初代から最新作まで、まさに30年の歴史

 2016年10月1日、京都のロームシアター京都にて、“ゼルダの伝説30周年記念コンサート”が開催された。これは、1986年2月21日に、ファミリーコンピュータのディスクシステムで第1作が発売された、『ゼルダの伝説』シリーズの30周年を記念したもので、今回の京都を皮切りに、東京、名古屋、大阪など、各地で行われるコンサートになっている(追加公演も決定した)。そんな記念すべきコンサートの第1回ということで、会場には『ゼルダの伝説』シリーズの生みの親である宮本茂氏を始め、シリーズの楽曲を手掛けた近藤浩治氏、宮本氏といっしょにシリーズの初期作を手掛けた手塚卓志氏、そして、『時のオカリナ』以降のシリーズを手掛けている青沼英二氏と、任天堂の豪華スタッフが集結。開発秘話や思い出話でコンサートを、さらに盛り上げていた。なお、司会を務めたのは、『ゼルダの伝説』シリーズの大ファンを公言している、声優の青木瑠璃子さん。ちなみに、今後の公演のセットリストがどうなるのかはわからないが、もしネタバレを気にされる方は、以下のリポート部分にはご注意いただきたい。

音楽で振り返る30年の歴史! 初代『ゼルダ』の秘蔵資料も公開された“ゼルダの伝説30周年記念コンサート”京都公演リポート_01
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音楽で振り返る30年の歴史! 初代『ゼルダ』の秘蔵資料も公開された“ゼルダの伝説30周年記念コンサート”京都公演リポート_03
▲パンフレットやTシャツなどを販売する物販には、開場前から大行列が。
▲ロビーには、『ゼルダの伝説』25周年の際に行われたオーケストラコンサートの楽譜が展示された。
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▲歴代のリンクが並んだビジュアルといっしょに撮影できる、写真用のスポットも。
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▲演奏は、京都フィルハーモニー室内合奏団。指揮は竹本泰蔵氏。

 『ゼルダの伝説』単独のオーケストラコンサートは、これまでに『時のオカリナ 3D』&『スカイウォードソード』の発売年(2011年)に行われた25周年のコンサート、『ムジュラの仮面 3D』の発売直前に行われたコンサート(リポートは→コチラ)があったが、今回のコンサートはそれらで行われた一部の曲を含めつつ、30周年にふさわしい、いいとこ取りの構成に。また、それぞれに楽曲に合わせた映像が用意され、映像と生演奏が合わさることで、当時のプレイしていた記憶や、感情を呼び起こすようになっていた。

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 また楽曲も、たとえば『風のタクトメドレー』なら、オープニングの『勇者伝説』に始まり、『プロロ島』、『海賊』、『大海原』などを挟み、『ゼルダ覚醒』や『スタッフクレジット』につながっていくという、ゲームの旅立ちからエンディングまでを感じさせる展開になっており、音楽に合わせた映像で、当時の記憶を思い出したり、見送るおばあちゃんを見たりする、前回のコンサート同様に、涙なしではいられない内容。演奏された楽曲については、末尾のセットリストをご覧いただくとして、本記事では特徴的だった楽曲や、開発スタッフが登壇されたMC部分をピックアップしてお届けする。

 第1部で『ハイラル城』の後に登壇されたのは、『ゼルダの伝説』シリーズを生んだ、宮本茂氏。宮本氏は、「いつも『スーパーマリオ』の周年があると、弟のように続いて『ゼルダ』が周年を迎えるんですよね。『ゼルダ』は、オカリナを使ったり、タクトを使ったりと、楽器や音楽と縁が深いゲームです。僕らは、自分の力で考えて解くというインタラクティブなものを作っているので、その自力で解いたときの思い出などと音楽は切り離せないと思っています」(宮本氏)と、『ゼルダ』30周年と、3度目となるコンサートについての思いを語っていた。

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▲青木瑠璃子さん(左)と宮本茂氏(右)。

 『組曲オカリナメロディー』は以前のコンサートでも披露された楽曲で、『時のオカリナ』や『ムジュラの仮面』でリンクが奏でるオカリナのメロディーを、さまざまな楽器をフィーチャーしながら演奏して、楽器の紹介を行うという曲。青木さんのナレーションに合わせて、フルートやピッコロが『太陽の歌』を、トランペットが『ぬけがらのエレジー』を演奏したりと、木管楽器や金管楽器、打楽器、混声合唱など、各音色を意識して聴けるのが特徴の構成になっている。ちなみに、どの曲もニンテンドウ 64のボタン操作に合わせて、レ、ファ、ラ、シ、レの5つの音だけでメロディーが作られているというから驚きだ。

 初披露となる『神々のトライフォース2&3銃士メドレー』は、混声合唱付き。『神々のトライフォース2』からは、『ユガ戦』や『ヒルダ姫の登場』に合わせて、『マザーマイマイのテーマ』が披露され、プレイした人なら頭から離れないであろう“マイマイマイ”の合唱が生で歌われた。また、『トライフォース3銃士』からは、水源エリアの曲やオープニングの曲が演奏された。

 続いて、『ゼルダの伝説』シリーズの総合プロデューサー、青沼英二氏が登壇。青沼氏は、司会を務める青木瑠璃子さんについて、「昨年、『ムジュラの仮面 3D』のニコニコ生放送でいっしょに出ていただいて、『ゼルダ』が大好きということで、今回ぜひにと司会をお願いしたんです」と紹介。すると、青木さんは「じつは、今回のコンサートの名古屋公演は、個人的にチケットを取っていて、事務所にスケジュールを開けてもらおうと思っていたら、“『ゼルダ』のコンサートのお仕事が入っていますよ”と言われたんです」と、『ゼルダ』ファンらしいエピソードを披露。余談だが、ファミ通.comには、青木さんの驚異的な“『ゼルダ』愛”を語っていただいたインタビュー記事があるので、興味がある方はぜひお読みいただきたい(インタビュー記事は→コチラ)。

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▲右が青沼英二氏。

 そして青沼氏は、「25周年にもコンサートをさせていただいて、あれから5年経ったんですが、あっという間だなと。そのあいだに、『神々のトライフォース2』と『トライフォース3銃士』を出したものの、“『スカイウォードソード』に続く新作はまだか”と言われていますが、5年かかってしまって……」と、『ゼルダ』30周年と、今年のE3で詳細が発表された新作『ブレス オブ ザ ワイルド』について語った。2017年に発売が予定されている『ブレス オブ ザ ワイルド』については、「今日もじつは会社に寄ってからここに来ていまして。スタッフは休日返上でがんばっています。来年発売で制作は佳境でして、“ここに立ってていいのか”とも思うんですが、25周年のお祝いも大事ですから。新作の新しい情報はこれから出していきますが……。新しい『ゼルダ』のリンクは青い服を着ていまして、それがなぜかというのはあまり話をしていないので、そのお話を。あの青い色は、『風のタクト』で、勇者の服を着る前にリンクが着ていた服で、いま僕が着ているTシャツもそれを再現したものですが、それと同じ色を使っています。あの青は、新作の物語の中で非常に重要な意味がありますので、お楽しみに。とても手応えのあるものができあがってきていますので、期待してください!」(青沼氏)。