VRのサービスをいち早く考える共同プロジェクトの体験型発表会

 2016年6月30日、東京・フジテレビのマルチシアターにて、フジテレビとグリーの共同プロジェクト“F×G VR WORKS”の体験記者発表会が行われた。フジテレビ永島優美アナウンサーとのデートコンテンツ体験から始まった発表会のリポートをお届けする。

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 “F×G VR WORKS”は、2016年5月10日に発表がされたばかりのVRコンテンツ創出プロジェクトとなっており、フジテレビとグリー、双方の強みを活かしたVR関連のコンテンツ制作、配信といったサービスを行うプロジェクトとなっている。
 発表会の座席には、それぞれ“Gear VR”が用意されており、まずはこちらを装着した状態でイベントの始まりを待つという、これまでにない形での発表会のスタートとなった。これは、発表会に訪れた参加者全員が、無線制御によって同期されたVRコンテンツを同時に体験するという、業界でも初の試みとのこと。

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▲発表会会場内の座席には、一席につきひとつの“Gear VR”が用意されていた。
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▲会場内の来場者皆がヘッドマウントディスプレイを装着した状態の中、発表会が開始されることに。

 まずは“永島優美アナのヴァーチャルお忍びデート”という、フジテレビの永島アナとの疑似デート体験を楽しめるコンテンツが、ヘッドマウントディスプレイの視界内でくり広げられていった。

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▲コンテンツが終了すると、まるでたったいまVRで体験していたデートから戻ってきたと言わんばかりの雰囲気を漂わせて、永島アナが登場。以降はフジテレビ三宅正治アナウンサーとともに、司会進行を務めていた。

 軽い体験イベントが終了したところで、フジテレビの常務取締役・大多亮氏と、グリーの代表取締役会長兼社長の田中良和氏が登壇。それぞれ、いま現在のVRの情勢や、今回のプロジェクトに関する意気込みを語ってくれた。

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写真左:フジテレビジョン 常務取締役・大田亮氏 写真右:グリー 代表取締役会長兼社長・田中良和氏
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大多亮氏 いまから数ヶ月前、田中さんと食事をしたときに、「VRって知ってますか?」と聞かれたのです。世間ではこれからはVRが来ると言われていましたが、僕は3DTVのようになってしまうのではないかと懐疑的に思っていました。ですが、田中さんに「だまされたと思って、一回試してください」と言われて、実際に体験させていただいたところ、その没入感のすごさに驚愕し、ビジネスの広がりを感じました。フジテレビとしてVRのコンテンツを提供するチャンスを絶対に逃すわけにいきませんよね。我々にはエンターテインメント、報道、スポーツといった、あらゆる映像を作ってきた強みがあります。この強みを活かせば、もしかするといままでにないコンテンツができるのではないか。VRのコンテンツはこれからのものですから、先行者のメリットを得られるはず。そういった考えもあり、今日の発表を迎えさせていただきました。

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田中良和 大多さんとはこれまで何回もお会いしてきており、何か新しい取り組みができたらと思っていたのですが、今回VRで新しい取り組みをいっしょにできて、うれしく思っています。Windows95が発売されて約20年、スマートフォンが登場して約10年、次にくる新しいプラットフォームとして、VRが来ようとしています。我々はこれまで、ソーシャルネットワークやゲームを手がけてきましたが、VRの領域においては、映像も含めた総合的なコンテンツ力が問われると思っています。そこで、大多さんにお声がけをさせていただき、今回の発表に至りました。私自身も数年前に「これからVRの時代が来る」という話は聞いていましたが、当時は半信半疑でした。ですが、今年登場してきているVRデバイスを見て、「これはこれまでと違った新しい流れが来ている」と感じました。こういった時期に、誰よりも早く参入し、新しい機会を作っていくことが我々の使命だと思っています。

 大多氏、田中氏による“F×G VR WORKS”に関する取り組みの説明が終わった後は、フジテレビジョン コンテンツ事業局長の山口真氏が登壇。今回のプロジェクトの戦略とビジョンに対する説明が行われた。

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▲フジテレビ コンテンツ事業局長・山口真氏
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▲テレビ業界は2兆円の市場規模だが、2020年のVRの市場規模は、7兆円を超えるとの予測もされているとのこと。これからあらゆるプレイヤーがこの市場に殺到してくる中で、日本での市場で先陣を切りたいというのがフジテレビ・グリーの考えと山口氏は語っていた。
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▲VR市場に本格参入する動機はシンプル。山口氏曰く、大多・田中会談で、お互いによい補完関係が見つかったことにより、今回の共同プロジェクトが発足したとのこと。
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▲ゲーム、CGの開発力・リソースはグリーが、キャスティングを含めた制作力はフジテレビが持っているなど、お互いの得意なものを組み合わせることで、最高の補完関係が築けるというのが、“F×G VR WORKS”の考えの根本になっている。
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▲プロジェクトの第1弾は、BtoBのサービスを提供予定。最初は制作受託を主力にしつつ、さまざまなニーズに合わせて、企画・コンテンツ制作・サービスイン・プロモーションといった一連の流れを、連携したサービスを提供できる存在を目指しており、現時点でいくつかの企業より相談も来ているとのこと。

