『モンスターハンター ストーリーズ』開発スタッフインタビュー完全版 アクションでは伝えきれない世界観をRPGで伝える!

週刊ファミ通2015年9月17日号に掲載した『モンスターハンター ストーリーズ』の開発スタッフインタビューの完全版をお届け。

●RPGで描くモンスターハンターの世界

 東京ゲームショウ2015にプレイアブル出展されたカプコンの新作RPG『モンスターハンター ストーリーズ』。本作は『モンスターハンター』シリーズ初のRPGとして2016年に発売予定のニンテンドー3DS用ソフト。本稿では、週刊ファミ通2015年9月17日号(2015年9月3日発売)に掲載された『モンスターハンター ストーリーズ』開発スタッフインタビューの完全版をお届けする。


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『モンスターハンター ストーリーズ』プロデューサー
辻本良三氏(中央)
すべてのシリーズ作を統括し、本作ではタイトルプロデューサーも兼任する。

『モンスターハンター ストーリーズ』世界観ディレクター
藤岡 要氏(左)
ナンバリングシリーズのディレクターを担当。本作では物語や世界観を中心に参加。

『モンスターハンター ストーリーズ』ディレクター
大黒健二氏(右)
過去に『ロストプラネット』シリーズなどでコンソール機のゲーム開発に従事。

●『モンハン』の濃密な世界観が活きるRPGというジャンル

──“モンスターハンターフェスタ'15”での発表から約半年。初めての詳細発表となりました。まずは本作の狙いを教えてください。

辻本良三氏(以下、辻本) メインシリーズの『モンハン』はアクションゲーム。長年作っているからこそ、キャラクターやモンスターの設定もきっちり作っていますが、アクションゲームではこれらを伝えきれない面もありました。一方、世界観に興味を持たれている人は多くいらっしゃいます。そこで、RPGというジャンルで世界観をしっかり活かしたゲームを作りたいね、という話を5~6年ほど前から藤岡としていました。

──『モンハン』シリーズはこれまで多数の作品が発売されていますが、RPGは初となります。

辻本 『モンハン』でいちばんキャラクター性が強いのは、じつはモンスターなんです。ですからモンスターに愛着を持つ人が多く、そういったことからも本作ではモンスターにスポットを当てています。

藤岡 要氏(以下、藤岡) アクションゲームとして楽しんでいる人たちと、本作からシリーズの世界に入った人たちが『モンハン』というキーワードで会話ができるように、世界観の土台はしっかり合わせつつ、オリジナルの要素を加えています。

辻本 ただ、原作に忠実過ぎると、RPGとしておもしろくない面も出てきます。藤岡には維持すべき部分と崩す部分のバランスを監修してもらいました。

──本作のターゲットとなる年齢層は?

辻本 あらゆる年齢層のプレイヤーに楽しんでもらいたいと思っています。『モンハン』シリーズは多くの方に楽しんでもらっていますが、それでもシリーズに触れたことのない人がたくさんいると思っています。そういったことから、できるだけいろいろな人にプレイしてもらえるよう、なじみやすいビジュアルや世界設定、シリアスになり過ぎないストーリーを意識しています。

藤岡 手法としてはけっこう王道なスタイルですね。下から上の世代まで目に留まる、キャッチーなデザインと世界観を心掛けました。

辻本 「やってみようかな」と思えるようなビジュアルが重要なんです。とてもリアルなモンスターが出てくるとアクションの『モンハン』との区別がつかないですから。せっかくRPGとして出すのですから、同じ路線でやるよりちょっと変えたほうが“らしさ”が出てきます。新たに生まれるブランドとして、このビジュアルタッチで『モンハン』シリーズのもうひとつの柱になっていけばと思っています。

──発表自体は、4月に開催されたモンハンフェスタ'15で行われましたが、開発はいつごろから始まっていたのでしょうか?

大黒健二氏(以下、大黒) 開発がスタートしたのは、およそ2年前ですね。辻本と藤岡が構想を固めた後にチームに誘われたのですが、最初はブランドを背負う自信がなかったので断っていました(笑)。ですが、プロジェクトの参加が正式に決まった後は、すぐに企画書を提出させていただきました。そのときは、辻本と藤岡からあえて詳しい話を聞かずに、僕の考えのみをまとめました。

藤岡 事前に我々がまとめた草案としての企画書もあったのですが、大黒の企画書とほぼ同じイメージのものでした。実現したい大枠がズレていなかったので、大黒に任せることにしました。

