カプコンの『逆転裁判』シリーズを原作とするテレビアニメ『逆転裁判 その「真実」、異議あり!』。2016年4月2日に放送がスタートし、読売テレビ・日本テレビ系にて、毎週土曜日17:30から放送されている。
本記事では、同作の制作陣へのインタビューをお届け。主人公・成歩堂龍一役の梶 裕貴さん、霊媒師のタマゴ・綾里真宵役の悠木 碧さん、ライバル検事・御剣怜侍役の玉木雅士さん、渡辺 歩監督、『逆転裁判』シリーズの生みの親・巧 舟ディレクターにお話をうかがった。
オーディションで「待った!」、「くらえ!」、「異議あり!」
――キャストの皆さんは、役が決まったときはどんな心境でしたか?
梶 僕自身、ゲーム『逆転裁判』のいちユーザーだったので、アニメ化することに、とても大きな驚きと喜びを感じました。オーディションで「異議あり!」や「待った!」、「くらえ!」というおなじみのセリフを疑似体験できただけでもありがたいなと思っていたのですが、実際にアニメ版の成歩堂龍一としてこの作品に携われることになって、本当にうれしく思っています。原作ゲームの大ファンの方々もたくさんいらっしゃる作品なので、プレッシャーと責任を感じつつ、一生懸命演じさせていただいています。
悠木 私もゲーム大好きなんです。『逆転裁判』は、誰しも一度は絶対耳にしたことがあるタイトルだと思うのですが、今回、そんな作品のオーディションを記念受験のようなつもりで受けさせていただきました。そのときの台本には、マヨイちゃんはほとんど言うことのない「異議あり!」があって。とりあえず「異議あり!」が言えてよかったなと思っていたんです。まさかこうしてご縁が生まれるとは思ってもみなかったので、本当にうれしいです。ゲームには、ちょっとシュールな面もあれば、すごくシリアスな面もあったりと、いろいろな要素があるじゃないですか。それがどういう方向でアニメになるのかなと、私自身もすごく楽しみに思っていました。マヨイちゃんとどう向き合ったら、原作のファンの方にも、これから『逆転裁判』を知るという方にも楽しんでもらえるんだろうと、プレッシャーもあるんですけど、伸び伸び楽しく演じることで、いちばんマヨイちゃんに近づけるのかなと思っております。
玉木 僕は、テレビアニメのレギュラー役が今回が初めてなんです。オーディションに受かったのも本作が初めてで。オーディション合格のお電話をいただいたときは、喜びでいっぱいでした。そのときはまだ『逆転裁判』のゲームをやったことがなくて、受かってからプレイしたんですけど、遊んでいくなかで、どんどんプレッシャーが増していきました。というのも、御剣というキャラクターが本当に大人気で、とても愛されているのがわかったので。収録が始まったのはこのあいだからなのですが、合格のお電話をいただいたのは2015年の9月頭くらいだったんですね。その半年間は、重圧で、地獄のような日々でした(笑)。収録が近づくにつれ、緊張が日々増していくので、「早く始まってくれ」と。もちろん、始まってから考えることも本当にたくさんあるんですけど。ちょっとでもファンの方の期待に応えたいと思って、一生懸命考えてきました。
――渡辺監督が、アニメ『逆転裁判』の打診を受けたときの率直なお気持ちをお聞かせください。
渡辺 打診を受けた瞬間は、「アレッ? 『逆転裁判』ってまだテレビアニメになっていなかったっけ?」と思いまして。調べたら、どうやらまだやっていないと。映画化などもされていますし、とっくの昔にアニメになったものだと思っていました。みんなが知っているタイトルを自分で手掛ける喜びと驚きと、プレッシャーを感じましたね。
――『逆転裁判』の生みの親である巧さんは、アニメ化されると聞いたときのお気持ちはいかがでしたか?
