“Ruby・コンテンツフォーラム”の総会にカヤックの柳澤氏が登場
福岡県の産学官による“福岡県Ruby・コンテンツビジネス振興会議”を中心に、プログラミング言語“Ruby”を活用したソフトウェアとコンテンツの産業振興における取り組みの一環となる“Ruby・コンテンツフォーラムFUKUOKA”の平成28年度総会が2016年7月12日、福岡県・西鉄グランドホテルにて開催された。ここで同総会の模様と、“面白法人カヤック”代表取締役CEO・柳澤大輔氏が行った講演の様子をお届けする。
第一部は“福岡県Ruby・コンテンツビジネス振興会議”の総会となっており、福岡県Ruby・コンテンツビジネス振興会議 会長 デジタルハリウッド大学・大学院学長 杉山知之氏による会長あいさつ、福岡県副知事・服部誠太郎氏の主催者あいさつ、経産省商務情報政策局・最上欣也氏の来賓あいさつが行われた後、平成27年度の事業報告・決算案、平成28年度の事業計画・予算案の議事が述べられていった。
▲福岡県Ruby・コンテンツビジネス振興会議 会長 デジタルハリウッド大学・大学院学長 杉山知之氏
▲経済産業省商務情報政策局文化情報関連産業課長・最上欣也氏
第二部は“Ruby”に関する取り組みや事例などを、さまざまな分野で活躍する第一人者が登壇し、講演を行うスタイルとなっている。今回、講演の舞台にあがったのは先述した“面白法人カヤック”代表の柳澤氏のほかに、Rubyの開発者であり、“福岡県Ruby・コンテンツビジネス振興会議”の特別顧問も務めるまつもとゆきひろ氏と、個人向けの自動家計簿・資産管理サービスを提供しているマネーフォワードの取締役、瀧俊雄氏の3名。それぞれが自社の取り組みや、講演テーマに基づくカンファレンスを行っていった。
▲Ruby開発者まつもと氏の講演テーマは、“RubyとIoT(Internet of Things)”。Rubyとは、1995年に公開されたオブジェクト指向スプリクト言語で、その設計思想や手軽さなどにより、世界中のプログラマーに支持されているプログラミング言語のひとつ。 まつもと氏は、IoTにおけるデバイスの在り方を、インターネット登場時の状況から現在を経て、未来を視野に入れた考えを元に紹介。さまざまな用途に利用できる軽量型Ruby(mruby)の取り組みも交えつつ語っていた。
▲マネーフォワード 取締役・瀧氏の講演テーマは、“Fintechで不安をなくす”。マネーフォワードは、個人向けの自動家計簿・資産管理サービスを提供している企業。瀧氏は、金融サービスの新たな時代を作る可能性を秘めているといわれる“Fintech”(Finance:金融とTechnology:技術を組み合わせた造語)により、新たなサービスやインフラがIT業界から再構築されていき、社会の利便性・生産性が改善されていくことで、結果的に不安感の解消に繋がっていくと語っていた。
“面白法人”が掲げる経営理念とは
“カヤック”は、柳澤氏を含む、大学時代の同期3人の頭文字を取って名付けたもの。3人はそれぞれの進路をあみだくじで決め、その結果柳澤氏はサラリーマンとしてソニー・ミュージックエンタテインメントに入社したとのこと。それからおおよそ2年の経験を積み、ふたたび3人が集結し、“カヤック”を設立。ただし、立ち上げ当初は何をやるかも決まっておらず、最初の頃の給料は5万円だったとのこと。
オリジナリティのあふれるコンテンツをウェブサイト、スマホアプリ、ソーシャルゲーム市場に発信する同社が、経営理念に掲げるのは、“つくる人を増やす”。作る側になるということは、主体性を持つということであり、自分を見つめること、誰かに与えることであると柳澤氏は語る。この経営理念を社員全員が共有できるようにするため、“カヤック”ではブレスト(Brainstorming)を頻繁に行っているとのこと。ブレストをくり返すことにより、各社員のコミュニケーションも図られ、結果的におもしろいコンテンツも生み出されていく。
ちなみに、“カヤック”に入社していちばん最初に手がけるのは、名刺に入れる自分のロゴを作ってもらうこと。
▲“面白法人カヤック”代表取締役CEO・柳澤大輔氏
