『戦国BASARA 真田幸村伝』開発秘話が飛び出す!
週刊ファミ通2016年9月8日号(2016年8月25日発売)では、カプコンからプレイステーション4/プレイステーション3で2016年8月25日に発売されたアクションゲーム『戦国BASARA 真田幸村伝』の発売記念特集を掲載した。その記事内で行った、開発チーム4人による座談会の完全版をお届けする。
2005年に産声を上げた『戦国BASARA』シリーズが、生誕11周年を迎え、さらなる飛躍を遂げた。真田幸村を主人公に抜擢した初の長編ドラマは、いかにして生まれたのか? そして、アクションが一新された真田幸村、伊達政宗、新武将の真田昌幸と信之の誕生秘話とは? 本作の開発に携わった、カプコンの4人のゲームクリエイターに、座談会形式で存分に語り合っていただいた。
長編ドラマを描くシリーズ最新作
小林 さて、今回は『真田幸村伝』の発売を記念して、主要メンバーが集まりました。
野中 発売まで長かったですね~。資料の日付を見ると、いちばん古いデータが、2014年の11月でした。10月くらいから草案を考えたり、打ち合わせをしていたんじゃないかな。
田中 開発が本格的に動き出したのは、2015年の2月ごろでしたよね。そこからいろいろあったので、無事に皆さんに『真田幸村伝』をお届けすることができて、ホッとしています。
山本 今回はシリーズ初の長編ドラマということで、どのように感じてもらえるか、いまからドキドキしています。史実寄りのストーリーではありますが、『戦国BASARA』らしさをしっかり感じてもらえるとうれしいですね。
小林 野中は、シリーズ初参加だよね。
野中 『戦国BASARA』は10周年を超えたシリーズということで、プレッシャーもありました。でも、その中で新しさを出したり、挑戦しようという気持ちが強かったですね。いろいろとチャレンジした部分に注目して、プレイしていただけるとうれしいです。
小林 主人公を幸村にしたのも挑戦だったよね。ただ、主人公をひとりに絞った物語は、以前から作りたかったものだけど。大坂夏の陣から400年が経ち、その翌年に『真田幸村伝』を発売することができて、本当によかったです。
山本 幸村を主人公にというのは最初から決まっていましたが、幸村と政宗にどのような接点を持たせるかで苦労しましたよね。史実だと、ふたりの接点は大坂夏の陣くらいですから。
小林 政宗は、幸村と並ぶ『戦国BASARA』シリーズの顔だから。幸村が中心の物語とはいえ、絶対に外せないし、確かにたいへんだった。
野中 たいへんと言えば、幸村のアクションも難産でしたね。空中を飛びながら、敵から敵を攻撃するというのを形にしても、なかなかイメージ通りに再現することができなくて。
田中 スピード感を出しつつ、いかにアクションをさせるか。そのバランスを取るのが難しかったですよね。丁寧にアクションをさせると、スピード感がなくなるし、かといって体が動かないとおもしろくない。その調整には時間がかかったし、とにかく苦労の連続でした。
山本 幸村の場合はさらに、敵の配置を工夫しないと、飛び回るアクションがうまく体験できないのもネックだったと思います。ただ、みんなのがんばりのおかげで、幸村の真っすぐ敵に向かっていくというイメージが、アクションのほうにもうまく取り入れられました。
小林 幸村と政宗のアクションは、山本がずっと変えたいといっていたので、実現できてよかったよね。『戦国BASARA4 皇』のときに、アクションが強力な足利義輝や千利休を作っちゃったから、昔ながらのふたりがどんどん置いてきぼりになってきて(苦笑)。
野中 そう言えば、政宗のアクションは、幸村と違ってスムーズにまとまったんですよね。
山本 政宗はアクションのコンセプトがわかりやすかった。小田原のときに、決死の覚悟で望むからには、一刀ではなく六爪で暴れるよな、って考えて。どう暴れるかというところで、ぶん回していればいいかと。政宗のアクションは気持ちよく仕上がっていったのを覚えています。
田中 そうですね。政宗のアクションの企画を練っているときは、もっと複雑なシステムにしていました。それを、ボタンの長押しで出せるようにしたことで、操作は簡単だけど、暴走して攻撃速度が増していく政宗に、プレイヤーも手が終えなくなるという操作感が、キャラクターのコンセプトを表せているのでは、って。
野中 弁丸と梵天丸のアクションも、幸村と政宗の単なる縮小版ではないものにできてよかったと思います。子どもながらの小柄で軽快な動きや、リーチがないぶん、体全体でぶつかっていくアクションは、独自の楽しさがあって。
田中 弁丸と梵天丸の魅力は、見ていて「がんばれ! 」と思えるところもありますね。
野中 ふたりともがんばりすぎやけどね(笑)。
信之のツインテールから意外なコラボが実現!?
