『プチコンマガジン 創刊号』インディー魂の“原点”がここにあり!【とっておきインディーVol.44】

古今東西のインディーゲームを紹介していくコーナー。今週は、斬新な自作ゲーム35本を収録したあのソフト!

●簡易なプログラミング言語で制作された自作ゲーム35本を一挙収録

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 ホビーユースのプログラム言語で開発された力作・怪作・一発ネタ(?)が満載の、デジタ“原点”、インディー魂の“原点”、ここにあり!!


 30数年前、自作ゲームのプログラムを記録したカセットテープを、愛読のゲームプログラム投稿雑誌に郵送しては、最新号を読んで一喜一憂した私にとって、『プチコンマガジン 創刊号』は、もう、すべてがキュンキュンとくるソフトです。完成度は二のつぎ……というか、「自分はこんなゲームを作りたい」という青写真の実現化のため、持てるスキルを総動員している全力感が各収録作品から伝わり、「ゲームの魅力というのは、ちゃんとしているとか、遊んでおもしろいとか、そんな狭い範囲だけで語れるものではないなぁ」と、素直に思えるのです。

 全ゲ―マーが、作り手の視点を持つ必要はないのですが、それを多少なりとも意識することで、ゲームがより自分事に迫るのは、確か。本作はそういった、ゲームと自分の新たな距離感を発見するのに、役立つでしょう。ただおもしろさに酔い、つまらなさを嘆く以外の“感想”が生まれたとき、新たなゲーム人生の始まりです!


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▲2画面をフルに使ったアクションゲーム
『HI-JUMP JOHNNY』。総合完成度、高し!

▲とぼけた味わいのグラフィックが印象的な『くねろぼ』。思いのほか頭を使います。

■収録ゲームの開発言語『プチコン3号』とは?


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 スマイルブームが独自開発した、ニンテンドー3DS用プログラミング学習ツール。使用言語は“SMILE BASIC”で、タッチパネル上のキーボードで入力する。立体視やモーションセンサーといった、本体独自の機能も制御可能。開発を支援する各種ツールも充実している。作成したプログラムは、ネットワーク経由で公開できる。価格は1000円[税込]。

 『プチコンマガジン 創刊号』は、スマイルブーム主催のプログラムコンテスト“第三回プチコン大喜利”の受賞作・ノミネート作を収録している。

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※『プチコン3号 スマイル ベーシック』BASICへの愛から生まれた“奇跡のソフト” その由来を開発者に聞いてみた


■ライター・戸塚伎一のホンキでプレイ・ホンネでレビュー

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イラスト/荒井清和

 収録作品の中から「これはすごい(いろんな意味で)」という作品を、通常のレビューとはちょっと違う価値基準で紹介します!


玉にやるならこんな玉ゲー(by アルファ)


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▼たまたまうまくいく感じがクセに
 パチンコの要領で玉をはじき、うまいことゴールに到達させるシンプルアクション。発射台のお皿から玉がまろび出てゲームオーバーというアバウトさも含めて夢中になれます。ステージ7のアイデアはすばらしいのですが……クリアーできません!


PARTIAL WORLD この不完全な世界(by yamachan360)


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▼一歩間違えば世界完全崩壊!?
 審査員特別受賞作。ゲーム内のヒントを頼りに、プログラムに直接修正を加えながら行動範囲を広げるという、市販ゲームではまず不可能なデンジャラスなゲームデザインに感激。『プチコン3号』がないとプレイできない点も、掟破りですね!


HARVEST BILLIARDS(by Mino)


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▼ゲーマーならフルーツ集めてなんぼ!?
 自キャラをぶつけて転がした玉でフルーツを回収していく、面クリアー型アクション。急斜面状のフィールド外周が、3D映えするとともに、玉のファンタスティックな軌道を演出します。ゲームプレイがとっ散らかるのを楽しんでこそ、な面も。


FROM SPACE(by すぎ)


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▼B級SF映画のような切れ味!
 記号的なグラフィック、無骨な音声合成によってかもしだされるハードボイルドな世界観にシビレます。不自由を強いられる操作感覚や、やや成りゆきまかせのバランス調整さえも、本作ならではの美学……というと、言い過ぎですか?


