通訳してくれたのは、あの有名クリエイター!
2015年7月11日~12日、京都・みやこめっせにて“BitSummit 2015”が開催され、オリジナリティの高い上質な“インディーゲーム”が集った。3回目の開催となる今年は、驚くべきことに世界中で高い評価を集める、アーティスティックなクリックアドベンチャーを手がけてきたAmanita DesignのJakub Dvorsky氏が来日。最新作『Samorost 3』をプレイアブル出展した。また、11日のステージセッションでは週刊ファミ通・林克彦編集長との対談も行われた(※リポート記事はこちら)。
今回、会場でJakub氏に、ふだんはなかなか聞けない、着想のアイデアなどについてのインタビューが実現できた。Amanita Designの独特なアーティスティックな世界がどのように生まれているのか。
Samorost 3 Teaser Trailer
Machinarium - Official Trailer
Botanicula - Official Trailer
●クリックタイプのアドベンチャーの魅力
——ヤクブさんはずっと一貫して、クリックタイプのアドベンチャーを作り続けてこられていますよね。
ヤクブ氏(以下、ヤクブ) 確かにそうですね(笑)。やはり、こうしたタイプのゲームが好きなのです。というのも、すごく自由だと思うんです。
——自由ですか。
ヤクブ はい。アクション、シューティング、RPGとなると、もうどんな遊びを体験するのかという部分が、確定してしまうようなところがありますよね。ですが、クリックタイプのようなアドベンチャーゲームでは、いろいろなことができる幅があるのです。クリックした先にパズルがあれば、パズルゲームが始まるし、逆にシューティングゲームが始まっても、おかしくないんですよ。ですので、やりたいことを好きなだけいれることができるのです。それが魅力だからかもしれません。
●背景を描きこむ理由
——確かに『Machinarium』ではヒントを見るのに、ゲームボーイ風のシューティングゲームが始まって素敵でした(笑)。ところで、そうしたAmanita Design作品はとても背景の描写が細密で引き込まれ、クリックして探索するのがとても楽しいのですが、これだけ描写にこだわられるのはなぜなのでしょうか?
ヤクブ ルーツを辿ると、私は22歳のころからゲーム作りを始めたのですが、それまでに遊んだアドベンチャーの名作『MYST』や、オールドゲームなどの影響が大きいかもしれません。
背景を細密に描くのには理由があります。それは、Amanita Designがゲームでプレイヤーに体験してほしいと思うことと関係があるのです。
——ゲームでプレイヤーに体験してほしいことですか。
ヤクブ はい。我々がゲームで目指すゴールというのは、何というか……“自然”のような場所をそこに生み出したいのです。そうですね、“公園”を作るような感覚に近いです。
——ああ……! Amanita Design作品を遊ばせていただいているのですが、なんとなくわかります。ゲームの中に世界があって、そこを歩き回って探索する感覚がありますが、その際の主役は、“場所”というか。
ヤクブ ええ。私たちも公園にいくと、なんだかホッとしたり、そこには誰かがいて、それぞれ独自に行動をしていますよね。プレイヤーには、そういう場所にきた……と、そう感じられるような体験をしてほしいのです。ですので、背景もそれを感じられるような表現にしなくてはなりません。だから、徹底して統一して描こうとはしています。
●自然を作りたい、というテーマ
——自然を感じるような場所をプレイヤーに体験してほしい、というのがテーマなのですね。確かに『Samolost』シリーズや『Botanicula』は、自然に溢れていました。ところで、ロボットが主役の『Machinarium』は、全編人工物で、機械の世界でしたよね。
ヤクブ はい。確かにこの作品だけは、いわゆる木々などの自然があまり描かれていません。しかし、これも同じテーマなのです。私は工場や廃墟などもとても好きなのですが、そうした風景を見るにつけ、これも自然なのではないかと考えていました。
——人工物も自然だと。
ヤクブ ええ。『Machinarium』の世界は、自然の上に文明が築かれて、それが滅び去ったあとに残されたロボットの世界……というようなイメージでした。この自然と文明の混じり合う境界線の部分にも、逆に強烈に自然を感じられるように思うのです。錆びて朽ちた工場、といったイメージに。
——なるほど。ヤクブさんが目指す自然の表現というのは、その場所=環境を表現するといった印象を受けました。
ヤクブ ああ……そうかもしれないですね。わたしはチェコにあるLUDVIKOVという小さな村に、それこそ小さなコテージを持っているんです。夏のあいだなどは、スタッフ全員でそのコテージで開発をしたりします。そこには森があり、本当に自然に囲まれている場所なのです。そこを自分で実際に歩いていると、森の木々の合間に、なにか不思議な生物がいたらどうだろうか、などと考えたりするのですよ(笑)。その場所の気配のようなものを、映像や音を駆使して、プレイヤーに体験してほしいのかもしれないですね。あ、今回は日本に来られて、京都の庭園なども見て回りましたが、ものすごく影響を受けました。
——なんと! 京都には、まさにそういった特別な気配のある場所がたくさんあります。それにしても、今回お話を伺って、ヤクブさんのゲームが世界中で評価される理由には、きっとプレイヤーがゲームを遊んで、そうした気配を共感しているのだと思います。
ヤクブ やっぱり、スコアを上げるとか他人と競争する、といった、いわゆるゲーム的な忙しくクリアーするような体験をプレイヤーにしてほしい訳ではないんです。『Samolost3』にも、ゲーム的に5つのステージがあり、謎解きなどといったゲーム的な部分も、もちろんあります。しかし、我々が体験してほしいのは、その場所の空気というか、気配を感じてほしいのです。『Samolost 3』はゲーム的な謎解き部分も、すごくおもしろいものになるように工夫していますから、決してないがしろにしているわけではありませんよ(笑)。
——もちろん、遊びの部分もすごく楽しみにしています(笑)。
(※なんとこのインタビューは、同じく独特な美しさを湛えたインディーゲーム『TENGAMI』の作者、Nyamyamの東江亮氏が通訳をしてくださいました! 密かに夢の共演が実現しました。東江さん、本当にありがとうございました!)