画期的なVRゴーグルのリリース日と価格を発表

 タッチ操作が可能な簡易VR ゴーグル“MilboxTouch”および、その対応ゲームアプリ“MilboxTouch ver. VR PACMAN”の販売開始記念イベントが、2016年4月17日、HUB TOKYO イベントスペース(東京都目黒区)にて行われた。会場にはゲームプレゼンターとして高橋名人が登場。御年56歳になっても衰えぬゲーム・プレイを披露した。

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 イベント冒頭では、“MilboxTouch”ならびに、Android版『MilboxTouch ver. VR PAC-MAN』(以下、本アプリ)の正式リリース日と価格を発表。リリース日は、いずれも2016年4月26日で、価格は、“MilboxTouch”が2500円[税抜](2700円[税込])、本アプリが300円[税込])とのこと。それとともに、リリース日にはMilboxTouch対応アプリのUnity用SDKが無料で配信提供されることも発表された。
 オープニングセレモニーでは、“MilboxTouch”を開発したWHITE代表・神谷憲司氏が、国内クラウドファンディングサイト“Makuake”を通じて当プロジェクトを支援したユーザーの代表者に、“MilboxTouch”を先行贈呈した。

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▲明治大学・宮下研究室の研究成果であるExtensionSticker 技術を応用して開発された「MilboxTouch」。導電性インクで印刷されたパターンを触ることで、スマートフォンに直接触れることなく、さまざまな入力操作を行えるのが特徴。
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▲往年の大人気ゲーム『パックマン』を、360度の立体視野で楽しめる『VR PAC-MAN』。アプリをダウンロードしたスマートフォンをMilboxTouch にセットして装着することでプレイできる。当面はAndroid版のみのリリースとなるが、iOS版も近日リリース予定とのこと。

※『MilboxTouch ver. VR PAC-MAN』は、株式会社バンダイナムコエンターテインメントが実施している「カタログIP オープン化プロジェクト」に参加しています。
カタログIP オープン化プロジェクト公式サイト

【カタログIPオープン化プロジェクトとは】
 “カタログIPオープン化プロジェクト”とは、バンダイ・ナムコ統合10周年記念企画として、社バンダイナムコエンターテインメントが実施している、ネットワークエンターテインメントのさらなる事業領域の拡大を目的とした取り組みです。クリエイター登録することで、カタログIP(同社保有のオリジナルIP)21タイトルを使った二次創作が、デジタルコンテンツの領域において可能となります。参加には、クリエイター登録が必要です。作品の公開は日本国内のみとなります。

 開発者トークセッションでは、神谷氏のほか、本アプリの開発を手掛けた松葉忍氏(amana)、MilboxTouch対応アプリのSDK開発を担当した河崎純真氏(GIFTED AGEN 合同会社)が登壇し、それぞれの開発時のエピソードを語った。今後の展開について、神谷氏は、“カタログIPオープン化プロジェクト”に登録されているIPのVRゲーム化を引き続き進めるとともに、SDKをほかのメーカーのアプリ開発に採用してもらえるよう、働きかけていくことを宣言した。

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▲開発者トークセッションの様子。左から河崎氏、松葉氏、神谷氏。『VR PAC-MAN』開発に際し、松葉氏は、3D酔い対策を徹底したことを明かした。

■神谷氏ミニインタビュー

──MilboxTouch対応アプリの第1弾のモチーフに『パックマン』を選んだ理由は? やはり、“カタログIP オープン化プロジェクト”ありきだったのでしょうか。
神谷 じつは、“カタログIPオープン化プロジェクト”のことを知らずに作っていました(笑)。当初は内々の確認用に開発していて、外部に公表するつもりはありませんでした。『パックマン』は作りやすいし、(おもしろさが)誰でもわかるので、まず自分たちでMilboxTouchでのゲームプレイを体験するために開発していたのですが、知人から“カタログIPオープン化プロジェクト”の発表があったことを聞かされて、「じゃあ、出すか」と。

──そうだったんですね。今後は、オープン化されているバンダイナムコエンターテインメントのカタログIP対象タイトルのVR版が、続々リリースされると思ってよいのでしょうか?
神谷 カタログIPの中には、VR化しやすいものとそうでないものがあるので……。ただ私自身、これらのゲームを子ども時代にリアルタイムで遊んでいたので、思い入れが強いタイトルがいくつかあります。それらを、MilboxTouchに合わせたゲーム性を追求しながら、コンスタントにリリースできればと思っています。

──ほかのディベロッパーが、MilboxTouch対応のカタログIP タイトルをリリースすることは、WHITE さんとしては問題ないのでしょうか?
神谷 オープン化されているIPですし、SDKも公開するので、どんどん使っていただきたいですね。SDKのベースがUnityなので、Unity開発のスマートフォン用3Dゲームの移植もスムーズにできると思います。3D空間を見回すだけのアプリに、シューティングなどのアクション要素を追加……なんていう利用法もあります。

──単にお手軽なVRゲーム体験を楽しめるというだけでなく、開発者にとっても魅力的なデバイスなんですね。
神谷 VRは、さまざまな規模のゲーム開発者が、これからどんどんトライしていくタイミングの分野だと思います。まずはMilboxTouchで気軽にトライして、アプリをリリースし、たくさんの経験を積み重ねてみてください!

