尾畑心一朗氏が明かす『マジシャンズデッド』の開発秘話! インタビューの完全版を公開

週刊ファミ通2016年3月10日号(2016年2月25日発売)で掲載した、バイキングがパブリッシャーとして手掛ける第1作『マジシャンズデッド』。その記事内に掲載した、バイキング代表取締役であり『マジシャンズデッド』のディレクターを務める尾畑心一朗氏へのインタビュー完全版を公開する。

●バイキングの新たなチャレンジ

▲バイキング代表取締役の尾畑心一朗氏(文中は尾畑)。『マジシャンズデッド』では、ディレクターとしてゲームデザインやレベルデザインなどを統括している。

 『ガンスリンガー ストラトス』シリーズなど、現在もアーケードシーンの第一線で好評稼動中の作品に、開発会社として関わってきたバイキング。そんな同社が、パブリッシャーとして完全新規タイトルを手掛け、アーケードに参入することが判明した。その注目のタイトルは『マジシャンズデッド』。本作は、非接触型モーションセンサーを使った直感的なバトルを、オンラインを介して多人数で楽しめる対戦ゲームとして楽しめるのだ。週刊ファミ通2016年3月10日号(2016年2月25日発売)では、初公開の情報とともに、バイキング代表取締役であり本作ディレクターを務める尾畑心一朗氏のインタビューを掲載。その中で掲載しきれなかったものを含めた完全版のインタビューを、本記事にてお届けしていく。

●デベロッパーからパブリッシャーへの挑戦

──パブリッシャーとしてアーケード事業に参入した経緯を教えてください。

尾畑 簡単に言うと、もっと自由にゲームを作りたいと思ったんです。もちろん、デベロッパーとしてゲーム制作に携わっていたときも、自分たちの企画を通してもらえていたので、好きなものを開発できているという満足感はありました。また、それをユーザーさんに気に入ってもらえ、アーケード業界の盛り上げにひと役買えたという自負もあります。それでも、もっと自由に責任を持って、ゲームを作ってみたいという想いがあったんです。もともと欲張りな性分で、“バイキング”(=食べ放題)という社名をつけているので(笑)。

――そうだったんですね!(笑)。

尾畑 バイキングという社名は、「僕たちがやりたいことをやりたいだけやって、お腹いっぱいになっても、まだやる!」という意気込みなんです。それとバイ“キング(king)”なので、王様のように仕事に責任、誇り、やり甲斐を持って取り組もうと。それで先ほどのお話に戻るのですが、社名をつけたときの志を考えると、もっと自由にゲームを作りたいと想いまして。ただ、自由にやるためには、当然リスクもあります。やるからには責任をすべて追うことを覚悟して、今回、パブリッシャー……商品の販売や宣伝の部分も全部自分たちでやるんだと、決意しました。

──とはいえ、デベロッパーからパブリッシャーになるには、相当な決意が必要だったのでは?

尾畑 パブリッシャーになる決意は、5年以上前から抱いていました。その中で、『ガンスリンガー ストラトス』の続編や、ほかのタイトルの開発など、さまざまな業務を進めるにあたって、「4年、5年先には会社の規模はこのくらいまで成長していて、スタッフの技術力もこの程度まで上がっているはず」と、予想を立てていたんですね。そして、その後はパブリッシャーでやるんだと、強く心に決めていました。

──まさに、昔から思い描いていた方向に会社を進めたと。

尾畑 はい。おかげさまでバイキングを設立して今年で8年目を迎えられ、70人くらいの社員が集まりました。私は、会社の経営はゲーム開発と変わらないと考えているんです。これは、カプコンに在籍していたときの上司である岡本さん(岡本吉起氏。ゲームプロデューサー)に言われた言葉でもあるのですが。

――岡本氏に言われた言葉といいますと?

尾畑 岡本さんは私より先にカプコンを退社していたのですが、その後も何度かお話しをする機会があって。そのとき、「ちゃんとゲームをディレクションして作れる人間は、ちゃんと経営もできるはずだ」と言われたんです。たとえば、ゲーム作りでいうと、現場にはプログラマーやデザイナーがいます。彼らと話し合い、問題点の解決をしていくのがディレクターの役割なのですが、会社の経営もやることは同じなんです。

――確かに、多くの人間をまとめて問題を解決していくのは、よく似ていますよね。

尾畑 もちろん、実際に経営者になってみると、岡本さんに言われたときには見えなかった苦労もたくさんありました。ただ、私は単純な性格なので、岡本さんに「お前はディレクターとして、ゲームをたくさん作ってるじゃないか。しかも、何かの真似じゃなくて、ゼロから企画を立てられる人間だ。だから会社の経営ができるんだよ」と言われて、「できるかも!」と思っちゃったんですよね(笑)。

――なるほど。では、経営者として大事にしていることはありますか?

尾畑 僕の中では、“ゲーム作りはチーム作りから”という考えがあって。いいゲームは、いいゲームを作れるいいチームが不可欠です。ここまでは、ディレクターのときから実践していたのですが、経営者になると、そもそもいいチームを作るには、いい会社を作らないといけないな……と、考えるようになりました。そこで、バイキングではさまざまな部活を行っています。皆でサッカーをしたり、ボードゲームをしたり、映画を見に行ったり、登山をしたり……。会社から補助金を出して、とにかく皆で遊んでいます。すべてはおもしろくていいゲームを作って、ヒットさせるために必要なことなんです。

――日々楽しい環境にいるからこそ、おもしろいアイデアが次々に生まれてくるのでしょうね。パブリッシャーになるにあたって、ご苦労もあったかと思います。

尾畑 パブリッシャーは、資金を回して、ゲームの開発から、宣伝や販売など、すべてを手掛けて資金をプラスにする……というサイクルを作る必要がありますよね。ゲーム開発以外の業務が多いので、宣伝を行ってくれる人間や、金銭的なマネジメントの部分など、足りないところは山ほどありましたね(苦笑)。

──『マジシャンズデッド』は、販売や宣伝の部分でタイトーさんの協力を受けているとのことですが、その経緯を教えてください。

尾畑 パブリッシャーとして、当社がすべての責任を持って取り組む所存ですが、アーケードの作品ですとゲームセンターさんとの商談やアフターケアが必要になります。ただ、それらを行うには、経験やゲームセンターさんとの信頼関係がないと、難しい部分もあるんです。そこでプロと組むべきだと考え、タイトーさんに協力をお願いしました。タイトーさんとは『ガンスリンガー ストラトス』シリーズで4年ものお付き合いがありますし、当社の理念にもすごく共感してくださっていて。タイトーさんに直談判したところ、「ぜひいっしょにやりましょう!」と力強く答えていただきました。

――お互いにやりたいことが噛みあったと?

尾畑 おそらくなのですが、タイトーさんにもアーケードでのビジネスを大切にしていくという決意があるんだと思います。そういった方針みたいなものが、合致したんじゃないでしょうか。それにタイトーさんは、ゲームに対する考えかたがものすごく真摯なんです。そういった姿勢も大好きなので、考えが合うんだと思います。