Steamでも非VR版が配信中
PC用VRヘッドマウントディスプレイOculus Riftが3月28日より正式ローンチ。すでにお届けしたハードウェア周りについてのリポートに引き続き、注目のソフトウェアを連日紹介していく。
今回紹介するのは、Robot Invaderの『Dead Secret』。本作はVRヘッドマウントディスプレイ“Gear VR”向けにリリースされ、海外3月28日にOculus Rift版とSteam版がリリース。なおSteam版の価格は1480円で、これ自体はVRに対応していないものの、Rift公式ストアでRift版を入手できるダウンロードキーも付属する。
変死体の謎と、周囲を漂う怪異の予兆
舞台は1965年9月。とある人物が変死体で発見され、地元の小さな新聞社に務める女性記者(主人公)が、現場となった屋敷で調査を開始する所からストーリーが始まる。
小さなゴシップ記事程度しか任せてもらえない現況を、この事件の真相を暴くことで打開しようと意気込む主人公だが、どうも被害者は日本の怪談や民俗学などを研究していた節があり、屋敷を調査する内に、主人公の周囲にも次第にオカルトめいた出来事が起こっていく……。
VR時代のポイント・アンド・クリック型アドベンチャー
ゲームとしては気になる場所や行きたい方向をクリックして進め、謎を解いていくポイント・アンド・クリック型のアドベンチャーゲームを、3DのVR空間でやるという感じ。
視点は一人称で、プレイヤーは主人公の視界をそのまま自分の視界として体験可能。一方で主人公の移動はポイント・アンド・クリック方式で、行きたい方向を向き、足のアイコンが出ていれば、ボタンを押すことでそちらに歩いていく。調べたいアイテムへの干渉も同様に、視界中央に物体を捉えて、虫眼鏡のアイコンが出れば調査可能だ。
ちなみに、酔いやすい人でも(比較的)快適にプレイしてもらうための“Comfort mode”も用意されており、これを有効にすると、移動時の歩行モーションがカットされ、目的位置へ一気にワープする形になる。体験の連続性が途切れることで没入感が少し削がれるが、プレイできないよりはマシ。プレイしていて移動時に酔いを感じた人は、オプションからこのモードを有効にするといいだろう。
操作面だけでなくアドベンチャーゲームとしての謎解きのスタイルも、基本は古典的なポイント・アンド・クリック型。気になる場所を調べてアイテムを集め、それを使ったパズルを解いて先に進んでいくという形式だ。
自分が空間に没入するVRで謎解きが詰まるとちょっとストレスが増すが、ヒントは周囲にさまざまな形で隠されており、無意味に見えるものを調べた時に表示されるメッセージ(主人公の感想)がヒントを暗示していたり、歩いて行ける場所が限られていることもヒントのひとつで、何もなさそうな場所でよく足元を見ると……なんてこともある。
逆に推理アドベンチャー的な側面はあまりなく、屋敷内に落ちている手紙などの文書を集めることで、取材メモに要点が書き込まれ、ゆっくりと事件の裏側が見えてくるという感じ。それぞれの文書は長文だが、プレイと最低限の理解に必要な内容は取材メモの方を読めばいいので、英語の長文読解力がなくてもなんとかなるんじゃないだろうか。
VRのホラー表現はメチャ怖い
さて、本作でVRの部分が最大限に活かされているのは、オカルトホラー的な側面の部分だ。グラフィック的には最新のハイエンドゲームと見比べると見劣りするかもしれないが、VRによって問題の屋敷に実体感があるので、心の余裕はすぐになくなっていく。そこに漂う不穏な空気が伝わってきて、窓の外の鳥が突然飛び立つといった何気ないことでも、ビクッとさせられるだろう。
そして本作では怪談テイストを活かして、「一瞬自分の後ろに何かがいるのが鏡に映る」とか(VRなのに敢えて背後を気にさせるというテクがうまい)、「謎の人物がじっとこちらに視線を合わせてくる」といったイヤーなギミックもフィーチャー。自分がその空間にいる感覚があるだけに、後ろを振り向くのが怖くなったり、思わず目をそらしたくなったりする(ただし、恐怖シーンはホラーゲームという程の頻度ではなく、あくまでオカルティックなアドベンチャーゲームとしての要素のひとつにすぎない)。
まぁそんな感じにVRによる雰囲気演出が巧みな本作。エンディングまでのプレイタイムは、そんなに詰まらなければ3時間前後といったあたり。Steamでの非VR版もそれなりに楽しむことはできるが、ぜひオリジナルのGear VR版なり、そのアップデート版であるRift版でプレイしてみて欲しいところ。