企業・学校・学生、それぞれの思いが交錯する貴重なイベント

 ディー・エヌ・エーは、2015年12月19日に同社にて、企業・学校・学生が一体となって業界を盛り上げていくゲーム会社合同セミナー“HEAT3rd渋谷 ~ゲーム会社合同セミナー~”を開催。参加企業の社長が、ゲーム業界に必要とされる人材と育成方法について語ったトークセッションの模様をお届けする。

ゲーム業界に必要とされる人材と育成方法とは? ゲーム会社合同セミナー“HEAT3rd”社長トークセッションの模様をお届け!_01

 トークセッションの様子を伝えるまえに、今回実施されたイベント“HEAT”について簡単に紹介をしておく。“HEAT”とはディー・エヌ・エーが主催する、ゲーム企業と学生の出会いを提供する合同セミナーで、参加する学生たちはそれぞれが用意したポートフォリオを実際に企業に講評してもらうことが可能。企業や専門学校は、ブースを設けて学生たちに自社の取り組みなどのアピールが行える。また、イベントの最後には参加企業の社長が参加したトークセッションが実施され、ゲーム業界には、どんな人物が求められているのか、またどのような育成を心がけているのかなど、就活真っ最中の学生たちにとって非常に役立つ情報が満載のイベントとなっている。
 2015年5月16日に、東京にあるディー・エヌ・エーの本社がある東京・渋谷ヒカリエにて第一回“HEAT”が開催され、2015年7月19日には大阪・インテリジェンス関西支社に場所を変え、第二回“HEAT 2nd”を実施。今回実施された“HEAT 3rd”は、第一回と同じく渋谷ヒカリエで開催。今回の社長トークセッションでは、これまで実施された“HEAT”で、実際に内定が決定した参加者も出席。就活時にどのようなことを心がけたのか、リアルな声を聞かせてもらえるものとなっている。

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ゲーム会社のトップがリアルに採用の実情を語る“社長トーク”

 ゲーム会社合同セミナー“HEAT”の目玉ともいえる“社長トーク”には、アールフォース・エンターテインメントより横山裕一社長、ヴァンガードより杉山智則社長、リズより磯野貴志社長が登場。デベロッパーとして、家庭用機やスマホ向けに数多くの作品を造り続けている企業はいま、どのような学生を求めているのか。今回は、“社長トーク with内定者”と題目を変え、実際に過去のHEATに参加し、内定が決まった学生もステージに登壇。ディー・エヌ・エーのゲームプロデューサー兼、ゲーム人材採用担当の馬場保仁氏が司会進行を務め、ゲーム企業に就活を行うすべての学生にとって貴重な話が語られた。

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写真右より、アールフォース・エンターテインメントの横山裕一社長と中川尚樹さん、ヴァンガードの杉山智則社長と太田龍希さん、リズの磯野貴志社長と川西雄紀さん
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司会進行を務めるディー・エヌ・エー ゲームプロデューサー兼、ゲーム人材採用担当の馬場保仁氏

馬場保仁氏(以下、馬場) 最初の質問ですが、どんな学生に注目していますか?

横山裕一社長(以下、横山) 作品をしっかり持ってきてくれる人に注目します。デモやポートフォリオ、仕様書など、誰に向けて、どんな気持ちで作ったのかがいちばん知りたいポイントで、評価の基準は完成度よりも、入社したあとの伸びしろがあるかどうかがポイントですね。

杉山智則社長(以下、杉山) 弊社は、ヴァンガードの理念に同意してもらえるかどうかが非常に重要です。志を同じくしてやっていける人でないと、会社としても成長していかないと思っているので、そこをいちばん重要視しています。

磯野貴志社長(以下、磯野) 私たちは、とにかくゲームで遊ぶのが好きな人に注目しています。学校に行っているときにも、いま遊んでいるゲームのイベントが気になっているくらい、ゲームのことを考えている人が理想です。反対に最近はゲームを遊ばなくなったという人は、ゲーム業界はやめておいたほうがいいかもしれないですね。

馬場 続きまして、御社が欲しい人物像を聞かせてください。

磯野 今日はプランナーの内定者がいるので、プランナーに関して言わせてもらうと、とにかく精神面が強い人材が欲しいです。プランナーという職種は、ゼロから企画を考えるため、とにかくいろいろな人から叩かれまくる立場なんですよ。それを乗り越えられると、叩かれた分だけ良くなっていきます。

杉山 ゲーム業界って変化が激しいので、シンプルに変わっていける人間が重要だと思っています。技術の進化やお客さまのニーズにあわせて、柔軟に変わって行ける人材像が理想です。

横山 僕が重要視しているのは、ゲームを作るときのゴールをしっかりと持っている人です。自分は何をやりたいのか、そしてどんな風に感じてほしいのかを考えながら作ってもらわないと、ダメなんです。また、精神面の強さも大事なポイントです。どんなに叩かれても、けっして他人のせいにしてはいけないんですよ。他人のせいにすると、そこで終わってしまいますからね。自分の力でクリアーする気概がないと厳しいですね。