BLADE FORCE(by えぬおう)


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▼超至近距離型シューティング
 スプライトの拡大・縮小で表現された3D迷路は、見通しが悪いながらも、おっさんゲーマー的には、妙な居心地のよさがあります。操作系が独特だったりで、思い通りに移動するのもひと苦労ですが、その際の手の疲労感もまた、心地よし!


くさかり(by Kuni)


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▼バリカンで無双するような快感
 草刈り機を左右に動かして、障害物をよけつつひたすら前進するだけのゲーム。草刈り機のユラーッとした挙動と、茂った草を刈っている時の「ヂヂヂ…」という効果音が、クセになります。1面プログラムという技術面にも驚く、社長賞受賞作。


■ハカセ(スマイルブーム社長・小林貴樹氏)インタビュー

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――“プチコン大喜利”を経て、『プチコンマガジン』の創刊に至った経緯を教えてください。
小林 もともと『プチコンmkII』(※『プチコン3号』の前身となるニンテンドーDSi用ソフト)のころから、応募作品をマガジン化する計画はあったのですが、先に『プチコン3号』の開発に入ってしまったため、仕切り直して創刊しました。「いまさらBASICでプログラムを作っても、商品開発には使えないし……」といった発言がチラホラ流れていたので、BASICで作ったプログラムでも商品化できる環境を用意することも、開発の目的となっています。本当におもしろい作品が現れたときには、マガジン収録ではなく、単独タイトルとしての販売も実現できる環境は、用意できています!

――さまざまなゲーム開発環境が整っている昨今、あえて前時代的な、BASIC言語によるゲーム制作を提案・推進することの意義をどのように考えていますか?
小林 たしかにいまは、本格的なゲーム開発を行うための多くの素晴らしいプログラム環境が無料で手に入るのですが、1命令で画面に線を引いたり、音楽を演奏したりといった単純なことでも、ライブラリを準備して、初期化などの手続きを行わないと実現できません。たとえば、オブジェクト指向やクラスなどの考えかたは、メモリーなどのハードウェアを意識することなくプログラムを作れる環境の基礎となっていますが、我々はもう少しコンピュータをダイレクトに操れる環境が必要だと考えました。BASICは、プログラム環境としては貧弱ですが、“コンピュータに命令する楽しみ”を簡単に実現できる環境としては、現代でも十分に通用する、初心者向けの言語だと考えています。ニンテンドー3DSという環境を選んだのも、子供たちが触れる可能性が一番高い、身近な高性能コンピュータだからです。『プチコン3号』をきっかけに、より高度な環境へ興味を持つ、モノ作りが好きな若者を増やしたいですね。

――先日発表された、大阪府立泉尾高校の、『プチコン3号』の導入も、そうした考えの一環なのでしょうか?
小林 今回をモデルケースに、一番手軽なコンピュータを扱える機会を多くの学校で導入していただけるよう、環境を整えていきます。指導する際に使い勝手のいい資料や、サンプルプログラムなども、先生方からのご意見やご要望などに応える形で充実させていきます。プログラム教育に関心の高いアメリカでも、『プチコン3号』が、近日中に『SMILE BASIC』として配信が始まるので、アメリカでの教育関係を意識した展開も準備しています。何はともあれ、コンピュータがおもしろいと感じられる人間を増やしたいですね。

