レイニーフロッグより配信中の、Wii U用ダウンロードソフト『U-EXPLORE SPACE ADVENTURES(ユー エクスプロー スペース アドベンチャー)』。同作の開発を手掛けるデンマークとスウェーデンのスタッフに聞く。

●2016年の2月に日本版のアップデートを実施

 レイニーフロッグより、Wii U用ダウンロードソフト『U-EXPLORE SPACE ADVENTURES(ユー エクスプロー スペース アドベンチャー)』が配信中だ(→関連記事はこちら)。

 本作は、宇宙船で宇宙を探検するアクションアドベンチャーゲーム。商業宇宙飛行が可能になった未来を舞台に、プレイヤーは宇宙を探検する営業会社“U-Explore”のスタッフとして、23光年離れたところにあるスペクタクロンを飛び、惑星を探検することになる。Wii U GamePadで宇宙船の各装置を選択・調整しながら、慎重に探検を進めていくのが特徴だ。まずは、トレーラーをお届けする。

 そんな本作はデンマークにオフィスを構えるKnapNok Games(ナップノック・ゲームズ)とスウェーデンのNifflas’ Games(ニクラス・ゲームズ)の共同作業となる。両社の共同により、斬新な発想の本作はどのようにして生まれたのか? 気になった記者は一路北欧まで飛んだ! というわけにはさすがにいかなかったので、メールインタビューという形でKnapNok Gamesのプロジェクト・マネージャー、アンチェル・ラベナ氏とクリエイティブ・ディレクターのラウ・コーストガード氏、Nifflas’ Gamesのゲームディレクター、ニクラス・ニグレン氏に本作の開発経緯などを語っていただいた。

▲左からクリエイティブ・ディレクターのラウ・コーストガード氏、CEOのダジャナ・ディモスカ氏、ニクラス・ニグレン氏。

――まずは、自己紹介をお願いします。

アンチェル こんにちは、アンチェル・ラベナです。もともとスペイン出身ですが、いまはデンマークのコペンハーゲンにある KnapNok Gamesで PR(プロジェクト・マネージャー)として働いています。ハードウェアの革新的な使いかたや、ローカルマルチプレイでの楽しい体験を新たに模索するようなゲームに以前から興味を持っていました。そしてまさにその点に、KnapNok Gamesは創業当初から取り組んで きました。

ラウ 私はラウです。KnapNok Gamesのクリエイティブ・ディレクターを務めています。『U-Explore Space Adventures』では、多くのインタラクション部分のデザインを担当しました。協力プレイのパートでは、責任者となり、アーティストたちと密接な仕事をしてユーザーインターフェイスを構築しています。私が関わったのはメニューとゲーム内のマニュアル、そしてステージやパズル部分のデザイン以外はすべてといった 感じですね。

ニクラス こんにちは! 私はニクラス、コンピューターゲームの開発者です。『U-Explore Space Adventures』では、ゲームディレクターの役割を担いました。とはいえ、ごく少人数のチームなので、多くのパートを私が担当しています。たとえば、ステージデザインや音楽、プログラムなどなどです。

――本作を開発するに至った経緯をお教えください。

アンチェル 任天堂が最初に Wii U GamePadを発表したときに、私たちのゲームディレクターであるニクラス・ニグレンが、彼は『Knytt Underground』の制作者なのですが、Wii U GamePadを見てすぐに思ったそうなんです。「この GamePadのタッチスクリーンで、宇宙船を動かしたり、いろいろな操作をしたりできるようなゲームを作ったら、ものすごく楽しいものになるに違いない!」って。カプコンの『鉄騎』というゲームが大きなインスピレーションになりました。『鉄騎』は大きな二足歩行のメカをプレイヤーが操作するというゲームで、非常に大きなオリジナルのコントローラが必要でした。小さなインディーゲームスタジオでは、独自のオリジナルコントローラを作って販売する予算はありません。でもWii U GamePadのタッチスクチーンなら、大きなコントローラの代わりになれる。コントローラをどんな形にでも変えることができますから、私たちが求めるようなボタンやスライダーといったものを画面上に配置することができるんです。