辻本 僕らからしたら「従来の『モンハン』にとらわれずに、いいようにやってください」とも思っていたので、がらっと変わる可能性もあったんですけど、大黒のほうが『モンハン』シリーズの知識をめきめきとつけてくれました。

大黒 会社から帰ってから『モンハン4』をとにかく遊んでましたから。「あれ、『モンハン』って楽しい」とすっかりハマってしまいました(笑)。やっているうちに『モンハン』の世界観がRPGと相性がいいということに気づきました。むしろ崩してはもったいない、RPGに活かさなきゃダメだぞと。先ほど藤岡が言ったように、アクションで語れなかった世界観はRPGというフォーマットでこそ伝えやすいということがここではっきりわかったんですね。その時点で僕の中で崩すところ、守るところの基準がきっちりできました。

辻本 守ること、崩すことは本当に“バランス”感覚が大事。

――『モンスターハンター ストーリーズ』というタイトルについて、どういう意味が込められているのでしょうか?

辻本 『ストーリーズ』という名前自体に関しては、RPGとしてのわかりやすさが最大の理由です。単純に『モンスターハンターRPG』と付けるのは、ちょっとストレートすぎるな、と思えてしまって(笑)。

藤岡 最初はその『モンスターハンターRPG』という名前で進めていたんですよ(笑)。ゲームを発表するということは、ロゴ決めないとアカン! だから正式名称を早く決めないといけない……と、と急に考えることになったんですよね。

大黒 すっかり『モンスターハンターRPG』が開発現場で定着していたので、これがなかなか代わりの案が出てこないんですよ(笑)。

辻本 最終的にはアクション要素ではなく、シナリオを重視しているという特徴を前面に出しつつ、チープさを感じさせない語として『ストーリーズ』という名称に決まりました。響きもいいし、ロゴのデザインもしっくりきそうでしたから。ちなみに、ロゴの中心に描かれているのは、“絆石”(きずないし)です。

藤岡 絆石はキーアイテムとなるものです。本作はモンスターと絆を結ぶ民族を中心とした話を描いているのですが、その絆を結ぶための触媒に相当するものが、この絆石なのです。これをロゴの中央に取り入れました。デザインができるまで“ストーリーズ”部分を大きくするか、“モンスターハンター”部分を大きくするかでずいぶん悩みましたが、新しいブランドを立ち上げるなら“ストーリーズ”をしっかり目立たせることにしました。書体自体も雰囲気を変えました。バックグラウンドには、今回の主役となる民族“ライダー”の紋章をあしらって、疾走感を出しています。

大黒 さらに、モンスターを入れることも大事なこと。飛竜種のシルエットも描かれています。


●モンスターの個性を読んで挑む3すくみのバトルシステム

──バトルシステムは3つのコマンドを使ったものですが、なぜそのような形になったのでしょうか?

藤岡 まずは“戦う”、“逃げる”などのコマンドを列挙する形から離れたいと思いました。ターン制でも、もっとシンプルなアプローチがあるはずと考えた結果、3すくみをベースにした案が生まれたのです。

大黒 単純な運だけの勝負ではなく、モンスターの特徴や設定を活かしています。たとえば、ドスランポスはスピードを出すクセが強いなど、モンスターのイメージとクセをリンクさせているんです。RPGですので何度もバトルに挑むため、やがてそのクセが読めるようになります。これはアクションの『モンハン』で、くり返しモンスターを狩るとその攻略法がわかる感覚と重ねる狙いがあります。

──バトルは主人公と“オトモン”と呼ばれる仲間のモンスターがいっしょに挑むのですね。

大黒 主人公は数体のオトモンとパーティーを組めるのですが、バトルではそのうちの1体が主人公といっしょにバトルします。途中でパーティーに入っている別のオトモンと入れ換えることも可能です。

藤岡 バトルは主人公も参加できますが、攻撃の主体はあくまでオトモン。いわば前線に立つ“アタッカー”の役目がオトモンで、主人公はオールマイティーな行動でオトモンをサポートする立場です。

──バトルやフィールドの移動ではつねにオトモンに乗って行動するのでしょうか?