――少し気が早いかもしれませんが、今後の『プチコンマガジン』の展開を教えてください。
小林 もちろん、定期的に配信していきます。“プチコン大喜利”だけではなく、教材として導入していただいた学校内のコンテストや、ゲーム雑誌・プログラム系雑誌等が主催するコンテスト、地方で行われるワークショップなどで作られた作品も、マガジン内にコーナーを設け、より多くの作品を発表できる場にする予定です。『プチコン3号』を持っていない人にも、作品を楽しんでもらえる環境があれば、自作のゲームを友だちや親戚に自慢できるようになり、いろいろな人から意見をもらうことによって、さらによいものを作りたい気持ちが高まると思います。チヤホヤされることが、モノ作りの原動力になるはずです。次の大喜利は、アメリカで『SMILE BASIC』が配信されるタイミングを考えています。日米対決ですよ!(笑)

――私自身、レビュアーのひとりということで手前味噌になってしまいますが、『プチコンマガジン 創刊号』が週刊ファミ通のクロスレビューでシルバー殿堂を獲得したことで、2号への期待も高まると思われます。
小林 ものすごくハードルが上がってしまいましたが、単純に作りこみによる作品だけではなく、シンプルながらもルールがしっかりしたものが、次回もたくさん生み出されることを期待しています。

――最後に、『プチコンマガジン』に触れて、ゲーム制作に興味を持った読者へのメッセージを。
小林 ぜひ『プチコン3号』を購入して、実際に動いているゲームのプログラムを覗いてみてください。たぶん最初は何も分からないかもしれませんが、Miiverseのプチコンコミュニティに行くと、親切なプチコンユーザーがアドバイスしてくれます。プログラムに興味を持ってくれた人が困っていると、助けずにはいられない素敵な人たちばかりなので(笑)、少しずつプログラムが理解できるようになると思います。『プチコンmkII』までは“おっさんホイホイ”と言われていましたが、『プチコン3号』からは、若い未来のプログラマーを育てる目的が強くなっています。10年後に「『プチコン』でプログラムを知って、ほかの言語にも興味が出て、ゲーム業界へ入るきっかけになりました!」という若者があらわれたら、私たち”BASIC直撃世代”も、安心して隠居生活に入れます(笑)。


■スペシャルインタビュー・『SOLID GUNNER』を作った男たち

▼爽快感満点のハイスピードシューティング誕生の秘密に迫る!


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 『SOLID GUNNER』は、『プチコンマガジン 創刊号』に収録するためにスマイルブームが制作した、オリジナル2D縦スクロールシューティングゲーム。敵編隊のトリッキーかつハイスピードな動きや、背景の高速多重スクロールなど、「本当に『プチコン3号』で作ったの!?」と驚く要素が満載の一作です。

 メインで関わったスタッフは、企画兼プログラムが1名、グラフィックが2名、音楽が1名の、計4人。制作期間は7週間(没作なども含めると約16週間)……という“プロフェッショナルの犯行“のエピソートを、開発スタッフに大いに語ってもらったので、一挙公開します!


■矢野氏(BGM制作)

 製作機材は市販のニンテンドー3DS1台という、ユーザーの皆さんとまったく同じ環境で作成しました。開発期間は、2曲ぶんを合計2ヵ月弱。業界の平均的な制作時間より、相当長い時間をかけました。しかもその大半は、1面の曲に使われました。基本コンセプトとして、音色などの第一印象は1990年代くらいのやや古めかしい感じにしつつ、実際の楽曲自体は、2000年以降の流行を詰め込んでいます。そんなことをMML(Muic Macro Langageの略称。『プチコン3号』でも独自の文法で導入されている、サウンド制御用言語)でやろうとすると、どうしても難度が上がってしまい、当初は脳内の音感のみで作成していましたが、けっきょくは、鍵盤で音を確認しながら楽譜を作ることになりました。1990年代の曲は、MMLという入力方法に合理化されたスタイルだったんだなあと痛感した次第です。


