メーカーの垣根を越えたクロストークインタビュー第五回

 『PROJECT X ZONE 2:BRAVE NEW WORLD』(以下:『PXZ2』)のディレクター:森住惣一郎氏、プロデューサー:塚中健介氏の両名と、各メーカーのクリエイターを交えたクロストークを実施。メーカーの垣根を越えたクロスオーバータイトルの監修時のエピソードや苦労話、見どころをうかがってきた。第五回は『サクラ大戦』シリーズのディレクターを務める寺田貴治氏を交えてのクロストークをお届けする。

『PROJECT X ZONE 2:BRAVE NEW WORLD』メーカーの垣根を越えた開発者クロストークインタビューを公開【第五回】_01
[写真左]バンダイナムコエンターテインメント CS事業部 プロダクションディビジョン 第1プロダクション2課チーフ 塚中健介氏
[写真中]モノリスソフト ディレクター 森住惣一郎氏
[写真右]セガゲームス コンシューマ・オンラインカンパニー 第三CS研究開発部 企画セクション セクションマネージャー 寺田貴治氏

ペアの入れ替えによって見えてくるあらたなおもしろさ

――最初に、寺田さんが『PXZ2』で監修されたタイトルを教えてください。

寺田 今回は帝国華撃団、そして巴里華撃団、紐育華撃団、この3つの華撃団が登場する『サクラ大戦』シリーズを監修させていただきました。

――『サクラ大戦』シリーズは、前作から引き続き登場という形になりますよね。登場キャラクターも変わりがないのでしょうか。

森住 基本前作と同じですが、今作ではそれに加えて『サクラ大戦V 〜さらば愛しき人よ〜』(以下、『サクラ大戦V』)から、ボスキャラクターたちが復活して登場します。

寺田 ボスのひとりは「なるほど、こいつか!」と納得できるキャラなんですが、「髑髏坊もチョイスするのか!?」と思いましたよ(笑)。

『PROJECT X ZONE 2:BRAVE NEW WORLD』メーカーの垣根を越えた開発者クロストークインタビューを公開【第五回】_05

森住 髑髏坊は『サクラ大戦V』をプレイしていて、絶対に出さなきゃダメだと思ったキャラクターです。ただ、原画担当者はすごく嫌がりましたね。身体が大きいうえに、デザインが細かいんですよ。『PXZ』のときは『サクラ大戦3 〜巴里は燃えているか〜』(以下、『サクラ大戦3』)のボスキャラクターのシゾーに登場してもらいましたが、シゾーとはベクトルが異なるインパクトがあるキャラクターだったので、絶対登場させたいとお願いして、登場させました。

寺田 『PXZ2』シリーズでは、キャラクターたちのその後が描かれるのが楽しみな部分なのですが、。大神やジェミニの続きだけでなく、まさか髑髏坊のその後が見られるなんて、想像すらしていませんでした(笑)。そんな意外性がとてもおもしろかったです。

森住 髑髏坊はとにかくコミカルなんですよね。急に一本足打法をやったりとか。

寺田 『サクラ大戦V』のバトルイベント絵コンテは僕が描いたんですが、髑髏坊はいろいろと演出的にも思い出深いキャラクターなので、参戦を聞いたときはうれしかったです。

森住 印象に残る敵として、蘭丸や信長は当然ですが、『サクラ大戦3』のシゾーや『サクラ大戦V』の髑髏坊のような個性的なキャラクターは、ユーザーの方もよく覚えていると思うんですよ。

寺田 たしかに、ほかの敵キャラクターたちは言われるまで思い出せないことが多いですよね。ダイアナと戦った赤いやつ……、誰でしたっけ(笑)。

森住 たしか鳥を操っていた人……夢殿ですよね。

寺田 そうでした(笑)確かに、みんながしっかりと覚えているキャラクターとなると、やはり髑髏坊なのかもしれませんね。

森住 シナリオで絡んでくれるだけで、いろいろと美味しいキャラクターですからね。

寺田 しっかりと描いてくださったので、『PXZ2』には髑髏坊の魅力がたっぷり詰まっていると思いますよ(笑)。

塚中 髑髏坊の話もおもしろいですが、いったん話を戻しましょう(笑)。

森住 今回、『PXZ』から大きく変更したポイントは、ペアの入れ替えを行ったことです。前作では大神一郎と真宮寺さくら、ジェミニ・サンライズとエリカ・フォンティーヌがペアを組んでいました。ただ、「さくらと大神でペアが固定なんですか」というご意見も少なからずいただいていたんですよ。たしかに、原作ではプレイヤーが選択することができましたからね。ただ、これには理由があって、『PXZ』ではじめて『サクラ大戦』シリーズに触れられるユーザーの方にたいして、作品の世界観をまず知ってもらうためにメインキャラクターとしての存在が大きいふたりを組ませたということなんです。

寺田 たしかに、『PXZ』のときはいきなり違う作品に登場することもあるので、象徴的なキャラクターであるさくらと主人公の大神以外のセットを提案されていたら、我々も首を縦に振らなかったかもしれませんね。

森住 僕個人的には大神とアイリスをペアにしたかったんですけどね(笑)。いちおう、前作で『サクラ大戦』シリーズの世界を理解していただけたかなということで、今回は大神とエリカ、さくらとジェミニのペアに入れ替わってもらいました。

