VRの今後についてを考えるカンファレンスの説明発表会を開催

 グリーと一般社団法人VRコンソーシアムが、日本のVR(Virtual Reality:仮想現実)市場の拡大を目的として、VR業界の第一線で活躍する国内外のプレイヤーをゲストに迎えるカンファレンス“Japan VR Summit”が、2016年5月10日に東京・THE GRAND HALL(品川)にて開催される。同カンファレンスの開催に先立ち、メディアに向けた事前説明会が2016年4月13日、グリー本社にて行われた。ここで、一般社団法人VRコンソーシアム代表理事の藤井直敬氏とグリー取締役の荒木英士氏が出席した同説明会の模様をお届けする。

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▲写真左:藤井直敬氏 写真右:荒木英士氏

 まず始めにVRコンソーシアムの代表理事である藤井氏から、VRの概念についての説明が行われた。藤井氏によると、一般的に日本語でバーチャルというと仮想と訳されることが多いが、本来の意味では仮想ではなく、見た目が異なっていても実質的に同じものという概念こそがバーチャルであるとのこと。生活している空間そのものが、VRのテクノロジーによってどんどん拡張していき、その中でよりよい生活を送ることができるといった、身体が本来持っている認知機能を拡張させ、進化させる環境技術こそがVRの定義であると、自身の考えを述べていた。

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▲神経科学者として脳の研究も行う藤井氏がバーチャルリアリティーに興味を持つようになったのは、1982年に公開されたSF映画『トロン』がきっかけになったとのこと。
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▲藤井氏の定義するVRの概念。頭で認識している“仮想空間”ではなく、目の前に作り出されたものが本物なのか、偽物なのか、現実と仮想の境界のない体験が、“本物のバーチャル”だと、藤井氏は語る。

 これまで、何度もVRの時代が来ると言われながらも、失敗し続けてきた理由として、デバイスとコンテンツ&アプリの連携が取れなかった点が問題であると藤井氏は指摘。過去のVRは、技術面だけが先行して取り上げられたため、その後の発展・展開がうまくできず、結果的に安定した体験を提供することができずに撤退といった状況がくり返されてきたと考察していた。その反省を踏まえ、技術面だけが先行するのではなく、デバイス・コンテンツ・プラットフォーム・メディアの4つに関わる事業者が連携を取りながらVRの価値を高めていき、世の中にVRを定着させるための役目を果たす組織として、VRコンソーシアムを設立したとのこと。

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▲デバイスとコンテンツ&アプリがきちんと連携し、循環する仕組みの構築ができれば、そこに安定した市場が生まれていく。
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▲VRコンソーシアムは、デバイス/コンテンツ/メディア/プラットフォームの4つの領域のクロス・コラボレーションを創出する組織として、VRの認知活動、技術開発、恊働を促すための検討や交流活動に取り組んでいく。

 続いて、グリー取締役 執行役員の荒木氏より、自身のVRの考えやグリーのVRへの取り組み、Japan VR Summitに関する説明が行われた。

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VRとはコンピューティングの力を使って、人間の認知や感覚を拡張する技術で、これまでキーボードやマウスで行われていたコンピューターのIO(Input Output)が革命的に変わるものであると荒木氏は指摘。

 荒木氏によると、今年登場したVRデバイスは、ゲームでの利用を中心にスタートしていることもあって、新しいゲームデバイスの一種であると捉えられがちだが、実際はゲーム以外にも広告業界や医療、観光産業、不動産関連といったさまざまな分野での応用が可能で、すでに実用化している例もあるとのこと。
 このように、さまざまな分野での発展が見込まれるVR領域に対し、グリーが行っている3つの取り組みが語られた。まず最初のひとつは“開発”で、これはこれまでのグリーの取り組みと同様、自分たちでコンテンツを作っていくというもの。実例としては、2015年11月にVR専門のスタジオとなるGREE VR Studioを設立し、4月14日に“Gear VR”向けの専用タイトル『Tomb of Golems』のリリースを開始している。ふたつ目は“投資”で、こちらは先日発表された“GVR Fund”による投資展開を中心に行っていく取り組みとなっており、グリー、コロプラ、ミクシィの出資で、北米のスタートアップ企業に対する支援活動がスタートしたのは既報の通り。最後の取り組みは“市場振興”で、事業社、開発者の意見交換であったり、VR市場で先行している北米・中国の有力企業と国内VR関連企業との連携強化などを計ることなどが目的とされている。VRコンソーシアムと共同で“Japan VR Summit”を開催するのも、この“市場振興”取り組みの一環というわけだ。

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▲グリーが考える、VR利用分野の一例
▲グリーのVR事業戦略図

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グリー、北米のVRスタートアップ企業を支援する新ファンド“GVR Fund”を組成

 北米、中国では、さまざまな分野でVRの応用分野が生み出されているものの、日本国内に目を向けると、まだまだ本気で取り組んでいる会社も少なく、応用分野においても一歩遅れていると荒木氏は分析。次代のプラットフォームとして大きな成長が見込まれる領域にも関わらず、現在の状況は望ましくないと思い、日本国内でのVR事業を盛り上げていくために、藤井氏が代表を務めるVRコンソーシアムと協力し、“Japan VR Summit”を開催。関係企業たちの情報共有を図りながら、VR市場を盛り上げていきたいと語っていた。

