ストップモーションアニメの非現実感と、VRの実体感のミックス

 VRエンターテインメント企業WevrがHTC Vive(Steam)とGear VR向けに無料配信しているVR映像プラットフォーム、“Wevr Transport”。その中でダウンロード視聴できる最新作として、フィル・ティペット氏率いるティペット・スタジオの作品「Mad God VR」が配信中だ。

 フィル・ティペットと言えば、「スター・ウォーズ」初期三部作や「ロボコップ」でストップモーションアニメを手掛けたほか、「ジュラシック・パーク」や「スターシップ・トゥルーパーズ」のクリーチャー演出でCGに命を吹き込んだVFXの巨匠。
 今回の「Mad God VR」は、同氏の念願のストップモーションアニメ短編企画として製作を続けている「Mad God」シリーズの世界観を流用したスピンオフ的な映像で、もちろんストップモーションアニメの技法を使って製作されている(人形のアニメーションと背景を別収録して合成する形)。

▲あくまで実験的な体裁であっという間に終わってしまうのだが、眼の前でストップモーションアニメが動くという未知の体験は一見の価値アリ。ストップモーションアニメ特有の異形感が増す感じがする。

 ストップモーションアニメというのは人形などの被写体を少しずつ動かしたものを1コマずつ撮影して動画として繋げる手法で、3DCG合成が一般的になる以前の過渡期的な手法ではあるが、一方でカクカクとキャラの動きが飛ぶような独特の味がある。
 「Mad God VR」は1シーンのみ1分程度の非常に短い映像だが、地獄をイメージさせる「Mad God」のマッドな内容の上に、その日常ならざるものを感じさせるストップモーションアニメの効果と、そこにその物体が存在するように感じさせるVRの効果がミックスされて、「ありえない異形がそこに存在する」という悪夢的で非常にユニークな効果を生み出している。

 以前VRパズルゲームのLUNAを紹介した際にも触れたが、よく言われる「VRは高フレームレートを維持しないと酔う」というのはあくまで全体の描画速度のことであって、その中のアニメーションのフレームレートは低くても大丈夫。“非現実感の中に入れる”という体験として、ストップモーションアニメのVRや、クレイアニメーションのVRなんかがあっても面白いと思うのだが、いかがだろうか。

 なおティペット・スタジオでは、今回の製作にあたってのショートドキュメンタリーも公開しており、フィル・ティペット御大本人が手応えについて語っている(オチはなかなかひどいブラックジョーク)。