『PROJECT X ZONE 2:BRAVE NEW WORLD』メーカーの垣根を越えた開発者クロストークインタビューを公開【第五回】_04

寺田 最初の段階で大神とアイリスをペアにすると言われたら、「なぜそのチョイス?」ってみんなが考えると思うんですよ。ただ、『PXZ』でしっかりとキャラクターを描いていただいたうえで、ということなので、今回はこういったバリエーションもありかなと思います。

――ここまで髑髏坊の話からペアの話までお聞きしましたが、今作のベースはどの作品になるのでしょうか。

森住 『PXZ』のときは『サクラ大戦』と『サクラ大戦2 〜君、死にたもうことなかれ〜』(以下、『サクラ大戦2』)をベースにしていましたが、『PXZ2』では『サクラ大戦3』がベースです。『サクラ大戦3』では、大神は隊長として巴里華撃団に赴任しているので、合体攻撃も『サクラ大戦3』を再現しています。ただ、さくらとジェミニはニンテンドーDS版の『ドラマチックダンジョン サクラ大戦 〜君あるがため〜』では会ったことがありますが、原作中では絡みがないんですよね。そこで、さくらは原作では行ったことのない紐育に赴任する形にしました。紐育華撃団のジェミニは銃も刀も持っているキャラクターなので、組み合わせがしやすいんですよ。誰と組んでも、あまり違和感がないのかなと思います。

寺田 そういった意味では、ジェミニはいいとこ取りなキャラクターですね。今回、巴里編を再現されているということで……そうすると絶対に“帝都”と“巴里”で激しい大神争奪戦が起こるのですが(笑)その部分もしっかり描いていただきましたね。

森住 きちんとボイス付きでさくらが怒っていますからね(笑)。

寺田 さくらの姑のような怒り方も見どころになるのかな(笑)。こういったやりとりを見ていても、巴里での大神らしさが出ているのかなと思いますね。

森住 『サクラ大戦3』のエリカのエンディングにあった、大神へのアタックもきちんと再現したんですが、そうなるとさくらは怒りますよね。それをジェミニが困って見ているという設定もおもしろいんです。

寺田 ジェミニは今回どこか、進行役のような存在感がありますからね。

森住 そうなんです。大神、さくら、エリカの三者間でゴタゴタしているのをまとめるといった立ち位置ですね。そういった意味でも、この4人は非常にバランスの取れた組み合わせかなと思います。

寺田 ジェミニといえば、じつは蘭丸と深い関係があるんですよね。そういった『サクラ大戦V』のテーマも、うまく話に絡めてありますよね。

森住 ジェミニと蘭丸に関してはいろいろと考えました。ただ、ふたりのエピソードは『サクラ大戦V』が終わったあとを描いているので、思いを引きずっている蘭丸と、すでに終わったことと認識しているジェミニの温度感を出しています。寺田さんからも、「ジェミニは蘭丸にそんな冷たい言い方はしないかな」といった指摘をいただいたりしながら詰めていったので、『サクラ大戦V』のその後もしっかりと描けているかなと思っています。

寺田 新次郎のなかに入った信長のその後は、OVAで少し描かれていますが、蘭丸の視点になって次の話を考えるということはしたことがなかったので新鮮でした。蘭丸自身、人気のあるキャラクターですので、ファンの方たちも気になるところじゃないかなと思います。

――ちなみに、パートナーが変わったことによって、戦闘シーンも変わっているんでしょうか。

森住 前作はできるだけ格好良く見せることを心掛けていたので、戦闘も真面目路線で演出していましたが、今作ではどちらかというとコミカルな要素を盛り込んでいます。たとえば、エリカは黒猫の技が増えていたり、大神も『サクラ大戦3』の武器、“グリシーヌの戦斧”を使ったりします。エリカがコメディ路線なので、大神が多少コミカルな動きをしても違和感が出にくいんですよね。多少の無茶をしても受け入れてくれるエリカの存在感は大きいです。さくらも、前回は真面目一辺倒だったので、今回は『サクラ大戦2』にあった、倉庫をひたすらモップで拭いていくミニゲームのワザを再現したり、ジェミニと新次郎の合体攻撃“ふたりの明日はホームラン”のボールを“桜花放神”で打ち返すといった、コミカルなワザを追加しています。前回遊んでもらった方たちも、新鮮な気持ちで楽しんでもらえるはずです。

寺田 コミカルというか、今回は割とハチャメチャなノリですよね(笑)。

森住 エリカには“おはようダンス”の続きを踊らせていますからね(笑)。前回はマラカスを持って回るだけのモーションしかなかったんですが、原作にあったマラカスを左右に振るアクションを付け加えました。もし、『PXZ3』があったら、“おはようダンス”の出だしのシーンは再現できそうですね。『PXZ4』くらいになったら、“おはようダンス”が完成するかもしれません(笑)。

寺田 そうなったら、ミニゲームで音ゲーとして遊べそうですよね(笑)。

森住 合体攻撃も、前作では“ふたりはさくら色”という、『サクラ大戦』の必殺技を入れていましたが、今回は『サクラ大戦3』の“ハレルヤ”というワザを再現しています。

寺田 このワザをドットで再現したのは驚きました。当時あの演出を作るのに絵素材もたくさん使ってメッチャ苦労したんですが、ドットでできてる! って感動しました(笑)

森住 どうしてもドットでやりたかったんですよ。

寺田 演出的には『サクラ大戦3』を踏襲しつつ、「なるほど、こういう解釈をするのか」という場面もあるので、ファンの方は必見ですね。