大黒 通常はオトモンから降りて行動していますが、“絆”が深まればオトモンに乗って行動することも可能です。絆は、簡単に言うとオトモンとの仲のよさを示すもの。また、オトモンには個別の能力があり、それらを駆使すれば通常では行けないようなところへ進める場合もあります。つまり、主人公とオトモンの組み合わせにより、遊びや行動の幅が大きく変わってくるのです。

辻本 このような仕組みなので、ゲームを進めるとオトモンを集めたくなるはずですよ。


●ライダーとハンターそれぞれの視点で伝える“モンスターのいる世界

――村には主人公以外にもライダーがいるようですね。

藤岡 ええ。この村では一定の年齢に達すると、儀式を受けてライダーになります。主人公はライダーになる年齢を迎えたばかりの少年。そこでいろいろな事件に巻き込まれていくというストーリーです。

――主人公の隣にいるアイルーのようなキャラクターは、ファンの人たちが最も気になっていると思うのですが(笑)。

辻本 ナビルーといいます。人間の言葉やパートナーのモンスターの気持ちがわかる特別なアイルーなんですよ。モンスターの気持ちもわかる。ライダーとモンスターとの仲介をしてくれる役目で、この世界のナビゲーターでもあります。

藤岡 RPGのゲーム表現にはいろんな手法がありますが、本作は主人公にプレイヤー自身を投影するスタイルにしたかったので、主人公は基本しゃべりません。そうなると、ストーリーを進めるうえで主人公の代弁者が必要になります。そこで、このナビルーをパートナーに据えたのです。

――ビジュアルがユニークですね。

藤岡 このデザインに至るまでには、いろいろと検討しました。もちろん、いままでのアイルーもいます。ナビルーがなぜ普通のアイルーと違っていて、個性を持っているのかはちゃんと理由があります。真相はぜひゲームの中でお楽しみください。

──ゲームの舞台は、これまでのシリーズと同じ場所なのでしょうか?

藤岡 これまでのシリーズで描かれていなかった新しい地域が舞台です。RPGなので、ある一定範囲のエリアをじっくりと冒険していく形になっています。

──本作では従来のハンターも登場するのですね。

藤岡 ええ。主人公たちは、モンスターと絆を結ぶことができる“ライダー”という特殊な民族です。「ハンターがライダーを見たらどう思うのか?」という疑問を起点にして、お互いの目線から描いていくことで、『モンハン』の世界そのものを深く語れるのではないかと思います。

──冒険ではどのような展開が待つのでしょうか?

大黒 主人公は外の世界での体験で成長を遂げていきますが、やがて“モンスターが存在する環境”について考えることになります。この“環境”は本作の物語において、軸になること。環境の変化に対してライダーとハンターはどう対処するのか? といったことから物語が大きく動きます。

藤岡 アクションの『モンハン』の世界では、モンスターはクエストの目的であり、“素材”や“人々の困りごとの対象”でした。でも、そのモンスターの生態系が変化し、いるべきはずのモンスターがいなかったらどうなるか? 生活しやすくなったと言う人もいるでしょうし、いるはずのものがいなくなっておかしいと感じる人もいるはずです。そんなモンスター観の違いをきっかけに、事象の核心に迫っていく物語を目指しました。

――従来のタイトルとはまったく異なる視点から世界を眺めると、いろんな発見がありそうですね。

藤岡 ええ、その通りです。もちろん、RPGならではの表現も心がけていますよ。未知の世界への旅立ち、冒険のワクワクする楽しさを表現できるのがRPG。開発時は“王道のスタイル”をできるだけ踏襲しようと意気込みました。だから、我々も思い入れがたっぷりのキャラクターがどんどん生まれましたが(笑)。自分たちもワクワクできるゲームになりましたよ。

大黒 ライダーの主人公からしたら、ハンターという人たちは初めて知る存在。シナリオメイクの立場からは「ハンターギルドって何?」などの基本的なことから物語が作れるメリットがあります。アクションの続編となると、同じことの説明を繰り返すことになってしまいますからね。これまで『モンハン』の世界を知らなかった人もスッと入れますよ。

藤岡 ライダーはこの世界でひっそり暮らしてた民族なんですが、ある出来事をきっかけに主人公が旅に出ます。そこでハンターを始めとしたさまざまな人物と出会い、成長を遂げていきます。プレイを通じて『モンハン』の世界がわかるようにしたかったんですよ。

──最後にファンへメッセージをお願いします。

大黒 従来の『モンハン』の世界を愛してくださった方も、初めて体験する方も楽しんでいただけるゲームをお届けいたします。どうかご期待ください。

藤岡 本作があらゆる世代の人に『モンハン』の世界観を伝える役目を果たせたら、私にとっても非常に意味のあるものになるでしょう。鋭意開発しています。ぜひ、楽しみに待っていてください。

辻本 これまでのアクションゲーム、本作のRPG。そのふたつの柱で、どちらの『モンハン』もおもしろいと言っていただけるように、がんばります。



モンスターハンター ストーリーズ
メーカー カプコン
対応機種 ニンテンドー3DS
発売日 2016年発売予定
価格 未定
ジャンル RPG

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