▲“面白法人カヤック”代表・柳澤氏の講演テーマは、“面白法人カヤックが「つくる人を増やす」”。カヤックの代表取締役CEOの柳澤氏は、慶應義塾大学卒業後、ソニー・ミュージックエンタテインメントに入社。1998年に学生時代の友人とともに、“面白法人カヤック”を設立。鎌倉に本社を構える同社の事業内容はシンプルで、日本的な面白コンテンツを作ることだけに注力して活動を行っている。
▲主な事業としては、クライアントからの依頼に沿った広告や販促、キャンペーンを手がけているが、「おもしろいものを作ってくれ」という漠然とした依頼が多いとのこと。業績も順調に伸び続け、いまでは関連企業も含めると300名以上の社員を抱えるほどに。
▲おもしろいことを追い続け、2014年12月に 東証マザーズ上場を果たしたカヤック。鎌倉の企業としては、唯一の上場企業とのこと。東証の証券コードは、3904(サンキュー オモシロ)になったのはたまたまだと柳澤氏は語っていた。
▲“カヤック”のコーポレートサイトは7月7日にリニューアルを行ったばかりで、多種製をテーマに5種類のサイトを切り替えて表示ができるとのこと。柳澤氏は「かなり世界観が変わって見えるので、ぜひ見てください」と、自信を持って語っていた。
▲昨年手がけて、およそ2000万回以上利用され、Yahoo!インターネットクリエイティブアワードグランプリを獲得したた“ちゃんりおメーカー”。これは、サンリオ風のアバターキャラクターを作り上げるというもの。
▲“Oculus”を利用し、坂本龍馬に面接をしてもらっているかのような体験ができる“VR面接”。こちらはDODAのキャンペーンに合わせて制作したもので、音声認識技術も採用しているとのこと。
▲同じくVRを利用した“面白”企画の“VR寿司”。これは、実際にはアボカドが握り寿司として出てくるところ、VR内では大トロに見えるようになっており、味覚を視覚でジャックするという、実験的VRコンテンツ。この応用で、“VRレストラン”として安い食材を高級に見せるといったものも考えられるとのこと。
▲カヤックが手がけるソーシャルゲーム『ぼくらの甲子園ポケット』。オンライン上で知り合った仲間とチームを組んで、甲子園の優勝を目指すという、オンラインで最高の友情体験を味わえるコンテンツとなっている。
▲コミュニティーもコンテンツのひとつということで、国内最大級のスマートフォンコミュニティ“Lobi -Chat & Game Community”も提供している。
▲新しいサービスとして立ち上げた結婚サービスのコンテンツ。これは、式場とのマッチングを行うのではなく、プランナーとのマッチングを行い、式場やプランを決めていくというもの。
▲いろいろなコンテンツを手がけるからには当然、失敗事例も相応あるとのこと。カヤックでは、失敗・撤退事例をすべてサイト上で公開している。
▲“カヤック”が過去に行ってきたおもしろ採用企画の数々。エイプリルフール限定の“経歴詐称でエントリー”や、佐藤という名字のみを受け付ける“佐藤採用”など、ひと目で気を引くおもしろ企画がずらりと勢揃い。とくに“佐藤採用”では、面接官も佐藤姓が揃っているうえに、エントリーシートの名字欄は“佐藤”が最初から記されているほどの懲りようだが、これらの企画は単なる洒落ではなく、実際に採用もしているとのこと。
▲“面白法人”に込めた思いは、まず自分たちがおもしろがること。そのためというわけではないが、“カヤック”では給料日前に全社員がサイコロを振り、 月給×サイコロの出た目%が、給与にプラスαされる“サイコロ給”制度が採用されている。
このように、とにかく“面白”という部分には徹底的にこだわり、3ヵ月おきに社員におもしろがっているかの判断を10段階でしてもらい、おもしろがってない人には人事部が真摯に話し合いを行ったり、部署のリーダーを呼び出したりしてディスカッションを行うほどの気の入れよう。何か世の中を変えるためには、世の中から認められている会社である必要があるため、作っているものもとことんおもしろさにこだわり、おもしろい人をどんどん増やしていく。そのための経営理念が、“つくる人を増やす”こと。会社にやらされてるのではなく、自分がおもしろがって作っていけば、おもしろがる人も増えていく。そうすることで、社会に対しての変革ももたらすことができると柳澤氏は語っていた。