新プロジェクトも進行中!

 2016年7月9日~10日、京都市勧業館みやこめっせにてインディーゲームの祭典BitSummit 4thが開催。会期2日目となる10日、BitSummit初登場となるミストウォーカーの坂口博信氏に、インタビューを敢行。新会社立ち上げから新規プロジェクト、そして試写を観た『キングスグレイブ ファイナルファンタジーXV』についても感想を伺った。

坂口博信氏にインタビュー 新会社設立や新プロジェクト、『キングスグレイブ FFXV』について直撃取材【BitSummit 4th】_02
▲坂口博信氏(写真左、文中は坂口)
ミストウォーカーコーポレーションCEO。スクウェア(当時)より『FF』を世に送り出した、『FF』の生みの親。現在は『テラバトル』を運営中。ブースで売り込をしていた波多野大氏(『テラバトル』シナリオ担当)といっしょにパチリ。

――今回BitSummitに初参加ということですが、実際に参加してみていかがでしょうか?

坂口 シアトルで開催されたPAX(アメリカで行われているゲームイベント)に先日参加したのですが、PAXはユーザーのためのイベントで、とても盛り上がっていました。BitSummitもPAXに近い印象ですね。せっかくステージ登壇のお話もいただいたし、だったらうちも出展しようかなって……商売欲がでてきちゃたんですよ(笑)。

――ステージに出演するだけではなく、ブースも展開しようと(笑)。

坂口 あとは、京都という素晴らしい場所で開催されるなら、みんなで楽しんでいこうかなと。

――ブースを拝見させていただいたのですが、ファンの方にサインをしたり写真を撮ったりと、距離感の近いコミュニケーションを取っていましたね。

坂口 そうですね。あとは、意外とゲーム開発者の人が遊びに来てくれることが多くて、「今度いっしょに何か作りましょう」とか、真剣な商談になったり(笑)。そういう意味でも役に立つイベントだなと思いました(笑)。

――参加者(出展社)の方は、年齢的に『ファイナルファンタジー』シリーズを遊んできた人が多かったと思います。「まさか坂口さんと同じ場所で出展してるとは」という感じでしょうね(笑)。

坂口 そうかもしれませんね。あとは、昔スクウェアに勤めていた人とか、とにかく懐かしい顔ぶれが10人程いたので驚きました。昔の仲間たちと交流もできましたし、とても充実していましたね。

――なるほど。そういえば『ファイナルファンタジー』、『II』、『III』と『クロノ・トリガー』のカセットを持ってきていたファンの方もいましたね。

坂口 僕が生放送で、「カセットとか何か持ってきてくれたらサインしますよ」と告知していたので、結構持ってきてくれていましたね。でも、あそこまでたくさん持って来てくれたのはその方だけです(笑)。

――そういう意味でいうと、坂口さんはいまニコニコ生放送に積極的に出演されていらっしゃいますが、リアルでのコミュニケーションって意外とあまりなかったと思います。今回は貴重なイベントだったのでは?

坂口 そうですね。ユーザーやファンの方が熱く語ってくれるので、たまにはこういうのもいいなと思いました。あとは立命館大学の留学生に、「『ファイナルファンタジーV』に感動して、日本を勉強するきっかけになった!」という人がいたんですよ。「ゲーム開発するなら、日本でやりたい」と。そういう人が結構多かったんですよ。「坂口さんのおかげで僕はいま日本にいます」みたいな(笑)。

――昨日ステージに登壇されていらっしゃいましたけど、新会社の話もされていらっしゃいましたね。
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坂口 そうですね。“ドーンウォーカー(DAWNWALKER)”という名前が候補にあがっています、「朝焼けを歩く者」という意味ですね。早くもスタッフから「徹夜をしろってことですね」と言われてるんですよね。「朝焼けまで働け」みたいな(笑)。新会社はイラストレーターをメインに人を集めて、9月ごろには立ち上げたいなと思っています。 藤坂公彦(ミストウォーカー)が取締役で、イラストレーター集団プラス、放送スタジオを作ります。自分たちの放送もそこでやりますし、実況者に使っていただいて交流の場にしたいなと。

――楽しみですね。新会社設立と同時にプロジェクトもいくつか進んでいくのでしょうか?

坂口 現状、ふたつ進んでいて、イラストレーターも関わっています。もうひとつくらい同時に進めたいのですが、まだ企画段階ですね。

――シリコンスタジオとの共同開発でも、プロジェクトが進んでいるんですよね。

坂口 そうですね。それとはもうひとつ、『テラバトル』がらみではないものもやりたいと思っています。

――たくさんのプロジェクトがありますが、当初からの予定だったのでしょうか?

坂口 おおよそ計画通りです。

――楽しみにしています! そういえば、坂口さんはVRにも興味はあるのでしょうか?

坂口 ありますねー。VR版『テラバトル』を作って、コンシューマー版で出してもいいのかな?

――いいんじゃないでしょうか(笑)。

坂口 それがいいかなぁ~? でもまだぜんぜん計画もなにもありませんけどね(笑)。

――パズルゲームをVR空間でプレイする感じですかね。

坂口 まあそうなりますよね。ちょっと想像はつかないですけど。バルとかグレースのスカートの中を覗くゲームになるのかも……(笑)。

――(笑)。それはちょっと違うような(笑)。

坂口 全然違いますよね(笑)。まだぜんぜんアイデアは浮かばないけど、面白そうではありますね。VRに関しては、あわてずゆっくり、いいアイデアが浮かんだら作ろうかなという感じです。

――BitSummitの話に戻りますが、ブースは見て回られました?

