”テレビゲーム”と”現実”の距離感がおもしろいブースに吸い寄せられてきました!
ニコニコ主催のイベントといえば、アクティブないまどきの若者たちのためのお祭り──そう決めつけて、かつては、心理的・物理的距離を広めにとっていました。しかし“インディー/自作ゲーム”というキーワードで仕事との接点が増えてくると、否応なしにその輪の中に飛び込むことになり、抱いていたイメージと実際のところのギャップが、徐々に埋まっていきました。その結果、“おっさんゲーマーはどこまでいっても脇役だけれど、節度をもって臨めば、充分に楽しめる空間であることは間違いない”という認識で、落ち着きました。きっかけがどうあれ、何事も経験してみないと、あんばいはわからないものですね。
そして、今回のニコニコ超会議2016。どこに行っても人、人、人の会場内を回遊して、“テレビゲーム的”というキーワードに該当しつつも、テレビの枠(フレーム)からはみ出た魅力を感じとったブースを、いくつか紹介します。ニコニコ主催のイベント、ちょっと気になっているんだけどね……というおっさんゲーマーは、今後のイベント参加の検討材料にしていただければ幸いです。
あの頃は大きいと思っていたけど、いまでは……もっとデカい!!──巨大コントローラーブース
闘会議2016(2016年1月開催)でも話題になった、巨大ゲームコントローラーによるゲームプレイブースが、超ゲームエリアの一角に登場。今回はさらにパワーアップして、ふたつのコントローラーによる同時プレイが可能になりました。遊べるゲームは『マリオブラザーズ』(任天堂)、『バルーンファイト』(同)、『ツインビー』(KONAMI)の3タイトル。いずれも協力プレイ前提のルールながら、足の引っぱりあいも楽しめる、絶妙なチョイスです。
私が並んだ時間帯で遊べたのは『ツインビー』。ファミコン版は当時、何周もした覚えがあるので、コントローラーのサイズの違いくらい何てことはない……と息巻いて臨んだのですが、1面の中盤あたりで早くもゲームオーバー。コントローラーの大きさがどうこうというよりは、すさまじい入力遅延に対応しきれなかったのですが、それを言うとよけい惨めな感じがするので、プレイ後のひとことインタビューでもぐっとこらえました。ちなみに、いっしょにプレイした方(ファミコン版経験あり)は、きっちりステージボスまで進んでいました。
順番を待っているとき、列にひとりで並んでいた女の子に「このゲーム知ってますか?」とたずねると、初めて見るゲームです、とのこと。おっさんゲーマーなら知っていて当然の『ツインビー』も、超会議のメイン参加層にとっては何やらよくわからないゲームのひとつ、そもそもこの巨大コントローラーが何を模したものかも伝わっていないんだろうなと思うと、それはそれで、すがすがしい気持ちになりました。
これこそドローンの平和的利用法──超ドローン
クレーンアームが吊るされたドローンを操縦して、床に敷き詰められたビニール袋をアームに引っ掛けて、所定の位置まで運ぶ……という、UFOキャッチャーのドローン版です。ドローン本体はもちろんのこと、移動するたびにブラブラするアームをいかにコントロールするかも、腕の見せどころになっていました。
印象的だったのは、初めてドローンを操縦したという人も、案外、器用に制御できていたこと。このあたり、日ごろ養っている“ゲーム勘”が、少なからず反映されているようにも思いました。ゲームの腕前を現実世界の出来事にポジティブに活かす可能性が垣間見られたアトラクションでした。
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※Drone Game(“超ドローン”の企画・運営会社)公式サイト
人間の知覚はどこまで拡張できるのか?──Parallel eyes 視点交換鬼ごっこ(超VRアトラクションズ内)
SONY CSL(ソニーコンピュータサイエンス研究所)とYCAM(山口情報芸術センター)が共同研究開発する、“Jackinワークショップ”シリーズのひとつ。スマートフォンを利用したヘッドマウントディスプレイに映し出される、自分を含めた4人の参加者の一人称視点のカメラ映像を見ながら鬼ごっこをする……という内容で、迷路状に仕切られたフィールドを、参加者たちがおそるおそる(?)歩き回る姿が、印象的でした。
