『Republique(リパブリック)』プロデューサー ライアン・ペイトン氏に聞く 「主人公のホープはいままでのゲームキャラクターではない」

4月14日に発売されたプレイステーション4用ステルスアドベンチャー『Republique(リパブリック)』。プロデューサーのライアン氏が来日したので、アレコレ伺ってみた。

●『Republique』は日本のゲームの影響を受けてできた

 2016年4月14日、ガンホー・オンライン・エンターテイメントより、プレイステーション4用『Republique(リパブリック)』が発売された。本作は、アメリカのCamouflaj(カモフラージュ)社が手掛けたステルアドベンチャーゲーム。海外にて2013年12月よりスマートフォン/タブレット向けにリリースされ、このたび日本でプレイステーション4版がリリースされた。

 開発の陣頭指揮を執るのは、『メタルギア ソリッド 4 ガンズ・オブ・ザ・パトリオット』や『Halo 4』など、数々のビッグタイトルに関わってきたRyan Payton(ライアン・ペイトン)氏。今回、開発スタジオのメンバーが来日したとの情報をキャッチしたので、ライアン・ペイトン氏にインタビューを敢行。本作について、気になるポイントをアレコレ伺ってみた。

▲Camouflaj ライアン・ペイトン氏

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※『Republique(リパブリック)』プレイインプレッション 監視カメラ越しにホープを助け出せ!

――本日はよろしくお願いいたします。改めての質問になりますが、まずは『リパブリック』開発のきっかけを教えてください。

ライアン もともと僕は、プライバシーやインターネットの法律、監視カメラ、それとジョージ・オーウェルの小説『1984年』にとても興味があったんです。以前在籍していたマイクロソフトでは、働きながら大学院に行ってもいい、というスタンスだったんですね。そこで僕は映画の台本について学んだのですが、当時の先生が「台本を書くときは、興味があるものが題材でなくてはダメ」と言っていたんです。

――『リパブリック』では、それを忠実に守った?

ライアン はい。マイクロソフトから独立して、少し台本を書いたんですけれど、やがてゲーム会社を作ろうということになって。そのとき、この作品は映画ではなく、ゲームにしようと思ったんです。ホントに初期のころは、主人公ともうひとりのキャラクターが、ビデオチャットのような形式でコミュニケーションしていくゲームにしようと考えていました。そのプロトタイプをBungie(『Halo』などを開発してきたスタジオ)にプレゼンしたら、「カメラとか全体主義はおもしろそうだけれど、アクションがほしいね」とアドバイスされたんですね。で、スタジオに戻って、キャラクターの彼女を部屋に移動させて、監視カメラの視点にしてみたら「これでアクションを作ったら、まるで昔の『バイオハザード』みたいじゃないか!」とドキドキして。「監視カメラで彼女に指示を出すのは新鮮じゃないか?」と思って、いまの原型が完成した感じですね。

――なるほど。プライバシーや監視という発想が先にあって、監視カメラ視点という表現方法が生まれたんですね。

ライアン 僕は監視カメラやプライバシーについて、不満点がいっぱいあります。たとえば今日、スタッフがATMでお金を下ろしたとき、自動的に写真を撮られたんですよ。僕は、アレ、大嫌い! でも、監視カメラが100パーセントダメと思っているわけでもなくて……。

――監視する社会を完全否定しているわけではないと。

ライアン うん。この僕の気持ちは、本作を最後までプレイしてもらうとわかると思います。

――本作はステルスアクションですが、『メタルギア ソリッド 4』に関わったこともあって、ステルスアクションにこだわりがあるのですか?

ライアン アハハ。いや、最初はステルスアクションは作りたくなかったんですよ。本作のもうひとりの主人公であるホープは、施設から脱出するじゃないですか。逃げているときに巡回中の兵士に遭遇しても、彼女は殺すキャラクターではないと思ったんです。ふつうの人も、きっとそう。「彼女が人を殺さないで脱出できたらいいな」と思って、武器も催涙スプレーやスタンガンにしたんです。

――たしかに、ホープに人を殺すイメージは想定しづらいですね。

ライアン もうひとつ理由があって、銃を使わず、人を殺さなくても、緊張感を出せるか試したかった。本作の実況プレイを見ていると、プレイヤーがドキドキしてくれたので、銃を出さなくても緊張感を表現できるのはいいなと思いましたね。

――ホープというキャラクターの設定は最初からあって、彼女を変えずに、ゲームシステムを変更したんですね。

ライアン ええ、いくつか理由はあったんですけど、ひとつはピュアなキャラクターをストーリーにしたかったから。本作の舞台設定は、監視カメラに全体主義という感じだから、そういう国に住んでいる人は、きっと純粋だと思って。あと、人を殺せる主人公のストーリーは、もう十分すぎるほど世の中にあるからね。

――アイテムの収集とパワーアップが結びついているのは楽しいと思いました。このシステムを思いついたのは?

