板垣伴信氏ら“アクションゲーム四天王”が、ゲーム開発の真髄をがちんこで語る 「若いクリエイターにはケンカを売ってきてもらいたい!」【TGS2015】

東京ゲームショウ2015で行われたヴァルハラゲームスタジオの板垣伴信氏らによるアクションゲームの四天王による、“がちんこトークバトル”。ファミ通.comではイベントのあとに独占インタビューを敢行。ここでは、その模様をお届けしよう。

●ゲーム開発の鍵は日常生活のなかでいかに“おもしろい”を見つけるか

 2015年9月17日から20日まで、千葉・幕張メッセにて開催された東京ゲームショウ2015(17日・18日はビジネスデー)。初日の2015年9月17日には、ビジネス・ソリューションコーナーのソフトギアのブースにて、ヴァルハラゲームスタジオの板垣伴信氏、岡本好古氏、ソフトギアの北尾剛三氏、 金子章典氏らアクションゲームの四天王による、“がちんこトークバトル”が開催された。

[関連記事]
板垣伴信氏も参戦! アクションゲーム四天王による“がちんこトークバトル”が開幕【TGS2015】

 ファミ通.comでは、トークバトルの後、ソフトギアの代表取締役CEOの青木健悟氏を交えた5人へのインタビューを実施。トークバトルの話だけでなく、ゲーム開発にかける思いなどもうかがったので、その模様をお届けしよう。

▲左から
Valhalla Game Studios執行役員の岡本好古氏(文中は岡本)
ソフトギア コンテンツ開発部 副部長の金子章典氏(文中は金子)
Valhalla Game Studios 代表取締役CTOの板垣伴信氏(文中は板垣)
ソフトギア 代表取締役CEOの青木健悟氏(文中は青木)
ソフトギア 取締役の北尾剛三氏(文中は北尾)


――アクションゲームの四天王“がちんこトークバトル”ということで、板垣さん、岡本さん、北尾さん、金子さんが同席されましたが、このように4人が揃ってトークを行うのは、初めてだと思います。どういった経緯で実現したのでしょうか?

青木 4人でトークを行うのは初めてですね。今回のトークイベントは、弊社が『Devil’sThird(デビルズサード)』でサーバーのほうをお手伝いさせていただいたのと、私が板垣さんと弊社の北尾、金子に縁を感じて企画しました。

――板垣さんと岡本さん、北尾さんの縁といいますと?

青木 北尾や金子は、以前は別のゲームでアクションゲームを作っていたのですが、十数年前、Xboxやプレイステーション2が発表されたとき、板垣さんと北尾、金子の3人が壇上に上がった機会があったんですよ。それで、これはぜひトークしてほしいなと思いまして。昔の息吹といったら失礼ですが、コンテンツ作りにマネタイズではなくて、おもしろさの部分を吹き込んでもらいたいと思い、弊社のブースでトークバトルのイベントを実施しました。

――十数年ぶりのステージでの共演ということですが、イベントを終えてみていかがでしたか?

板垣 いやもう、楽しかったですよ。

北尾 楽しかったですね(笑)。

――イベントを取材して、アドリブでお話されているのかなと感じました。

北尾 そうですね。台本があったのは最初と最後だけですよ。

板垣 え? 台本なんてあったんですか、僕は何ももらっていませんよ?

岡本 板垣さんに渡しても、ぜったいに読んでくれないので、私のほうでしっかりと預かっておきました。

一同 (笑)。

――では皆さん、本当に自由にお話していたのですね。いちばん印象に残っているのはどういったエピソードですか?

