プレイを通して、唯一無二の体験を得られる

 日本マイクロソフトより2016年4月7日に発売されるXbox ONE/PC用ソフト『Quantum Break』。ここでは、同作のプレイインプレッションをお届けします。

 選択肢やプレイヤーの行動が実際に進行に反映されるテレビゲームという媒体は、従来から"時間"という題材と高い親和性がありました。事前にセーブデータを保存しておけば、難関が立ちはだかっても何度も挑戦し直すことで突破することができますし、アドベンチャーゲームであれば選択肢の先にある展開を見てから、選択する直前に戻って別の可能性を確かめることができます。特に"時間"を題材にしたゲームでなくても、無意識のうちにタイムトラベル的なプレイングをしていることもあるのではないでしょうか。

本作は、そんな"時間"という題材に、真っ向から挑戦しているタイトルです。舞台となるのは、タイムマシン実験の失敗により、時間がばらばらに砕け散ってしまった世界。タイムマシン実験に立ち会ってしまった主人公ジャック・ジョイスは時間を操る力を手に入れ、差し向けられる部隊や数々の困難を、己の力を武器に切り抜けていくことになります。本作はストーリーに注力していて、序盤から驚きの展開が立て続けに起こっていくため、極力ネタバレはしない方向でこのゲームの魅力を紹介していきたいと思います。

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▲ゲームの雰囲気はダーク、かつ近未来的。実験が行われる大学をはじめ、さまざまな場所がゲームの舞台となります。

時間を意のままに操るという独特のプレイ感覚

 本作の基本的なゲーム性は、銃を武器に三人称視点で敵と撃ち合いをくり広げる、いわゆるTPS(サードパーソンシューティング)となっています。柱や机などの物陰に移動すれば自動で体を物陰に隠してくれるため、敵の攻撃をうまく回避しつつ、隙を狙ってこちらの銃撃を当てに行く、オーソドックスなものです。この説明けではシンプルに思えてしまうかもしれませんが、むしろ本作のゲーム性における最大の特徴である時間を操作する能力を駆使するには、根幹の部分がシンプルなくらいが丁度よいのです。

 銃撃戦の最中にプレイヤーが行える行動の中でも、とくに強力なのが時間停止です。やりかたはボタンひとつ。狙いを定めた空間から一定範囲の時間を、文字通り停止させることができます。敵を巻き込めば、敵の動きを一定時間停止させることが可能。さらに、停止した空間に撃ち込んだ銃弾は空中で静止。そこへ立て続けに弾丸を撃ち込めば、やがて時間の流れが元に戻った瞬間に…ドン! 連射した弾丸がまとめて敵に襲い掛かります。これがとにかく爽快。連発はできないのですが、ゲーム的にもかなり強力な行動で、前述の連射で敵に大ダメージを与えるだけでなく、厄介な位置にいる敵の動きを停止させて安全を確保してから自分の射撃ポジションを変えるなど、戦略的な活用も可能です。

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▲時間停止後の射撃は、空間にヒビが入るような演出が発生。静止した敵に向けてドカドカと拳銃の弾を撃ち込みまくっている最中は自分のあまりの格好よさに、自分で痺れそうになるくらい快感です。

 ほかに可能な時間アクションは、短い距離を高速で瞬時に移動するドッジ(回避)と、そこから派生して、スローになった時間の中で狙いを定められるフォーカス。敵やアイテムの位置を透視できるヴィジョン。それから、敵の攻撃を防ぐバリアを展開できるシールド。これらのスーパーパワーを使い分けて、攻め込んでくる敵の部隊を退けていきます。これらのアクションが、エフェクトが派手で、発動することがとにかく気持ちいいです。

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▲停止した時間の中では、高速の銃弾もほぼ無力と化します。

 また、移動中には謎解きのようなものもあり、そちらも時間操作を駆使したものが多数。場合によっては時間を巻き戻すことも可能になるので、たとえば動いてしまう物体に時間停止をかけて足場にしたり、邪魔なオブジェクトを破壊して道を通過した後で、それを時間を戻して復元し、再利用するような場面も。もう、時間に関連することなら何でもできると思えてしまうほど、アクションが多彩です。フォーカスを使えば、謎解きに必要なオブジェクトがハイライト表示されるため、行き詰まることは少ないです。が、そのオブジェクトの使い道となると話は別。ちょっと頭を捻る必要があるかもしれません。

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▲ヴィジョンで破壊可能なオブジェクトをサーチ。下に置かれた邪魔な箱を壊したが、その後はどうする…!?