言うなれば、FPSの画面分割型マルチプレイモードの、リアル版。ゲームでは、ほかのプレイヤーの画面を“盗み見”することはアンフェアな行為に見なされがちですが、このワークショップでは、“ウェアラブルテクノロジーによって人間の能力や感覚を拡張していく事象”のひとつとして、視点のシェアが推奨されています。ブース責任者のSONY CSL・笠原俊一氏によれば、ワークショップ体験者は、この一見難解な機能を、思いのほかすんなりと、自身の知覚に取り込めるのだそうです。自分が置かれている状況の把握手段の拡張がもたらす未来像、気になります。
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※YCAM公式サイト
※SONY CSL公式サイト
誰もが波動を出して戦える時代が来ていた!──HADO(超VRアトラクションズ内)
エリア内でとりわけアクティブなムードをかもし出していたのが、最新ARシステム“HADO”のブース。スマートフォンを利用したヘッドマウントディスプレイと、手首に巻きつけるタイプのモーションセンサーを装着することで、手から魔法弾を放つなどの効果が付加された空間を体験できるというシステムで、ブースでは、対戦相手に魔法弾を命中させた回数を競いあうという、最大3on3のチームバトル競技を楽しめました。
プレイ中の人々の姿だけを見ていると、ドッジボールのような球技の真似事を必死でやっているようにしか見えませんが、フィールド横に設置されたライブモニターでは、魔法弾の軌道や攻撃がヒットしたときのエフェクトが、プレイヤーの位置や動きに合わせて映し出されます。プレイヤー当人だけでなく、ギャラリーも同じ世界をリアルタイムで共有し、盛り上がれるところが、HADOの魅力と言えるでしょう。
記者も実際に体験してみました。突き出した自分の手先から魔法弾がまっすぐ飛んでいくビジュアルは、それだけで興奮もの。また、手を一定時間おろしてから頭上にあげると、目の前に敵の攻撃を無効化するシールドが出現するのも、気持ちよかったです。各アクションのチャージゲージも、一人称視点に邪魔にならないように表示されていて、遊びやすかったです。自分の耐久力が0になったらペナルティータイムを経てリスタート、とか、競技時間のラスト30秒は、チャージ時間を気にすることなく魔法弾を撃ち放題……など、爽快感や一発逆転要素を盛り込んだルール設定も、“ゲーマー心”がわかっているなと思いました。映像のフレームレートがもう少し高ければ、より自由度の高い戦略が立てられそうな気もしましたが、そこは今後に期待かなと。
HADOを一から開発したベンチャー企業、Meleapの代表・福田浩士氏によれば、今回の競技は“テクノスポーツ”という新機軸のスポーツとして、普及を図っていきたいとのこと。実際、夢中になるほど動きが激しくなるので、かなりいい運動になると思います。次回は、2016年5月12~同15日の4日間、アドアーズ八王子店(東京都八王子市)にて開催されるとのことなので(※1プレイ300円)、興味のある方は足を運んでみては。
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※Meleap公式サイト
まるなげ取材につき(?)、思いきり趣味に走ってみた──超まるなげストリート
ニコニコ超会議2016開催時の幕張メッセ2階通路は、事前登録した演者が、点在するスペースで、“踊ってみた”や“演奏してみた”などのパフォーマンスを披露する“まるなげストリート”と化していました。その中で記者が楽しみにしていたのが、『ひぐらしのなく頃に』のテレビアニメおよび実写映画の主題歌や、数々のゲームソングでおなじみのシンガーソングライター・島みやえい子さんがプロデュースする、3人のシンガーのライブパフォーマンスです。いずれも島みやさんにボーカル指導を受け、ライブ活動やCDリリースを精力的に行っている実力派とのことで、表現力豊かな歌声を披露していました。
ふだんは地元の北海道を中心に活動している彼女たちの生歌を間近で聴くことができたのも、ニコニコ超会議に足を運んだからこそ。日本各地からあらゆる人と才能が集まる“魅力的なお祭り空間”としてのニコニコ超会議の意義を改めて、かつ、プライベートな理由で思い知りました!
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※島みやえい子公式サイト