北尾 やっぱり、おもしろさというところが。「おもしろいゲームを作るために心がけていること」など、最初にキーワードとしていただいて、最後までトークの根底にあったので。

金子 そうですね。イベントで麻雀のお話も出ていましたが、やはり昔のボードゲームなどはいまだに集まってプレイしてもおもしろいという。どれだけハードが進化して、ゲームが進化してきても、変わらないおもしろさがあると。そこが軸として大事なのだなと、再確認できた感じです。

北尾 ふだんからおもしろいを体感しているから、 おもしろいゲームが作れるのだと思います。

――トークで飛び出したおもしろい体験のなかでも、板垣さんのゴキブリにベンジャミンという名前をつけて退治するというエピソードが強く印象に残っています(笑)。

北尾 ゴキブリが出ただけで、家族で盛り上がれるのもすごくおもしろくて(笑)。

岡本 僕はこの話をすでに5、6回聞いていますが、飽きないですからね(笑)。

――板垣さん、ゴキブリ以外でそういったお話はありますか?

板垣 会場でもお話したんですけど、僕が家の中で役に立つことと言ったら、ゴキブリ退治くらいしかないんですよ。洗濯もできなきゃ、メシも作れませんしね。

――たとえば、ゴキブリ以外の虫が出たときは?

板垣 虫、ですか?

青木 いわゆる、バグ取りね(笑)。

板垣 ゴキブリ以外の虫、ウチにはいないですよ。クモはたまに見るけど、僕は古い人間なんで。クモは取っちゃいけないっていう。

岡本 でもいま、家で犬を飼われているじゃないですか。ゴキブリとか出てきたときは、やっぱり狩ってくれるんですか?

板垣 いやいや、ベンジャミン(=ゴキブリ)とワンワンは遭遇しないからね。

――ちなみに、ベンジャミンという名前はどこからつけたのですか?

板垣 いやなんか……ベンジャミンぽかった(笑)。で、妻に始末を頼まれたんですが、ゴキジェットの在庫がなかったので買いに行かせました。ゴキジェットを買ってくるまでの時間、まあせいぜい7分でしょうね。その時間にね? せっかくなら娘を笑わせたいじゃないですか。あと、命のはかなさっていうのかな。教えられることは教えたいし。僕らは子どものころ、アリの巣を破壊するとか、やったりしたでしょ? でも、いまの子どもはそういうのを知らないから。クモを取っちゃいけないっていうのも知らないし。だから、命のはかなさを伝えるということを目的に決めた瞬間、役にストーンと入るわけですよ。

板垣 「なあ、かわいそうだよな」
 「え、何が?」
板垣 「あのゴキブリ、ママが帰ってきたら死んじゃうんだよなぁ……」
 「そうだね……」
板垣 「せっかくだから名前をつけよう。死ぬときに名無しじゃかわいそうだろ」
 「そうだね」
板垣 「じゃ、ベンジャミンだ」

板垣 そういう話ですよ。

――奥さんはそういうふたりのやり取りを見て、どういう反応をされるんですか?

板垣 彼女はとにかくベンジャミンに恐怖しているので、早く始末してくれと。「遊んでいる場合じゃないでしょ!」と。このあいだかな? ベンジャミン18世を始末したときもね、おもしろかったなあ。

板垣 「おい、ベンジャミン18世、お前は完全に包囲されている。お母さんが泣いているぞ、無駄な抵抗は止めて出てきなさい。そうすれば命だけは助けてやる!!」
 「遊んでないでお願いよ!!」
板垣 「そうか……ならば。今日は2丁拳銃にしよう。ゴキジェットをふたつ頼む」
 「え? いま命は助けてやるって……」
板垣 「娘よ、これが世界の秩序だ。だからね、よーく覚えておくんだよ。こういう修羅場で、簡単に人を信じてはいけない……」
 「わかった……」

板垣 ところで、ベンジャミン退治にはコツがありましてね、直接、撃ちに行ってはいけない。狭いところに逃げられますからね。だから予想されるベンジャミンの逃走経路のすべてにゴキジェットをこれでもかと散布した上で初めて、ベンジャミンに直接射撃を始めます。あとはご想像ください(笑) 。まあこんなことやってるからゴキジェットが何本あっても足りなくなるわけですが・……。

一同 (笑)。

板垣 何でもゲームなんですよ。いちばん簡単なゲームはゼロイチですよね。たとえば、あいつ(近くにいたスタッフ)はペルー人なんですけど、彼の年齢が丁か半かで賭けるわけですよ。そうすると、どっちだろうって読みが始まっておもしろい。ようはなんでも遊べちゃうわけだから、つねに遊ぶのが大事!

