『のぶニャがの野望』5周年特集インタビュー!
2011年2月22日よりサービスを開始した『のぶニャがの野望』。織田信長や真田幸村といった歴戦の戦国武将をモデルにした、かわいらしい“ねこ武将”たちを率いて戦うという、一風変わった作品だ。そんな本作は、今年ついにシリーズ5周年! ということで本稿では、5周年を記念して、同作のプロデューサーである廣重演久氏のインタビューをお届けする。本作の制作経緯や、コラボ展開についてなど、たっぷりと5周年を振り返っていただいたので、じっくりと読んでほしい。
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廣重演久氏(文中は廣重)
コーエーテクモゲームス/サービス中/基本プレイ無料(アイテム課金制)
「もう猫にしちゃえ」
――本作のリリース時、「ね、猫!?」と、とても驚いた記憶があります。なぜ武将を“猫化”しようと思ったのでしょうか?
廣重 そもそも本作の企画は、ブラウザゲームを作る、ということを目標に始まりました。というのも、当時の社内に、「ブラウザゲームも作ろう」という流れがあったのです。それで、どんな企画がいいかと考えて、戦国武将で傭兵団を作って競わせる、という企画を提出しました。しかし、「ブラウザゲームはライトユーザー向けにしなければヒットしないので、いまの企画だと内容がよくても、見た目で受け入れられない」と却下されたんです。
──そこで、猫に?
廣重 そうです。当時、某彦根のゆるキャラがブームになっていたんですよ。開発チームのみんなといっしょにウンウン唸っているとき、そのゆるキャラが頭をよぎって、「全員猫にして、『のぶニャがの野望』とか言っちゃえばいいじゃん!」と(笑)。
──大きく舵を切ったわけですね(笑)。
廣重 ただ、そこでちょっと冷静になったんです。「これは悪乗りのテンションかもしれないから、ひと晩寝てみよう」と。でも、つぎの日になってもやっぱりイケるなと感じたので、改めて社内に企画を提出したんです。そうしたら、「武将を猫にするという発想はいいね」と、オーケーをもらえました。
――ねこ武将にして大正解だったと。
廣重 はい。でも、そこからがまたたいへんだったんです(苦笑)。最初は武将の見た目を猫にして、「●●だニャ」ってしゃべっていればいいかなと、適当に考えていたんですよ。ですが、当社の重役が猫好きでして、「やるのであれば、猫の品種や性格についてしっかり勉強して、武将に合った猫を選ぶようにしなさい」と言われたんです。それで渡されたのが、フランス語の学術書で。
──それは、大事になりましたね。学術書は読めたのですか?
廣重 いえ、誰も読めなかったですし、猫が品種によって性格が違うということも、そのときに初めて知りました。慌てて、日本の猫雑誌などをみんなで買いに行きましたね(笑)。そこから、縦軸と横軸に、“かわいい”とか“クール”といった、性格を表す要素が入ってるような表を作って、猫と武将の性格を当てはめる作業に入ったんです。
──テレビ番組『ボキャブラ天国』で使われていた表みたいなやつですね(笑)。
廣重 そうです(笑)。あれは“バカパク”とかでしたが、それに近いものを作って、「この武将はこの猫種に合うな……」とか、どんどん組み合わせていきました。それで、つぎは武将の名前を猫風にしようとしたのですが、それもまた苦労して。最初は、“織田のぶニャが”のように、“ニャ”とか“ミャ”といった猫の鳴き声を名前に組み込んでいったのですが、それだけではつまらないという話になり、猫種を名前に反映させるようにしました。
──猫種を名前に反映させるとは、どのように?
