原作を知らなくても十分に楽しめる! ファンタジー好きなら見て損はなし! むしろ見ておくべき娯楽超大作の日本公開迫る!!
皆さんは『ウォークラフト』というゲームをご存知でしょうか。
ゲーム好きのユーザーの方なら、「なんとなく聞いたことがある」という人も多いと思います。
この『ウォークラフト』シリーズですが、日本での正式発売やサービスはほとんど行われておらず、そのために名前は聞いたことがあるものの、その実体はよくわかっていない……といった人が多いのではないでしょうか。
簡単に説明すると、いまもっとも知られているマルチプレイオンラインRPGとも言える、世界的に有名なゲームの1本です。
そんな『ウォークラフト』の映画が、この夏に、いよいよ公開となります。
※日本では、『ウォークラフトII』と『ウォークラフトIII』はそれぞれPC版が、『ウォークラフトII』の拡張パックとなる『ウォークラフトII ダーク・サーガ』はプレイステーション版とセガサターン版(発売はエレクトロニック・アーツ・ビクター)が1997年11月27日に発売されたほか、PC版『ウォークラフト III(日本語版)』(発売元はカプコン)が販売された実績もあり。
『ウォークラフト』は、MORPG(多人数参加型オンラインRPG)の先駆けとなった『ディアブロ』シリーズや、全世界でのプレイヤー数が1000万人を突破(2016年6月15日現在)したアクションシューティングゲーム『オーバーウォッチ』を手掛けるゲーム開発会社のブリザード・エンターテインメント社が、自社の創業年である1994年に世に送り出した作品で、これまでにシリーズ3作と、MMORPG(大規模多人数同時参加型オンラインRPG)の『ワールド オブ ウォークラフト』がリリースされています。
とくに『ワールド オブ ウォークラフト』に至っては2010年に登録ユーザー数が1000万人を突破し、“最多登録者数のMMORPG”としてギネスブックに記録されるなど大きな人気を博しており、シリーズすべてを合わせると延べ1億人以上がプレイしている、いまや世界でもっとも知られているオンラインRPGと言えます。
世界的人気ゲームが、ゲーム原作映画の歴代興収No.1を記録!
この世界的に超弩級のヒットを飛ばしている『ウォークラフト』の世界観をそのままに、壮大なスケールで描いた超大作映画が、今夏(2016年7月1日)よりいよいよ公開となります。ちなみに、7月1日の日本公開に先駆けて公開されたロシアやドイツ、フランス、北米、中国など、46の国と地域でオープニング興行成績1位を獲得しており、SNS上でも「原作に忠実な作品」、「美しい世界観」など、称賛の声が多数あがっています。また、6月21日の時点で全世界での興行収入も3億7841万ドル(※)を突破。これは、ゲーム原作の映画作品としてこれまでNo.1だった『プリンス・オブ・ペルシャ/時間の砂』(3億3636万ドル)や、『バイオハザードIV アフターライフ』(2億9622万ドル)、『トゥームレイダー』(2億7470万ドル)といった人気作の記録を、インターナショナルの公開日からわずか3週間で抜き去るほどの快挙です。
※6月21日時点、BOX OFFICE MOJO調べ
そんな話題の作品をいち早く鑑賞する機会が得られたので、配給元となる東宝東和さんへさっそく伺わせていただきました。
と、試写を見終わったところで、普通はここから細々と作品紹介に入っていくところですが、そうすると長くなってしまいそうなので、最初に結論を述べさせていただくと、本作は原作好きはもちろんのこと、原作を知らない方でも間違いなく楽しむことができる作品に仕上がっていると思います。
これまでゲームの映画化作品はヒット作から、少し微妙ともいえる作品まで多数登場してきていますが、筆者の個人的主観で言わせてもらうと本作は紛れもなく傑作に分類できる作品で、『ウォークラフト』なんて聞いたこともないという人でも問題なく楽しむことができるはず。とくに、『ロード・オブ・ザ・リング』をはじめとする王道のファンタジー作品が好きな人には、間違いなくおすすめできる作品です。
今回、この壮大なファンタジー作品を手掛けたのは、これが劇場映画として3作目の監督作品となるダンカン・ジョーンズ。よほどの映画好きでないとあまり聞き覚えのない名前かもしれませんが、あのデビッド・ボウイを父に持ち、これまでに手掛けた『月に囚われた男』(2009年、日本公開は2010年)、『ミッション:8ミニッツ』(2011年)ともに高評価を集めており、いまもっとも期待される新鋭監督のひとり。
筆者はどちらの作品も公開時に鑑賞していますが、独特な世界観や演出、皮肉の効いているオチなど、個人的にとてもお気に入りの作品です。ダンカン・ジョーンズ監督は、キャラクターの描き方と伏線の張り方がとにかく秀逸で、物語への引き込みかたも非常に優れており、個人的にも“この監督の映画なら見てみたい”と思わせる監督のひとりです。ただ、試写を見る前の筆者は、どちらかというとインディペンデントチックな雰囲気の映画作品のほうがこの監督には合っているのではないかと、若干の不安も持っていたのですが、そんな心配はまったくの杞憂でした。
剣と魔法が支配する“アゼロス”で壮大な戦いの幕が切って下ろされる
剣と魔法が支配し、さまざまな種族が住んでいる架空の世界“アゼロス”と、アゼロスを統べるレイン王に騎士のローサー、魔法使いのメディヴ、オーク族の魔法の使い手のグルダン、その片腕のブラックハンド、グルダンに反するオークの戦士デュロタン、デュロタンの戦友オーグリム(原作ではブラックハンドの手下)まで、その世界感やキャラクターなどの主要部分は、ゲームの第1作に沿ったものになっています。