 最後に山口氏は、グリーを始めとするさまざまなメーカーの力を借りながら、VRの報道レギュラー番組をフジテレビで配信しようと考えていることを公表。1週間ないし2週間のレンジで、記者やディレクターが、素晴らしい景色や、災害現場、記者会見場といった報道の最前線の現場を、VRで紹介する番組の配信を目指しているとのこと。また、VRによってドラマもまったく新しいものが誕生したり、バラエティーでも無限の可能性が広がることを示唆。フジテレビがこれまで協力してもらっているアナウンサー、俳優、アーティストをVRの世界に招き入れることで、圧倒的なエンターテインメントを作りだすことができると語っていた。

 山口氏によるプロジェクト説明終了後は、本日のスペシャルゲストとしてスポーツジャーナリストの前園真聖さんと、女子大生実業家の椎木里佳さんがステージに登壇。VRは経験済みという椎木さんと、VR初体験という前園さんのふたりに、今回の“VR体験記者発表会”用に用意されたコンテンツを実際に体験してもらうことに。

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▲写真左:椎木里佳さん(AMF代表取締役・実業家) 写真右:前園真聖氏(スポーツジャーナリスト)

 まず始めに椎木さんが体験したのは、東日本大震災の大津波から327名の命を救ったことで、震災遺構として保存が決まった宮城県南三陸町の高野会館を元に、当時のアーカイブ写真や映像を交えながら、震災の記録を360度映像で綴ったコンテンツ“私はこの場所で被災した”。こちらは、現在の髙野会館のVR映像に、震災当時の画を重ね合わせることで、震災時の様子をリアルに感じ取ることができる、ジャーナリズムの新たな見せ方を提案したものとなっている。

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▲コンテンツは、髙野会館を5年間取材し続けてきたフジテレビ記者の案内により、当時のアーカイブ写真や映像を交えながら、震災の記憶が綴られている。
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 「被災地って普通は訪れることが難しいですが、その場にいるかのような感覚を体験することができました。あんなに高いところまで波が来ていたのかというのは、モニターでは体験できないものだと思います」とは、VR体験後の椎木さんの弁。

 続けて、前園さんが体験したのは、遠隔地の友人などといっしょに共通のVR空間で、共通のコンテンツを視聴し、友だちといっしょに盛り上がるといった、スポーツの楽しみ方をより発展させたコンテンツ“マルチスクリーンスポーツ ソーシャルルーム”。こちらは、現在ではまだ珍しい、ヘッドマウントディスプレイを装着した複数人が同じVR空間に入り込み、スポーツ観戦を楽しむといったものとなっている。今回は、前園さんに加えて、先ほどのコンテンツも体験した椎木さんとのふたりで体験に挑戦。

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▲コンテンツが開始されると、大きなリビングの中にふたりがいる状態が再現され、巨大なモニターに映し出されたバレーボールを観戦することに。
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▲VR空間内では、ヘッドマウントディスプレイ装着者の頭部と両手の位置が表示されており、お互いの位置を認識できる状態となっている。
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 VR初体験を終えた前園氏は、「こういった応援の仕方はけっこうおもしろいですね。こんな大画面のモニターは家にはないので、臨場感がとにかく凄かったです」と鼻息も荒く、興奮した気持ちを語っていた。

 以上をもって、“F×G VR WORKS”VR体験記者発表会は終了となった。イベント終了後は、本発表会で取り扱った3種類のコンテンツ(永島優美アナのヴァーチャルお忍びデート、私はこの場所で被災した、マルチスクリーンスポーツ ソーシャルルーム)に加え、不動産×VR“VR内覧&家具レイアウトシミュレーター”、観光×VR“Don’t you Know MARUNOUCHI?”、タイムトリップビュー×VRの計6種類のコンテンツの体験コーナーが設けられていた。

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 イベント終了後、山口氏に先日設立されたフジゲームスとの協業や関連はあるのかを質問させていただいたところ、現時点ではまだ何も決まっていないが、今後必要に応じて、さまざまな展開を行っていくとの回答をいただいた。まだ立ち上がったばかりで、発表できる具体的なサービスはないものの、現在もさまざまな会社から話をもらっているとのことで、近いうちに“F×G VR WORKS”としての新サービス発表が行われることになるだろう。とくに、今回用意されていた“マルチスクリーンスポーツ ソーシャルルーム”のような、多人数同時参加型のVRコンテンツは、現状それほど多く存在していないが、今後VRの発展を促すためにも必須のサービスだと思われる。ファミ通.comでは新情報が入り次第お伝えしていくので、続報をお楽しみに。