『3D ソニック・ザ・ヘッジホッグ2』がついに配信 “セガ 3D復刻プロジェクト”のキーマンに聞くこれからの展開 進化の物語がついに完結!?

“セガ3D復刻プロジェクト”の最終作(とされている)『3D ソニック・ザ・ヘッジホッグ2』が2015年7月22日より配信開始。そこで今回も、同プロジェクトのプロデューサーを務めるセガゲームスの奥成洋輔氏と、開発を担当するエムツーの代表・堀井直樹氏にご登場いただき、本作のゲーム的な、そして技術的な見どころを、とことん語っていただいた。

●人気プロジェクトのトリを飾る『ソニック2』

 セガ往年の名作ゲームを、2Dゲームとしての見た目や、ゲームのプレイ感覚は忠実に再現しつつ、3D立体視にも対応させてリメイクしたニンテンドー3DS向けの人気シリーズ“セガ3D復刻プロジェクト”。2012年末からスタートしたこのプロジェクトだが、ついにその最終作(とされている)『3D ソニック・ザ・ヘッジホッグ2』が2015年7月22日より配信開始となる。そこで今回も、同プロジェクトのプロデューサーを務めるセガゲームスの奥成洋輔氏と、開発を担当するエムツーの代表・堀井直樹氏にご登場いただき、本作のゲーム的な、そして技術的な見どころを、とことん語っていただいた。

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■奥成洋輔氏(左)
セガゲームス
コンシューマ・オンラインカンパニー
セガ3D復刻プロジェクトシリーズプロデューサー

■堀井直樹氏(右)
エムツー
代表取締役

 今回復刻された『ソニック・ザ・ヘッジホッグ2』のオリジナル版は、1992年11月21日にメガドライブ用ソフトとして発売された、アクションゲーム。スピード感あふれるゲーム性で大ヒットを飛ばした『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』の続編で、ふたり同時プレイや対戦モード、どこでも加速ができるスピンダッシュの追加といったことから、日本のみならず海外でもスマッシュヒットを飛ばし、ソニックを名実ともにセガの看板キャラクターへと押し上げたタイトルでもある。その後のソニックの活躍は、いまさら説明する必要はないだろう。
 メインプログラマーは、『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』から引き続いての中裕司氏が担当しているが、セガ・オブ・アメリカ(以下、SOA)にチームを率いて移籍し、一部現地スタッフとともに開発するという、いわば“日米合作”スタイルでもある。

■発表当初は“プレイ人数:未定”だった!

―――さっそくですが、今回もよろしくお願いします。

奥成 セガ 3D復刻プロジェクトのオーラスタイトル、満を持してのリリースです。今回もギリギリのマスターアップでした!

堀井 ギリギリでした! 今回はですね、開発の山場もへったくれもなくてですね。初代『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』からどこがいちばん変わったかって、やっぱりスペシャルステージと2PLAYER VSモードでのふたり同時プレイなんですよ。ですから、いつものこと以上に「移植は無理だ!」って思っていたんです(笑)。

奥成 おさらいになりますが、『3D ベア・ナックルII』、『3D ガンスターヒーローズ』、そして今回の『3D ソニック・ザ・ヘッジホッグ2』(以下、『3D ソニック2』は、第一期のときに候補として上がりながら実現は無理という判断で断念したタイトルです。無理だった理由はいくつかあって、立体視の作業は基本的に専任の担当者が手付けで行うので、ゲームのボリュームがあるほど作業が増える。前作『3D ガンスターヒーローズ』も物量は多かったのですが、『ソニック2』はとにかくマップが広いんです。

――そうですね。初めて遊んだときも「マップひろっ!」って思いました。

奥成 初代『ソニック』は6ゾーンx3アクト+1で全19ステージ。『ソニック2』は7ゾーンx2アクト+3+3なので、全20ステージ。マップの数としてはそう変わらないように思えるかもしれませんが、容量が4→8MBitに倍増したこともあってとにかくマップの広さやギミックが多く、比例して、するべき作業の物量が増える。それはまあ手間とか時間で解決ができるんですが、無理だと思われたのが、スペシャルステージと画面分割のふたり用なんです。

堀井 2PLAYER VSモードについては、『ガンスターヒーローズ』でもやっていないインターレースモード(ブラウン管テレビでの走査線表示に工夫をすることで、縦方向に対して倍の解像度の表示を行う仕組み)を使った表現ですからね。

奥成 3D復刻を行うにあたってメガドライブを3DS上で再現するわけですが、立体視+メガドライブの機能の完全再現ではエミュレータ性能の100パーセントを超えてしまうんですね。そこをエムツーさんは、タイトルごとに解析を行って、メガドライブのいくつかの機能のうちソフトで使っていない機能をちょっとずつ削って100パーセントの性能内に収まるようにしているんです。ですが、『ソニック2』の場合、メガドライブのあらゆる機能をまんべんなく使っているのでほとんど“空き”がないんです。

――なるほど。ちょっと思い出しただけでも、水の表現に半透明処理を使っていたりしますよね。ハードをフルスペックで使っているとでもいうか。

堀井 気づいている人は少ないと思いますけど、水面のところで色数を64色以上に増やしていますからね。『エクスランザー』が「メガドライブの限界を超えた多色!」を謳っていましたけど、それより先に『ソニック2』がやっていたんです。そういうふうに、しれっとスゴイことをやっているのが地味に効いてくる。

