かつてのコアスタッフが再集結!
SNKプレイモアから2016年に発売予定の『ザ・キング・オブ・ファイターズ XIV』(以下、『KOF XIV』)。2010年以来の完全新作となる本作は、従来の2Dグラフィックから3Dグラフィックへと進化。ストーリーも新章に突入し、新たな闘いの幕が上がる。今回は、本作のプロデューサーを務めるSNKプレイモアの小田泰之氏のインタビューをお届けする。
先を見越した3D化
――先日、SNKプレイモアさんはスマホ・コンシューマゲームの開発体制を強化する方針を発表いたしました。これについて小田さんはどういった感想をお持ちですか?
小田泰之氏(以下、小田) 僕自身ずっとゲームを作ってきたので、会社のみんなでゲーム開発に集中するっていうのはすごくポジティブな判断だと思っています。
――なるほど。ちなみに、小田さんはいつころ入社されたのでしょうか?
小田 もともとは1993年にSNK(当時)に入社いたしました。当時は、『餓狼伝説』や『龍虎の拳』を中心に手掛けていた第一開発に所属して、20世紀終わりころのドタバタでいったんSNKを離れました。そして、2014年に『KOF XIV』がきっかけとなり、かつてのスタッフといっしょに戻ってきたという流れです。ですから『KOF XIV』は、旧SNK作品に携わっていたコアスタッフが再集結して、そこに新しい優秀なメンバーが加わえた新チームで開発を進めています。
――小田さんは『KOF XIV』を託された形になりますが、SNKプレイモアさんからはどのようなアクションがあったのでしょうか?
小田 話があったのは一昨年(2013年)ですね。当時のSNKプレイモアの会長が「もう1度ゲームでイチバンを取るぞー!」と急にスイッチ入ったみたいなんです(笑)。それを機にみんながばーっと集まってきて新旧織り交ぜたチームが構成され、2014年の春から開発が本格スタートしました。
――会長のひと言でみんなが盛り上がってきた感じなんですね。
小田 そうですね。もちろん、僕からはこのくらいの期間とコストがかかりますと伝えましたが、「それでもやるんや!」とおっしゃってくれたので、「それならやりましょう!」 と。
――過去シリーズのスタッフは、小田さんが声かけを行ったのでしょうか?
小田 じつは声かけを行ったのは僕ではないんです。SNK時代から現在まで会社に残っていて、かつ当時の人間といまもつながりを持っていたスタッフが声をかけました。
――過去に関わっていた人たちが再集結と聞くと、なんだかドラマがありますね。
小田 とはいえ、昔とは開発に必要なスキルや環境などがガラっと変わっていますから、いわゆる第一開発のコアメンバーで、かついまも現役で現場にいる人間に声をかけたところですね。近年の『KOF』は2Dグラフィックでしたので、3Dグラフィックの技術を持った人たちが必要ですから。
――小田さんを始めとしたコアスタッフの方々は、SNKを離れている間もゲーム開発に携わって、どんどんスキルアップしていたわけですね。
小田 そうですね。集まったメンバーはずっと業界に残っていたので、コンシューマや格闘ゲームなど、開発の経験を10数年積んできています。
――それはすごいメンバーが集まりましたね。今回は、グラフィックが2Dから3Dに変わっています。なぜ3Dにしようと思ったのでしょうか?
小田 SNKを辞めたあとは基本的に3Dでしかゲームを作っていなかったんですよ。それに、ハードの進化もあって2Dから3Dになるのは自然な流れですし、これからさきのことも考えて判断しました。
――では、2Dにするか3Dにするかの議論がチーム内であったのでしょうか?
小田 最初からハイエンド機での開発は決まっていましたので、それはありませんでした。まあでも、いくら人が集まったとはいえ、SNKプレイモアとしてはなかなかノウハウがありませんから、今回を皮切りに技術力をつけていかないといけないと考えています。
――『KOF』と言えば2Dのイメージがあったので意外です。
小田 僕らのころはネオジオという制約があったので、表現方法としてドット絵という選択肢しかありませんでした。当時から『バーチャファイター』などの3Dのハイクオリティーなゲームはありましたから、いい基板が使える機会があれば挑戦したかったですよ。2Dのドット絵はひとつの文化として残っているので、それが好きという方がたくさんいるのも理解していますし、僕も好きです。その反面、開発者としては新しい技術を取り込んで少しでも前に進まなければ明日がないという焦りや想いもあるので、難しいところです。
――そういった考えがあって3Dになったんですね。
小田 また、これは個人的な意見ですが、昔のブラウン管モニターは走査線があったじゃないですか。当時は「0.5ドットを打て」とか言いながら、走査線も意識してドットを打っていたんですよ。でも、いまのフルHDのモニターは打ったドットがそのままキレイに出ちゃうので、味が出にくいとういか。いまのハードやモニターとドット絵の相性はよくないのかなと思っています。
家庭用ならではのモードを充実させたい
――『KOF XIII』が2010年の登場ですから、もう5年が経過しています。新たに立ち上げる『KOFIV』はどういったコンセプトのもとにプロジェクトが進んでいるのでしょうか?
