2015年10月17日、福岡・九州大学大橋キャンパス内にて、KYUSHU CEDEC 2015が開催された。本稿ではセッション"ガンバリオン仕様書奮戦記~紙からデータへ、そしてこれから~”について、リポートをお届けする。

●ゲーム仕様書の書式を明かす

 2015年10月17日、福岡・九州大学大橋キャンパス内にて、KYUSHU CEDEC 2015が開催。セッション"ガンバリオン仕様書奮戦記~紙からデータへ、そしてこれから~”が行われた。

 本セッションでは、各社独特の様式があると思われるゲーム仕様書の書式に関して、ガンバリオンでは時代に合わせてどのように発展、対応してきたかを紹介。また現在の状況と、抱えている問題、対応しようとしている事柄に関しても紹介された。

▲開発部ディレクター/プランナー 芳賀徹氏(左)、開発部プランナーの土井菜津美氏(右)

 今回のセッションを開催した理由について芳賀氏は、「プランナーという職種をピックアップした話しを聞くことはあまりなかった。また、あまり他社の仕様書を見る機会がなく各社それぞれガラパゴス化しているのではと思い、ガンバリオンから見せていけば良いのではと思った」と述べた。

■これまでの仕様書の歴史
 講師のトップバッターは、開発部ディレクター/プランナーの芳賀徹氏。デザイナーとして開発に関わるが、2003年にディレクター兼プランナーに転職。多くのタイトル開発を経て、現在『ワールドトリガー スマッシュボーダーズ』にてディレクター兼プランナーに従事しているとのことだ。まず芳賀氏より、これまでの仕様書の歴史について語られた。
 仕様書とは、ゲームを作るための設計図で、プラモデルの組み立て説明書のようなもの。この書類をもとに、デザイナー、デバッガーが作業を進める。さらに外部に出すこともあるそうだ。ガンバリオンは仕様書において、いままで4段階の進化を遂げていると芳賀氏は言う。

1:無の時代
 当初開発チームの人数は5名。プランナーはおらず、デザイナー、プログラマーなど明確な作業分担はされていなかった。

2:紙の時代
 開発チームは10名に増え、ひとつのタイトルの開発期間は半年~1年となった。デザイナー、プログラマーも仕様を考え、仕様書制作を兼任するケースが多かったという。当時はイラストを手で描いて縮小コピーし、糊で台紙に貼り付けるアナログな作業だった。デジタルで作ったこともあったそうだが、最終的に紙へ出力してファイリングしていったという。
 当時は開発チーム内での意思疎通のみが目的だったため、第三者が見てもな内容が分かりづらく後の資料として利用できなかった。よって開発室の隅っこに置かれていて、取り回しのしづらい管理になってしまったそうだ。

3:Excelの時代
 やがて開発チームは20〜40名に増え、作業の掛け持ちをやめ自分の仕事に専念するようになった。この頃から仕様書はすべてデジタル化。フォーマットは文章中心だが、挿絵や図を多く取り入れたものへと変化していった。この頃より、外注への資料の共有も必要になっていったそうだ。
 HTMLで目次ページを作り、仕様書はすべてファイルでまとめるように。しかし最終的にひとつのプロジェクトで300近いシート数になってしまい、別タイトルの関連資料が紛れ込むこともあったとか。さらに、どこに何が書かれているのか把握しづらい状況になってしまったという。
 また、仕様書は一定の書式ルールを設けていたが、凝り性なプランナーがいるとグラフィカルな仕様書を作ってしまい、コストが高くなってしまったこともあったという。「作りやすいが見づらい」という意見も出ていた。

4:wiki活用へ
 wiki(ウィキ)とは、独自の文法を使用し、Web上から簡単に内容を書き換えることができるWebサイト管理システムのことである。現在はwikiを使用しており、仕様書制作側の手間が、実感できるレベルで大幅に改善したと述べた。

 ここからは、開発部プランナーの土井菜津美氏が解説してくれた。現在はフリーソフトウェアでオープンソースのウィキパッケージのmediawikiを使い、社内サーバーで管理しているとのこと。現在ネットで見られるwikiとほぼいっしょのデザインなので、Excel使用時代のようにプランナーによってデザインが異なることはなく、統一されたデザインで誰が作っても見やすいものになった。

 また以前は調べたいワードやシステム内容の説明がどこのページにあるのかわからない状況だったが、wikiを使用することで、トップページから各システムのページへリンクできるように。「どの仕様のページにもボタンひとつでジャンプできる利便性がある」(土井氏)と述べた。
 リンクの項目はツリー構造を使ってスッキリとしたレイアウトへと変更。これによりゲームの全体像が見えるので内容を素早く理解できるようになったそうだ。さらに製作進捗をカラー別で明示し、着手していいのかなどがひと目でわかるようにしている。

 更新履歴については、いつ誰がどのような変更をしたか自動で保存されるようになり、Excelではできなかった変更前との見比べが可能となった。さらに「念願の機能」(土井氏)の検索機能が実装。検索機能の向上のため、表現チェック(禁止ワード)を登録して、違反する表現を自動でチェックするようにしている。

 以上の機能により、wikiを使うことによって、探しやすく見やすい仕様書を作れるようになったとのこと。書く側の手間も削減され、作業効率もアップし、Excel時代の問題点の解消+αの利点があったとまとめた。

■現在のガンバリオンの仕様書の問題点
 良いこと尽くめのように思えるwikiを使った仕様書だが、問題点もあると土井氏は指摘する。

(1)画像の追加、編集において、アップロードしリンクを書き込む行程が手間だということだ。クリップボードから画像を追加できるよう、現在改善を検討中とのことだ。

(2)なんらかの事情で仕様が大幅に変更になった場合、変更が面倒な作業になってしまっている。そのような場合は、先祖返りとなってしまうが、修正点だけをまとめたExcelを作り、関係者に回覧。決定となったら修正版をwikiに反映するという手順を踏んでいる。

(3)wiki仕様書は、クライアントや外部デバッガーなど外部からの閲覧ができない。現在対策としてPDF化して共有しているが、その行程も手間でwikiの利点を外部が生かせないのではとのこと。これについては現在HTML化を検討している。

(4)仕様書自体の量(ボリューム)が多いので、昔に比べて読みやすくはなったものの、読み漏らしが多い。また、仕様書の制作コストについて土井氏は、「他社がいくらなのかわからないのだが、まだコストがかかっていると思う」と述べた。さらに、プロジェクト毎に同じことを書かなくていいように、共通化できる仕様を作るなど、より仕様書制作の行程を効率化できないか検討しているとのことだ。

 現在も問題点は多々あるが、wikiで作業を続行し、ほかのセクションと協力し改善を進めていきたいとまとめ、セッションは締めくくられた。