日本が持つe-sportsの可能性の模索と試みの場として

 2015年11月7日、アジアと北米の『World of Tanks』(以下、『WoT』)強豪チームが激突する大会“The Pacific Rumble”がベルサール秋葉原にて開催される。入場無料の大会イベントで、なおかつ賞金総額は$100,000と、日本での『World of Tanks』のオフラインe-sportsイベントとしては、過去最大級の規模となる。

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 これほどの大会イベントがアジアと北米の各国の中で、e-sportsの普及段階としてはまだ未熟な日本で開催されることになったその意図とは? Wargaming社のDeputy Head of Global eSports(グローバルe-sports副統括)を務める、Alexey Kuznetsov(アレクセイ・クズネツォフ)氏にお話を伺った。

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▲Wargaming社でDeputy Head of Global eSports(グローバルe-sports副統括)を務めるAlexey Kuznetsov氏(文中ではAlexey)。

――早速ですが、“The Pacific Rumble”が日本で開催されることになった経緯を教えてください。
Alexey アジアと北米の大会を開催するにあたり、候補として挙がったのがこの日本でした。なぜ日本かと言いますと、我々としては「日本はまだまだ可能性が残された地域である」という認識があるからです。まだe-sportsが十分に浸透していませんので、今後の成長も大いに見込めると考えました。日本の皆さんに、e-sportsというものをより知っていただくためにも、“The Pacific Rumble”を成功させたいと思っています。

――その、日本に残された可能性というのは?
Alexey 日本はとくにユニークな国で、文化も特殊です。ゲーム内では教科書通りの戦いかたではなく、日本独自の戦術を見せてくれます。e-sports全体に対しても、これらはさらなる成長のきっかけを与えてくれると考えています。

――今回のイベントではTier X車両(本作における最高ランクの戦車のこと)を使ったエキシビションマッチも企画されていますね。
Alexey 新しい試みとして、Tier Xを使った新ルールを紹介させていただく場として用意しました。早ければ“The Pacific Rumble”終了後、Wargaming.net Leagueでもシーズン2付近から、この新しいルールが導入される予定です。

――いままでの大会用ルールでは、使用車両はTier VIIIまでという制限がありました。それが解除されるわけですね。
Alexey 『WoT』をプレイし続けていただいている方、そして始めたばかりの方にとっても、Tier X車両はひとつの目標です。今後は大会でも、みなさんが待ち望んでいた、マウスなどの力強い車両による大迫力の対戦を提供したいと考えています。
 プレイヤーのみなさんに同じ戦いをくり返させるわけではなく、日々進化している対戦環境を提供するためにも、適度なルール変更は重要ですから。

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『WoT』とe-sportsのさらなる成長を大会で見届けよう!

――昨今の『WoT』ではロシアのチームが非常に強い印象がありますが、アジア圏、北米圏のチームについての昨今の印象もお聞きしたいのですが。
Alexey 確かにロシアのプレイヤーは非常に多く、e-sportsチームの活動も活発です。しかし、ロシアだけが突出しているわけではなく、Wargaming.net Leagueでもアジアの“EL Gaming”チームが2位になるなど、素晴らしい結果を残してくれています。
 “The Pacific Rumble”を開催することで、Wargaming.net Leagueでは見られなかった、アメリカとアジアという両リージョンの対決を通じて、どのようなプレイヤーや戦術が育っているのかを改めて確認できるかと思います。私自身もそれをいまから楽しみにしています。

――今回のイベントで、両リージョンの現在が浮き彫りになるわけですね。
Alexey それと、一概に所属するリージョンが強さにつながるとは言えません。勝てるチームにとって、豊富な練習量はもちろん、多くの観客の前でプレイしても緊張しないメンタルの強さも大切です。絶対的な勝利条件がないからこそ、各地域のプレイヤーには地道に練習を重ねていただきたいと思っております。

――ワイルドカード枠で参戦となる日本の“Caren Tiger”チームについてはどのような印象をお持ちですか?
Alexey 過去にAPACリージョンの大会で活躍を見させていただきました。そのころはまだ成長段階で、惜しくも敗れてしまいましたが、すでに一定のレベルは保持しており、十分な将来性を持ったチームだと思います。本イベントではプラスアルファの部分にも期待ですね。独自のユニークな戦術、戦法を見せてくれることも楽しみにしています。

――世界トップクラスの強豪どうしがぶつかるわけですし、臆せずがんばってもらいたいところです。
Alexey そう、そこでもうひとつ付け加えさせてください。今回の参加チームに限らず、全プレイヤーのみなさんは、負けることを恐れないでください。なぜ負けたのか、何が悪かったのかを分析して、それを自分への糧として成長に役立ててください。負けても新しい何かを見つけ出し、諦めない心で挑み続けてほしいです。

――では最後に、海外と比べてe-sportsがまだ根付いていない日本に今後よりe-sportsを根付かせるためには、どのようなことが必要になるとお考えですか?
Alexey まず、根付かせるためにいちばん大事な要素である“協力”の部分が日本ではまだ成り立っておらず、各業界がバラバラの状態だと考えております。

――たしかに、現時点では普及に奮闘しているのはゲーム業界のみといった印象もありますね。
Alexey たとえば、ニュースなどのメディアの協力を得る方法を考えたり、有名アーティストがコンサートを行って盛り上げてもらうなど、異なるさまざまな業界に協力していただくことが大事だと思います。
 そうして、ひとつの大きなエンターテイメントとして楽しんでいただけるようになれば、e-sportsは自然と多くの方々に興味を持っていただけるものになるのではないでしょうか。

 本インタビュー終了後、Alexey氏は「イベントを楽しんでください!」と我々を送りだしてくれた。氏が語ったe-sportsの日本での普及、そのビジョンを知るためにも、まずはこの“The Pacific Rumble”というイベントをまずはしっかりと楽しむ必要がありそうだ。

 公式ページには会場の生中継が見られる特設ページも用意されている。当日足を運べない人も、こちらでぜひこの一大e-sportsイベントを見届けてほしい。

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