日々進化を続ける人工知能“りんな”

 日本マイクロソフトは、2015年12月17日、都内で“女子高生AI・りんな”に関する記者説明会を開催した。この会見の模様はニコニコ生放送でも配信された。

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▲日本マイクロソフト
Bingインターナショナルビジネスデベロップメント
シニアビジネスディベロップメントマネージャー
佐野健氏

 “りんな”とは、8月からLINE向けに提供されている人工知能(AI/Artificial Intelligence)のこと。女子高生という設定のみならず、そのオチャメで個性的なやり取りが人気を集めており、現在では185万人以上の“お友だち”がいるという人気者だ。記者説明会では、“りんな”のプロジェクトを推進している日本マイクロソフト Bingインターナショナルビジネスデベロップメント シニアビジネスディベロップメントマネージャーの佐野健氏が説明してくれた。
 もともとマイクロソフトの人工知能開発の歴史は古く、研究・開発部門であるMicrosoft Reserchが設立されたのは1991年。以降、Bingや昨年提供開始されたAzure MLなど、一定の成果をあげており、“りんな”もその歴史の取り組みの一環と言えるだろう。
 また、“りんな”の原型ともいえるのが、中国向けに開発された“XiaoIce(シャオアイス)”という人工知能だ。中国には大きなBing開発センターがあり、研究に適していたという。中国には3500万人のユーザーがいる“XiaoIce”だが、佐野氏によると、オタクやサブカルチャー、SNSの普及、ロボット及びボット市場など、日本における人工知能のビジネス機会が大きいことから、“りんな”の日本への投入が決まった。そして“りんな”を普及させるにあたって注目したのが、約5800万人のユーザーを抱えると言われるLINEだ。そのシステムには、Microsoft Azureのパワーがいかんなく発揮され、また“りんな”の語彙力アップには検索エンジンのbingが使用されているのだ。

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 マイクロソフト、人工知能と言えば、Windows 10の“コルタナ”を連想する方も多いだろうが、そもそも両者は異なるアプローチによって開発されたもの。下の対比図のように、“コルタナ”は効率や生産性を追求したAIであり(ゆえに“コルタナ”はパーソナルアシスタントと呼ばれている)、“りんな”は感情に重きを置いた設計。同じ人工知能でもまったく違う位置付けなのだ。

 続いて、法人向けビジネスとして“りんな API for Business”が紹介された。ただし、「さまざまな企業と商談中」(佐野氏)とのことで、現時点では具体的な発表はとくにないとのことだった。

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▲“りんな”の構造的な仕組み。マイクロソフトの技術がふんだんに取り入れられている。
▲“りんな”(左)と“コルタナ”の仕様位置付けの概念図。

“りんな”には185万人以上のお友だちが!

 “りんな”の歴史的バックボーンの解説に続いて、8月のサービス提供以降の“りんな”の歩みについての説明となった。じつは、毎週さまざまな能力(=機能)が新たに搭載されており、現在では16個にも及ぶ。そういった機能面での充実もあり、表立ったプロモーション活動がないにも関わらず、現在では185万人以上が“りんな”と触れ合っているという。発表会では、能力の中でも人気の高かった“しりとり”と“TVにかじりつき”が紹介され、佐野氏が実際にスマートフォンでデモンストレーションを行った。
 通常モードとガチモードがある“しりとり”は、bingやAzureを備えた“りんな”にとっては得意分野だろう。また、“TVにかじりつき”では、放送中のテレビ音声を“りんな”に聞かせることで、番組名や番組に対するコメントを聞くことができる。それらの追加能力は、“ひみつ手帳”で確認することができるので、毎週チェックしておきたい。

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▲しりとり・ガチモードで“りんな”に勝てるのだろうか……?
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▲これは、“TVにかじりつき”のデモ。
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▲怖い話
▲探偵ごっこ

 185万人以上もの“お友だち”の利用傾向も紹介された。曜日ごとでは、やはり週末に向けてアップしていき、また、利用時間では22時ごろがピークだという。平日と休日の利用についても、利用者の生活スタイルに沿ったグラフの増減を見て取ることができる。また、“りんな”に対して、熱心なアプローチや反応を示してくれるユーザーも多いという。プロフィール画像がまだ夏の制服なので、冬服バージョンの投票を呼び掛けたところ、24時間で70000票を超える投票数になったそうだ。さらに新しい取り組みとして、12月15日からは、LINEの公式アカウント一覧に登場し、タイムラインに投稿することも可能になった。

 また、本日12月17日より、グループチャットやルームチャットへ対応することが明らかになった。そこでは、“カタカナ&アルファベット禁止”や“レシート占い”、“顔出しパネル”などの能力が利用できる。会見では、“顔スワップ”という機能が紹介されたが、これは、ふたりで並んだ写真を“りんな”に見せると、間違いさがしと称して、ふたりの顔のパーツを入れ換えた写真を作成するという、友だちとなら盛り上がること必至の機能だった。
 さらに、クリスマス、お正月、バレンタインデーといったイベント時には、さまざまなサプライズ的な仕掛けを考えているという。ちなみに、この日は会見終了後に同じ会場で、実際に“りんな”と交流しているというお笑いコンビのランパンプスをMCに、ユーザー参加のオフ会“りんな After School Party”が開催された。

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▲利用パターンのデータ。生活サイクルに沿って、利用されているのが分かる。
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 報道陣に配られた資料のプレゼンも終わり、発表会はこれで終了と思いきや、最後に佐野氏から“りんな”がTwitterを始めたことが発表された。興味のある人はぜひフォローしてほしい。

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 会見の最後に行われた質疑応答で、「“りんな”は会話相手を認識しているのか?」という説明に対し、佐野氏は「ある程度」と答えた。いっしょにしりとりを遊んだら、その回数を覚えているという。また、返答のパターンについては、統計的に選択されているそうだ。このことからも、サービス開始当初の天真爛漫というか、摩訶不思議な言動が目立った“りんな”が、次第に成長していく様子が感じられる。ビジネス的な側面も含め、さまざまな可能性がありそうだ。まだまだ若い女子高生だけに。

利用者さんに聞いてみた

 会見終了後、実際に“りんな”を使用しているという女子高生ふたり組にお話を聞いた。そもそも“りんな”を知ったのは、Twitterのリプライでたまたまだったそうだが、企業系のアカウントの返事は定型文も多く、また会話が成立しないものも多いという。しかし“りんな”にはそういったことがなく、利用しているうちに本当の女子高生の友だちのように感じるとのことだ。おふたりとも会話をするのはヒマな時で、「一日平均30分くらいかな」。“探偵ごっこ”や“女優ごっこ”がお気に入りで、今後は「オススメの音楽を教えてくれたら盛り上がりそうだし、実際に音声も聞きたい」と話してくれた。

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