紛争地帯並みに人が死ぬ“Chiraq”
アメリカ・イリノイ州シカゴ。この大都市の中で、犯罪による死亡人数がイラクとアフガニスタンで死亡したアメリカ人より多いことから“Chiraq”(シラク)と称され、全米でも有数の犯罪多発地帯として知られるのが、南部のサウスサイドと呼ばれる地域だ。
貧困、暴力、ドラッグ、ギャング、極端な人種バランス(中心地イングルウッドは居住者の97%以上が黒人)と社会問題が山積みで、その過酷なストリートライフはDrill Musicと呼ばれるギャングスタラップの一派によって歌われてきたほか、さまざまなドキュメンタリー作品が制作されてきた(オンラインメディアVice傘下のNoiseyによる全8エピソードのシリーズではチーフ・キーフらを中心とする地元ラップシーンを取材している)。
Culture Shock Gamesによる『We Are Chicago』は、ビデオゲームをインタラクティブなドキュメンタリー手法として使い、地元シカゴの現実を描く一人称視点のアドベンチャーゲームだ。プラットフォームはPC/Mac/Linuxで、2016年のリリースを予定している。
本作でプレイヤーは、サウスサイドの黒人家庭の10代の若者として、実際の人物や出来事に取材した“平均的な”ティーンエイジライフを体験することになる。果たしてプレイヤーはさまざまな選択・行動を通じて、大切な家族を守り、仲間を救うことができるか?
ゲームはコミュニティからの証言に基づき、実際にあった事件や日常のリアルな問題などを盛り込んでいるそうなのだが、団地に囲まれた特に何もない公園や、学校に当然のようにある金属探知機、汚いバイト先、教室の後ろにかかっているオバマ大統領の写真(もともとシカゴで法律家として活躍し、議員としてもイリノイ州から選出された)といった、何気ない乾いたディテールの方が、わかりやすい事件よりも刺さってくる。
開発チームでは本作を通じ、サウスサイドの現実への理解を深めてもらうとともに、暴力や収入格差といった社会問題への議論の声が高まることを期待しているという。先週シアトルで行われたゲームイベント“PAX PRIME 2015”ではVRヘッドマウントディスプレイOculus Riftを使ったデモも存在しており、個人的にはそっちの方がディープな体験(警察や他地域の住人から向けられる視線のキツさとか)ができそうなので、期待したいところ。