スクリーンの向こうで消し飛んだのはなんだったのか思い知らされる
現在アメリカのカリフォルニア州ロサンゼルスで開催中のインディーゲームイベント“IndieCade”から、Biome Collectiveの作品『Killbox』を紹介する。
ビデオゲームという形式を通じてさまざまな表現を行うアート系インディーゲームが集まるIndieCadeでは、しばしばゲーム的な勝敗やゴールが存在しないインスタレーション的な作品も出展される。『Killbox』はまさにそんなタイトルのひとつだ。
プレイヤーはふたり一組で、非対称な役割を与えられる。記者がまずプレイしたのは、ミリタリー系FPSなどでもおなじみ、ドローンからの空爆のオペレーター役。指示に従い、指定されたターゲットをロックオンしてミサイルを発射。第一撃・第二撃ともに、難なく命中させる。飛び散る建物とターゲットの残骸。どうやら反撃はないようだ。
開発者が「このゲームはプレイするのにふたり必要だから」と言っていたのはなんだったのか? もうひとりのプレイヤーがボーっとして反撃を忘れていたのだろうか?
その意味はすぐに思い知らされる。“先攻”のプレイヤーが爆撃を成功させると、“攻守”の役割が入れ替わる。ローディングが終わって表示されたのは、先ほど爆撃した村の風景。自キャラは赤紫色の球体で、動き回ることができる。その他に見えるのは、より背の高い楕円状の物体と、輪になって踊っているかのような同じぐらいのサイズの球体。極度に抽象化された村人と子どもたちであるのは明白だ。
この“地上ターン”では、村の中を駆け回って『パックマン』のように白いドットを集めることができる。なんとなく嫌な予感とともに集めていると、突如異音とともに画面が暗転し、近くの建物が消し飛んで瓦礫の山へと変貌する。
……もしかして。その意味を察し、さっき自分がオペレーター側でやったことを思い出して慌てて身を隠す場所を探すが、平地の“村”にはそんなものはないし、もう遅い。二撃目がたちまちやってきて終了。ふたたび暗転した画面には、最後にこう表示された。
「2004年、最初の無人航空機によるミサイル爆撃が北パキスタンで行われました。4人が死亡し、うちふたりは子どもでした。それから3000人以上の人が何千マイルも離れた場所からスクリーンを通じて操縦されたUAVまたはドローンにより殺害されています」(訳は記者による)
ドローンからの攻撃による民間人の死亡は世界的な問題になっており、ハフィントンポスト日本版などが紹介している米インターセプト誌の特集記事では、アフガニスタンで行われたヘイメーカー作戦におけるドローン攻撃の死亡者の90%近くが本来の標的ではなかったとしている。