馬場 それでは、御社が考えている育成について教えてください。

磯野 弊社の場合は、現場で働かないと育成にならないと思っています。ですので、新人の面倒を見る担当を決め、その担当者の仕事の一部を受け持ってもらいます。担当者は、仕事の一部を受け持ってもらって負担が減った部分で、新人の面倒を見るという、師弟のような関係ですね。そうやって、早く現場になれてもらうようにしています。

横山 弊社にはブートキャンププログラムというものがあって、我々の作品のクローンを三週間で作ってもらうんです。最初の三日間はそのゲームをひたすら遊んで、仕様書を作ってもらいます。まずはその仕様書にダメ出しをするんですが、そうやってゲームの奥深さを知ってもらいます。そのあと、実際にゲームを作ってもらい、さらに出来上がったゲームをUNITYに移植させるんですね。これはなぜかというと、移植作業においてアルゴリズムを見直すからなんです。いわば、天然のリファクタリングですね。

杉山 弊社は、「いま会社に何が足りないのか」について意見を提出してもらう理念実現の取り組みを行っています。部毎に意見を出し合ってもらうんですが、新人にこの意見をまとめるリーダーになってもらいます。もちろん、先輩にサブリーダーになってもらいますが、こうやってプロジェクトの進め方やリーダーシップの育成をしています。理念を実現する気持ちに向かって、先輩たちといっしょに活動するというのは、とても有意義な取り組みだと思っています。

馬場 次は内定者の方に質問します。まず、いつのHEATに参加されていたか教えてください。

中川尚樹さん(以下、中川) 僕は5月のHEAT渋谷に参加しました。

太田龍希さん(以下、太田) 僕はHEAT大阪(7月開催)に参加しました。

川西雄紀さん(以下、川西) 僕は5月、7月の両方に参加しました。

馬場 それでは、HEATに参加し、その後どのように企業にアプローチしたのか教えてください。

中川 HEAT渋谷で、アールフォース・エンターテインメントに行ったんですが、そのときに横山さんの言葉に感動して泣いてしまったんです。参加するまえ、僕は仲間と作便を作っていたんですが、企画担当者がやる気がなくて、僕がその仕事を取り上げて自分で企画書を作ったんですが、それを見せたときに、仕事を取るのはいつでも出来るけど、仕事をさせることを考えないと駄目だと言われ、仲間で作品を作ることの大切さをあらためて感じ、この企業に決めました。

太田 ヴァンガードのHPに孫子の教えが書いてあるんですが、HEAT大阪でヴァンガードのしっかりとした理念を見ることができ、この会社なら移り変わりの激しいゲーム業界のなかで、これから先も続いていくだろうと思うことができたので、ここを受けてみたいと思いました。

川西 5月のHEATの社長トークがおもしろくて、それでリズの名前を知り、7月に話をすることができ、その後間髪入れずに話に行きました。

馬場 実際に就活でどんなことを心がけたのかを教えてください。

川西 企画書のほかに、自己PRポイントを送ってくれというものがあって、そこに注力して、デッサンや絵コンテ、学校のPVなどを提出しました。

磯野 川西君の送ってきた書類のなかでいちばん印象に残っているのが、遊んでいるゲームをすべて書いてもらう欄に、もの凄い量が書いてあったんです。本当にこれだけ遊んでいるのか疑わしかったので、面接で聞いてみたところ、本当にやっていたんですね。

太田 僕は第2面接のとき、社長に企画書を机に叩きつけられたんです。「これは全然おもしろくない」って言われて。でも、いっしょに提出していたプロジェクトマネージメントの反省書があって、それは褒めてもらいました。これは、学校で僕がリーダーを務めていたプロジェクトがなぜ失敗したのかをまとめたものになります。

杉山 しっかり計画を立てて行ったことに対し、なぜ失敗したのかを分析して反省することは、とても重要なんです。それを誰かに言われたわけでもなく、学校でもやっていないことを、太田君自ら率先してやっているのを聞いて、自分に何が足りないかを見つめられる子は伸びると思い、採用しました。

中川 僕はじつは選考という選考はあまりしていなくて、HEAT渋谷で話をして、それから面接にこないかと言われたんです。それで面接に行き、その日のうちにインターンが決まり、インターン終了後に内定をもらいました。

横山 彼はブートキャンプが早く終わったんですよ。でも、ゲームを作りたいっていう気持ちがすごく強いのがわかっていたので、残った期間、3日か4日だったんですが、「じゃあ一本作るか」って言って、「とりあえず今日の19時までに企画を考えて」って言ったんです。

馬場 それで作りきったんですか?

中川 UI周りがちょっとだけ間に合わなかったです。

横山 でも、ゲームは遊べるところまで出来ましたよ。

馬場 それでは最後の質問です。HEATに参加している学生に、今後の振る舞い方で参考になることを教えてください。

中川 就活の手段はひとりひとり違うので、自分の武器をハッキリさせることが大切だと思います。

馬場 キミの武器は?