――そういった体験でいかに楽しんで、それをゲームに落とし込んでいくと。

板垣 そうですね。ガキのころから、そういうことばっかりやっていましたからね。

――皆さんも、日常でおもしろいことを見つけてきて、ゲームのほうに落とし込むような作りかたをしているのですか?

北尾 見つけたものをそのままゲームにするのではなくて、さまざまなおもしろいことを体験してどんどん吸収していくなかで、「何を作ろうかな?」と考えるときに、自然に出てくるのだと思います。

――ネタの引き出しになっているというわけですね。

北尾 そうですね。

金子 感受性の話でもありますが、インプットがないとアウトプットもできないじゃないですか。

北尾 子どものころは知恵が働くんですよ。知識は本を読んだりすることで、いくらでも得られると思いますが、知恵というのは遊びからしか得られません。友だちと遊んだり、なんか冒険したり、無茶をしたりするなかで、知恵って出てくるじゃないですか。それが大人になると、知恵になってこないんですよね。どんどん知識になってしまいますから。

――子どものころの楽しい思い出って、いつまでも忘れないものですからね。

北尾 そうですね。

青木 明日のトークのテーマが……(笑)。

板垣 そうなの? 僕は何にも聞いてなんだけど(笑)。

青木 今日のテーマは「俺のほうがもっとオモシロいゲームを作れる」でしたが、明日は「子ども向けのゲーム」をテーマにしようと思っていて。誰ひとり子ども向けのゲームを作っていないので、「作るとしたらどうしますか?」と。

板垣 子ども向けのゲームは、僕には無理ですよ。

一同 (笑)。

岡本 ひとことで終わっちゃいましたね(笑)。

――どういった理由で、無理だとお考えなのですか?

板垣 単純に僕には向いてないと思います(笑)。ともあれ、遊びというのはルールのデザインですからね。結果が出る前に、ちゃんとルールを決める。後づけのルールだと、「あと出しじゃん」ってなるわけでしょ。で、このときに大事なことは、相手が「これなら勝てる」と思うようなルールのデザインを僕はするわけですよ。けっきょく、僕が勝つんだけど、相手が乗ってくるのが大事なんだよね。

金子 それはありますね。RPGを作っているとき、似たような考えでデザインしていました。ユーザーの顔を思い浮かべならこう、挑戦されている感じを与えたいというか。

板垣 ですよね。そこのさじ加減っていうのが狂うと、ガバガバのゲームになったり、逆に難しくて萎えるよってことになっちゃうしね。喜怒哀楽のコントロールですよね、やっぱり。

――さじ加減は本当に難しいと思いますが、最終的なバランス調整はどのようにされているのでしょうか?

板垣 喜怒哀楽の軸だけでやると、たいへんなことになっちゃうんですよ。作業コスト的にたいへんなことになる。だから、プレイヤーをチャンレンジさせるために、いろいろな方法で感情を刺激する。たとえば演出だと、セリフひとつでもいいんですよ。煽りの一言を入れると、「なんだこのやろう!」とムキになってくれるかもしれないじゃないですか。

――ゲームを続けてもらうために、あえて怒らせるわけですね。それをターゲットに合わせて、盛り込んでいくと。

板垣 そうです、そうです。スイカに塩をかけたら甘く感じるでしょ? 一度怒ってもらった後に感動的なシーンをもってくる。そうすると効果が倍加する。バランス取りについて言うと、僕らが子どものころに遊んだ、ケンケンパもそうで。毎日同じルールで遊んでいたら飽きちゃうでしょ。自分に有利なルールで遊びたいんだけど、あまりに露骨すぎると、「お前、それズルいだろ」って言われちゃうじゃないですか(笑)。