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 『プチコン3号』での音楽作成については、まだまだやれることは山ほどある、というイメージです。今回の曲では、ユーザー定義音色は使っておりませんし、動的なBGMの制御(ゲームの進行状況に合わせてBGMが変化したりしなかったり)などの難しい表現は一切使っていませんが、システム上はこのような表現も可能なはずです。ただ、音源の特性上、フルオーケストラだとか、絶対に表現不能なジャンルもあります。そういったもろもろをふまえて、“可能性や潜在能力のアピール”という点で個人的に点数をつけるとすれば、100点満点中60点というところでしょうか。もちろん、楽曲自体の完成度は胸を張れるデキになっておりますので、ユーザーの皆さんにはじっくり聴いていただきたいですね。プレイ中は忙しくて、ゆっくり聴けないかもしれませんが(笑)。


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■ヲサ田氏(グラフィック)

今回は、動きの部分をプログラマーさんに丸投げしました。まるで、ホビーユーザーのようにBasicのプログラムを楽しみながら好きなように作ってもらうのが一番だろうということで、とりあえず思いつく範囲でいろいろなドットを打って、それを「どんっ」とお渡ししました。描いた私も想像しなかった使いかたをされているパーツもあり、プレイして思わずのけぞったことも(笑)。非常に楽しい経験をさせてもらいました。あと、宣伝ですが、私が制作したゲーム『1001 SPIKES』がSteamで販売中ですので、よろしくお願いします!

■長谷川氏(メインプログラム)

 この時代に、小規模とはいえ商用でシューティングゲームを作るということで、制作は難航しました。いまさらありきたりなものは、お客さんに求められていないだろうというのと、シューティングゲームは「文法がきびしい」からです。制作時間の大部分は、プログラムを書くことではなく、「どんなゲームを作ればよいのか?」と考えることに費やされました。

 最初の試作は、「やはりニンテンドー3DSなのだから、下画面も活かしたものを」と、タッチパネル上にスライダーを複数表示して、自機と左右にいる僚機の位置と射線をうまくコントロールしながら飛び交う敵機を撃ち落とす……というものを作ってみたのですが、操作していると手が痛くなり、敵もうまく狙えず、ストレスがたまる一方だったので、それは没にしました。

 その後、企画を練り直し、「いまの時代にどのようなシューティングゲームを世に問うべきか?」を考えた結果、“シューティングに不慣れな方でも楽しめるようなシンプルさ”、“弾をかいくぐる快感ではなく、敵を撃ち落とす快感”、“80年代の固定画面シューティングのような美しい敵の動き”という、3つの柱を立てることにしました。タイトルは、「撃つだけのゲームであること」を強調する意味と、声に出した時の語感のよさから、『SOLID GUNNER』にしました。操作系はアナログスティックとショットボタンのみで、パワーアップなどもなし……と決めたのも、とにかくシンプルなゲームにしたかったためです。シューティングゲームとして、決して緻密に組み立ててあるゲームではありませんが、たとえるなら駄菓子のような、ついついまた食べたくなるような味わいは、なんとか出せたのではないかと思っています。お気軽に何度も遊んでいただければ幸いです。

 制作中は、敵の編隊の動きをどうするかでかなり悩みました。初めは手作業でデータを起こしていたのですが、手間もかかり、そんなにバリエーションが考えられるわけでもありません。最終的には『プチコン3号』で曲線をランダムで描くプログラムを組み、その結果出てきた約4000パターンの中から、いい感じのものを目視で選び、動きのデータを生成させました。このようにして作った全98パターン(※左右反転を含めると196パターン)の動きが、ゲーム内に組み込まれています。


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 本作で、少なくてもこれぐらいの2Dシューティングは『プチコン3号』で十分作れる……というデモとしての役割は果たせたかと考えています。潜在能力という意味では、まだまだ使っていない機能もたくさんあるので、これで限界というわけではまったくありません。実際、我々が驚くようなことを実現しているユーザーさんの作品もあるので、工夫次第でまだまだいろいろなことができると思っています。



プチコンマガジン 創刊号
メーカー スマイルブーム
対応機種 ニンテンドー3DS
発売日 配信中
価格 278円[税抜](300円[税込])
ジャンル バラエティー
備考 一部収録タイトルはスライドパット対応

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