VRの開発はイマジネーションが開放される

 アメリカ・サンフランシスコにて、現地時間2015年12月5日、6日の2日間にわたり、ソニー・コンピュータエンタテインメントアメリカがプレイステーションの祭典“PlayStation Experience 2015”を開催。その初日となる5日、“PlayStation VR and The Future of Play”と題したパネルが行われ、複数のVR開発者が登壇。その中には、『Rez Infinite』を発表したエンハンス・ゲームズCEO 水口哲也氏の姿も。本稿では、VRの課題と未来について語られたパネルの模様を水口氏の発言を中心にお届けする。

“PlayStation VR and The Future of Play”で水口哲也氏が語ったVRの未来とは?【PSX2015】_01
“PlayStation VR and The Future of Play”で水口哲也氏が語ったVRの未来とは?【PSX2015】_02

・5年後、10年後、VRはどうなるか?

パネルの最初のテーマ。水口氏は「たとえばいまテクノロジーのレボリューションは、HDから4K、8Kとなって、リアルと遜色がなくなっている。3Dで8Kで3Dサウンドオーディオとなったときに、体験としては本当に新しいもの、イノベーションになる。それが5年で実現するかもしれないと考えると、早く(いま抱えている課題を)クリアーする必要がある」と語り、ほかの登壇者たちも「水口さんが言ったようなビジュアルとサウンド、いろいろな感覚がひとつになって働くようになったときに、新しいものが生み出せると思う」と賛同していた。

・VRの開発を通じてわかったことは?

登壇者がそろって口にしたのは「プレイヤーの安全を守ること。体に危険を及ぼさないように」だった。没入感の強いVRでは、“世界に入り込んでしまう”人もいるということだろう。水口氏は「たぶんみんな同じだと思うんだけど、最初は解像度が低くて、2Dで、フレームも4バイスリーという時代が長く続いた。僕らは(ゲームとしての表現上)余計なこととか、つじつまを合わせるために苦労してきたと思う。もともとのイメージはリアルなものだったのにね。それを置き換えることに必死になってきたんだけど、それがなくなるということは、もっと僕らのイマジネーションが開放されていくんだと思う」と説明。

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・VRの経験として作らなければいけない部分は?

多くの登壇者は「信じられるものでなければならない。感覚としてちゃんとしてる、というもの。本当にリアルでなくてもいいけれど、感覚として信じられるもの。混みいったものよりも、たとえば空間にキューブが浮いているほうが、信じられる。いろいろなことを試してみて、おもしろいものを追求していかなければならない。自分たちが評価しておもしろいものを取り上げるということ」と回答。一方、水口氏は「15年前は頭の中ではこういうものであってほしいというのがあって、テクノロジーが追いつくのをずっと待っていた。でも、“なにか”というよりも、“こんなものを作りたい”という延長にVRがあって、ほかの人が言っていることと同感で、新しいイリュージョンがVRにはある。このイリュージョンは現実とも違う新しい体験、人間の意思に影響を与えるもの。いままでゲームではやってこなかった意識に作用するなにか、ということが起こり始める。クリエイターやデザイナーからすると、それはチャレンジでもある」と答えていた。

・VRでゲームをやっているのはなぜ?

登壇者のひとりは「ゲームはコアだけど、制作途中でツールを作っているので、それは机の前では生み出せない。実際に作らないと生み出せない。シンプルなものがきっちりとできるデザインが求められ、ゲーム以外のいろいろなことが助けとなってゲームにつながったということも多い」と語った。また、もうひとりは「技術的なことから離れて、ゲームとは違う新しい世界、新しいチャレンジ、そして新たな問題にぶつかるのがおもしろい。いままでゲームで学んだことを振り返ることもあるし、あえてボールを投げてどうなるか試しているところもある。デザインでもできるもの、できないものがはっきりしている。プレイヤーがほしいものと自分たちがやれることのギャップがすごくある」と回答。

・VRを広めていくためには?

「VRを体験したことのある人は?」。登壇者のひとりが会場の方に挙手を求めて質問。結果、半数近くの人が手を挙げていた。「イベントで伝えることで広まったとは思う。今後は、いい経験ができる場所を提供し、その経験を体験した人が広めていく環境が必要。また、考えなければいけないのは後ろで見ている人がどう思うかということ。VRは実際に体験しないとわからない」という意見も。水口氏は「キーノートで発表したときは、26個のバイブレーションを内蔵したスーツを身にまとっていたが、そこにはテクスチャーがあるし、説明できない実感がある。それを伝えようとしているんだけど、赤ちゃんが何かを訴えていても伝わらないように難しい。でも、ゆっくりだけど、やっと伝えられるようになってきたと思う」と答えていた。

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▲PSX初日に行われたキーノート(発表会)で、水口氏がみずから『Rez Infinite』のデモプレイを披露した。