奥成 そもそも『ソニック2』というゲームは、初代『ソニック』の成功を受けて、メインプログラマーの中裕司氏がSOAに移籍して開発をしたタイトルだったんですが、その中にマーク・サーニー氏(後に『クラッシュ・バンディクー』などを制作するクリエイター』)といった腕利きのスタッフがいたり、ゲームのスケールがグッと大きくなったことを含めて、メガドライブの歴史の中でかなりエポックメイキングなタイトルだったわけです。そうした大きなスケールをどうやって移植するのかがエムツーさんのミッションだったわけですが……そういうところは一旦全部目をつむって、例によって「初代が移植できたんだから『2』もいけるじゃん!」というところから話を始めまして。

――さっそくムチを振るったわけですね。

堀井 僕らもそれを承知で応じていますから! とんだ“どエムツー”ですよ。

奥成 そもそも初代『ソニック』の開発時にも、エムツーさんとのあいだでは「360度ループで一回転して同じ奥行きの地点に戻るのはおかしい。だまし絵は立体にできない」という悶着があったんです。ですが、セガとしては『ソニック』抜きでメガドライブタイトルの3D復刻はありえないから、とにかくがんばろうといって始めたところ、割と早期に解決できました。そうなったらもう「ループができたんだから、ほかの問題も解決できるね!」ということで、シリーズ第1期の作業を進めました。

堀井 やってみたらできたんですよね。でも毎回いきあたりばったりの展開で進歩ないよねぇ(笑)。

奥成 そうやって、初代ができたのだから『ソニック2』もやろうとラインアップを決めたのですが、正直開発がスタートした時はすべての要素が実現できるかは検証が終わってなくて見切り発車でした。エムツーさんからは「これまでのシリーズで一番手こずるだろう」という話があって、最初は『ベア・ナックルII』と『ガンスターヒーローズ』を足したくらいになるぞという見積もりだったんです。私にとっても想像以上で、どうしてここまでのスケールになるのかエムツーさんに聞くと、スペシャルステージと2PLAYER VSがそれくらい大変なんだと。

――それでも開発はスタートしたと。

奥成 最初にエムツーさんがスペシャルステージと2PLAYER VSモードの研究に着手したところ、スペシャルステージに関しては再現ができそうだという見通しがついたのですが、2PLAYER VSモードについてはちょっと自信がないと。

――なんだかこれまでより弱気な返事ですね。

堀井 そうですね……。2PLAYER VSモードについては、インターレースの処理をなんかしらの解釈で処理の負荷を下げてあげなければいけないのですが、2PLAYER VSということは必然的にWi-Fi通信も絶対に必要。なので、処理の“空き”もないから、やってみるまでわからない状態だったんです。そもそもからして、テレビ表示では2フレームで1画面を描画しているのに対して、3DSではつねに60フレームの画面を切り替えて描画しないといけないという違いもありました。

奥成 とはいえ、契約しないことにはプロジェクトはスタートできなかったので、結論として「2PLAYER VSモードはなくてもいいです!」ということでスタートしました。予算や期間を鑑みた上で、最低限ひとり用でもすべてのゲームクリアーまでとスペシャルステージが遊べれば『ソニック2』と呼べるものになっているから、ということでスタートしました。なので、タイトル発表時のリリースを見直してもらうとわかるんですけど、“プレイヤー人数:未定”ってなっているんです。

――(リリースを見返して)あ、ホントだ(笑)。

奥成 あのころはまだひとり用しかできる目途はなかったんですけど、エムツーさんから「ちょっと待って! 最後までがんばるから」という返事があって、なら発表を遅らせることにしました。

堀井 契約にサインした時はマストではないけど、がんばるよって返事をしたんです。僕的には期間とか予算よりも、インターレース相当の絵の表示をやりながら、「通信をしてゲームを動かせるの?」という技術的な問題のほうが頭が痛かった。

奥成 これも開発が終わったいまだから話せるんですけど、当初エムツーさんが出してきた開発期間スケジュールだと『3D ソニック2』は年末発売にするような期間だったんです。エムツーさん的には、それくらいスケジュールをもらわないと、スペシャルステージも2PLAYER VSも全部乗っかった『ソニック2』を完成させるコミットができない、ということです。でも前の2タイトルが夏までに配信されるのに、『ソニック2』だけが秋をまたいで冬というのはありえない。

――以前『3D ガンスターヒーローズ』の立体視制作が14ヵ月かかったというふうにお聞きしましたが、『3D ソニック2』の場合はどれくらいの期間が?

堀井 作業を始めたのは『ガンスターヒーローズ』よりあとですから、だいたい1年くらいですね。セガさんからの発注があってから動き始めましたから……めずらしく(笑)。個人的な目論見としては、スペシャルステージだけを“なんとかする”担当と、2PLAYER VSでインタレース相当の絵の表示と通信を両立させる担当をつけて、あとはゲーム本体の担当者がいれば、多少時間がかかってもなんとかなるだろうという目論見でした。けっきょく人出が足りず、スペシャルステージと2PLAYER VSは兼任みたくなってしまうんですけど。