コワレたココロをナヲす、タビ
『The Town of Light』は、イタリア・トスカーナ州のフィレンツェを拠点とするスタジオが放つ、ホラーアドベンチャー。精神分裂症の少女の視点を通して、彼女の身に降りかかった恐怖と悲劇を体感する問題作だ。
気がつくとそこは、何かの施設の廃墟。16歳の少女レネーにとって、そこは、もっとも恐ろしい記憶が刻まれた場所だった。「私は病人なのか、囚人なのか、それとも……?」。彼女の、自分自身を再構築する物語が始まった。
実在の精神病院で起きた凄惨な出来事をベースにした、奇怪なストーリーを体験できる一人称視点アドベンチャー。今年7月に京都で開催されたインディーゲームの祭典“BitSummit 2015”にてプレイアブル版が初公開された際にも、話題になりました。
本作には、いわゆる“恐怖のビックリ箱”的なテーマパーク要素はありません。廃墟の精神病院がかもし出す退廃的な美と、そこでかつて行われていた非人道的行為の記録。そして、精神分裂症を患う少女が自身の記憶を取り戻すにつれて変容する、“世界の見えかた”が、ただあるのみです。ゲームとドキュメンタリーの融合形としても、本作は注目すべき作品です!
精神病院がない国、イタリアが選択した道
精神病院の惨状を見かねた医師によって始まった精神医療改革により、国内の精神病院が解体されたイタリア。一部の精神病院跡地は、現在も廃墟として、当時の面影を残しているという。また、近年は『人生、ここにあり!』(2008年)ほか、往時の精神病院を題材にした映画が立て続けに作られるなど、国内での関心が、再度高まりつつあるようだ。
精神病院を題材にした理由は、ゲームが感情を語れる装置だから
本作を開発するLKA.itは、ベテランクリエイター・Luca Dalco氏を中心とする10数人規模の独立系デベロッパーだ。ここでは、BitSummit2015のために来日していたFabio氏にインタビュー!
──精神病院での凄惨な出来事を題材にしたゲームを制作する動機は?
Fabio ゲームは、ストーリーを語ることができる、極めてエモーショナルな装置です。過去の歴史的過ちを再現した物語世界に入り込むことで、ある特定の状況に置かれたときに、私たちはどうすればいいのかを体験的に習得できると考えたからです。
──現代のイタリア人は、精神病院をどのように捉えているのでしょうか?
Fabio イタリアの精神病院は、1978年に公布された180号法(バザーリア法)により、1980年代に閉鎖されました。この出来事に対する世論は、ふたつに分かれました。ひとつは、閉鎖は誤りだったとする考えかた。その支持者は、保護施設は改良され、現代化されて存続するべきだ、と主張しています。もうひとつは、精神病院に代わるものとして、地域中心型の精神医療サービス網が確立されたことを正しいとする考えかたです。わが国にはまだ、司法管轄の精神医学病院があります。この閉鎖に関する議論は、政府と大衆によって、いまも激しく行われています。
──この作品を発表したことで、どのような反響がありましたか?
Fabio インディペンデントなスタジオの最初の作品ということもあって、さほど注目されるとは思っていませんでした。また正直なところ、このゲームが扱う題材や、市場において挑発的とも言えるゲームジャンルについての反応を恐れてもいました。しかし、SNSの感想や、ジャーナリストからのコメント、BitSummit 2015の出展ブースでのプレイヤーの反応を見て、本作をリリースする勇気をもらいました。
──本作は、さまざまな言語に対応していますが、日本語版はいつごろリリースされるのでしょうか?
Fabio 日本語ローカライズは、イタリア在住の日本人女優に全面的に協力してもらいました。どの言語版も、オリジナルと同じく12月にリリースする予定です。機種は、Windows、Mac、Linuxで、Oculus Rift版も同時開発中です。2016年には、プレイステーション4やXbox Oneなどの家庭用ゲーム機版もリリース予定ですので、お楽しみに!
The Town of Light
メーカー | LKA.it |
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対応機種 | PCWindows |
発売日 | 2015年 |
価格 | 未定 |
ジャンル | ホラーアドベンチャー |
備考 | 対応言語:英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、日本語、備 考 ロシア語、スペイン語、ブルガリア語、ギリシャ語 |