海外ドラマのような重厚な物語…と思ったら本当にドラマが始まった!

 時間の崩壊という壮大なテーマを扱っている本作のストーリーは、正直かなり複雑で、ちょっとやそっとじゃ全貌が見えてきません。物語の視点役となるのは主人公ジャックだけでなく、彼とともにタイムマシン実験を行ったポール、そして独自の思惑をもって動く登場人物たち。過去と未来が複雑に絡み合い、さまざまな思惑と権謀術数が渦巻く物語は、ネタバレを気にすると「実際にプレイしてみてくれ!」としか言えなくなってしまうくらいの密度です。

 実際の俳優をモデルにしたリアリティあるキャラクターの織り成すドラマは、見ているだけで海外ドラマやSF映画を彷彿とさせて非常にわくわくさせてくれるのですが、物語をそれだけで終わらせないのも本作の特徴。記事の冒頭でゲームと時間ものの親和性について書きましたが、本作の物語においてもそれは例外ではありません。時間を操る力を手に入れたプレイヤーは、時折大きな決断を迫られることになります。先の時間を見通せるプレイヤーには、そこで選択した結果起こりうる未来があらかじめビジョンとして提示されます。分岐する道とその結果を見たうえで、プレイヤーはどちらを選ぶのか、決断を迫られるのです。

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▲ふたつの選択肢からどちらを選ぶのか。プレイヤーはその先に起こりうる結果を知っています。それどれメリットとデメリットがあり、それらを承知したうえでプレイヤーは物語の未来を選択することになります。

 前情報を知らずにプレイしていた筆者は本気で驚いたのですが、まるで海外ドラマのような、と書いた本作。実際に実写パートがあります。キャラクターのモデルとなった役者の方を起用していて、グラフィックがリアルなゲーム本編と比べると、どっちが実写でどっちがCGなのか混乱してくるくらい雰囲気の整合性が取れています。この実写パート、おまけのようなものと思っていたら、じつはかなりのボリューム。しかも群像劇的なドラマあり、アクションあり、カーチェイスあり、それ単品で一本の映像作品として通用しそうなほどの力の入れようです。

 そして、ただの実写ドラマでは終わらないのも本作のスゴいところ。実写パートでも、"時間のひずみ"は起こります。ゲーム中とほとんど同じ表現で、時間の歪みが発生し、ゲーム本編とリンクしていきます。このゲームと実写がひとつの作品の中で調和を取っている感覚もまた、本作でしか味わえないオリジナリティーの結晶だと感じました。筆者は洋画が大好きな人間なので、興奮しっぱなしです。

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▲実写ドラマとゲーム本編は互いに影響を与え合います。時間を操る主人公の行動が、そのほかの人々のドラマに影響を与えていきます。

 “プレイを通して唯一無二の体験を得られる”、というのが本作を途中までプレイした段階での最大の特徴だと、筆者は個人的に思っています。主人公になりきり、時間を操るスーパーパワーを駆使し、時間の崩壊という壮大すぎる事件に立ち向かっていく。そういった展開を通して得られる爽快感、この先どんな展開が待っているんだろうという期待感、そしてドラマパートの迫力ある映像美は、すべてが一体となって、ほかのタイトルでは得られない独特の体験としてプレイヤーにフィードバックされるのです。

 本作はWindows 10 PC版も同時発売されるため、Xbox Oneを持っていないユーザーでも遊ぶことが可能となっています。新しいものが好きな方も、ハイクオリティーなゲームに興味がある方も、ストーリー性のあるゲームが好きな方も、この機会を逃さず、是非本作を手に取って、時間を意のままに操ってみてください!