坂口 開場前に少し見て回りました。VRタイトルが多いなと思いましたね。スノーボードを体験したり乗馬を体験したり……。

――アトラクション系じゃないタイトルも、いくつかありましたね。

坂口 ハンバーガーを作ってゾンビに投げる『DEAD HUNGRY』とかは、「おもしろいな~」て見てました。

――VRに関しては、初代プレイステーションが出たころみたいな熱気を感じますね。

坂口 そうですね。いまのコンシューマー向けゲームは売上を考えなくてはいけないので、ジャンル的に似通ってきますけど、ハンバーガーを作って投げるのは、インディーゲームならではだなと思いました。僕は“Apple II”用のゲームにカルチャーショックを受けてゲーム業界に入ったんですが、あのころの雰囲気に似てると思いますね。

――『DEAD HUNGRY』はVRだから企画が通りますけど、コンシューマー向けだったら企画が通らないかもしれませんよね。

坂口 通らないでしょうね(笑)。でもこうやってVRでインディーゲームが盛り上がっていくのはいいと思います。

――因みに、『テラバトル』の物販の売り上げって、どのくらいなんでしょうか?

坂口 Tシャツを300枚持ってきて、結構売れていますね。1万円の福袋も10個作ったのですが、いま残りひとつになりました。いや~商売してますね(笑)。

――すごいですね。Tシャツも元値よりかなり安く売っていますね。

坂口 逆鞘ですけど、一応ユーザーサービスということで。安く購入していただいて、サインをして写真を撮って……とにかく楽しんでもらえればと。

――これだけのサインをしたのって、久しぶりじゃないですか?

坂口 久しぶりですね。以前フランスのJAPAN EXPOに参加したときは、「サカグチサン、コチライラシテクダサーイ。ココスワッテサインシテクダサーイ」って言われて行ってみたら、500人くらいお客さんがいて! 3時間もサインを書き続けましたよ(笑)!

――(笑)。でも日本だとサイン会はあまりないので貴重ですよね。

坂口 そうですね。結構ファミコン世代の年配の方もいらしてくれて、うれしかったです。

――では新作発表とタイミングが合えば、来年もBitSummitに参加する予定でしょうか?

坂口 新作は一応2017年前半に出来上る予定なので、すこし時間が経った夏に出展するのはちょうどいいかもしれませんね。でも新作の試遊出展じゃなくて、新作関連のグッズを売ろうかな(笑)。

――そっちですか(笑)。でもキャラクターグッズがうまいことあるとユーザーも喜びそうですね。

坂口博信氏にインタビュー 新会社設立や新プロジェクト、『キングスグレイブ FFXV』について直撃取材【BitSummit 4th】_03
▲ひそ星人

坂口 まずはひそ星人を有名にしたいですね!

――では、新作の開発も、着々と進んでいると。

坂口 だいぶ進んではいますね。絵もかなり出来上っていますし、映像も作っていますし。3~5割くらいまで進んでいます。

――わりとベースの部分も固まってきたと。

坂口 ベースはほぼ出来上がっています。年明けくらいには何らかの情報が出せるかなと。

――せっかくなのでお聞きしますが、ステージで『キングスグレイブ ファイナルファンタジーXV』をすごくよかったと仰っていましたが、ぜひ感想を。

坂口 観る前は「凄い映像だけど、115分も持たせるのはキツイよね。途中で質が落ちるカットが入りそうで観るのが怖いな」と思っていたのですが……。いやいやまったくそんなことはなく、終始トレーラーのクオリティのまま、終盤の戦闘シーンなんて、それ以上のクオリティだったので、とにかくすごいの一言ですね。映像演出も素晴らしいですし、ストーリーに関しても、重い父親の話を知ったうえで、ノクトという青年をゲーム本編であやつる。それだけでグッときます。

――感情移入の度合いが違いますよね。

坂口 そうですね。これはなかなかおもしろい、すごい贅沢だなと思いました。正直デモ版の『FFXV』をプレイしたときは、「こんな男4人で旅して、どこがおもしろいの?」って若干思ったんですけど(笑)。

――(笑)。

坂口 「クルマで旅してないで、そのままラムウの手のひらに乗せて連れて行ってもらえよ!」と思ったのですが、『キングスグレイブ ファイナルファンタジーXV』を見て、彼らが旅している理由が分かりました。ノクトが俄然好きになりましたね。

――おお!

坂口 ルーナも好きになっちゃいましたね。いつ本編ででてくるのか楽しみでしょうがない。

――この感想は田畑さん(田畑端氏。『FFXV』ディレクター)に伝えたのですか?

坂口 まだ伝えてないですね。

――ではこれを読んでくれたら喜びますね。坂口さんのお墨付きということで。本日はありがとうございました。

坂口博信氏にインタビュー 新会社設立や新プロジェクト、『キングスグレイブ FFXV』について直撃取材【BitSummit 4th】_01
▲ブースは物販メインで展開。多くのファンが詰めかけていた。