ライセンス認定や新たなリーグの設立を予定

 2016年3月30日、国内のプロeスポーツの業界団体“日本プロeスポーツ連盟”の設立発表会が行われた。その模様をリポートする。

 “日本プロeスポーツ連盟”は、これまで国内でeスポーツの普及に携わってきたeスポーツプレイヤー、チームオーナー、大会オーガナイザー、スポンサー、教育機関が一体となって新たに設立されたもの。
 これまでに“一般社団法人 日本eスポーツ協会”と“一般社団法人 e-sports 促進機構”が発足しているが、今回発足した“日本プロeスポーツ連盟”とはどういうものか、またどのような理念のもと運営して行くのかが説明された。

“日本プロeスポーツ連盟”が発足 プロゲーマーのビザ取得やeスポーツライセンスの制度化を推進_01

 初めに登壇したのは、“日本プロeスポーツ連盟”監査を勤める、ロジクールの古澤明仁氏。古澤氏は、4月10日に国立代々木競技場第二体育館で行われる『League of Legends』(以下、『LoL』)国内リーグ戦のオフライン大会“LJL 2016 Spring Split Final”決勝大会を例に挙げ、「ここ2~3年における、国内のeスポーツシーンの盛り上がりを体感している」と述べる。
 eスポーツ人口は、世界全体で見ると増え続けており、『LoL』プロリーグの配信視聴者数は、ゴルフ大会の番組やプロバスケットボールの番組に引けを取らない数字を出しているそうだ。北米でのeスポーツは、野球やバスケットボールのプロリーグと変わらないイメージとなっており、日本国内においてもeスポーツがそのイメージに昇華されるよう、努めたいと語った。

 また、プロスポーツ選手やプロシーンには必ず“ドラマ”が生まれるという。選手たちがプロとして注目されるまでに経験した、苦悩や失敗、葛藤などをコアなファンが知っていて、「いつか自分もあんなふうになりたい」と思い続けるために、プロゲーマーという憧れの存在がある。プロゲーマーが人生をかけて試合をしている姿や、それまでの過程(ドラマ)に魅了されるファンは多い、と古澤氏。この感動を団体運営を通じて、少しでも多くの人に提供することを目標にしているそうだ。

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理念・ビジョン

 “日本プロeスポーツ連盟”の理念として古澤氏は、“eスポーツシーンの感動体験を人々と共有し成長していくことと”、そして“プロeスポーツ文化の創造につねに必要とされる存在になる”ことと述べる。その理念に則り、大会運営、大会配信、審判だけではなく、チーム(プロゲーマー、チームのマネージャー、事務、さらにeスポーツ業界のアナリスト)のケアも行っていくとのこと。古澤氏は、“これらはいずれ、雇用や産業の促進につながる”という見解も述べた。また、eスポーツ参入を検討している企業の窓口も務められるよう、今後調整していくそうだ。

  北米や中国、韓国と比べると、国内のeスポーツは、まだ“認知されている”とは言えない。ビデオゲームをしない層などに向けて、どうやったらeスポーツという市場が認知されるか。そしてeスポーツが文化として根付いていくかについて、古澤氏は「日々の生活の習慣に、eスポーツが取り込まれるかが重要」だと述べる。
 たとえば、フジテレビ月曜9時枠の連続ドラマ(通称“月9”)のドラマのように、毎週決まった時間にドラマ(試合)があるという、一貫性のある運営が、人々に認知され、文化として根付いていく一歩となるそうだ。
 またeスポーツを行うことによって生まれる“習慣”として、アスリートとして参戦すること、試合を観戦すること、そしてその感動を共有することという3点を挙げる。これらの参戦、観戦、感動の共有を“習慣化”させるためには、すべてを提供できるものとして“リーグの設立”がいちばんいいという考えにいたったという。このリーグは“日本プロeスポーツ連盟”が1から設立するものだけではなく、既存のリーグを連盟公認にし、連盟が掲げる理念を共有して、お互いに成長していくという未来を考えていると語った。

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 しかしこれだけでは、eスポーツを文化として根付かせるために習慣化させることはできない。eスポーツを取り巻く課題に直面することが必ず起こりえるからだ。
 第一に、“プロゲーマー”というものの定義が定まってないと古澤氏は指摘する。また、日本では賭博法(博戯または賭けごとによって財物の得喪を決める行為をする罪)の都合で、大きな賞金が懸けられた大会を開きにくいのが現状だ。またマーケティングデータも不足しており、国内でeスポーツが活性化しても、それを示す資料がないと意味がないとし、今後は“日本プロeスポーツ連盟”がデータをまとめていくとコメントしている。

 これらの問題を解決するための具体的な活動について古澤氏は、
・eスポーツライセンスの制度化
・チームオーナーの育成・サポート
・アスリート育成・サポート
・支援企業、教育期間との連携
・公認大会の普及促進
 を掲げている。プロゲーマーに協会が認定するライセンスを取得してもらい、プロゲーマーの定義を明確にするとのこと。これらはプロゲームチームと大会にも運用されるそうだ(ライセンス取得料あり)。
 また、日本初となるプロゲーマー養成コースの創設を発表して話題となった東京アニメ・声優専門学校の“e-Sports プロフェッショナルゲームワールド”などの教育機関と連携して、eスポーツ専門カリキュラムを作成し、eスポーツ運営の実習を行うとのこと。

 古澤氏は最後に、公認大会の普及促進について、大会運営や配信のガイドラインを作成し、大会に参加するメリットや、企業がより健全にビジネスとしてeスポーツ大会をスポンサードできるような環境を作りたいと述べた。

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