中川 情熱ですね。

太田 僕が大切だと思っているのは、自分がやりたいこと、できること、会社が求める人物像を合わせて、そのなかで自分はをどういうものをアピールできるかをしっかり考えて作品を作っていくのが大事ですね。たとえば、僕が提出した反省書のようなものも、どんなことにチャレンジしていたかがアピールできたんじゃないかなと思っています。

川西 僕はこういった場での出会いが大切だと考えます。実際にHEAT関西が終わってすぐに内定をもらったので、そこで話していたことがどれだけ伝わっていたのかはわかりませんが、少しは有利になっていたんじゃないかなと思っています。HEATで名刺をもらった方は、すぐにで作品を送ってみてください。

参加学生による社長(+内定者)への質疑応答タイムも実施

 ひととおりの社長(+内定者)のトークセッションが終わったところで、参加学生たちによる質疑応答タイムが設けられた。まず最初の質問は、内定者にたいしての質問で、内定が決まったあと、会社に入るためにしないといけないことについて。
 川西さんは、内定をもらってすぐにインターンの準備に入ったため、考える余裕がなかったとのこと。太田さんは、プランナー志望ながら、作品のプロトタイプは自分で作れたほうがいいと考え、UNITYの勉強を、中川さんはアルバイト中に発生した疑問を勉強し、次の日に発生する新たな疑問をまた勉強と、学習の日々だったと語っていた。
 続いては、就職活動の作品作りに関して、新しい技術にチャレンジしたものがいいのか、おすぐに遊べるものがいいのか、趣味に走って自分をアピールするものがいいのか、各社長に質問。横山社長は、納得しないで人から言われたものを作るのは楽しくないので、自分が思うものをとにかく作ることが大切だと主張。杉山社長は、自分の武器で就職したほうが伸びしろが期待できるため、その武器を前面に押し出したものを作った方がいいのではないかと意見を語っていた。磯野社長も、「何を出すかを決めるのは君たち、我々がこれがいいと言ったからといって、それに従う必要はないです」と、締めくくった。
 最後に社長たちに投げかけられた質問は、面接時に、将来独立したいと希望を告げられたときにどう思うかというもの。杉山社長は、どこでいてもいっしょにいい仕事ができると思っているので、やるべきことをきちんとして、しっかり独立してくれればいいとコメント。独立した後も、いっしょにゲームが作れるような、そういった形での独立なら喜んで送り出すと語ってくれた。磯野社長は、実際に言われてみないとわからないが、もしそう言われたら思いっきり会社に貢献してから独立して欲しいと言うとのこと。横山氏は、たとえ自分の会社を出て行っても、ゲーム業界に残り続けてくれればうれしいと話していた。ただ、会社に魅力があったら、そこと繋がろうとするはずなので、そういう考えを持っていてもいいんじゃないかと述べていた。

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学生たちと企業が短期間で作品を作る“HEAT Dev”の大賞を発表

 “社長トーク with内定者”も終了したところで、本イベントの締めくくりとして“HEAT Dev”の表彰式が行われた。“HEAT Dev”とは、3ヶ月という期間内に企画立案から開発までを学生たちが行う短期開発プログラムで、企画立案の講義に始まり、企画書作成→プロト制作、プロトαバージョンの評価を行い、最終的に完成バージョンを仕上げるというもの。そうやって完成に漕ぎ着けた5作品のなかから、Social Creator Info賞並びにHEAT Dev大賞が発表された。

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ダルマ to Dancing
太田情報商科専門学校
チーム:ZEN宗
どっかん!おもちゃ大作戦
東京工科大学
チーム:萌えデブ
コラプス
名古屋工学院専門学校
チーム:古川貴士
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潜入変化(せんにゅう へんげ)
北海道情報専門学校
チーム:チームきたきつね
俺の服どこいった?
ヒューマンアカデミー札幌校
チーム:奥村悠斗、渡邊亜斗夢
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Social Creator Info賞は、潜入変化が獲得
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HEAT Dev大賞は、コラプスが獲得

 “HEAT Dev”の表彰式も終え、すべてのイベントが終了ということで、最後に馬場氏より“HEAT 4th 関西”開催に関するアナウンスが行われた。開催できるかどうかは企業、学校、生徒たちの協力次第とのことだが、まだ参加できていないクリエイター志望の学生のためにも、近いタイミングでの開催を期待したい。
 ゲーム業界では近年、通常の就職活動による採用だけでなく、今回の“HEAT”を初めとするさまざまな取り組みが行われている。これまで業界の間口の狭さを感じていたクリエイター志望者と、クリエイター志望者が少なくないにも関わらず人材不足に嘆いていた企業との連携が深まりつつあることが、今回のイベントを通してあらためて実感できた。ゲームが好きで、楽しい作品を作るクリエイターが増えるということは、未来のゲーム業界の発展にも寄与することにも直結している。また、普段はなかなか接することのない企業と学生が同じ理念Happy&Winner”を持って一堂に会する本イベントは、ゲームの楽しさを知った子供たちが将来的に“自分でもゲームを作りたい”と考え、目指すべき場として、この先も継続・拡大を望みたいところだ。

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