KYUSHU CEDECは大成功!

 2015年10月17日、福岡・九州大学大橋キャンパス内にて、KYUSHU CEDEC 2015が開催された。同カンファレンスの目玉セッションが、『キングダム』でおなじみのマンガ家、原泰久先生による特別講演。講演は、多くの受講者が集まり大盛況となった。

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 ファミ通.comでは、セッションの終了後に原泰久氏と講演で司会役を務めたサイバーコネクトツー代表取締役社長・松山洋氏にお話を伺う機会を得た。ここでは、その模様をお届けしよう。

講演直後の『キングダム』作者・原泰久氏とCC2松山洋氏を直撃 「エンタメ業界を目指す人は野心ギラギラでいてほしい」【KYUSHU CEDEC】_01
▲松山洋氏(左)、原泰久氏(右)

――講演を終えての率直な感想をお聞かせください。

原泰久氏(以下、原) ほっとしています(笑)。

松山洋氏(以下、松山) ぜんぜん緊張しているようには見えなかったですけどね。

 いえいえ、緊張していましたよ。よく言われるんですけど、緊張しているからよくしゃべるんですよ(笑)。

――すごい理路整然として、わかりやすい講演でしたね。

 ありがとうございます。担当編集さんからは、「ときどき何を話しているかわからない」と言われるので、気を付けました。

――(笑)。

松山 きびしいなあ(笑)。

――今回どういう経緯で、KYUSHU CEDECに登壇されることになったのですか? 改めてお聞かせいただけると。

 最初松山さんにお会いしたときに、「飲みにいきましょう」って誘っていただいて、飲みの席でまず「九州・福岡を盛り上げたいんだ」という熱意をすごく語っていただいて、それで「イベントがあるので成功させたいから……」ということでお誘いいただいたんです。すごくうれしかったし、「僕でよければ」ということで力になれれば……ということで、お受けしました。松山社長のキャラありきでした(笑)。

松山 そういっていただいてありがとうございます。

 それがなかったら、もうちょっと考えていたかもしれないです。松山さんに誘っていただいたときは、僕はすぐに「わかりました」と即決してしまったんです。編集にも相談せずに……。

松山 そうなんです。編集部には「私から別途改めてご相談には伺いますから」と、お話をして。編集部からは「先生がいいって言っているんなら……」ということでオーケーをいただきまして。

――さきに直接先生を口説いてしまったと(笑)。

 ひとりでしゃべるのは、原稿を書かないといけないし、講演内容を練り上げる時間もないので、対談形式で……ということでお願いしました。

――地元九州を盛り上げたいというのは、原先生的にも同じ思いがあったからですよね?

 そうです。僕自身は佐賀県の三養基郡基山町出身なのですが、基山町のふるさと大使をやっていますし、福岡もずっと住んでいましたので、本当にいいところだし、盛り上がっていくといいですよね。

――福岡ってゲーム会社やマンガ家さんが多いですよね。エンタメがとても盛んで発展しているところだと思うのですが、実際に移られてきて、実感することってあります?

 僕は10年ほど向こう(東京)に行っていたのですが、僕が大学時代のときもゲームメーカーがたくさんあって、同級生も就職を希望していたりしたのですが、会社が設立されても潰れてしまい……ということでなかなか定着しないというイメージが強かったんです。ですので、10年経ってこっちに戻ってきて、こんなになっていることが想像できなくて、すごくびっくりしました。だから本当にうれしくて。向こうでクリエイティブの仕事をしている大学の後輩とかも、「やっぱり戻ってきたい」って言っているんですよね。

――そうなんですか。

 いま福岡がすごく活発になってきている状況を説明すると、その後輩は「とても迷っている」とのことでしたね。福岡の産業が成功して、中央の一極集中にならないといいなと。みんな「こっちでやりたい」という人が多いので。

――それはなかなかほかの地方では聞かない話ですよね。ふだん週刊誌の連載を担当されていて、時間がない中での登壇だったと思うのですが、作ってでもでようと思ったのは、福岡の振興をメッセージとして伝えたいという思いがあったからですか?

 そうですね。僕はそこまでの影響力があるわけでもないのですが、微力でも力になりたいと思いました。

――ふだん講演されたりすることは?

 ないです。やっぱり講演の依頼とかはあったりするのですが、基本はお断りしています。

――実際に今日松山さんとお話しされて、ご自身がお話しになりたいことは伝えられました?

