超会議は春爛漫。これぞエンターテインメント!

 2016年4月29日・30日、千葉県・幕張メッセにて開催されているニコニコ動画最大のイベント“ニコニコ超会議2016”。本イベントの目玉のひとつ、“超歌舞伎”初回公演の模様をお届けする。

中村獅童、初音ミク出演の“超歌舞伎『今昔饗宴千本桜』”に、古典芸能と最新技術の見事な融合を見た!【ニコ超2016】_01

 まずは、超歌舞伎の概要を説明しよう。超歌舞伎で披露される演目は、超会議のために作られたオリジナル新作歌舞伎『今昔饗宴千本桜(はなくらべせんぼんざくら)』。歌舞伎の代表的な演目のひとつ『義経千本桜』と、ニコニコ動画で1000万回以上再生されている、黒うさPが手掛けたボーカロイド楽曲『千本桜』がコラボレーションによって生まれた作品だ。出演するのは、歌舞伎役者の中村獅童さんと、電子の歌姫・初音ミクさん。そう、“超歌舞伎”は、古典芸能と現代技術が合わさった、新しいエンターテインメントなのだ。

 この作品には、神代(過去)、平安、大正百年(未来)という3つの時代が登場する。獅童さんが演じる佐藤四郎兵衛忠信(平安)は、神代では白狐、大正百年では靑音海斗として、日ノ本の象徴“千本桜”を守っている。ミクさんが演じる美玖姫(神代・平安)/初音未來(大正百年)も、同じく“千本桜”を守る存在だ。長い時の中で千本桜を守るふたりと、邪悪な青龍の戦いが、物語の主軸となる。

 さて、記者はこれまでに一度も歌舞伎を見たことがなかったので、「楽しめるのだろうか……」という不安があったのだが、心配はまったく無用だった。配布されるパンフレットにはていねいな解説が載っているし、口上(役者による冒頭のあいさつ)で、獅童さんが観客の緊張をほぐしてくれる(初めに「キャラクター設定を説明する」と言われたときは、まさか歌舞伎役者の方が“キャラクター”という言葉を口にするとは思わなかったので驚いた!)。役者のセリフは聞き取りやすいし、スクリーンにはセリフの字幕も表示されるので、お話をすんなり理解できた。

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▲口上にはミクさんも登場。

 また、観劇中は、専用ページにスマートフォンでアクセスすることで、そのシーンの解説を読むことが可能(専用アプリをダウンロードする必要はないので、とてもラク)。“初心者でも楽しめるように”というスタッフの気遣いを感じた。また、ステージ左右にあるスクリーンにはニコニコ生放送の映像が映し出されるのだが、歌舞伎に詳しい視聴者がいろいろと解説してくれるので、それらのコメントを読むことで、いっそう理解が深まった。

中村獅童、初音ミク出演の“超歌舞伎『今昔饗宴千本桜』”に、古典芸能と最新技術の見事な融合を見た!【ニコ超2016】_05
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▲こちらがスマートフォンで読める解説。

 と、“初心者でも楽しめる土台作りがなされている”ことについて述べてきたが、それ以上に感動したのは、やはり役者陣の演技だ。獅童さん、青龍の精役の澤村國矢さんの演技は素人の記者でも「すばらしい」と思うもので、獅童さんの六方(歌舞伎の歩き芸だとコメントが教えてくれた)や國矢さんの毛振りに、来場者は皆見入っていた。ミクさんも負けてはおらず、歌舞伎らしい声と舞で魅せてくれた。

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▲冒頭で、初音未來とともに戦う靑音海斗。この戦いの中で、未來の脳裏に前世での戦いが蘇る。
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 ほか、歌舞伎らしい梯子を使ったパフォーマンスもあれば、プロジェクションマッピングを使用した演出もあり、とにかく見ていて楽しい! 伝統と最新技術が融合したエンターテインメントと言うにふさわしいものだ(そもそもミクさん自体、ステージに置かれた透明なスクリーンに映し出されている存在で、最新技術なしには登場しえない)。この超歌舞伎の超特別協賛であるNTTの技術“イマーシブテレプレゼンス技術Kirari!”によって、佐藤忠信が分身したかのように見える演出も見どころだった。

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 歌舞伎では、観客が「すばらしい演技だ!」と思ったときに、役者の“屋号”をかけ声としてかける習慣がある。獅童さんは萬屋、ミクさんは初音屋という屋号だ。記者が見たのは初回公演ということもあり、最初は屋号を呼ぶ声も控えめだったのだが、終盤には、多くの観客が屋号を叫んでいた(記者も叫んだ)。また、國矢さんの屋号については、パンフレットに掲載されていなかったため、どう呼んでいいかわからなかったが、ニコニコ生放送のコメントから“紀伊国屋”だと判明し、呼ぶことができた。なお、第2回公演、第3回公演では「紀伊国屋!」というかけ声もコメントも増えていたという。

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 観終わった後は、「こんなすばらしいエンターテインメントを、ニコニコ超会議の入場料だけで観ることができてしまっていいのだろうか」と思うほど、すばらしい内容だった超歌舞伎(ニコニコ生放送にいたっては無料放送!)。超会議2日目に参加する予定がある人は、ぜひ観に行ってもらいたい。冒頭でも解説されるが、歌舞伎はもともと大衆向けの演劇。緊張することなく、自由に楽しもう。

 超歌舞伎の座席は、1階前方の“特別シート”(毎公演、入替制)と、1階立ち見席、2階、3階の自由席(入替えなし)がある。4月30日の13時の部は、10時15分より入場可で、特別シート整理券はイベントホールのアリーナで配布。席が埋まり次第、案内終了となる。15時の部の特別シート整理券は、10時15分よりイベントホール2階ロビーの“超歌舞伎 座席番号券 配布カウンター”にて配布される。

 残念ながら現地に行けないという人は、ぜひニコニコ生放送で視聴してもらいたい。ニコニコ生放送では、一部のシーンでAR技術が使用されており、ミクさんが本当に舞台の上にいるかのような場面を見ることが可能。また、この超歌舞伎においては、ニコニコ生放送のコメントも重要な存在なので、ぜひ積極的にコメントしてほしい。
※4月30日の13時の部の生放送ページはこちら、15時の部の生放送ページはこちら

 超歌舞伎を見ると、歌舞伎初心者の人は、きっと「歌舞伎が見てみたい!」と感じると思う(記者もそのひとり)。来たる6月には、歌舞伎座で『義経千本桜』の公演が行われるとのことなので、チェックしてみては?