野中 新武将の昌幸や信之のアクションも、それほど難産ではなかったですよね。
田中 ふたりとも真田家の武将だから、武器は槍で統一しようと最初から決まっていたし。
山本 そう。シリーズを通して、幸村が槍を使っていたので、そこは踏襲しつつ、思い切って真田家の人間にはいろいろな槍を持たせてみよう、と。それぞれ異なるアクションを体験してもらいたかったので、スピードタイプの幸村に対して、昌幸はトリックタイプ、信之はパワータイプにしました。ただ、信之の“はしご槍”は、正直、無理やりなデザインですが(笑)。
野中 はしご槍という言葉はないですもんね。
山本 ないです。オリジナルの武器だから。
小林 そんな武器は史実にはないと(笑)。
野中 でも、開発中の資料には当たり前のように“武器ははしご槍”って書いてあったけど。どうしてはしご槍になったんだっけ?
田中 衣装のデザインを考えているときに、史実で残された真田家の鎧などに、はしごの絵が描かれているものが多くて。これをどこかに使おうと思ったとき、“信之ははしごをフィーチャーしよう”ということに。ですから、鎧も縄梯子をイメージしたデザインになっています。それで、武器もはしご槍でいこうとなったんですが、あれは豪快すぎるアイデアでした。
小林 昌幸の短槍は、もはや槍じゃないよね。それに信玄とバランスを取るのがたいへんで。
野中 昌幸は、おじさんキャラにする方向で決まったけど、すでに信玄という存在がいるので、被らせないようにするのが難しかったです。それで、奇術師っぽい個性を出して。
小林 帽子のアイデアはどこから生まれたの?
山本 帽子の中に隠れるアクションを取り入れたいという考えからでした。それに、昌幸には“食わせ者”というイメージがあったので……。あと、デザインで特徴的なのは、上半身の服ですね。幸村が陣羽織で下半身を、信之がツインテールで頭を特徴的なデザインにしているので、昌幸は上半身が注目されるようにしました。
小林 信之の髪型も苦労していたよね。
山本 最初はもっとボリュームがありましたね。ただ、体の動きが見えなくなってしまうから、何度も散髪しました(笑)。あのツインテールは地毛で、ツインテールは信濃の獅子のイメージと、ふたつのちょんまげになっていて、真田と徳川を現すことに決めて。それに、ストーリーで幸村と信之が対峙するとき、強敵であることを髪型で感じさせたかったんですよ。
小林 でも、この髪型のおかげで、初音ミクとコラボすることに……。
野中 セガゲームスさんが「ファミ通さんの誌面で、おもしろいことをしませんか?」と、すごい乗り気で話を持ってきていただき……。コラボ用のアートは山本が用意したけど、開発チームのデザイナーがたくさん絵を描いてくれてよかったです。3Dグラフィックで合わせやすいということもあり、トントン拍子で進みました。
山本 セガゲームスさんが、ポーズをいろいろ調整してくださったのもありがたかったです。
田中 もともと、コラボの話をいただく前から、開発内で「ツインテールの信之は、初音ミクっぽいよね」って話題がありました。髪型は似ていてもイメージは違うでしょ、なんて話をしていたら、コラボが決まって、驚きました。
小林 じつは、『戦国BASARA』と『Project DIVA』の両シリーズって、これまで何度も発売日が被っているんですよね。こうした不思議な縁も、コラボのきっかけになったと思います。
田中 つぎの機会があるなら、信之にミクの衣装を着せてみたらどうでしょう?(笑)
野中 いやいやいや! それは事故にしかならへん(笑)。ともあれ、今回はいいコラボになった思います。8月25日にそれぞれ最新作が発売されるので、これを機に、多くの方に両タイトルを交互に遊んでもらえるとうれしいですね。(※インタビューの収録が行われたのは2016年8月中旬)
ふたつのゲームモードでさらに高められたゲーム性
小林 ゲームモードの話もしましょうか。まず前談秘話ですが、メインモードの“真田幸村の生涯”に登場する武将は限られますし、出番も多くないので、いろいろな武将で遊べる要素を入れてほしいとお願いしていたんですよね。当初はボイスドラマだけ収録するつもりでしたが、その後、やっぱりステージも作ろうということになったのがこのモードです。ストーリーを楽しみやすいように、メインモードは比較的サクサク進める難度にしていたので、そのぶん前談秘話を難しくすることになって。いま明かすと、これがボイスドラマを入れた経緯です。
野中 前談秘話が収録されたことで、メインモードの難度調整の迷いがなくなりました。難しくすると、お話を楽しみたい人が進められない。でも、簡単にすると手応えはどうするの? と悩んでいたときに、前談秘話に手応えの部分を持っていくことができたので。最終的にメインモードは、ストーリー重視と割り切れた。
山本 “真田幸村の生涯”では、どうしても描ききれなかったエピソードを前談秘話に収録したことで、すごいボリュームになったと思います。
小林 それでも登場しない武将がいますからね。『戦国BASARA2』で主人公を務めた前田慶次も、真田幸村の生涯には出てきません(苦笑)。あと、女性の武将も登場しないよね?