――本作のコンセプトを教えて下さい。

アンチェル 『U-Explore Space Adventures』は基本的にはアドベンチャー/パズルゲームですが、ゲームを進めていくとステルス要素も出てきます。プレイヤーは“U-Explore”という名の会社から安価な小宇宙船を借りて、スペクタクロンという星への宇宙旅行に行きます。その宇宙船で星を探検して、新たな土地を見つければ所有権を主張できるのです。ですが、“U-Explore”は信用できる会社というわけではありません。美しくて平和な光景が見られるという期待に反して、ゲームは小宇宙船が危険な未知の星に不時着するところから始まります。船のシステムは損傷し、修理には時間がかかります。つまり、プレイヤーが星から脱出する手段を見つけるには、それなりの困難が伴うということになります。このゲームでWii U GamePadはヘッドダウンディスプレイ(多機能ディスプレイ)のように機能します。プレイヤーはリアルタイムで船の各種システムを変化させなくてはいけません。たとえば燃料エンジン、スラスト、スタビライザー(安定装置)、着陸装置などです。いきなり船が壊れたところから始まるので、恐ろしい感じもするでしょうが、プレイヤーは小宇宙船を自分の手で修理していくことで、ひとつずつ新しいシステムを 覚えていく構造になっています。

――本作で、もっとも注力しているのはどの点ですか?

アンチェル 私たちのアートチームは、プレイヤーが探検する惑星を心からワクワクドキドキするような場所に仕上げたいと考えました。あらゆるエリアをほかとはまったく異なる雰囲気にして、さらにその すべてにおいて細部までこだわりました。暗くて広大な洞窟のようなエリアから、木々の葉のあいだから太陽の光が差し込んでくる深いジャングルのようなエリア、廃虚と化したミステリアスな工場エリアなどです。プレイヤーはゲームを進めていくと、徐々に技術的環境が進化していくので、確実に前進をしている実感が得られるはずです。ですが、敵も同様に進化していきます……。

ラウ このゲームの協力マルチプレイは重要なゲーム要素のひとつであり、この要素がふつうとはまったく異なるゲーム体験を生み出してくれます。ひとりでプレイする場合は、暗くて何が起こるか分からないようなエリアを進んでいくので、一種の孤独感を感じるはずです。でも 2~3人でいっしょにプレイすると、それぞれが“クルー”になります。つまり、パイロットやエンジニア、科学技術者がお互いにコミュニケーションを取りながら、さまざまな障害を乗り越えていくことになります。

――プラットフォームとして Wii Uを選ばれた理由をお教えください。なぜ、Wii U GamePadを活用することにしたのですか?

アンチェル Wii Uは非常にユニークなコンソール機です。Wii Uの GamePadは、ふつうならとても実現できないさまざまなことを実現させてくれます。たとえばTV画面とタッチコントロールを使用できるGamePadのスクリーンとで、違うコンテンツを表示できるという非対称形ゲームプレイなどです。 KnapNok Gamesは新しいことにチャレンジするのが大好きで、Wii Uはたくさんのワクワクするような機会を提供してくれたのです。それと Miiverse(ミーバース)も、ユーザーが絵を描くなどのクリエイティブなことができる、楽しいソーシャルネットワークです。こうしたユニークなサービスの利点をうまく活かして、プレイヤーがより物語の世界に深く没入できるようにしたいと思いました。GamePadがなければ、このゲームはまったく違う様相になっていたでしょう。すべてを機能させるためにはコン トロール部分を大きく変更する必要が生じましたからね。

▲GamePadデザインの変遷。こちらはデザイン案で最終的に採用されることはなかった。
▲こちらがGamePadの最終版。

――“宇宙を探検する営業会社“という設定がユニークですが、どのような発想で世界観を構築したのですか?

ラウ そのアイデアを思いついたのは、じつは開発のかなり終盤になってからでした。私たちは、宇宙船はいつバラバラになってしまってもおかしくないんだ、という感覚をゲームに盛り込みたかったのです。 そこで、大きくてハイテクな宇宙船ではなく、もっと安っぽくてレンタル品のトレイラーに近いような宇宙船を操縦することにしようと考えたのです。このフィクションを成り立たせるために、“U-Explore”という会社を考え出しました。このコンセプトを私たちはすごく気に入ってしまい、“U-Explore”に、いろいろな要素を付け加えていきました。たとえば、ゲーム内のマニュアルはまるで宇宙船の実際のマニュアルのように書かれていますし、メニュー全般はまるで“U-Explore”の搭乗券のようになっています。ゲームの中には、この旅行エージェンシーのような会社があなたに約束した宇宙旅行の内容と、実際に直面する宇宙旅行の内容がぜんぜん違っていたということを表現するためのユーモアがたくさん込められています。こうした状況には、恐らく多くの人が共感できるはずです。

――宇宙を探検するということで、ご苦労されたポイントなどありますか?