 みんな聞いてくれているかが心配で、ずっとしゃべっていたというか(笑)。あまりわからなかったです。

――めちゃめちゃ受けていました。

 まあ、楽しくてあっという間でしたね(笑)。

――講演の中で、アシスタントさんを育てられているとのことでしたが、そういった形を通して、育成したいという思いもある?

 そうですね。デビューさせたいという思いはもちろんあります。ただ、基本は『キングダム』のことしか考えていないので、余裕はないかもしれません。「どれだけ戦力になるか」というのをつねに見ながら成長具合を見ています。いまは、そういうレベルなんです。そこからちゃんとデビューするといいなと思っています。

松山 僕は週刊ヤングジャンプは隅々まで読んでいるのですが、巻末のほうに各マンガ家さんのアシスタント募集コーナーがあるんですね。それを見ると、原先生のところだけ住み込みではなくて、「仕事場の近くのアパート代も出すからこい」という、それだけ条件が破格なんですよ。

 そうです。あれは担当さんのアイデアで、みなさん東京に来ているじゃないですか。福岡だと数が少ないので、数を打って原石を探さないといけないかなと。「本当にスキルの高い人に限りますよ」という条件をでっかく書きたいところを書いてないだけで。

松山 まあ、そうでしょうけれども、ふつう「住むところまで用意するから、おいで」ってなかなか見ないですからね。

――そんな好待遇なかなかないですよね。

 いま東京のスタッフを毎週ひとり呼んでいるのですが、飛行機代がかかるので、ふつうに家賃を払えるのと同じではあります。家賃を払ったほうが安いんです。

松山 家賃のほうがぜんぜん安いですね。博多だったらとくに。

――熱意ある人はぜひ……ということですね。

 そうですね。いまは技術ですね。技量とセンス。本当にいくら払ってもいいから……という稀有な。

――しかも、『キングダム』はまだ折り返し地点じゃないですか。これからが後半戦というか。先も長い連載ですものね。

 そうなんです。

――九州に限らずエンタメ産業を目指している方は多いかと思うのですが、若い人に向けてのメッセージやエールをお願いできますでしょうか。

 難しいですね……。ゲームにしてもマンガにしても、実際のところ、なくても食ってはいけますよね。ただ、食べて眠るだけだったら動物ですよね。エンタメには人としての大切なものが詰まっているような気がしています。ものすごくやりがいがありますし、やる意義のあるお仕事です。そして、モノ作りは、自分がいちばん楽しまないといけないですし、楽しんで、野心ギラギラでいてほしいですね。一発当てるというのはものすごく大事で、いまの若い子は、「当てよう」という人が少ないんです。それがかっこ悪いと思うのかもしれないのですが。

――そうですよね。せっかく作るなら当てる気がないと。

 僕も当てる気満々でしたし。講演では、「ヒットの要因は?」と聞かれて言わなかったですが、僕からすると、まだヒットしてないんです。

松山 ええ!? もっと上を目指しているんですね?

 もっと上を目指しています。

――それはすごい。

 がーっとやっている人はみんなそうですよ。

――たしかに、「これでいい」と思ったらおしまいですものね。

 そういうのをアホみたいに言うのは大事かなと思っています。

――最後に松山さんには、KYUSHU CEDEC 2015を終えての感想をいただければと。

松山 大成功です! ありがとうございます!!

――人の集まりがすごかったですね。

松山 関係者の方やスポンサーの方も含め、たくさんの方に応援していただけました。KYUSHU CEDECを企画するにあたっては、「九州でないとできないCEDECをやろう」という思いでいたのですが、それも実現できたように思います。とくに原先生の特別講演。講演のしょっぱなに日野さんの基調講演があって、あいだに充実のセッションがあって、最後に最大の目玉講演があるというのは、ふつうこんなスタイルはなかなかないと思うんですね。最初の日野さんの基調講演でどーんと盛り上がって、最後に「これが楽しみで1日みんながんばった」みたいな講演が待っている。聴講者の方はもちろん、講演者の方にとってもご褒美になる講演にしたかった。原先生にご協力いただけて、本当によかったです。

――たしかに、ほかのCEDECにはない、九州ならではのCEDECでしたね。CEDECで原先生のお話が聞けるとは思っていませんでしたし。

松山 実際のところ、私も原先生に聞きたいことを聞きましたし、言いたいことを言いました(笑)。

――(笑)。松山さんが趣味に走っていることは、すぐにわかりました(笑)。

松山 個人的にも大満足です(笑)。