発表直後のコンテンツからも開発者が出席
現地時間2015年10月28日から11月1日まで、フランスのパリで開催されるゲームイベントParis Games Week 2015。本イベントに先駆けて、10月27日には、ソニー・コンピュータエンタテインメントヨーロッパ(SCEE)が発表会“PlayStation Media Preview”を開催。発表会後には、VR(バーチャルリアリティー)に関するパネルディスカッションが行われた。
このパネルディスカッションのテーマは“Virtually There: Innovation and the The Next Dimension of Gaming”――つまり、VR向けのゲームやハードウェアがどのように開発されているか、またVRやそれらのコンテンツが将来どのように発展していくのか……というもの。発表会でも『RIGS』、『Until Dawn: Rush of Blood』、『THE WALK』など多数の芯コンテンツが発表され、注目が集まるなか、SCEワールドワイド・スタジオ プレジデントの吉田修平氏らが登壇し、熱いディスカッションをくり広げた。
まず最初の議題は「ゲーマーがVRに期待するもの」。これに対して吉田氏は、「さまざまなVRを経験した人それぞれ、感想は異なる」と前置きをしつつ、疑心暗鬼だった人でも、一度体験するとファンになることが多いというVRの特色を挙げる。ただし、まだVRを体験したことのない人も多く、一般論としてどのようなものが期待されているかを答えることは難しそうだ。ではデベロッパーの立場から、VRでどのような体験を提供したいと考えているのか。発表会でお披露目された『Until Dawn: Rush of Blood』を手掛けるサイモン・ハリス氏は、そのタイトル通り「人を怖がらせたい(笑)」と回答。またSCEロンドン・スタジオでディレクターを務めるデイブ・ランヤード氏は、一般的なゲームがVRではキャラクターに惹かれる一方、VRでは恐怖や脅威を感じると、その根本的な違いを分析。「ここから何かを引き出したい」と意欲を見せた。
果たしてVRコンテンツは、新たなゲーマーを取り込むことができるのか。これに対して吉田氏は「イエス」と断言。“経験”感が強力なVRコンテンツにおいては、ゲームプレイがなくとも十分にプレイヤーを引き込めるとした。ゲーム、非ゲームの境目が曖昧になるのもVRコンテンツの特色。たとえば、一般的なゲームにはゲーマーでないと手が出せないような難しいものもあるが、VRコンテンツははコントローラーがVR世界の中にあるので、誰でも容易に、自然に入り込めるデザインになっているのだ。VRコンテンツを一般的なゲームと比較すると気になるのは、プレイの共有やライブストリーミングといった、“Shere”の部分。吉田氏は「それはまだ秘密」とかわしつつも、「ハードは対応できているが、システム・ソフトウェアチームががんばっているところ。今後に期待してほしい」と、対応に前向きであることを明かした。
パネルディスカッションでは、その特色ゆえ、VRはソーシャルではなく孤独なものなのでは、という指摘も。これに対しては登壇者それぞれがVR体験もソーシャルな楽しみかたができると回答。一人称視点のVR用スポーツシューター『RIGS』を開発中のピアス・ジャクション氏(Guerrilla Cambridgeディレクター)は、「VR体験における他プレイヤーとのインタラクション(会話)は、より深い社会性を持っていると思う」と、プレイヤーどうしのコミュニケーションに社会性を見出した。一方の吉田氏は「いっしょにやればハイファイブ(ハイタッチ)ができる」とシンプルに回答。ランヤード氏も「まだ始まったばかりだということ忘れないでほしい。これからだ」と、VRのソーシャルという観点での伸びしろに言及した。
“PlayStation Media Preview”でも新たなコンテンツが多数発表され、製品版発売に向けて注目が高まるPlayStation VR。果たしてPlayStation VRがもたらすVR体験は、ゲーマーを、エンターテインメントを、現実世界を、いったいどう変化させるのだろうか。さらなる展開の発表に期待したい。