巧 僕も「ついに来たか」と思いました。ゲームを作り出したのは15年も前の話なんですけど、当時は、ゲームでいちばんおもしろくなる形を探って作っていたんです。それが15年のあいだで、舞台になったり映画になったり。『逆転裁判』って、こういう風にも楽しんでもらえるものなんだなと思っていたところに、ついにテレビアニメが来たかと。『逆転裁判』の1作目は、ちょうど2001年に作ったんです。ゲームの物語は、当時から15年後の世界が舞台という設定だったので、ちょうど今年、2016年にあたるんですね。アニメ化のお話をいただいたときは、これも運命なんだなと感じました。最初、僕は皆さんに「じゃあお願いします」ってお任せする形かなって思っていたんですけど、監督に温かく迎え入れていただいて。ですので、僕も片棒を担ぐ形になっていますので、『逆転』的なカラーにはとても自信があります。声の収録にも参加させていただいています。セリフの微妙なニュアンスは、キャストの皆さんにうまく汲み取っていただいています。
――キャストの皆さんは、実際に演じられていかがでしたか。
梶 成歩堂は主人公ということもあり、僕も強い緊張を持ちながら演じさせていただいています。印象的なセリフもたくさんあるので、それをゲームユーザーの皆さんにも極力違和感のないように演じられたらなという思いがありました。作品全体については、アフレコをしてみて、思っていた以上に“いい意味で、気持ちのいいくらいバカバカしい作品だ!”ということに気づかされました(笑)。決して視聴者を笑わせようとしているわけではなく、全員が全員ひとつの物事に対して真剣で、熱くて、それが思わず笑ってしまうようなシリアスさを生み出している。そういったものがたくさん詰まっているエンタテイメント作品なんだなと改めて感じました。そこがアニメ版ならではの魅力にもつながっているのかなと思います。『逆転裁判』を新しく楽しむための、ひとつのアプローチとして感じていただけたらうれしいです。
悠木 私がオーディションを受けたときのマヨイちゃんのイメージは、元気で明るく、ハツラツとしていて、基本、人とゼロ距離という印象だったんです。でも、アフレコ現場でまず言われたのが「ホンワカした子です」ということでした。おっとり、ホンワカしていて、ちょっとゆっくりな呼吸のリズムなんだということを教えていただいて。それで「あ、この子はおっとりしているから、人との距離感が最初からほぼない状態で始まるんだな」と。やっぱり、ゲームでもともとキャラクターを知っているがゆえに、頭の中に根付いているキャラクターのイメージが強くて。だから先生(巧さん)や監督とお話しして、ディレクションを受けて初めて「あ、本当はこういう人なんだ」と気づくところもありました。「こういう風だとアニメの中では映えるんだ」という演出もたくさんあって。それに声がついて掛け合いのお芝居になって、絵がテンポよくパンパンパンって出てきたりするのを見ると、原作のあの勢いを実際にやるとこうなるんだな、と実感しました。本当の裁判となると、もっと粛々と行われているものだと思うんですけど。私も裁判を傍聴してみたいなと思いました。
梶 あ、僕は実際に傍聴に行ってみたよ。
悠木 えー! すごい!! いいなあ。
梶 やっぱり雰囲気は全然違いましたね(笑)。『逆転裁判』は、ある意味アトラクションに近いんだということを念頭に置かなければいけないなと思いました。
悠木 収録では裁判を見に来ている人のガヤを録る“傍聴人ガヤ”というのがあるんですけど、実際の裁判ではそんなガヤガヤしないだろうなと思いました(笑)。でも、傍聴人ガヤもみんな張り切っていて。うるさい傍聴人もいっぱいいます。そこまでこだわって作っているので、ぜひ楽しんでいただければと思っています。
玉木 御剣という役は、キザでクールでカッコよくて、でもどこか天然で。完璧なのに隙がある、すごく人間味が溢れた部分が多いと思ったんです。よりリアルな気持ちで演技に臨もうかとも思ったんですけども、「もっとカッコよく、もっとクールに、もっとキザに」と演出していただいて。自分が思っている以上に、やるところはちゃんと出さないと、キャラクターが立体的にはならないんだなと。それは何回か収録を重ねたなかで、すごく勉強になったことでした。不安を抱え、悩みながら演るのは御剣に失礼だなと思っているので、これからも、とにかく自信を持って堂々と演らなければと思っています。また収録中は、梶さん、悠木さんおふたりのお芝居に、ものすごく引っ張っていただいたところもありました。
梶 たまたまですが、僕と玉木さんは同い年なんですよ。
玉木 誕生日も2日違いなんですよ。
梶 成歩堂と御剣も同級生なんですよね。ふたりは過去にとある“因縁”があるので、そういったところにも不思議なご縁を感じています。