ニクラス このゲームを制作する上で個人的に一番難しかったのは、今回のようなチームでの作業をいままでしたことがなかった点です。それに、『U-Explore Space Adventures』のゲームエンジンとして採用したUnityを、私が使ったことがなかった点もですね。たくさんの知識を素早く吸収する必要がありました。もちろん簡単ではないことなので、もっと経験値があればしなかっただろう間違いをたくさんしましたよ。チャレンジ ングで楽しかったですけどね!

――最大3人で宇宙船の操作を分担するというマルチプレイの方式はとてもユニークです。このコンセプト はどういった経緯で開発されたのですか?

アンチェル じつは驚くほどシンプルな発想からなんですよ。当初はひとりプレイ用のゲームを開発するつもりでした。ですが、開発後期になってから気付いたんです、Wii U GamePadなら実現できる非対象 型ゲームプレイを導入して、協力プレイのオプションを作ったほうがおもしろいことになるだろうって。ゲーム内では(協力プレイは)モード別にもなっていないんです。新しいプレイヤーはステージのどの時点からでも参加できるようになっています。そしていつでも途中で離脱して、またひとりプレイで続きを 楽しむことも可能なんです。

――欧州/アメリカでは無料のアップデートがリリースされていますね。同じアップデートを日本向けにもリリースする予定はありますか?

アンチェル もちろんです! 欧州とアメリカ向けのアップデートを準備していた時、日本版に関してはまだゲームのコア部分の仕上げを行っていました。リリース時点でまだこのアップデートを含める準備ができていなかったんです。ですが、じつはここで初めて公式にアナウンスするのですが、日本向けのアップデートは2016年の2月に公開する予定です。アップデートは無料で、新たに5つのステージが追加されます。すでにメインのストーリー部分をクリアーしてしまって、新たなコンテンツを求めているプレイヤー向けとなります。

――本作は、KnapNok Games(デンマーク)と Nifflas’ Games(スウェーデン)の共同開発とのことですが、共同開発することになった経緯を教えてください。両社の役割分担はどのような感じになって いるのですか?

▲左からクリエイティブ・ディレクターのラウ・コーストガード氏、CEOのダジャナ・ディモスカ氏、CTOのセビー・セルヴィグ氏。

アンチェル KnapNok Gamesは革新的かつ有意義な方法で、プレイヤーどうしが相互にコミュニケーションできるようなタイトルを制作することに得意としています。全員がスクリーンを凝視するのではなく、プレイヤーがお互いの顔を見ながら話をするようなゲームが、私たちは好きなのです。そうした中で、私たちはゲームの操作方法の新たなメソッドをいろいろ試していっています。一方で、Nifflas’ Gamesは美しくてミステリアスな世界観を構築すること、いったいゲーム世界はどうなってしまうのかと思わせるような予測不可能かつ楽しいストーリーを生み出すことを得意としています。こうしたふたつの会社が手を組んで世に出ることになったのが『U-Explore Space Adventures』なんです。プレイヤーは広大でミステリアスな謎の惑星を探検していきながら、その環境や状況から情報を読み取ることを通して、星の過去を少しずつ知っていくことになります。そして Wii U GamePadならではの、これまでにまったくなかった方法でゲームを操作します。

――『U-EXPLORE SPACE ADVENTURES』に関わっている両社の開発スタッフの人数はどれくらいですか?

アンチェル KnapNok Games側は10人ですね。3Dと2Dのアーティストからオーディオデザイナー、プログラマー、ゲームデザイナー、PR、プロデューサーなどです。ですが Nifflas’ Gamesに関してはまったく状況が異なります。こちらはゲームディレクターであるニクラス・ニグレンただひとりの会社なのです。それでもニクラスの専門分野は本当に多岐に渡ります。彼はひとりでゲームデザイン、グラフィックデザイン、オーディオデザイン、音楽とプログラミングまでこなせるんです。要するにゲーム制作に関することはすべてひとりでできるんですよ! これは本当に素晴らしいことで、ニクラスの一貫したヴィジョンがなかったら、『U-Explore Space Adventures』は今回実現できたような完成度にはならなかったはずです。

――両社はデンマークとスウェーデンということで、ある程度距離があるかと思うのですが、開発に支障 はないのでしょうか? どのような開発スタイルを採用されているのですか?