廣重 たとえばシャム猫の“伊達まシャムね”、三毛猫の“ミケだ信玄”といった具合ですね。ただ、それ以後は猫種も考慮しなければならなくなったので、自分で自分の首を締めた気もしますが(笑)。
──確かに(笑)。
廣重 名前をつけるうえで難しかったのは女性武将たちですね。戦国時代の女性は名前が短いので、たとえば織田信長の妻の濃姫をねこ武将にする場合、“ニャー姫”などにしてしまうと、もう誰だかわからないんです。ですから、女性武将を猫化するときは基本的に、名前の後ろに“ニャン”を付けるだけでオーケーということにしました。濃姫だったら、“濃姫ニャン”です。
――ねこ武将の命名ひとつとっても、苦労があると。
廣重 そうですね。でも、それが楽しかったですし、自分の勉強にもなりました。本作がスタートしてからもう5年になりますから、いまは相当猫に詳しいですよ(笑)。
――(笑)。では、ゲームの中身についてうかがっていきたいのですが、本作のゲームコンセプトは、廣重さんが最初に提出された“戦国傭兵団”をベースにされているのでしょうか。
廣重 そうです。“傭兵団”という形にすれば、たくさんの戦国武将を登場させられます。戦国武将って“ご当地感”がすごく強くて、地元にゆかりのある武将が好き、という方が多いんです。そういう方に満足していただくには、できるだけたくさん武将が使えるほうがいいだろうと。そこに、私が好きだったトレーディングカードゲーム的な要素を加えて、いまのシステムを作っていきました。
――仲間を集めていくのは、戦国時代っぽいですよね。
廣重 「モデルにしている武将たちは大名とかなのに、それを全員、傭兵にしてしまうのはどうなんだろう?」という懸念は若干ありました。でも猫だし、いいかって(笑)。
プロモーションではプロレスも敢行!
――サービスを初めてから、5年が経ったわけですが、ここまで長く人気を得ることができた要因は、何だと思いますか?
廣重 うーん……“型破り”だったのがよかったのかもしれません。そもそも、本作はコーエーテクモゲームスっぽくないですよね。
──そうですね、と言っては失礼かもしれませんが、その通りだと思います。先ほども言いましたが、サービスが始まったときは本当にびっくりしました。
廣重 そういう新鮮さが受けたのかもしれません。何しろ、いままでに似たゲームがなかったので、会社でもどうプロモーションしていいか、わからなかったぐらいですから。ですから、もうとにかくなんでもやってみようと思い。やれることは本当に何でもやりました。たとえば、プロレスをやったり。
――プ、プロレスですか!?
廣重 もともとは、『信長の野望 Online』と『のぶニャがの野望』で対決するという、社内コラボイベントだったんです。ただ、ゲーム内でバトルするだけだとつまらないなと思っていたら、たまたまプロレス団体からコラボの話をいただいて、すぐに飛びつきました。それで、レスラーの方が『信長の野望 Online』陣営と『のぶニャがの野望』陣営の代理人として対決して、負けたほうのプロデューサーが、髪を切ることになったんです。プロレスといえば、髪切りデスマッチですから(笑)。
――体を張ったプロモーションですね。結果は?
廣重 『のぶニャがの野望』陣営が負けて、私が後楽園ホールのリング上で丸刈りにされました。そのときに、体を張ると、身が持たないということを学びましたね。そこで、代わりに体を張ってくれる人が必要だということになり、のぶニャが様をお呼びすることにしたんです。
──お呼び……って、のぶニャが様は着ぐるみですよね?
廣重 いやいや! のぶニャが様は実在しますから。まあ、当時、ブラウザゲームで着ぐるみを作るのは、当社では前例がなかったので、制作の承認を取るのがかなり難航したんですが……。
──やっぱり着ぐるみじゃないですか!
廣重 いやいや、本当にいますから。あと、おもしろいコラボということでは、舞台もやりましたね。ついこのあいだまでやっていた『のぶニャがの野望 幸村と五輪の剣』で、3作目です。
――ねこ武将の役は誰が演じているんですか? ……猫ですか?
廣重 いえ、もちろん人間の役者さんです。人間の武将をいったん猫にしたのに、そのねこ武将を人間が演じるという(笑)。
──もう何がなんだか(笑)。
廣重 イケメンの俳優さんが、ネコミミと尻尾をつけて「●●だニャ」としゃべるというだけで、これはもういけるんじゃないかなと思いまして。
――その狙いが、実際に成功したわけですね。本当にさまざまな展開をされていて、びっくりします。
廣重 映画『のぼうの城』とコラボレーションをしたり、神奈川県警さんに、不正アクセス防止を呼び掛けるキャンペーンで、キャラクターを使っていただいた、ということもありました。キャットフードとコラボしたり、“肉球ミートボールカレー”というカレーを作ったりと、とにかくいろいろやりましたね。