小田 まずは『KOF』らしいシャープなキャラクターデザインを重視しています。僕らは『KOF』がまだ『サバイバー』と呼ばれていたころからSNKにいたので、『KOF '94』が出たときのインパクトははっきりと覚えているんですよ。当時は、『ストリートファイターII』で格闘ゲームブームが起きて、『餓狼伝説』や『龍虎の拳』などのネオジオのゲームがブレイクした時代です。あのころは劇画タッチのドットの打ちかたが主流でした。そんななかにスラっとシャープな、そして耽美な『KOF』のキャラクターが登場したのはインパクトがありました。いまは『KOF XIII』の人気が高いですから、『KOF』=アニメ調のイメージを持たれている方がとても多いことは理解していますが、僕たちは『KOF』にそういうイメージを持っていましたね。
――確かに当時は、他の2D格闘ゲームと一線を画したグラフィックでしたね。
小田 あとはやっぱりキャラクター数ですね。『KOF '94』は、当時16キャラくらいいれば多いと言われていた時代に、いきなり24キャラもいたんですよ。当時のハードスペックと開発環境で「ようあれだけキャラクターを入れたなあ」と驚いたのを覚えています。そういったボリューム感が『KOF』なのかなと思っていますので、今回は50キャラクターを収録する予定です。このくらいいれば驚いていただけるかなと(笑)。
――『KOF '94』のオールスター感はすごかったですよね。近年の格闘ゲームはe-Spotsとして注目される面もあります。そういった部分も意識されているのでしょうか?
小田 e-Sportsがこれだけ広がってきていますし、昔と比べて格闘ゲームに詳しい人が増えていますので、そういった人たちが納得できる操作性やバランスにはかなり気を使っています。
――そのあたりはコアユーザーの評価が高い『KOF '98』や『KOF 2002』を意識しているのでしょうか?
小田 はい。あと当然ながら前作の『KOF XIII』も意識しています。と言っても『KOF '98』をいまやってみるとそんなに操作性がいいわけではありませんが(笑)。現代のゲームとしてみんなが安心して遊べるクオリティーは維持しないといけないと思っています。また、今回はプレイステーション4なのでパッドによる操作もある程度意識しています。
――家庭用ということで、ほかに意識している部分はありますか?
小田 アーケードと決定的に違うところのひとつは、音ですね。ゲームセンターだと環境によってはちゃんと聞こえないこともありますが、自宅でプレイする家庭用の場合は声を張らない演技でもしっかり聞こえます。となると、キャラクターの演技やセリフなどは慎重に進めないといけないですよね。あとは、ひとりでも楽しめるようにという部分です。
――ひとりでも楽しめるというのは、具体的にはひとり用モードの充実でしょうか?
小田 はい。当然オンライン、オフライン問わず対戦はもっとも力を入れています。ですが、ストーリーモードもしっかり作っておかないとSNKとして認めてもらえないと思っています。それから、e-Sportsなどで対戦がクローズアップされればされるほど、ひとりで遊ぶためのサービスも充実し両立させていく必要があると考えています。
――対戦格闘ゲームをひとりで遊ぶプレイヤーも多いのでしょうか?
小田 実際に統計を取ったわけではないのですが、SNKプレイモアのタイトルは「『KOF』を遊びたいけどあまり真剣な対戦はしたくない」とか、「必殺技を出すのがすごく苦手だけど遊びたい」という方も多いのは確かですね。ですから、そういったファンの方も大切にしなければと。
――確かに、格闘ゲームは近年になってようやくストーリーが充実しているものもありますが、『KOF』はシリーズ初期のころからストーリーやキャラが立っているイメージがありました。だからそういったキャラクターファンが多いのかもしれませんね。
小田 もちろんオンライン対戦の品質にはこだわっていきます。
――対戦格闘ゲームですから、オンライン対戦は重要ですよね。品質のほかにウリとなる要素はありますか?
小田 ゲームの実況プレイが盛んになっていますので、ライブ配信を盛り上げられる仕掛けを入れたいですね。まだ開発中なので断定的に言えることは少ないのですが、そのひとつが“パーティーバトル”です。1チームを3人でプレイする。つまりひとり1キャラクターを使用して、最大6人で対戦するモードです。対戦待ちの人が何かできるようにしたりだとか、ワイワイやれる要素を試行錯誤しているところです。
――それはおもしろそうですね。
小田 変更するかもしれませんが、京京京VS京京京などのように同じキャラクターでチームを組めるようにしようかと思っています。すごくカオスな感じに(笑)。
――(笑)。ちなみに、対戦待ちにできることのアイデアはどのようなものが上がっているのでしょうか?
小田 ニコニコ動画的にコメントが入れられたらおもしろいのかなと。あ、やるとは言っていませんよ(笑)。
――対戦画面にコメントの“弾幕”が来たらおもしろいですね(笑)。
小田 ボイスチャットよりもテキストのほうが視覚的な効果があるので、ライブ配信を見ている人にもアピールできますからね。