したのはゴンタ選手。お互い中盤で潰し合う展開から前線の3人のフリック&パスで攻め、最後はゴール前中央にこぼれてきたボールがスアレスの足元に収まり、左足一閃で1-0。これが最終的に決勝点となったのだが、ここからの試合運びもすごかった。
 試合前のインタビュー映像で「先制すれば関西のプレイヤーは焦る」と語っていた通りの展開になったゴンタ選手は、無理をせずにゆっくり回しながら隙ができるのを待つという戦法に切り替え、支配率61%でハーフタイムまで流して、後半も早々にディフェンス陣から球を回したり、ショートコーナーを多用するという、憎らしいほどの勝つための戦いに徹する。
 美しく戦うことを至上としたバルセロナのレジェンド、ヨハン・クライフがどう思うかはわからないが、全体の勝敗が決定してプレッシャーのない場面でも、そしてぐるっと観客に取り囲まれた状況でも、なお勝利のための手段を平然と徹底できる精神力が恐ろしい。サッカー用語で言うところの“鹿島る”力が高すぎる!

 からあげ選手も前線にボールを回していきたいのだが、ゴンタ選手は先制点のシーンも含め、“このシチュエーションならこの辺にボールが流れてくる”といった先読みがことごとく当たっていた印象。決定的なシーンをほとんど作らせず、逆に左サイドでネイマールが2人抜きをして、角度のないところからループシュートを決め、2-0で終了。なお副賞としてゴンタ選手には、UEFA公認の世界大会“PES LEAGUE ROAD TO CARDIFF”の日本代表決定戦出場権が贈られた。

●第5ジャンル: FIGHTING『ストリートファイターV』

 というわけで最終ジャンルは格闘ゲーム『ストリートファイターV』。試合ごとに選手の入れ替えが可能だが、同一選手は2連続までしか出られないという変則の5試合タッグマッチで行われた。

 勝利ジャンル数4-0という圧倒的な流れ、そして東軍の選手はレッドブルアスリートでもあるプロゲーマーのウメハラ選手とボンちゃん選手。誰にでも同じ結末が見えていそうで、西軍のガチくん選手とぷげら選手には集中が難しそうな状況だ。しかし試合は簡単には終わらなかった!

 第1試合はウメハラ選手(リュウ)VSぷげら選手(キャミィ)という組み合わせで、波動拳で着実に牽制しつつ、相手の反撃をがっちりガードしたり切り替えしていったウメハラ選手が盤石すぎる勝利。そのあまりの堅実さに「あぁこれはプロゲーマーの勝ちですぐ終わるな」と思った人も多いだろう。

 しかし第2試合から流れが一転する。ボンちゃん選手(ナッシュ)対ガチくん選手(ラシード)の戦いでは、ワールウインド・ショットで相手を牽制しつつ、機を見れば機動力を活かして接近し、まとわりついていくようなラシードの戦法がハマりまくり。大Pを活かしつつスピニング・ミキサーやイーグル・スパイクを確実に当て、逆転の機会を与える前に、イウサールで竜巻を出してきっちり寄せていく。気付けばボンちゃん選手どころかウメハラ選手も破れ、勝利試合数1-2と逆転リーチ。しかも、プロゲーマーが反撃すると安心したかのような歓声があがるというほどの強さ。

 前述の連続2回までというルールにより、第4試合はボンちゃん選手とぷげら選手という組み合わせに。しかも、ぷげら選手は使用キャラをバイソンに切り替えるという、「ここで隠しネタを持ってたか!」という展開だったが、ボンちゃん選手は危なげなく対処し、2-2に戻して最終戦の第5試合へ。シートに座ったのはガチくん選手と、ウメハラ選手と会話したのち、「自分が行く」という意思を示したボンちゃん選手。

 Twitchの録画アーカイブで見られる(5時間55分ぐらいから)のでぜひ見て欲しいのだが、ガチくん選手が1ラウンド先取し、2ラウンド目も取るかと思いきや、ボンちゃん選手が瀕死の状態からジャッジメント・セイバーを見事に差して並び、そのまま1セット先取。しかし続く第2セットはガチくん選手が取り返して最終試合のさらに最後のセットになだれ込む。最終セットこそプロの意地か、対応力の差なのか、ボンちゃん選手が連勝で勝利を飾ったが、どちらが勝つかわからない熱すぎる戦いに大いに盛り上がった。

 というわけで今大会も蓋を開けてみれば、さまざまなジャンルの選手とプレイヤーコミュニティの熱量、そしてそれぞれのプライド、スタイルが激突する、好イベントとなった。次回開催は未定だが、ぜひ復活を期待したい。まだスポットライトが当たるべきゲームやゲーマーは、たくさんいるはずなのだから。