ライアン そうですねえ。いままで秘密にしていたんですけど、本作のコンセプトのひとつが、プレイヤーがいい意味で小説『1984年』に登場した“ビッグブラザー”になる、ということなんです。ホープのお兄さんがビッグブラザーで、ロマンスではない愛情、ということもコンセプトのひとつ。ビッグブラザーは、さまざまな人が話していることを監視カメラで聞き取れたり、メールを見られる。だから、スキルでパワーアップできるようにしたわけです。
 あと、少し補足したいことがあります。僕のミスかもしれませんけれど、プレイヤーキャラクターがどんな人物なのか、けっこう混乱してしまうみたいなんです。プレイヤーキャラクターは、誰かのお兄さんでもお姉さんでもなく、ゲームをプレイしているプレイヤー自身。これまでのゲームは、たとえば『Halo』だったら、プレイヤーはマスターチーフですよね。でも本作は、“自分自身”。プレイヤーキャラクターが自分というゲームは、じつは初めてかもしれませんね。

――海外ではスマートフォンで2013年からリリースされていますが、ユーザーからの反響でよかったポイントや、悪かったポイントはありますか?

ライアン ゲームシステムやストーリーを大きく変えた、“エピソード4”の反響は大きかったですね。「大好き!」という人もいれば、「おまえはホントにバカだな、4は別ゲームだよ!」なんていうユーザーさんもいました。もうひとつは、エピソード5の最後のエンディングですね。まだみんな本当のパーツを見つけていなくて、理解できていない。いつかは絶対に見つけてくれると思ったけれど、もうちょっとはっきり出したほうがよかったかな、と思っています。

――なぜエピソード4だけ大きく変えたのですか?

ライアン プレイヤーが飽きてしまうかな、と思ったし、スタッフも僕も3年半『リパブリック』を作ってきて、違うことをやってみたかったから、かな。あと、アジアでは数字の“4”って悪い意味を持っているでしょう。日本だと“死”とか。だから、逆のイメージにしたかったということもあります。
 じつは、『ウォーキング・デッド』のゲームを作成しているTelltale Gamesの社長が、「5つのエピソードからなるゲームを作ると、エピソード4まで遊んでくれる人は、4がダメでも最後のエピソード5まで遊んでくれる」って講演で話していたのを聞いたんです。だから、いろいろなことを試してみようと思って。ですので、僕はエピソード4に文句を言われても全然気にしないし、逆に反響があってうれしいくらいです。

――では、プレイステーション4版がリリースされることになった経緯を教えていただけますか。

ライアン 本作はUnityで作成しているので、できるだけ多くのプラットフォームで出せたらいいな、と思っていたんです。でも、スマートフォン版のあとに作成したPC版が、思ったよりもずっと大変で……。そんな状況で「プレイステーション4版を出したい」なんて言うと、メンバーのモチベーションが下がってしまうから、PC版が完成したあとに伝えたかったんです。
 そこで、チームメンバーには内緒で、ブラジルのプログラマーさんに連絡を取って、ホープを操作できるコントローラー対応バージョンのプロトタイプを作成してもらったんです。昨年、Unite Japanというイベントで来日したとき、ガンホー・オンライン・エンターテイメントの森下社長やスタッフの皆さんにコントローラーバージョンをお見せしたところ、「これはプレイステーション4でいけるんじゃないか」という話になって、そこから動き始めた感じですね。チームに伝えたら、みんな驚いていました。

――プレイステーション4版の開発で苦労したところは?

ライアン これが、けっこう大変でした。ホープのアニメーションがコントローラーで操作することを考えて作られたものではなかったので、モーションキャプチャーをいちからやり直さないといけない部分がありました。カバーシステムもなかったので、そのシステムも最初から作って。さらに、監視カメラの切り替えや、UIをコントローラー用に作り直したりもしましたね。

――移植作業はCamouflajさんが行っているんですよね。外部の会社に委託することは考えなかったんですか?

ライアン ああ、ゲームで表示されるロゴを見るとわかると思うんですけど、プレイステーション4版はダークウィンドというニューヨークにある会社が開発に関わっています。ここのプログラマーさんがプレイステーション4に詳しいので、技術的なことをお願いした感じですね。

――ああ、じゃあ3社で作成されたんですね。

ライアン ええ、ガンホーさんとCamouflajと、ダークウィンドさん。ゲームデザインやコントローラーの操作、管理といったところは、Camouflajで行っています。

――プレイステーション4版で注力したポイントはどこでしょう。

ライアン 32ビット時代を感じられるようにしたことでしょうか。『リパブリック』は、『バイオハザード』や『パラサイト・イヴ』、『DEEP FEAR』など、32ビット時代のゲームに影響を受けて作られたんです。スマートフォン版は、そのようなゲームをタッチ操作で楽しめることを試してみたんです。それがプレイステーション4になって、コントローラー操作に原点回帰したので、32ビット時代を感じられるデザインにしました。たとえばカメラが自動的に切り替わるシステムとか、プレイステーション4版の追加コスチュームである女子高生の衣装を着ると、セーブがテープを見つけた数だけ行えるようになるとか……。32ビット時代の雰囲気でこのゲームを遊べたら、最高だろうなと思ったんです。