山本 幸村の物語に女性武将を絡めるのも難しくて。女性武将が出ないことに対する、ユーザーの反応は、想像以上に大きかったです。
小林 ただ、あえて公開していませんでしたが、“真田幸村の生涯”をクリアーすると、“真田の試練”と同じく、全46武将で真田幸村の生涯に挑めますので、読者の皆さんはご安心を。
田中 “真田の試練”は自分が絶対にやりたいとお願いした要素ですね。『戦国BASARA』シリーズはアクション性の高さも魅力なので、それが堪能できるチャレンジモードを用意したくて。初心者の方も遊びやすいように、途中からやり直せる仕様にしていますが、最初から59戦まで連戦すると、最後に特別なステージに挑めるようなやり込み要素も用意しています。
山本 せっかくだから、“真田の試練”のオススメの攻略方法を、ここで言ってみては?
田中 武将に装備させる“型”の選択が重要になりますが、基本的には、武将ごとに用意された専用の型が強力です。この型は、“真田幸村の生涯”をクリアーすると購入して強化できますね。
山本 型の購入や強化に必要な“文銭”は、やっぱり六丸チャレンジで稼ぐのがいいのかな?
田中 そうですね。あとは“虹色チャンス”でも稼げますし、文銭が獲得しやすくなる型を利用するのも手ですね。型をある程度強化しているなら、“真田の試練”も効率がいいです。
野中 六丸チャレンジは、表のほかに裏も用意していて。さらに、最高難度の“三途之河”で達成しようとすると、かなり難しいですよ。
小林 この難易度、最終的に“三途之河”になったけど、最初は“地獄”って名前だったね(笑)。地獄だと怖いイメージが強すぎるので、その途中と言うことで三途之河に。
野中 三途之河だと敵兵が頑丈で、なかなか倒れてくれないんですよね。ヒット数だけはグングン上がるから、「俺、強いな!」って錯覚するんだけど、敵がほとんど減っていないという(笑)。
多くの人に遊んでほしい1本です!
小林 最後に、ファミ通読者の皆さんに向けて、ひとりずつコメントを残しましょうか。
田中 これまでの『戦国BASARA』シリーズからのファンの方にも、十分満足していただける内容になったと思います。盛りだくさんの内容ですが、入口はシンプルなので、初めての方にも遊びやすくなっています。ぜひ手に取っていただきたいと思います。
山本 今回は新しいチャレンジで戦国ドラマをしっかりと描いた作りになっています。真田幸村が多くの武将たちに出会って成長していく、スタッフの魂がこもった熱き戦いに注目してください。
野中 『戦国BASARA』の新たな切り口として、本作が皆さんに受け止めていただきたいです。皆様、ぜひよろしくお願いします!
小林 やり込み要素は豊富だし、幸村の視点で新たな物語が楽しめるので、本作で『戦国BASARA』をさらに好きになってもらえるとうれしいですね。『戦国BASARA』が初めてという方も、ぜひ遊んでください!
戦国BASARA 真田幸村伝
メーカー | カプコン |
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対応機種 | PS4プレイステーション4 / PS3プレイステーション3 |
発売日 | 2016年8月25日発売 |
価格 | 各6990円[税抜](各7549円[税込] |
ジャンル | アクション / 歴史 |
備考 | ダウンロード版は各6472円[税込](各6990円[税込]) シリーズプロデューサー:小林裕幸、シリーズディレクター:山本 真、プロデューサー:野中大三、ディレクター:田中俊宏 |