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▲こちらがグリーが現在見ているVR業界マップ。デバイス、ハードウェア、開発ツール、カメラ、コンテンツ事業者、プラットフォーム配信者、投資関連と、多岐にわたる事業者がVRに何らかの形で取り組みを行っている。
▲青くマーキングされている企業が、“Japan VR Summit”に参加する企業。これらの企業は、ただ会場に来るだけではなく、登壇やデモ展示など、それぞれの専門分野における積極的な参加を行うとのこと。

 最後に、荒木氏より“Japan VR Summit”のプログラム説明が行われた。セッションは全部で5つのプログラムが用意されており、ほかにPlayStation VR、Oculus Lift、HTC Viveの実機によるデモ展示コーナーなども設けられる。なお、2016年4月15日現在、“Japan VR Summit”のチケットはすべて売り切れとなっている。追加販売の予定はいまのところされていないが、増席が行われる場合はチケット申し込みページにて案内されるとのこと。
“Japan VR Summit”チケット申し込みページ http://everevo.com/event/29731(⇒こちら)

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Session1 VRがもたらす大変革
 藤井氏がモデレーターを務め、Oculusの池田輝和氏、HTC ViveのRaymond Pao氏、ソニー・インタラクティブエンタテインメントの吉田修平氏が登壇。VRのプラットフォームを手がけている大手企業の責任者レベルの方が集まってディスカッションが行われるということで、荒木氏も今回のカンファレンス最大の目玉イベントと強調。これだけの顔ぶれが一堂に会するのは世界的にもなかなかない機会とのこと。

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Session2 海外VRビジネス最前線
 ふたつ目のセッションは、荒木氏がモデレーターを務め、海外でVRに取り組む企業の動向を中心にディスカッションがくり広げられるもの。登壇者は、3Dアニメ映画製作会社であるドリームワークスのスタッフが中心になって設立されたBaobab StudiosのMaureen Fan氏、『コール オブ デューティ』の製作スタジオのチームからスピンオフしたメンバーとピクサーのメンバーで、VR向けのゲーム開発に取り組むReload StudiosのJames Chung氏、世界最大のゲーム企業TencentのLi Shen氏、VR空間でのアバターコミュニケーションツールの開発に取り組むVR ChatのJesse Joudrey氏。

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Session3 VRで生まれるヒットゲーム
 3つ目のセッションは、VRでゲームはどのように変わるのか。VRならではのヒットタイトルとはどのようなものになるのかといった、日本のゲーム企業でVRに携わる顔ぶれが集結。VRのいまを掘り出すWEBメディア“MoguraVR”の編集長、久保田瞬氏をモデレーターに据え、日本でも積極的なVR向けゲーム開発に取り組むコロプラの馬場功淳氏、『サマーレッスン』の開発責任者でもあるバンダイナムコエンターテインメントの原田勝弘氏、VR専門会社を設立し、PlayStation VR向けのタイトル開発を手がけるレゾネアの水口哲也氏が登壇する。

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Session4 VR開発者を支える最新技術動向
 これまでのプログラムとは趣を変えた4番目のセッションでは、以前スクウェア・エニックスでCTOを務めていた橋本善久氏(リブゼント・イノベーションズ)がモデレーターを担当。ゲーム開発エンジンとして有名なユニティ・テクノロジーズから伊藤周氏、同じくゲーム開発エンジンのUnreal Engineを手がけるエピックゲームズの下田純也氏、チップベンダーのAMDから西川美優氏が登壇し、ディスカッションに参加。開発エンジン、グラフィックチップなどといった、ハードウェアよりの観点から、VRはどのような位置づけになっているのか。また、これからどのように進化していくのかについて、開発者・開発企業に向けて、VRのエコシステムについて語られるものとなっている。

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Session5 投資家から見たVR戦略
 最後は、海外での投資事例を交えながら、VRの領域が投資対象としてどのようなものなのか、将来像をどう見据えているのかを、ビジネス的観点から見たVR業界を語るセッション。VRコンテンツを専門にしたインキュベーションプログラムを主催しているgumiの國光宏尚氏がモデレーターを務め、GVR Fundに取り組むグリーの青柳直樹氏、サンフランシスコでVC(Venture Capital)兼アクセラレーターに取り組んでいるRothenburg VnturesのDylan Flinn氏、同じくVRに向けた投資ファンドであるPresence CaptralのAmitt Mahajan氏が登壇する。

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Japan VR Summit 概要
日時:2016年5月10日
受付・開場:9:00〜
進行予定:10:00〜開会挨拶
     10:05〜11:15 Session1 VRがもたらす大変革
     11:45〜13:00 Session2 海外VRビジネス最前線
     14:15〜15:30 Session3 VRで生まれるヒットゲーム
     16:00〜17:15 Session4 VR開発者を支える最新技術動向
     17:45〜19:00 Session5 投資家から見たVR戦略
     19:30〜21:30 Reception
場所:THE GRAND HALL(品川)
主催企業:グリー
     一般社団法人VRコンソーシアム