地球の皆とは違う時空の流れを生きる孤独感
今月ロサンゼルスで行われたインディーゲームイベント“IndieCade”出展作から、Gritfishの『Killing Time at Lightspeed』を紹介する。本作はPC/Mac/Linux版がSteam、Humble Store、itch.ioで配信中。なお対応言語は英語のみで、Steamでの価格は980円。
本作はもともと、“さまざまなインディーゲーム開発者が同テーマでゲームを作り、それを小説のアンソロジーのように編む”というコンセプトのイベント“Antholojam”の第1回参加作として開発された作品。現在販売されているのは、オリジナル版の内容を膨らませて製品化し“Enhanced Edition”としたものだ。
さて、作品の共通テーマとして提示された“SFの黄金期”というキーワードに対して本作が選んだ題材は“ウラシマ効果”。光速に準じる速度で移動する宇宙船の中では、静止している観測者に比べて時間の進行が相対的に遅くなるという現象のことで、さまざまなSF作品で取り上げられてきた。近年では、映画「インターステラー」でストーリー上重要な役割を果たしていたのを覚えている人もいるかもしれない。
さて本作でプレイヤーは、光速航行する宇宙船の中の暇潰しとして、地球のSNSにアクセスする。地球でどんなことが起こっているのか、ネットニュースやSNSの友達の投稿を閲覧しようというわけだが、もちろんそれを読む時点でその情報はとっくに過去のことになっている。ローディングしているわずかな間に、地球では数日、数週間、あるいは数ヶ月もの時間が経過しているからだ。
何か問題が起こっているっぽい時に心配して「大丈夫?」、「それ、こちらから伝えようか?」、「それってどういうこと?」とか返事することもできるのだが(返事の内容は複数候補からの選択制)、相手からの返信が来ているかリロードした時、そこに表示されるのは、さらに1ヶ月や下手したら1年も時間が経過した後のこと。もちろんこちらからのメッセージが届くまでにも相当の時間が経っていて、ほとんどの場合こちらのアドバイスなんか糞の役にも立たないどころか、むしろ失言した時にそれを謝る余地すらない。
要するに、画面をリロードすれば、そこには地球上のある一瞬の、生々しい、時にしょうもない、SNSのライブフィード/タイムラインが確かに現れる。でもそれは過去の一瞬のスナップショットでしかなく、異なる時間の流れに生きているプレイヤーは地球のすでに終わってしまった幻影を見ているに過ぎないのだ。
それがわかっていても何となくファボったり(本作のゲーム内SNSではCommendと呼ばれる)、レスをつけたり(同様にPromptボタンから行える)してしまうという、この切なさ。ウラシマ効果モノ特有の孤独感を、SNSという現代的なガジェットと組み合わせて面白く描いていると思う。本編は2時間程度の小品だが、英語がそこそこ読めて、この手の設定が好きな人は、秋の星空でも眺めながらプレイしてみてはいかがだろうか。