高橋名人によるデモンストレーションプレイ

 続いて、本アプリのデモンストレーションプレイヤーとして登場したのは、ファミコン世代のゲーマーならおなじみの”高橋名人”こと高橋利幸氏。ときおり「クソーッ!」などと叫び声を上げながらも、見事ステージ1クリアーした。さらに、高橋名人のために特別に用意したという、タイムアタック専用の直線コースに挑戦。リハーサルでプレイしたときよりもタイムが伸びないことに不満を漏らし、再度挑戦したものの、もうひとつのタイムに終わり、無念そうだった。

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▲オリジナル版『パックマン』がリリースされた当時のゲーム業界のエピソードを語る高橋名人。話題はいつしか、“裏技”というゲ
ーム用語の発祥がハドソンだった……という思い出話(?)に。
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▲『VR PAC-MAN』をプレイ中の高橋名人。進行方向に体の正面を向け、ゴーグル側面のタッチセンサー部を指でなぞって移動……という特殊な操作スタイルにも適応していた。名人いわく「方向キーやボタンがあってもいいね」。
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▲16連射ならぬ、16画面スクロール長のコースのタイムアタック版を一心不乱にプレイする名人。「俺、もう56(歳)だよ!」とボヤきながらも、指を高速回転させるさまは“全盛期”を彷彿させるものだった。

■高橋名人ミニインタビュー

──今回のような形で、昔のゲームに脚光があたることに関しての率直な感想は?
高橋名人 レトロゲームの中にはすばらしいコンテンツがたくさんあります。それらのよさをいま一度再発見するには、すごくいいことだと思います。

──本アプリは、オリジナル版のおもしろさが、VR コンテンツとしてうまく昇華されていると思いますか?
高橋名人 昔、“立体パックマン“を考えたことがあるんです。いつも上から見ている『パックマン』を立体視することで、いろいろな角度から見られたらどうなるんだろう……っていう当時のイメージが、まさに再現されていると思いました。これは、現在の技術があるからできたことでもあるので感慨深いですね。

──VR自体の盛り上がりに対する、名人の見解は?
高橋名人 全然ありだと思いますよ! ジェットコースター気分を楽しんだりするのもいいし、360度どの方向でも戦える『スペースインベーダー』や『ギャラクシアン』もできるようになるし、いろんな可能性がありますね。その中で、段ボール紙で作られたこのMilboxTouchはすごく安いし、ほとんどの人が持っているスマホで遊べるわけですから、すそ野が広がる意味でもいいことだと思います。

『MilboxTouch ver. VR PAC-MAN』インプレッション──「あのフィールドにいる」という実感を存分に味わえる!

 プレイしてまず「おっ」と思ったのは、フィールドの基本構造が、オリジナル版『パックマン』とほぼ同じこと。デバイスの操作系に合わせたフィールドを新たに構築するのではなく、あえてオールドゲーマーの記憶をくすぐる形にしたのは、メインターゲット層のひとり(?)としてはうれしいところだ。
 とはいえ、オリジナル版のプレイ感覚や攻略法を本作で再現できるかといえば、それはまた別問題。体全体を使っての方向転換と、指を時計方向に回し続けることで行う移動操作は、地形にひっかからずにスイスイ進めるようになるまで、相当の慣れを要する気がした。タッチ操作のスタイルが数パターンから選べるようになっていると、より間口が広がるのかもしれない。
 じつは、スマートフォン単体でも遊べるゲームモードも用意されているのだが、「あの(『パックマン』の)フィールドの中にいて、自由に動き回れる」という感覚は、MilboxTouchを介さないと、絶対味わえない。“VR酔い”しにくい画面構成が徹底されていることからも、これからはじめてVRゲームを体験する人向けの作品であることは間違いないだろう。

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▲操作のしやすさを優先させたためか、ゲームテンポはやや遅め。そのぶん、バック移動などを駆使して、いかに目の前のモンスターをかわすかといった駆け引きが、濃密なものになっている。コンティニュー機能があるので、根気さえあれば、オリジナル版にあった“256面バグ”も見ることができるだろう。