アゼロスと、オーク族の住むドラエナーの、ふたつの世界をダークポータル(異次元間をつなぐ魔法の扉)でつなぎ、そこからオーク族が攻め入ってくるといった物語の大枠も原作ゲーム通り。
重厚な剣を軽々と操る剣捌きは見事で、オーク族との体躯の差をものともせず、互角以上の戦いぶりを見せる孤高の騎士。
国民、兵士たちからの信望も厚く、それに応える行動力と決断力を兼ね備えた、アゼロスにあるストームウィンドの君主。
全知全能にして、無限の魔法の力を操るアゼロスの守護者。強大すぎる力を持つが故に、人知れぬ悩みを抱えることも。
女、子どもも厭わずに攻め入るグルダンの策略に懐疑的な思いを持つ、オーク族の気高き誇りを持った戦士。
不思議な力でオーク族を率い、アゼロスを第2の故郷にすべく攻め入ろうとする侵略者。
これまで倒してきた者たちの骨でできた装束を身に纏う、オーク族最強の戦闘マシーン。
骨も砕く巨大なドゥームハンマーを操る強靱な戦士で、デュロタンの盟友でもある。
物語の舞台となるアゼロスは、人間が築き上げた城下町、城などが優雅な大自然に囲まれた世界で、天空の城“ダララン”には強力な魔法使いたちが住んでいるなど、まさにファンタジー系RPGそのものの世界。守護者・ガーディアンの住む塔には魔力の回復の泉があったり、人を乗せて飛行する四つ足の巨大な鳥が乗り物として登場したり、異世界どうしをつなぐ扉“ダークポータル”の存在など、そこかしこにゲーム的な要素が散りばめられています。とくに魔法関連の描写は、これまでに登場したファンタジー映画のなかでも、よりゲームチックに描かれており、見た目はもちろんのこと、その使いどころや使い方など、「なるほど」と唸らせられる演出には関心することしきりです。
さらに、本作に登場するオーク族がじつに表情豊かで、役者に特殊メイクでも施して演じているのではと思えるほどの自然な出来映え。実際にデュロタンを演じるトビー・ケベル氏は目元こそ似ているものの、体型はデュロタンとは似ても似つかないほどスリムな俳優で、その他のオークたちも皆、演じている俳優はごく普通の体型の人たちばかりというのには驚きです。今回の撮影では、モーションキャプチャー用のスーツを着たトビー氏の演技を撮影後、すぐにリアルタイムで処理をして、現場でデュロタンの動きが確認できるといった新しい取り組みが導入されているとのこと。また、演じる俳優の身体の動きをデジタルデータ化するモーションキャプチャーに加え、表情の動きも取り込むフェイシャルキャプチャーの効果も一役買っていると思います。
ジョーンズ監督は、「この映画はオークに信憑性を持たせられるかどうかに懸かっていた」と述べていましたが、その点は問題なくクリアーされているでしょう。
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オーク族や人間の兵士たちが身に纏う装飾品や武器も本作の見どころのひとつ。オーク族は、ブラックハンドの骨の鎧や、デュロタンのピアスなど、見た目がごつそうな種族ながら皆なかなかにオシャレ揃い。人間だと持ちあげることさえ困難そうな巨大なハンマーや、手の甲に付けている巨大な骨の武器など、近接戦闘を得意とする種族らしい(格好いい)武装具を見て取ることもできます。そんな屈強なオーク族に立ち向かう人間たちも、重厚ながらも動きやすそうな甲冑を身に纏い、ドワーフが用意した強力な銃を用いるなど、体躯の差をカバーしながらの戦いぶりをみせてくれます。
これ以上、内容について触れていくと、いろいろとネタバレに直結しかねないので、以降は映画の内容については触れないようにしようと思いますが、最後にひとつだけ付け加えさせてもらうと、早く続編を作って欲しいと強く思いました。
誤解のないように言っておくと、今作だけでもしっかりと作り込まれており、1本の映画としてきちんと満足行く仕上がりになっています。でも、これだけ深く作り込まれた世界に、魅力的なキャラクターたちの活躍が今回だけで見納めなんて、あまりに寂しすぎます。最初に、ダンカン・ジョーンズ監督は伏線の張り方が優れていると言いましたが、おそらく続編に続くであろう伏線のようなものも見て取ることができました。とくに、本作は『ウォークラフト』シリーズの第1作をベースとしているため、続く第2作の『ウォークラフトII ダーク・サーガ』をベースにした続編の登場を願ってやまないところです。
皆さんもこの夏、極上の体験をしに、映画館に足を運ばれてみてはいかがでしょうか。最近のゲームは“体験する映画”といった表現をすることが多いですが、この『ウォークラフト』は、“ゲーム体験を感じられる映画”です。ファンタジー作品や、ファンタジー系RPGが好きな方は、きっと至高のひとときを味わえることと思います。
映画『ウォークラフト』大塚明夫氏のナレーションで壮絶な戦いを描く日本版予告編映像
映画『ウォークラフト』世界的ヒットの理由がわかる特別動画
■監督・脚本:ダンカン・ジョーンズ『月に囚われた男』『ミッション:8ミニッツ』
■脚本:チャールズ・リーヴィット『白鯨のいた海』
■キャスト:トラヴィス・フィメル、ポーラ・パットン、ダニエル・ウー、ベン・フォスター、ドミニク・クーパー ほか
■原題:Warcraft: The Beginning
■全米公開:2016年6月10日
■配給;東宝東和 http://warcraft-movie.jp/(⇒こちら)
7月1日(金)、TOHOシネマズ 六本木ヒルズほか全国ロードショー