――プレイステーション4だから、32ビット時代へのオマージュがより明確に表現できると。

ライアン ええ、プレイステーションの遺伝子を、まだつなげているよ、と。ただ、ファミ通さんのレビューでも指摘されていましたが、“カメラが自動的に切り替わると、どこから彼女を見ているのかわかりにくい”というのはあるかもしれません。ドキドキ感はあるけれど、いまの時代だと不親切だと思われるかもしれませんね。でも、僕はこういうタイプが好きなので。

――時代に合わせるのではなく、自分が作りたいものを貫いたわけですね。

ライアン 三人称視点にすると新しい気はしないと思いましたね。ゲームの世界観が崩れてしまう可能性もあった。監視カメラのゲームだから、しょうがないかなあ、と。

――では、エピソード5が完成して、ついに物語が完結しましたが、感想を教えてください。

ライアン ガンホーさんのおかげでエピソード5まで開発することができて、しかもいちばん好きなプラットフォームであるプレイステーション4でもリリースできるなんて、本当にうれしいですね。4年半本作に関わってきて、自分のやりたいことや夢など、できることはすべて詰め込みました。いまはとてもすっきりした気持ちです。とにかく、多くの人にプレイしてもらって、監視システムや他国のプライバシーに関する法律など、思ったことを聞かせてほしいです。本作はただのエンターテイメントではなく、大切なイメージやストーリー、メッセージが詰め込まれていますから。

――以前、「ホープのキャラクターは世界中で受け入れられるような女性になるよう、気を遣っている」と伺いました。実際の反応はどうでした?

ライアン ええと、ネタバレになるから詳しくは言えませんが、エピソード5で「なんでホープがコレをしないの!?」という意見をよく聞きます。ユーザーさんがまだ理解できていないと思うんですけれど、ホープはいままでのゲームキャラクターではないんですよね。人によって意見は変わると思いますが、エピソード1から5を通じて彼女は成長していると思いますし、プレイヤーも彼女を操作したり、影響を与えられる。でも、「プレイヤーはホープじゃない」んですよ。パートナーですが、すべての生き物はコントロールできないんです。これは、本作のテーマでもありますね。

――ホープはコントロールできる存在ではない、と伝えたかった?

ライアン 僕は子どもがいないけれど、仮に存在していて大学生ぐらいになったら、コントロールできませんよね。ホープは、そのような感じにしたかった。

――なるほど、子どもは他者ですね。自分で管理できるものではない。では、『リパブリック』の今後はどうですか? 続編とか、スピンオフとか、IPの展開について。

ライアン ホープやメタモルフォーゼという国のストーリーに関しては、やりたいことはやり尽くしました。でも、『リパブリック』って世界観がよく考えられているので、ほかにもいろいろとできると思います。でもいまは、まずユーザーさんの反応を見てみたいな。今後どうなるかも、反応次第ですね。

――では最後に、日本のファンにメッセージをお願いします。

ライアン 日本のユーザーさんの感想を、すごく楽しみにしています! 『リパブリック』は、日本のゲームの影響を受けて、ベースはそのままで作成されましたから。本作は、日本ゲームのファンであるアメリカ人が作ったゲームなんです。いわば、日本のゲームファンに向けたラブレターですね。私たちと同じように、32ビット時代ってよかったなあ、と感じてくれると、とてもうれしいです!

 ライアンへのインタビューは、彼が『Republique(リパブリック)』の日本での発売にあわせて来日した際に行ったもの。ライアンは日本発売に対して深い思い入れを抱いており、発売日を日本で迎えたかったとのことだ。今回、そんな日本発売の喜びをわかちあうために、ライアンはCamouflajのスタッフといっしょに来日。日本のゲームショップに『Republique(リパブリック)』が並んでいるのを見て大いに感動したという。

 そこで、せっかくの機会だから……ということで、Camouflajの皆さんにガンホーさんまでお越しいただき、記念撮影と相成った。真面目バージョン(上)と喜びバージョン(下)でお届けする。Camouflajの皆さんご協力、ありがとうございました!


République(リパブリック)
メーカー ガンホー・オンライン・エンターテイメント
対応機種 PS4プレイステーション4
発売日 2016年4月14日
価格 パッケージ版は3600 円[税抜](3888円[税込])、ダウンロード版は3000円[税抜](3240円[税込])
ジャンル ステルスアドベンチャー
備考 開発元:Camouflaj 早期購入特典:パッケージ版…追加コスチューム「プリズラック」「スピードランナー」プロダクトコード、ダウンロード版…追加コスチューム「プリズラック」「スピードランナー」「キトゥン風コスチューム」プロダクトコード ※本作品には、ゲーム中に追加課金要素はございません。

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