――相手に勝てそうだなっていう気持ちにしてあげて、うまくルールを作るわけですね。

板垣 そうそう。子どものころは、道路になんでも描いて遊んでいたんだけど、あるとき、すげーよく描ける石を拾ったんですよ。チョークを学校から毎回頂戴してくるわけにもいかなくて。これは「チョークの代わりになるや」と喜んで使っていたら、その白い石は乾いた犬のフンだったの(笑)。

一同 (笑)。

板垣 でもさ、それも経験じゃん? そういうオチとかさ、オチの感覚とか。さきほど北尾さんが仰っていた知恵ですよね。

――確かに、犬の乾燥したフンがチョーク代わりになるとは知りませんでした(笑)。

板垣 子どものころに体験しないと、知らないよね。でも、ほんとよく描けるんだよ。うちにワンワンが二匹いるから、いっぱいあげるよ。

――せっかくのお申し出ですが、だ、大丈夫です(汗)! あと、先ほどのお話で、明日は子ども向けのゲームに関してトークを行うそうですが、どういったお話をされるのか、簡単にお聞きしたいのですが。

青木 いまお話しすることと、明日お話することが変わるかもしれないので、明日のトークに参加しない僕からお伝えしますね。先ほど出たケンケンパにしても、いまの子どもたちはクルマが来て危ないといった理由で、体験していない子も多いと思います。ですから、僕らが体験してきた遊びというものを、ゲームを通して教えてあげたいですね。北尾の言葉を借りると、遊んで知恵をつけてもらいたい。そういったところが、明日のトークのテーマになるんじゃないかなと思います。そのアプローチの仕方は、それぞれ異なると思いますが。

――なるほど。あとですね、トークバトルのオンラインゲームの流れのなかで、いまはプレイヤーの意見をもらいやすいというお話がありました。そうしたメリットがある一方で、声を聞きすぎてタイトルのコンセプトがぶれてしまうなど、デメリットも考えられると思ったのですが……。

板垣 うーん。それは……私はあまりないですね。でも業界には、お客さんからの意見に盲従してしまう人もいれば、よかれと思って言ってくれているのに、マジで腹を立てちゃう人もいます。ただ、僕から言わせると、文句を言ってくれているうちが華なんですよ。無視されたら終わりなんだから。

――文句を言っている方は、ゲームをプレイしている方が多いと思います。

板垣 そうでしょ?

北尾 そういう人は、ゲームを遊んでくれていますし、つぎも買ってくれますからね。

青木 弊社はオンラインゲームを運営していますし、これから板垣さんたちと『Devil’sThird(デビルズサード)』の運営を行っていきますが、僕はお客さんたちと知恵比べをしたいなと思っていて。とある推理小説家が、「推理小説を書くのは読者との勝負なんだ」といったことをお話されていましたが、その感覚に近いですね。

北尾 作り手としては、プレイヤーの想像の先に行きたいですよね。想定の範囲内だと、やはりつまらないので。ビックリさせてなんぼじゃないですか。

青木 ただ、突拍子もないものはダメなんですよね。

北尾 そうそう。そこは難しいですよね。

板垣 想定の範囲内じゃダメだし、想定すらできない物もダメってことですよね。たとえば、ブロック崩しのつぎに、『インベーダー』ゲームが流行ったじゃないですか。でも、ブロック崩しのつぎに登場したのが、『ギャラクシアン』だったらダメだった、進化に誰もついていけないでしょ。『インベーダー』だったからこそ、みんな大喜びで遊んだんです。つまりチンケな変化じゃダメだけど、「ちょっと手が届くかな」という変化であることが大事です。