アンチェル じつは、KnapNok Gamesと Nifflas’ Gamesは公式にはそれぞれ違う国の会社(デンマークとスウェーデン)ということになっていますが、このゲームの開発においては同じオフィスでいっしょに行いました。おかげで、やるべき仕事のすべてでシンプルに連携を取ることができましたね。私たちはSCRUMメソッドを今回使用しました。全工程を短距離走の連続であるといったふうに計画していき、 毎週新たな一連のタスクをゴールにまで持っていく必要がありました(例:アルファビルドの完成、新しいベータ版など)。チーム全員が同じ方向を向けるように、毎朝チーム全体でミーティングを行っていました。ひとりひとりが前日に行った作業とつぎに行う作業といった最新情報をチーム全体に伝え共有します。

――両社の開発者どうしで親睦を深めるための催しなどされているのでしょうか?

ニクラス 最初のきっかけは“No More Sweden”でした。これはスウェーデンのマルメで行われているゲームジャムで、そこではゲーム開発者が純粋に楽しむために、48時間でゲームを1本作るというイベントをしています。私たちスウェーデン人が小さなゲームをわずか48時間で作ったり、イカれたデンマーク人がゲームを披露したりするんです。そして話をしたり、いっしょに夜ご飯を食べたりしたんです。そのうち私や友だちを誘ってくれるようになって、デンマークでいっしょに遊んだりしていたんです。 そのゲームジャムで彼ら(KnapNok Gamesの人たち)が披露していたのは、Wiiのコントローラを使った変なゲームでした。プレイした人がとても奇妙に感じるようなね。私も奇妙なゲームが好きなので、だから私たちは繋がったんでしょうね!  最終的に、私がゲームジャムで出会った人たちのほとんどは、何かしらKnapNok Games関連の人たちでした。その後、頻繁にコペンハーゲンを訪れるようになり、けっきょくここに住むようになりました。いろんなことをいっしょにしていますよ、定期的に飲む機会を設けて集まったりね。そして私が『Knytt Underground』を、KnapNok Gamesが『Spin the Bottle: Bumpie’s Party』(日本タイトルは『わいわい!みんなでチャレンジ』)をリ リースした時に思ったんです、「ねえ、いっしょにゲームを作らないか」ってね!

▲左からケイヨード・“K”・ションバレ-ルイス氏、アンチェル・ラベナ氏、アンドレ・レスタッド・ブレヴィック氏、クリスチャン・ラムセン氏、サイモン・ニールセン氏、キャスパー・ピーターソン氏、ダジャナ・ディモス氏、ラウ・コースガード氏、ジョナス・ハックス氏、セビー・セルヴィック氏、ゲディマナス・ビバニス氏、ニコラス・ニグレン氏。

――いま北欧のゲームメーカーが元気ですが、その理由はどの点にあると分析されていますか?

アンチェル 北欧では、さまざまな独立系のゲームスタジオが制作を積極的に推し進めることができる数々の要因があると思います。たとえば、ゲームを新たな方向へと押し出せるようなゲームコンセプトに対して、助成金や資金調達の機会を提供するといった地方機関などからのサポートが増えてきています。さらに、活気のあるゲーム開発者のコミュニティーがたくさん存在していて、自分たちだけで一番のゲームを作ろうなどと争うようなことはせず、会社どうしが自由に意見交換をしたり、リソースをシェアした りすることだってあります。具体例を挙げると、KnapNok GamesはPress PlayやMicrosoft Games studioと同じ建物内にありますし、通りの向こうには有名な『Limbo』というゲームを作ったPlaydeadもあります。ほかにも会社の近く にはたくさんのゲーム会社があって、仕事終わりにいっしょに時間を過ごすことはいたってふつうのことなんです。こうした環境が、この地域から多くの良質なゲームが輩出されていることの要因だと思います。多くのゲームはダウンロード版のみですが、リテール版に負けないクオリティーを保っています。

――最後に、『U-EXPLORE SPACE ADVENTURES』を楽しみにしている日本のファンに向けてメッセ ージをお願いします。

アンチェル 日本向けに『U-Explore Space Adventures』をリリースできたことを嬉しく思っています。こちらとはまったく異なるマーケットですが、それでもとてもワクワクしています。KnapNok GamesとNifflas’ Gamesに所属する全員が子どものころから日本のゲームタイトルで遊んできました。とくに任天堂のコンソール機のゲームではよく遊んできました。そしていま、私たちが多くの努力と愛を注ぎ込んだ最新のゲームを、日本のプレイヤーの皆さんへ向けて Wii Uタイトルとしてリリースできました。これは私たちにとって夢の実現の瞬間です。私たちがこだわりにこだわりぬいたこのゲームを、日本のプレイヤーの皆さんが気に入ってくれることを願っています。日本の皆さんからの感想が聞けることを楽しみにしています!