須田イズムの原点を感じよ!!

 2016年10月7日より、Steam、PLAYISMほかにて『シルバー事件』HDリマスターPC版の配信がスタートした。本作は、1999年の10月7日にプレイステーションにて発売されたアドベンチャーゲーム『シルバー事件』をHDリマスター化したもので、オリジナルの雰囲気はそのままに、グラフィックや遊びやすさなどがブラッシュアップされている。本記事では、担当ライターによるプレイインプレッションをお届けする。

17年の時を経て、『シルバー事件』HDリマスター版がついに発売。オリジナル版との違いとは? プレイインプレッション_01

 『シルバー事件』HDリマスターPC版の発売を待ちに待っていました! 西川くんです。本作は、架空の国“カントウ”の統制された管理社会“24区”を舞台に、ふたつのシナリオが展開されます。そのひとつは、24区の警察署の凶悪犯罪課に、とあることから配属された主人公(名前は任意)と、その仲間たちが奇怪な事件に遭遇していく“[Transmitter]編”。物語冒頭で、20年前に発生した伝説的な事件“シルバー事件”の犯人・ウエハラカムイが収容施設から脱走し、主人公たちはカムイのあとを追っていきます。

 そしてもうひとつが、フリー記者・モリシマトキオが、主人公たちが遭遇していく事件を解析していく“[Placebo]編”。主人公たちとは別の視点から、発生した事件について、そしてカムイの謎を追うストーリーがくり広げられます。

 特筆すべきは、テキストやCGの配置が固定されておらず、複数のウィンドウで表示される“FILM WINDOW”システムが、より物語を奥深くクールに演出してくれる点でしょう。アドベンチャーゲームの中でも須田剛一氏率いる、グラスホッパー・マニファクチュアの処女作で、1作目にしてシナリオ、演出、セリフなどが際立つ、センスの塊のような作品です。

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▲独自システム“FILM WINDOW”は、グラフィック、文字、そしてウィンドウの配置でさまざまな場面を演出してくれます。超かっこいい。マジかっこいい。

 物語は複数のエピソードから構成されていますが、そのすべてが“カムイ”に関連したもの。事件を追えば追うほど、カムイという男の真相に迫っていきます。ゲームの基本は、テキストベースで進むアドベンチャーパートと、マップを駆け巡り事件を追う探索パートが交互に展開。アドベンチャーパートでは独特の言い回しなどが光る文章もさることながら、イラスト、3Dグラフィック、アニメ、実写ムービーなどが多彩な方法で演出されていることが本作の特徴です。さらに今回はHDリマスター版ということで、イラストはより美麗に。3Dグラフィックはすべて完全に作り直されています。

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▲作中では何百枚ものイラストがワンシーンの演出として使用されています。
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▲建物や車など、すべてが新規グラフィック。オリジナルと見比べてみては?
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▲拳銃、人工衛星などのムービー演出もキレイに!
▲実写、アニメなどで描かれたムービーも見どころです。

 探索パートでは3Dダンジョンのようなマップを、1マスずつ進んで探索していき、人に話しかけたり、物を調べたりとコマンドを選択していくことで、物語が進んでいきます。事件の現場などでは随所に通信が入ったり、視点の上下で何かを発見したりして、「いま、まさに調査が進んでいる!」と、主人公への没入感があって1歩1歩がドキドキするんです。また、HDリマスター版では、マップのグラフィックもすべて一新されているので、すでにプレイ済みの人も新鮮な気持ちで楽しめると思いますよ。移動する際のスピードが格段に上がっており、さくさくと進めるようになったのはうれしいポイントですね。

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▲マップ上では、行ける場所に▽のような記号が表示され、怪しい場所には☆のようなマークが現れるので、迷うことはあまりないでしょう。
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▲“FILM WINDOW”システムは、探索パートでも効果的に使用されています。

 道中、謎解き要素もあるのですが、そこまで難しいものではありません。オリジナル版では説明書にヒントどころか、答えが掲載されていたりしましたから。HDリマスター版にはさらに、謎解きの答えを1発で回答してくれるお助け機能が追加。答えがわからず、どうしても詰まってしまったときには、この機能を使って物語を進めるといいかもしれませんね。また、序盤には“カタカナを16進数に置き換える”というヒントをもとに、パスワードを入力する謎解きがあります。答えが分かっても、20ケタくらいの数字とアルファベットを入力するのは、正直ちょっと面倒……。しかし、この機能を使えばすぐに答えを入力してくれるので、謎を解いたあとに押す、という使いかたもアリだと思いますよ。

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 ちなみに、今回のHDリマスター PC版は、マウスとキーボードによる操作とコントローラによる操作、どちらにも対応。前者では、キーボードで移動をしながら、マウスでコマンドを選択、マウスホイールで視点の上げ下げができるなど、より直観的に操作できるようになりました。コントローラでの操作については、筆者はXbox 360コントローラと、Xbox Oneコントローラを接続してみましたが、どちらも設定を弄らずともプレイステーション版と同じようなボタン配置で遊べました。

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▲探索は移動と、調べるコマンドを交互に使用していくのですが、その選択方法に少し慣れが必要です。上司のナツメダイゴもそう言っています(笑)。
▲PCを操作するシーンでは、マウスホイールでメールがスクロールできるようになりました。

 オプション面も充実していて、各種環境設定のほか、リミックスされた楽曲や、移動、ムービーなどをオリジナル版に変更することも可能です。オリジナル版をそのまま味わいたい人は、すべてをオリジナル設定にするのもいいかもしれませんね。ちなみにそのときは、3Dクオリティ設定を最低まで下げると、グラフィックもプレイステーション版のような雰囲気になりますよ。

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▲左と右は同じシーン。右が3D設定を最低まで下げたもの。

 最後に、本作を奥深いものにしている、[Placebo]編”の存在について。“[Placebo]編”では、“[Transmitter]編”で描かれた事件の謎に迫っていくのですが、その謎が謎を呼ぶような展開に惹きつけられます。“[Placebo]編”は第1話の終わりから選択できるようになりますが、必ず進めないといけないわけではなく、“[Transmitter]編”をクリアーしてから遊び始めても問題はありませんし、最悪プレイせずとも物語は完結します。しかし、事件を別角度から追っていくことで、「あのとき、あの人は何をしていたのか?」、「なぜこうなったのか?」ということが判明していくので、筆者としてはひとつのお話が終わるごとにぜひプレイしてほしいです。

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▲ふたつのシナリオは、選択画面で選べます。選択画面も綺麗になっていて、よりカッコイイ!
▲モリシマは主人公と違って、言葉を発する主役。独特の魅力を持った男です。

 個人的に、本作いちばんの魅力は、やはりその物語にあると思います。カムイという男を軸に描かれる物語は、人間の深層心理を突くような事件や、疑問符の残る奇怪な事件などバラエティ豊か。“[Placebo]編”は基本的にはゆったりとした物語で、“[Transmitter]編”はシリアスに鋭く展開していきます。本作全体にある、サイコサスペンス的なホラーの雰囲気や、独特のエッセンスに戸惑う人もいるかもしれません。しかし、“[Transmitter]編”、“[Placebo]編”というふたつのシナリオから生み出される、『シルバー事件』のディープなストーリーを、ぜひ1度は味わってみてほしいです。そして、当時プレイした人は、あの真相にたどり着いたときの心臓を揺さぶられる感覚を、もう1度楽しんでみてはいかがでしょうか?

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