中東の市場は魅力的?
2015年7月24日、六本木アカデミーヒルズフォーラムにて“バーレーン王国セミナー Cool Japan Event in Bahrain”が行われた……。と、書き始めると「ん!? なぜにバーレーン?」と不思議に思われる読者の方もいらっしゃるかもしれない。ご存じの通り、ファミ通.comと言えばゲームを中心にアニメや映画、トイなど、エンターテインメントコンテンツ全般を扱う情報サイト。そんなファミ通.comとバーレーンとの結びつきに「おや?」と疑問に思われるのも無理からぬところと言えるだろう。
かくいう記者も、バーレーンと聞いて、「中東にある国で、F1グランプリが開催されて、たまに日本がサッカーワールドカップの予選で戦う相手国で……」くらいの印象しかなかったのは事実。ところがである、このバーレーン。中東でビジネスを展開しようと思ったら見逃せない拠点であるらしいのだ。中東はほとんどの日本企業にとって“未開拓の地”であり、そこにビジネスチャンスがあるという。当然のこと、エンターテインメントコンテンツに関しても事情は同じ……というわけで、今年は、翻訳やローカリゼーションを行う十印(とおいん)が旗振り役となって、バーレーンで2015年10月2、3日に開催される“IGN Convention Bahrain”に参加。“Cool Japan Zone”を展開するという。
今回開催されたセミナーは、この“Cool Japan Zone”への参加を検討している、もしくは興味がある企業を対象に行なったもので、当日はゲームやアニメなどを含む、多くの企業が参加した。ここでは、そんなセミナーの模様を紹介しよう。
セミナーでまず登壇したのは、バーレーン王国 駐日大使 ハリール・ハッサン氏。ハッサン氏は、バーレーンが日本と貿易関係を結んだ1934年以降、「日本と強力な関係を築いてきた」と良好な関係を強調。“Cool Japan Zone”が、そんな友好関係をさらに深める場になってほしいと語った。
おつぎに登壇した駐日バーレーン王国大使館 商務官 村越一夫氏からは、“バーレーン王国、新しいビジネスへの玄関口”として、バーレーンという国の特徴が語られた。村越氏によると、バーレーンはアラビア半島の東にある島国で、国土は東京23区と川崎市を合わせたくらい。人口は130万人程度という。湾岸地域でもっとも革新的で現代的な政策を実践しているというバーレーンだが、税金はなんと“ゼロ”で、極めて高い経済自由度を誇るという。“湾岸一の住みやすさ”を誇るのがバーレーンだというのだ。
おつぎに登壇したのが、一般社団法人 情報サービス産業協会(JISA)副会長 中東湾岸・バーレーン市場開発事業責任者 島田俊夫氏。JISAとは、約600社のソフトウェア開発、ITサービス事業者で構成される団体で、島本氏の“JISAバーレーン視察ミッションで感じたこと”とのプレゼンでは、島本氏らJISAのスタッフが実際にバーレーンを訪れての率直な感想が語られた。島本氏は、「なぜ、バーレーンなのか?」という疑問に対して、「政府の成長戦略でも中東・湾岸地域は重視されている」点や、「バーレーンは経済的な自由度が高く、外国投資を歓迎している」点などを列挙、実際に視察をしてみると、バーレーンの日本に対する関心が極めて高かったことなどを明らかにしてくれた。そのうえで島本氏は、「向こうに行って、マーケットが待っているわけではありません。(バーレーンが)白いキャンパスだから何も書けないというか、白いキャンパスだから何か書きたいか。(バーレーンに展開する)価値はあるが勇気の問題です」と、経営者の視点からの率直な感想を吐露していたのが印象的だった。
最後のプレゼンテーションに登壇したのは、十印の代表取締役社長 渡邊麻呂氏。渡邊氏は、“バーレーン王国におけるビジネスのご提案”というストレートな題名のプレゼンで、改めてバーレーンの魅力を紹介。バーレーンは、現代的な気風にあふれ、欧米の最新商品が流通していることから隣国サウジアラビアから、毎年1000万人の観光客が訪れ(サウジアラビアの総人口が3000万人なので、人口の3分の1!)、強力な経済圏を形成していることなどを説明した。
そんな中東湾岸地域の“拠点”として機能しているバーレーンで、10月2、3日に開催されるのが“IGN Convention Bahrain”。過去2回開催され、エンターテインメントコンテンツの出展やライブなどが実施。2013年は6000人、2014年は7000人の動員実績を誇るという。会場がF1のコースでもあるバーレーン・インターナショナルサーキットのピットレーンというところも、スケールの大きさを感じさせる(F1ファンとしては)。なお、イベント名の冠にもなっているIGNは、ゲームやエンターテインメントを取り扱うウェブサイトで、中東でも最大手とのこと。主催団体も“Cool Japan Zone”には大いに期待しているようで、4つから5つあるホールのうち、入り口となるホールの真ん中に“Cool Japan Zone”を配置してくれたらしい。
ちなみに、気になるバーレーンのゲーム事情はというと、渡邊氏によると巨大ショッピングモールのゲームショップなどを覗いてみると、「日本語のパッケージが陳列棚に並んでいた」とのことで、並行輸入である程度は親しまれている様子。ただ、これは日本のコンテンツ全般に言えることらしいが、基本は、「日本にすばらしいものがあることは知っているが、手に入らない状態」(渡邊氏)だという。“Cool Japan Zone”では、日本企業が何を見せてくれるのか、期待しているというのだ。“Cool Japan Zone”は、自社のコンテンツを披露することで、中東ユーザーの感触を確認できる絶好の場だともいう。ゲームやアニメなど日本コンテンツに対して、中東のユーザーがどのような反応を見せてくれるのか、極めて興味深いところではある。
いまや、グローバル市場を前提にしないと成り立たないと言われるゲーム市場。今後もさらに進むであろうグローバル化の波のなかで、“中東”というのも見逃せない拠点となりそうだ。